Blu-ray発売前とはいえ、劇場版のネタバレ注意かも?ATP前を勝手に修也くんとで想像してみました。
鹿角聖良。
それが私の名前……スクールアイドル『Saint Snow』のリーダー『だった』人物の名前。
この前兄さんがお店まで遊びに来てくれた後になって、兄さんとの最初の出会いについて理亞に聞かれてしまったけど……それについてすぐに答えることはできませんでした。
私自身、ちょっと記憶に自信がありませんでしたから。一番最初の時は私でさえすごく小さかったですし。理亞なんてまだハイハイしてた頃ですよ?
棚の奥からアルバムを引っ張り出して、久々に思い出してみる。
でも思い出したくなったのは、理亞の疑問が気になったからだけじゃありません。
……ラブライブに出られなくなって。最後の予選で負けてしまって、少しナイーヴになってるからでしょうね。
どんな形であれ、自分でもう一度過去を振り返ってみたくなったんです。
Saint Snowと、私の夢の終わりに……スクールアイドルの頂点を目指すきっかけになった兄さんと、理亞との思い出の日々を。
「それはきっと、悪いことではないと思いますから……」
アルバムをめくると、微かに記憶に残っていた写真が出てきました。赤ん坊の頃を数えなければ、このファミレスで撮った写真が最初のはず。私も兄さんも、理亞も凄くちっちゃい頃ですね。お互いの両親も今よりもずっと若いのが、時が経ったのを感じさせます。
私が大の苦手だったブロッコリー、こっそり食べてもらいましたよね。兄さんだって当時はそんなに好物じゃなかったはずなのに。あの時から、凄く優しい人だった……。
父さんの話ではこの頃、兄さんのお父さん……叔父さんは同じ北海道の基地にいたから、よく会いに来れたのだとか。確かにこの頃から数年間が一番、私と兄さんが会えた時期でしたね。叔父さんは転勤が多いお仕事だったから、兄さんもついて行って何度も引っ越した。
でもその度に、私と理亞は無理を言って兄さんに逢いに行ったし、兄さんも会いにきてくれた。お店の手伝いをすれば兄さんに会えると思うと、いくらでも頑張れました。きっと私、兄さんに恋を『してた』んだと思います。
……いいえ、自分に嘘をついても仕方ないですよね。
好きです、兄さん。
従兄妹なんて関係ありません。
私は、兄さんのことを。『鹿角修也』のことを女として、今この瞬間も愛してしまっているんです……。
でも、自分で目を背けてた。
普通、従兄妹で結婚なんてそうそうないですから……、それを言い出して関係が壊れるのが怖かったんでしょう。
そして、理亞のことも。
理亞も兄さんのことを好きなのは分かっていた。もしかしたら理亞も私と同じで、姉である私の想いに気づいていても、言い出せなかったのかもしれない。
この歳まで恋愛の一つもしてないのは、スクールアイドルに向けて一生懸命だったというだけじゃなく……その想いが一因だったのでしょう。
幼い頃の、あの大切な日々が私の根底にあった。いつまでもこんな幸せが続くと、最初は思ってた。
それが変わっていったのは、兄さんの家族の仲が悪くなり始めたとき。当時はデリケートすぎたのか、理由は詳しくは教えてもらえなかったのを覚えています。
それでも会いに行くたびに少しづつわかっていきました。
—————『兄さんの夢』をもう、兄さんの家族の誰も応援してくれていないのだと。
両親が不仲を知らせないようにしたその判断は、正しかったのでしょう。その当時ですら、私は叔父さんに子供らしく怒りを覚えていましたから。
大人に対する幼い反抗心。しかし、それは真剣な想いでもあった。
兄さんと私と理亞にとって、夢は何より大切なものでした。誰もが文字通り紙に描いたり、親と先生に伝えるためのものじゃなく、本気で目指してたどり着きたい場所……。
それを否定されることは、自分自身の全てを否定されることと同じ。殊更、子供にとってはそうでした。
最大の理解者だった叔父さんがああなってしまったこと、兄さんは本当に辛かったのだと思います。叔母さんとの関係も悪くなり、離婚とまでは行かなくてもほぼ別居で、苗字も鹿角ではなくなってしまったのですから。
……ああ、そうでした。あの頃は『兄さんがうちの子だったら良かったのに』と願ってしまいましたね。
従兄妹から兄妹になって結婚が更に遠のいても、そばにいて欲しいと、そばにいてあげたいと思っていたんです。今思えば、とても子供の発想ではなかったんですけど。
でも、そんな兄さんの家族は、ある1年間を境に仲直りしています。その一年は、あのμ'sとA-RISEが活躍した年。伝説のラブライブ決勝や、ニューヨークライブがあった年です。
兄さんは何か伝手があったらしく、『部屋に置き場がない』といって、ちょうどその年にμ'sとA-RISEのグッズやBlu-rayをたくさん送ってくれました。
徐々に人気は全国規模になりつつあったとはいえ、まだ本格的なスクールアイドルショップも函館にはできていませんでしたから、それらは私と理亞を夢中にさせるのに十分すぎました。
あの人達みたいに、私達も輝きたいって……最初に見たときの感動は、とても鮮明にまぶたの裏に焼き付いています。私たちの夢が本格的に形になったのは、それがきっかけ。
それだけじゃなくて、兄さんに見てほしいという下心もほんのちょっぴりあったのかもしれませんが。
そう、お正月の前の早めの長期休暇で、うちに帰ってきている兄さん。今も下の階で夕食を食べている、愛すべき人に……。
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「聖良……。その、ラブライブのことなんだけど。大丈夫なのか?」
「理亞は……最初はふさぎこんでいましたけど、今は友達に連れられて外に出ています」
「夜で冷えるのに? 遅くなるなら迎えに行ったほうがいいかな……」
あのラブライブの予選。私たちが失敗して、落選した予選を……よりにもよって兄さんも見に来ていた。
私にとっての最後のラブライブの機会で。そして、兄さんに見せられる最初のSaint Snowの機会で、私たちは……負けた。
せっかく函館に来てくれたうえに、お母さんたちも「しっかりね?」と気を遣ってくれて旅行に行ってくれているのに……こんなことになってしまうなんて。
「じゃなくて。理亞のことも心配だけど、俺が言ってるのは聖良のことだよ。……最後の、ラブライブだったんだろ」
————私の、事ですか?
それなら……気にしないで。
「……いいんです、私は大丈夫ですから。それよりも兄さんは、理亞のことを心配してあげてください」
「理亞はお前や友達が心配してくれても、聖良のことは誰が心配するんだよ。……今、俺しかいないじゃないか」
……そういうところ、ですよ兄さん。
一番傍にいてほしい時に傍にいてくれて、一番かけてほしい言葉をかけてくれる……。
だから、好きになってしまったんですよ?従姉妹なのに、貴方のことを……。
「そうやって気にかけてもらえるだけで、私は十分です。そうです、兄さんが私を見ていてくれる限り、まだまだ進み続けられますから……」
そっと兄さんの隣に座って、肩に頭を乗せて甘えてみた。いつもやられっぱなしですからね、たまには反撃しないと。
ご心配に甘えさせてもらいます。
……ふふ、ちょっと赤くなってますね?こうしていると、安心できるんです……。でも、これだけじゃ満足できません。兄さんの手を取って、そっと自分の頬にあててみると、匂いや鼓動だけじゃなく、温かさも感じることができました。
好きな人の、それを。
「兄さんを狙う女性が多いことも知ってます。従姉妹だってことも、わかってます。それでも……今晩だけは、私の『愛』だけに、応えてくれませんか?」
理亞の気持ちもわかっていて、それでも————……
「さっき理亞から連絡があったんです。明日からここに友達が泊まるかもしれないって。だから、今晩だけが私にとってのチャンスなんです」
「せ、聖良……!?」
「……こうさせていてください。せめて、理亞が帰ってくるまででいいんです。今だけは……貴方の胸で泣かせてください」
「…………わかった。聖良がそうしたいなら、いいよ」
そして私は、理亞が帰ってくるまで泣き続けた。みっともなく声を上げて。堪えていろんな気持ちがあふれだして止まらなかった。
理亞の前で溢してしまった、あの涙。それが理亞を傷つけ、追い詰めてしまった。もう私だけではあの子の傷を癒してあげられない。それは、兄さんやAqoursの皆さんの力を借りなければならないのだと思います。
私にできることは……今は、二度と理亞の前で泣かないように、今のうちに泣いておくこと。
でも兄さん、今晩だけじゃありませんよ?
高校生が終わったんです。親も公認ですし、これからは容赦なくアタックしにいきますからね?
理亞にならまだしも、他の女になんて譲ってあげませんから♪
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……翌日になって。
理亞はAqoursからルビィさんに加えて、国木田花丸さんと津島善子さんを連れてきた。
どうも、4人で何か色々と作ってるみたいですね。曲や歌詞、衣装の話をしていますから、新しいライブなのかもしれません。
もう、私はスクールアイドルとして理亞のそばにいてあげることはできない。後は、Aqoursのみなさんがそれをしてくれる……。
でも、私だって姉として、ただ見ていることはできませんでした。
理亞達がそうする陰で、こっそりラブライブの決勝で歌おうと決めていた衣装を完成させているんです。私が言っていたように、兄さんも言ってくれていたこと。「誰のためのラブライブか」って。
私たち自身と、ファンのみなさんのため……。それなら、ラブライブは場所にすぎません。
きっと『私たちだけのラブライブ』を、誰かに見せられる日が来た時のために。
私はあの娘の力に、少しでもなってあげたい……。
「あれ、君たちが理亞の友達か? 仲良くしてあげてくれ。気難しく見えて、この前も……」
「に、兄様!? 突然部屋に来ないでよ!///」
「ピギィッ!? お、男の人ぉ!?」
「理亞ちゃんの、お兄さんずら……? お邪魔してるずら、じゃなくてしてますずら!ああ、ずらじゃなくてぇ……!」
「フッ……その気配の消し方、見事! 我がリトルデーモンにならないかしら? 今なら私たちの作業を手伝う権利を与えるわよ!」
「…………お邪魔しました、帰ります」
「ちょっと、貴方なんで私だけ目を逸らして帰るのよ!待ちなさいよー!!」
……あんなに、いい友達に恵まれたんですから。
ちょっと寂しいけど、理亞も私や兄さんから離れて独り立ちするころなのかもしれません。あとは、背中を押してあげるだけ。いつの間にか、大きくなっているんですね。眠っている力を成長させて。
————そして、ライブは大成功。
Aqoursの他の皆さんとの逆サプライズも成功させて、最高のライブをすることができました。
間違いなく、これまでの人生で……最高のライブ。私達だけじゃなく、兄さんも函館の街の人たちも、心からの笑顔を見せてくれたんです。
ライブが終わってすぐに、兄さんは帰ってしまいましたけど……かけてくれた言葉は忘れません。
私も、何度でも信じます。失敗しても、また信じてみます。自分の可能性を、未来を。
自分の弱さも受け入れて……
次に会えるのは3月末のお休みだって言ってましたけど、その時はまた生まれ変わった私をみせてあげます。兄さんを狙ってる他の女性にも負けない、新しい私と理亞を!
「ところで……鞠莉さんもその曲が好きなんですね。そのバンドの曲もうちの兄さん、よく聞いてますよ?」
「イェース♪心が沸き上がるバーニング……って感じ? まぁ、私も昔ある人に教えてもらったんだけどね」
「……そういえば、プロフィール読みましたけど。貴方はコーヒーも好きなんですね、兄さんと同じで。海外から取り寄せたりもしてるとか」
「……えぇ。憧れた人が良く飲んでてね、私も好きになったの♪いいものが手に入ったら、その人にもよく送ってあげてるのよ?」
「そうですかぁ。ウフフ……」
「そうなのよ。ウフフ……」
「な、なんだかあそこの二人笑顔が怖いずらぁ……?!」
「こんないいライブが終わった後なのに、一体何があったのよぉ~!?」
「ピ、ピギャア!?」
聖良さんをやったということは、理亞ちゃんもやる……かもしれません。
久々に昔の携帯でハーメルンの昔のラブライブSS漁ろうとしたらほとんど消えてて悲しくなりました。お気に入りした作品や評価した作品も……;つД`)