ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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Guilty Kissに続いて、CYaRon!編になります。ノリで書いてたらまた7000字超(ry

体裁としては続きですが、Guilty Kissが完勝する世界もあれば、今回みたいなバトルにもつれこむ世界もあるというノリで楽しんでもらえれば、と思います。


変わらないハッピーエンド【CYaRon!】

プルルルル……プルルルル……

 

 

私の携帯から電話をかける。でも、これはただの電話じゃない。

 

『いざという時』のために用意しておいた、専用のコール音が耳元に鳴り響く。鞠莉ちゃんの知らない番号……今は間違いなく、これを使う時だもんね。

 

 

『もしもし、ルビィちゃん!?この回線を使ってるってことは、もしかして……』

 

「うん、Guilty Kissが動いたよ。淡島で監禁するつもりらしくって、港の方に行くみたい!先回りしておくね」

 

この休みの間に動くメンバーがいるんじゃないかって、張っておいて正解だったね。この電話の先では、千歌ちゃんと曜ちゃんが待機してくれている。

 

 

『……当然だけど、彼に電話が繋がらないね。でもまだ終わりじゃない。ルビィちゃんはそのまま追いかけてて!私は、例の場所をおさえに行くから!』

 

『私はパパに連絡する!今からなら、港に手を回せるはず……連絡は相変わらずこっちでお願い!』

 

「わかりました!」

 

 

彼を、奪うつもりなんだ。Guilty Kissの3人は。

 

そんなことさせないよ……私たちがCYaRon!が、絶対に!

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

スタンガンをあてられてから、多分1時間くらいが経った。真っ暗なうえに時計がないから、あくまでも勘でしかないけど……。

 

俺は気絶同然の状態で、しばらく車で揺られてから、今度は箱の中に詰められている。きっと、さっき話してた小原家のホテルにある、地下室に連れていくつもりなんだ。そこで俺は『愛される』予定らしい。

 

つまり、今は荷物に隠されて船の中に運び込まれる寸前……と、いうところなんだと思う。まあ、これも勘でしかないんだけど。

 

だいたい、真相を知ったところで出る手段はない。一応、無理して大声をだしてみたり、コンコンと中から叩いてみたけど、辺りは静まり返っていて、何の反応も返ってこなかった。……当然か。

 

 

「さすがに空気は入ってくるけど、このくらいでバレる場所に俺を置くはずないよな……」

 

 

鞠莉と、善子と梨子。つまりGuilty Kissの3人は、今日のことは計画だったと話していた。とはいえ、それは他のグループの動き(?)に押されての、『急な実行』だったとも語ってたはず。

 

だから、どこかに隙があるかと思ってたけど、そう上手くいくはずはないか。この分じゃ、運ぶ人も船も、みんな小原家の息がかかった人たちに違いない。

 

どうしたらいいのか、と悩んでいた俺のところに、3人分の足音と声が聞こえてくる。息をひそめて、耳を澄ませる……間違いない、Guilty Kissの3人だ。

 

 

「クッ……こんなところで足止めされるなんて。マリー、情報が漏れてたんじゃないの!?」

 

「そんなことはないはずよ。そりゃ、時間がもっとあれば完璧にできたけど……どこから通報があったかも、その内容すらもまだ確かめきれてないの。家の名前を出しても、最近の警察は口が堅いからね」

 

「鞠莉ちゃんがそういうのなら、そうなんでしょう。歯痒いけど、もう少し待たないといけなさそうね。今は彼のコンテナを調べさせないようにしながら、情報を集めましょう」

 

 

……多分、俺の入ったコンテナか何かの様子を確かめがてら、会議に来ているのだろう。俺が声を出しても人が来なかったってことは、ここは秘密の会議にもうってつけの場所ということのはずだし。

 

 

だけど、今の話の内容はいったい、どういうことなんだろうか?

 

通報とか情報とか聞こえてきたけど、少なくとも……船が出せない状態なのは間違いないらしい。

 

 

「南京錠は……うん、大丈夫ね。空気穴も正常よ。ああ、本当はこんなところじゃなくて、一緒にゆっくりできるところに閉じ込めてあげたいのに……」

 

「もし彼が起きてたら、開けたときに逃げちゃうかもしれないからね。しょうがないわよ。カギは変わらず、この倉庫の入り口横のところに置いておきましょうか」

 

「もっとカギも用意しておきたかったわ……一つはホテルの方にあるけど。こっちのカギは、出向するときに、私たちの中で自由に行動できた人間が持っていくわよ。予想外の事態になってる以上、リスクは分散すべきだわ」

 

 

俺の入ってる小さなコンテナ、当然だけどカギがかかってるのか。

 

そしてそれの隠し場所について、幸運にも聞くことができた。もし万が一、このすぐそばを通りがかかる人がいたら、その人に伝えられるかもしれない!

 

 

……その時に、この3人のうちのだれかがいないとも限らないけど。

 

僅かに抱いた希望だったけど、すぐにしぼんだ。そんなの、意図的に俺を助けようとしている人じゃないとあり得ない。そしてそもそも、俺の現状を知る人があり得ない。これじゃ助かろうなんて、完全に天文学的確率じゃないか。

 

 

ぬか喜びかと項垂れる俺を残して、3人は去っていったようだった。このままだと、嫌でもすぐに再会できてしまうだろうけど。

 

 

「何か方法はないのかな……」

 

 

こういう時、ゲームとかだと上手く脱出できるのに。いいアイテムが落ちてるとか、助けが来てくれるとか。

 

そのどちらも不可能な今の状況で、いったい何ができるって—————

 

 

 

コンコン……

 

「ねえ、そこにいるんでしょ? 今開けてあげるから、ちょっと待っててて」

 

 

 

————いうん、だ……?

 

 

 

「その声、ルビィがそこにいるのか……!?」

 

 

「うゆ、あなたのルビィだよ♡ ……よし、開いたっ!すぐに助けるから、静かにしてて……!」

 

 

 

 

 

 

 

外の空気……そんなに時間は経ってないのに、なんだか久しぶりの気がする。

 

俺はルビィと一緒に倉庫を抜け出して、誰にも見られないようにここを離れようとしていた。最初会った頃は、『隠れるのが下手だなぁ』なんて思うこともあったけど、今の彼女の運動神経はすごい。

 

スクールアイドルで鍛えられて、隠れるのが上手くなるのは変な話ではあるけど……。

 

 

 

「それにしても驚いたよ、どうして俺の居場所が分かったの?」

 

「ルビィね、あなたがあの箱に入れられちゃう時からずっと見てたの。それで倉庫の中に隠れたまま、助けられるチャンスを待ってたんだ。……善子ちゃん達もあなたも、様子が明らかに変だったし」

 

「ああ、そりゃ見てたならわかるよね……」

 

 

気絶寸前の俺と、それを密かに運び込むGuilty Kissの3人。確かにイタズラにしては異常だ。休みでほとんど人がいなかった学校なら、それはより目立っていただろうし。

 

 

「しっ、伏せて。……ほらあそこ、鞠莉ちゃんたちだよ」

 

 

ルビィに言われて物陰に隠れる。そっと顔を出してみると、確かに3人が見えた。特に鞠莉は、警備員や警察の人と話をしてるみたいだ。

 

さっきと同じように、船が出ないことに焦っているのだろう。声が大きくて、俺にも聞こえてくる。……って、警察?

 

 

「この辺りの船が全部ストップってどういう事デースか!?」

 

「ですから、通報があったんですよ。詳しくはまだ捜査中でお話しできないのですが、犯罪の疑いがあるときは調べませんと」

 

 

さっきの『通報』って、このことか……?

 

 

「簡単にではありますが、念のため荷物を検査しているんです。申し訳ありませんが、2〜3時間ほどご協力いただければ……」

 

「捜査中の犯罪に、2〜3時間……ですね? 鞠莉ちゃん、やっぱりもう少し待った方がいいわよ」

 

「くっ、しょうがないわね……行きましょう、リリー、善子」

 

「ヨハネだってば!」

 

 

ヒートアップする鞠莉が、梨子と善子に抑えられて落ち着き始めた。『犯罪』って、話せないのはわかるけど……ひょっとして、俺が誘拐されたとかそんなところだったりするのかな? もしかして、誰かが爆破予告でもしたとか?

 

 

「ルビィ、何か知ってる?」

 

「……後で詳しく話すね。とにかく、今は急いでここから離れないとダメだよ!この分だと鞠莉ちゃん達、一度さっきの倉庫に戻るかもしれないもん」

 

「そ、それもそうか。気づかれるのはどうせ時間の問題だけど、距離を取れば色んなチャンスがあるはず。頼りにしてるよ!」

 

「うんっ! ……ルビィになんでも任せてね♪」

 

 

俺は今回のことで、Guilty Kissのみんなが愛してくれていると知った。俺だってみんなの事は好きだけど、こんなやり方は間違ってるとしか思えない。

 

考えるのは、後。今はルビィと一緒に、ここを離れるのが最優先だ。

 

 

 

 

「そうだよ。その調子で、全部私たちに任せていいからね……♡」

 

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

 

「……それで、とりあえずここへ?」

 

「うん、ここには千歌ちゃんと曜ちゃんもいるよ」

 

 

時刻はすでに夕方。俺の体力は、スタンガンのダメージもあってすっかり限界だった。

 

いくつかバスを乗り継いだり、目立たないように裏道を走ってきた先……そこは何処だろうと思っていたけど。何のことはない、曜の父親の伝手で借りている、あのAqoursの練習場所だ。

 

 

 

「でも、ここだとみんな知ってるんじゃ? すぐ見つかる気もするけど……」

 

「そうなんだけど、鞠莉ちゃんが落ち着いて本気を出したら、どうせ見つかっちゃうし。私達も3人で話し合って、とりあえずここにしようって」

 

「確かに……逆に言えば、あんな大金持ちの鞠莉だって、秘密のうちに俺を誘拐しようとしたんだ。どうせいつか見つかっても、俺が一度企みを知ってしまいさえすれば、今後は躱してもいけるかもしれない」

 

 

鞠莉達Guilty Kissだって、万能じゃないからこそさっきみたいな手を使った。今は休んで、考えるべきタイミングなのかもしれない。今後のみんなとの、付き合い方について。

 

 

これからどんな顔して会えばいいのか。他の6人との関係は大丈夫かなんて、心配になってしまう。連れ去られそうになっておいて、俺が心配するのも変な話かもしれないけど……

 

 

 

……ていうか、千歌と曜? それってつまり……

 

 

「あっ、来たよ千歌ちゃん! ルビィちゃんもお疲れ様っ!」

 

「ホントだー! よかった、まだ無事だよ〜!! 私もう怖くて怖くて……」

 

「えへへ、どう? ずっと2人の力も貸してもらったんだ♪」

 

 

扉を開けた先には、俺の姿を見て心底安心した様子の2人が。これってつまり……Guilty Kissに対抗して、CYaRon!の3人で協力してたってこと、だよな?

 

 

「だいたいはもう、察してると思うけど……ルビィちゃんが『偶然』学校にいてね? 何があったか教えてもらって、それで私と曜ちゃんと協力して、助けようってなったの! この間の、ユニット対抗戦の流れでね。ユニットにはユニットだーって!」

 

「そうそう。コレは内緒なんだけど、港に不審者とか誘拐とか……その辺の話はパパにも協力してもらったの。ほら、船長さんやってるから、一斉に検査しようとか言ってくれて」

 

「あ、ああ……確かに、嘘は言ってないな。実際に俺は誘拐されて、倉庫の一角でまさに箱詰めされてたんだし」

 

 

みんなはもちろんの事、曜のお父さんには本当に感謝しないと。まさか、船の遅れを気にせずそこまでしてくれるなんて。本当に助かった……。一番はルビィなんだけど。今度飴ちゃん奢ってあげよう。

 

 

「まぁ、こうして貴方が助け出された今となっては、もううやむやのまま終わって大丈夫なんだけどね。貴方も流石に、メンバーを警察に突き出す気なんてないでしょ?」

 

「そ、それは勿論だ!」

 

「なら今回のことは多分、不審者とか見間違いだった〜で終わりだよ。むしろ鞠莉ちゃん達が貴方の痕跡を消そうと偽装工作に追われるだろうし、もっと時間が稼げると思うよ!」

 

 

す、すごい。3人とも俺より頭良い……。くそう、曜はまだしも、千歌なんて俺より成績悪いくせになんかなんかずるいぞ。でも、今日のところは素直に感謝だ感謝。

 

 

 

……とか考えてると、足元がふらついたのがわかった。

 

もう限界か……ちょっと休まないと。

 

 

 

「ああごめん! お話の前に、疲れてるんだよね。ちょっと奥の控え室で休んでて。携帯とかは……取り上げられたままかな? テレビも何もないけど」

 

「いいよいいよ、確かあの控え室はベッドがあったはずだよな。まだ身体がちょっとシビれてるし、逃げてる時も気を張ってたし、休ませてもらうよ……」

 

「私たちが見張っておくから、安心して休んでていーよ!気にしない気にしない♪」

 

 

曜も千歌も、ルビィも……なんかすごい色々考えて動いてくれてるのに、なんか申し訳ないな。元気いっぱい。いつでも行動的。これが正統派アイドルのCYaRon!の強さなのかな。

 

こういうユニットの団結はまるで、今日の昼間にあったことと同じくらいみごとな連携っぷりで……

 

 

 

ああ、ダメだ。ベッドに寝転がっても、また考え込んじまう。状況が状況ではあるけど、嫌なことは忘れて……。

 

 

 

 

 

…………待ってくれよ。ユニットの団結?

 

 

確かあの時、誰かが気になることを言ってなかったか? 俺もコンテナの中で、サラッと思い出してたような……

 

 

『わかってないみたいね。Aqoursの他のメンバーもアナタを狙ってる。それも色々計画を練ってね……今日みんなが休んでるのもそのせいなの。もう時間がないのよ……!!』

 

 

 

—————そうだ、鞠莉が言ってた!

 

今日の突然の練習のお休みは、俺の知らないところで決まってて、知ったのは後からだった。

 

だから優雅に一人で、雑誌を読んだりお茶をしてたけど……今思えば、色々と不自然じゃなかったか?

 

『計画』だなんて、大袈裟だって思ってたけど……実際に行動に移された以上、もう現実として捉えないといけない。そうなると、あの時の言葉の信憑性も変わってくる。

 

 

 

もし本当なら、Guilty Kissだけじゃなくて、CYaRon!とAZALEAだってもしかしたら……。

 

 

 

そもそも、ルビィはどうして学校に来てた? それはいいとしても、なんでGuilty Kissの3人から隠れていて、俺が連れ去られるところを見てたんだ?

 

そこまでは偶然で片付いたとしても、同じようにユニットで連携して、不測の事態にここまで柔軟に動けるなんて、何かが———……

 

コンコンッ

 

 

「—————ねえ、起きてる? 入るよ」

 

 

さっきは俺を救い出してくれた、ノックの音とルビィの声。さっきまでなら安心しかなかったはずの声。だけど、今の俺にはそれも恐ろしいものに感じられた。どうしても頭の中に嫌な『仮説』が浮かんで、消せなかったからだ。

 

 

『CYaRon!もGuilty Kissと同じ』

 

 

……そんな、恐ろしい仮説が。

 

もしかして俺は檻から抜け出して、また新しい檻の中に入っただけなんじゃないか? 肉食獣から逃げて、また別の肉食獣の胃の中に収まりそうになっているだけなんじゃ……!?

 

 

 

「あれ、もう寝ちゃってたんだ。でも疲れてるだろうし、しょうがないよね……」

 

 

俺は、必死に狸寝入りをして誤魔化していた。

 

千歌達はさっき、『時間を稼げる』と言ってた。でも、時間を稼いで、落ち着いて……そんなことばかりで、『いったいこれから何をしようとしているのか』、何一つ話してない。

 

想像するのも恐ろしかった。あり得ないと信じたかったから、一時的にでも目を逸らそうとしたんだ。どうせ逃げられないなら、せめていい方向に賭けたいって。

 

 

 

 

—————……それも『無駄だった』って、すぐに思い知らされる。

 

 

 

 

「ちゅっ……♡」

 

 

 

ルビィが、俺と唇を重ねてきていたから。

 

 

 

「〜〜〜ッ!?」

 

 

 

思わず起き上がって、ベッドの上のわずかなスペースを後ずさる。

 

ルビィは悪戯が成功したというような、小悪魔みたいな笑みを浮かべて、さっきまでくっついていた綺麗な唇を指でなぞっている。

 

その仕草に見惚れてしまう俺も俺でどうかと思うけど、ファーストキスだったんだからしょうがない。ましてやそれが、ルビィみたいな可愛い子に……ああダメだ。疲れと衝撃で、考えがまとまらない。

 

思わず自分の唇を触ってしまうと、今のことが鮮明に思いだされてしまう。

 

 

「ふふ、やっぱり起きてたね? 私達……初めてキスしちゃったよ♡」

 

「そ、そうじゃないだろ!? もしかして、みんなも鞠莉達と同じように……!?」

 

「……ルビィとキスしたのに、他の女の子の名前出しちゃうんだ。それも、貴方を傷つけようとした鞠莉ちゃんの。そういうの、よくないと思うなぁ……」

 

 

ルビィも初めてだったんだ、なんて心のどこかで安心してるバカな自分を怒鳴りつけてやりたい。でも、うまく反論することすらできなかった。

 

俺はそれほどまでに、起きた出来事と、いろんな感情と……これから起きるであろうことに、呆然としてしまってたからだ。ルビィの初めて見る激しい怒りの瞳に、気圧されていたというのが一番だったけど。

 

 

でも、問題はこれからだ。この事態はつまり、俺の恐れていたことが現実になった、っていうことで……

 

 

 

「あ、ルビィちゃん見ないと思ったら先に始めてる! ずるいよー!?」

 

「ごめんね? 幼馴染のみんなと違って、ルビィはイチャイチャできる時間も少なかったから、つい……」

 

「まあまあ千歌ちゃん、私達も混ざっちゃえば関係ないって。……さぁ、キミももうだいたいわかってると思うけど、『本番』はこれから、だよ♡」

 

 

ラフな格好に着替えた千歌と曜も、続いて入ってきた。同時に、ドアノブのカギがかけられる。

 

この部屋に窓はないし、音楽とダンスの練習に使っていたくらいだから、遮音は完全だ。携帯はお昼に奪われたまま。つまり、今度こそ逃げ場はない。加えて、疲れきった身体……。

 

 

 

ただ、動けたとしても逃げなかったと思う。圧倒的な絶望感で、もう抵抗する気力は残ってなかったから……。

 

 

「ごめんね、疲れてるのに。今のうちに私たちの良さを知っておいてもらおうって。貴女を一番ハッピーエンドにしてあげられるのは、Guilty KissでもAZALEAでもない、『私達』なんだって……♡」

 

「助けてあげた『お礼』ぶんくらいは、貰わないとね~? 大丈夫、私たちはGuilty Kissみたいに、痛くなんてしないから♪」

 

 

そんなことは言われるけど、左右から千歌と曜に掴まれて拘束される俺は、十分さっきのGuilty Kissと同じ状況だった。俺を見る情欲に濁った目も、これからされるであろうことも、何もかも同じ……。

 

 

強いて違う点があるなら、俺の状況はより追い詰められたということか。

 

 

 

「ルビィたちが、しっかりあなたの身体に元気を分けてあげるからね♡ 他のユニットに愛されるなんて、考えられないくらいに……」

 

 

 

俺はそれに『愛』で応えさせられてしまうんだろう。

 

つい数時間前は鈍感な自分を呪ったが、気がついても結局何も変わらないのだと思い知らされた俺は、3人を存分に感じさせられながら、またも意識を手放した……。

 

 

 

 

 




We are CYaRon! I love CYaRon!

タイトルはCHANGELESSと近未来ハッピーエンドからのオマージュ。ヤンデレの手法は違えど、求むるは同じ。さて、次に登場するユニットは勿論……?


(※このSSの淡島への船便の運航にかかる諸状況は、現実のそれとは一切関係のないフィクションです。念のため。)

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