ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

23 / 198
AZALEA編その2です。ところで、今回の短編の下敷きにしたのは、ユニット対抗戦です。

その優勝者である彼女たちがトリということは、つまり……?


【2020.11.10 大幅に加筆してAZELEA編は①と②に分割しました】




トリコになる運命【AZALEA ②】

『ご飯は炊いてあるから、すぐにおかゆでも何でもつくってあげるね?』

 

 

そんな当たり前の心配が、俺の心を救ってくれてから少し経った。

 

 

 

「……落ち着いた? 大変だったみたいだね」

 

「ああ、なんとか……。このおかゆ、美味しいや。花丸って料理上手だったんだな」

 

「嬉しいけど、おかゆで料理上手って言われても困るよ? きっと炊飯器がいいだけずら」

 

 

さっき聞いたが、今は夜11時頃らしい。ダイヤと果南は、向こうの部屋で待って貰っている。

 

そして俺はソファで休みながら、食事をとる。それを作ってくれた花丸は、その向かい側で椅子に座ってニコニコとその様子を眺めていた。

 

ただ、状況が状況だから、少しその表情には陰があるようにみえる。それはダイヤと果南も同じだ。

 

気にしなくていいのに……って言ってあげたいけど、気にするよなそりゃ。とりあえず腹ごしらえも終わったし、経緯を聞いてみよう。

 

 

「えーっと……記憶が正しければ、確かいつもの練習場所で、CYaRon!の3人に捕まってたはずなんだけど」

 

 

そう、Guilty Kissにスタンガンを喰らってフラついてた俺は、助けを装ったCYaRon!に捕まっていた。普通に考えて、あそこから自力で逃げられたわけがない。どんな方法を使ったんだろう?

 

 

「やっぱり、気になるよね。結論から言っちゃうと、誰にも何もされてないよ? そ、その……ルビィちゃんたちが『いけないこと』をする直前に、オラ達が来たの」

 

「い、いけないことって……。そのすぐ後に気を失ったから、気がつかなかったんだな。てっきり完全にヤられたかと思ってた」

 

「うん、しょうがないよ。オラたちが運ぶとき、見事に気絶してたね。果南ちゃんが力持ちで助かったずら~……」

 

 

と、いうことは……さっき見た夢はただの悪夢か。

 

そうだとすると、なんだか急に恥ずかしい気持ちが出てくる。悪夢って言うにはちょっと、思春期の男子の妄想っぽいし……とにかく、夢や妄想で済んでよかった。

 

 

Guilty Kissもそうだけど、実際に行為に及んでたら色々大変だったろう。そうだ、あんなことが現実に起きた世界なんてあるわけない。まさに今の俺がこうしていられるんだから。

 

 

「もともと、ダイヤさんがルビィちゃんの異変に気付いててね? 追いかけたり様子を見てたら、Guilty KissとCYaRon!が貴方を襲おうとしてるってわかったの。だから助けなきゃ!って」

 

「ありがとう、とにかくありがとう。本当に間一髪だったよ……ちなみに、ここは?」

 

「それなら、黒澤家が権利を持ってた、アパートの一室らしいずら。ちょっとした仕事とかの時に使ってたんだって。……だから、ここまで貴方を運ぶのに車を出してくれた、黒澤家の偉い人だけは今回の件を知ってるはずだよ」

 

 

ああ……ついさっき、医者とか俺の親に『電話するかどうか』とか話してたもんな。

 

あれ? だとすると……

 

 

「それじゃ、ルビィは今……?」

 

「……今頃きっと、お母さんに酷く叱られてるずら。もしかしたら、千歌ちゃんと曜ちゃんのおうちにも伝わってるかも」

 

「そうだったのか……せめてそれ以上、噂や話が広まらないようにしたいな」

 

 

ひとつ胸をなでおろすと同時に、もうひとつの悩みの種が生まれてしまったことになる。おばさんとは俺も何度か会ってるけど、あの黒澤家を守り抜くだけあって厳格な人だ。

 

どこまで知ったのかはわからないけど、ルビィちゃんには相当怒っているだろう。

 

……だけど同時に、娘たちがスクールアイドルをするのにすごく好意的な人でもある。俺が快復して、真剣にダイヤと一緒に謝りこめば、許してもらえるかもしれない。

 

 

あと、忘れちゃいけないのがGuilty Kissだ。

 

 

「一応、誰にも見られないように車に乗せられたから、大丈夫だと思うけど……。あ、Guilty Kissの方も、『お母さん』と揉めてるらしいよ。ほら、あの鞠莉ちゃんの……」

 

「え? それって……あの鞠莉のお母さん!? あの人が聞きつけたって言うのか?」

 

「う、うん。たぶん、小原家の力を使って色々してたのが、知られちゃったんじゃないかな? 『港の騒ぎ』は何でもなかったって収まったみたいだけど、あれも鞠莉ちゃんだったのかもね」

 

「あっ……港、か」

 

 

本当は港の1件はCYaRon!の仕業らしいけど、それを伝えるのは後でもいいだろう。

 

話しだすとややこしくなるだけだし、何より俺は今、無事にここにいるんだから。

 

 

「ひとまず、鞠莉が家の力を使って俺をもう1度捕まえに来る……って危機は去ったことになるのか」

 

ただ、焦っていたとはいえ、あの鞠莉が何もかも証拠を残しているとは思わない。多分、色々準備してたのが気付かれたってだけで、実際に俺に何をした……とかまでは知られてないはずだ

 

だけどあの抜け目のない母親のことだ。トラブってる時点で、しばらくの間は鞠莉は自由には動けない……とみて間違いないな。

 

 

「そうだね。だから少なくとも、今晩だけは大丈夫だと思うずら。オラ達AZALEAは、みんな泊まってあげられるようにしてあるから、何か必要なものがあったら何でも言ってね?」

 

「いいのか? そんなにしてもらわなくても……」

 

「あの6人の行動に早く気がついて止めてあげられなかったのは、オラ達の責任でもあると思ってるずら。だから、このくらいはさせてほしくって……!」

 

 

真剣に心配してくれていることが、咄嗟に彼女が握った手から伝わってくる。目を合わせれば、うっすらと涙も。ダイヤと果南だって、本当に申し訳なさそうにしている。

 

 

……みんなに、悪いことを言ってしまったみたいだ。彼女たちの心配を無下にしようとしてしまっていた。彼女たちの責任感と思いやりまで、無駄にしようとしてしまった。

 

俺はてっきり、AZALEAのみんなも襲い掛かってくるんじゃないかと、あらぬ疑いを持ってしまっていたんだ。Guilty KissやCYaRon!とは違う形で、俺のことを凄く大切に思ってくれているAZALEAに対して。

 

 

 

「……ありがとう。わかった、花丸がそこまでいうならお世話になるよ」

 

 

『ごめん』とは言わない。今はその違いも、温かさも、とにかくありがたい。せめて今晩は、この言葉に……3人の助けに甘えさせてもらおう。

 

 

 

 

「……うん、気にしないでいいよ! 後はオラ達AZALEAに、おまかせずら~♡」

 

 

 

昼も、夕方も、目を閉じるたびに大変な思いをした。だけど、今だけは。きっとAZALEAの3人がいてくれるからもう大丈夫。

 

お腹が膨れてまたも睡魔に襲われた俺は、そう思いながらやっと安心して、目を閉じられた。

 

色々とありすぎた1日だったけど、次に目が覚めた時に平和であることを願いながら。

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

 

「……もう大丈夫。気持ちよさそうに、寝息を立ててたよ♪」

 

 

ふふふ……我ながら、完璧な演技だったね。もしかしてオラ、女優の才能があったりするのかな?

 

そっと頭を持ち上げて、ソファの上で膝枕の姿勢にしてあげる。彼の寝顔が、こんなにも幸せそうに、こんなに近くに……!!

 

嬉しくて嬉しくて、笑顔が抑えきれないずら♪

 

 

「少々手間取りましたが、この結果で水に流すとしましょう。これで無事、彼は私達AZALEAのモノということなのですからね……?」

 

「まったく、あの6人もバカだよね。ずっと私達の掌の上だってことも気がつかずに、必死に彼に嫌われながらさ……」

 

 

ダイヤちゃんと果南ちゃんも、とても他人には見せられないくらい笑っちゃってる。

 

でも無理もないよね?

 

こんなにも上手くいくとは、流石に思ってなかったんだもん。

 

 

 

そう……何もかも予想以上に上手くいっちゃった。

 

 

「ルビィの動向も、彼の動向も、全部発信機と盗聴器で確認できていましたのに。みなさんの計画もタイミングも居場所も、何もかも筒抜け……あっけないものでしたね」

 

「さっすがダイヤだね!黒澤家に連絡するタイミングも、鞠莉の母親にリークするタイミングもバッチリだったよ?」

 

「ダイヤちゃんだけじゃなく、果南ちゃんも色々動いてもらってありがとうずら。これで、後はオラ達が彼を癒してあげるだけ……♡」

 

 

AZALEAは初めから、全部ぜーんぶわかったうえで、最高のタイミングで出てこられた。他のユニットが彼を傷つけられたのは許せないし残念だけど……オラ達に依存してもらうには、結果オーライだったね?

 

連れてきたこの場所は、当然鍵もかかってない。閉じ込める必要なんてない、包み込んであげるための、普通の場所。あとは、最高の『仲間』を演じるだけ……。

 

さっき彼が起きてきてた時だって、本当はとっくに気がついてた。オラ達が愛する人の目が覚めるのに、気がつかないわけないずら♡

 

でも彼は疑心暗鬼になってたはず。『信じていたはずの』仲間に裏切られてたんだから。可哀想だよね……。

 

だからわざと安心感を与えるために、彼のいないところで会話して、聞かせてあげた。……効果は覿面、だったね♡

 

 

「ふふっ……すぐ傍に彼が無防備に寝ているって思うと、ときめいちゃうね。他のメンバーが襲おうとした気持ちもわかるけど、我慢しなきゃ。我慢……!」

 

「果南さん……それは私も同じ気持ちですが、抑えましょう。大丈夫ですわ、後は放っておいても、彼は残された私たちに近づいてくるしかない……。この後、Aqoursの活動再開のために尽力すれば、ますます確実でしょう。これが私の導き出した『恋愛論』、というところでしょうか?」

 

「そうなった時、彼は私たちのトリコになっちゃう……ってわけだね? ううん、もうそういうルートに入ってるって意味では、もう『なっちゃってる』のかもね」

 

 

あんまり話して彼を起こしてもいけないし、そろそろ朝ごはんの支度と、明日からの計画を練るずら。

 

まだまだ油断は禁物。彼にオラ達しかいないってわかってもらうには、たくさんやらなきゃいけいことがあるからね……。

 

 

「では、明日鞠莉さんのお母様に再度連絡するとして、黒澤家の方は引き続き私が。書類上は…………こんなところでしょうか?」

 

「彼を守るのは手はず通り私で、学校が始まってからAqoursは…………うんうん、これならいけそう!やっぱり私達AZALEAが最強、だねぇ?」

 

「当然ですわ。この前のライブツアーも優勝者は私たち……この愛が、他のユニットに負けるはずなどないのです♡」

 

 

 

オラは本当に、最高の仲間を持ったずら♪

 

 

 

これからオラ達AZALEAと、『恋』の喜びを……ううん、『愛』を咲かせていこうね♡

 

 

 

 

 

 

 




……と、いうわけでユニット対抗戦の短編はこれにて完結です。

誰がメインでもよかったのですが、ジャガピーさんのリクエストにより、花丸ちゃんにしました。空中恋愛論がほんのりモチーフ。

もっといろいろユニットの色を出したかったのですが、構成上上手くいかなかったのは反省。他の話に流用することにします。

感想、ご評価等お待ちしております~

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。