ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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仕事等で地獄を見ているうえ、世の中も停滞してインスピレーションが来づらくて困ります。

『その後』シリーズ、前回がかなり好評だったので、思わず2つ目を投稿しました。今回は文字数が増えたので2人分です。つまり、ダイかなまりと、花丸ちゃんの2本立て……と思いきや。花丸ちゃんのはルビィちゃんとの合同です。





その後の『日常』【ダイかなまり・ルビまる】

【ダイかなまり】47日後

 

 

 

「うん。そうね……それじゃ、パパは抑え込めそうなのね。十分よ、ありがとう」

 

 

もう説明する必要はないと思うけど……私は、小原鞠莉。世界に大きな影響力を持つ、小原家の一人娘。スクールアイドルAqoursの一員でもあるわ。

 

そんな私だけど、もうすぐ苗字が変わっちゃうかもしれないわね。あと、『一人娘』じゃなくて『夫婦』になっちゃうのかしら?

 

 

「ママの方はやっぱり手強そう? ……ああ、あの結婚相手とやらは諦めてくれたのね。なら少しは楽になりs……今度こっちに来るですって!?」

 

しばらく前に、私は幼馴染の2人と一緒に、愛する人と文字通り一つになった。表向きは、酒の勢いで彼の方から襲ってもらったことになってるけど、実際は真逆。私たちが『そう見えるように』仕組んだこと。

 

だって、耐えられなかったんだもん。誰だってそうでしょ? 愛する人が奪われそうなら、自分から先に奪いに行く。それが愛(LOVE)……よね?

 

ただ、愛に障害はつきものよね〜……今もこうして、邪魔してくるパパとママを説得しないといけない。まぁ説得っていうよりは、裏工作って感じだけど。

 

彼とは2年間縁が切れちゃってたから、それがちょっと響いたわね。その2年を準備に充ててれば、もう少し早くあの人たちを黙らせられたハズなのに。悔やんでも仕方ないけど、やっぱり惜しい。

 

 

「……ふう。ダイヤ、果南。二週間後ママが来るんですって。私が送り込んでおいた使用人が伝えてくれたわ。イタリアにでも高飛びして逃げちゃいましょうか……?」

 

電話を終えて振り向くと、親愛なる私の友人2人が心配そうに私を見ていた。

 

「そっちは大変そうだね? まあ、あの鞠莉のお母さんじゃ仕方ないか。ここを離れておくにしても、残るにしても、何か手を打たないとね」

 

「疑われているのですね、勘の鋭い人のようですから……。良家故に、こういった不祥事は表に出せず、そのまま結婚に縺れ込ませる作戦でしたのに……」

 

「そんなトコね。ごめんね、果南やダイヤの家みたいにはいかなくって……」

 

 

私のママは、私に勝手に決めた結婚相手を宛がおうとしてた。でもそれは私の自由を奪いたい思惑の方が強かったみたい。相手はちゃんとした人なら、こだわりはなかったみたいで……。

 

……そう、それは全くの誤算だったわ。

 

2年間絶縁状態だったとはいえ、私が好意を持ってた彼の事は、ずっと前からママは調べてあった。しかも、意外と彼のことを買ってたみたい。将来、本気で望むのなら、私と『付き合わせてあげてもいい』ってくらいには。

 

 

……だからこそ、すぐに気がつかれたの。彼が私達3人相手に、たかが酒の勢い程度で、『こんなこと』をするような男の子じゃないって。

 

今も疑われ続けてるし、私がスパイしてるのと同じように、誰かを送り込んで身辺を探りにも来てるはず。油断できないわ。

 

 

「何を言うのです……黒澤家だって、それなりに苦労したのですわよ? なにせ跡取りの第一候補たる私が『キズモノにされた』のですから。まあ、万が一にも彼に危害を及ぼそうとした瞬間、色々と暴露されてしまうでしょうけどね」

 

「歴史のある家って、そーいう弱みもたくさんあるんだ。私はただの一般人だから、まだ『彼氏ができた』ってだけだね。子供の頃よく遊んでた彼だって言ったら、すぐ納得してもらったし」

 

 

この通り、ダイヤと果南の方は済んでる。なのに、私だけまだなだけじゃなく、色々嗅ぎ回られてる。……ちょっと申し訳ないわよね。

 

 

「もう、気にしないでいいって言っているのに。鞠莉の船の話がなかったら、そもそもこんなにうまくいってなかったんだからさ。彼も最近は諦めかけて私達のモノになってくれそうだし」

 

「その通りですわ。あのお母様がどれだけ抵抗したところで、所詮は時間の問題……。あまり悩みすぎないで、彼の声でも聴いて、気分転換しましょう?」

 

「2人とも……」

 

 

……暗くなってたのがバカみたい。そうよね、むしろその方が疑われたり隙を作っちゃうわ。私たちはこれまで通り、手を打ち続ければいい。

 

うーん、悩んでる時に助けてもらえる……持つべきものはやっぱり友達ね! ……あれ?もう友達じゃなくて同じ『妻』になるのかしら?

 

まあこれはどっちでもいいわね。いまさら正室とか側室とか、言いだすような間柄じゃないし。4人はずっと一緒だもの。

 

そう、そして4人がもっともーっと一緒にいるためにこっそり作っておいた、盗聴機能付きの彼のクローン携帯♡ これがあれば、愛する人の事をいつでもどこでも感じられるわ♪ 今みたいにクヨクヨした時には……

 

 

………………本人の同意? 私たちを襲った男の子なのよ?これは正当な監視なの、彼がまた暴走してしまわないため。

 

他の女の子もその毒牙にかかったら困るものね?私たちが。だからこうして守ってあげてるの。他の女から。

 

……あれ、なんだか自分で言ってて主語とか述語とかおかしい気がするわね? まいっか、日本語が難しいだけでしょ。だいたい彼の声を聴けば、そんなイライラ気にならなくなるはず。

 

ダイヤと果南も、同じものを取り出して、耳に当てて————

 

 

 

 

 

————……待って。

 

 

位置情報が、十千万?

 

 

 

 

『そんな……それじゃあ、本当に襲われてたのはあの3人じゃなくて、あなたじゃん!ずっと様子が変だって思ってたけど、まさかそんなことになってたなんて……』

 

『そうなんだけど、もう完全に外堀を埋められてる。向こうの親御さんまで抱き込んでるみたいで、僕が今更何を言ってもダメなんだ。母さんにだって、息子が性犯罪者だなんてことになったら……』

 

『ううん、せめて親御さんたちにだけでも、本当のことを言おう!Aqoursの活動が終わってからでもいい、あなたが本当に好きな人と結婚できないなんて、酷すぎる!そうでなくても、無実の罪を着せられてなんて……!!』

 

『それだと、一年も二年も経ってからになるけど……本当に、大丈夫なのかな?』

 

『大丈夫だよ、必ずうまくいく!千歌に任せて? きっと何とかしてみせるから。私があなたを———……』

 

 

 

それを聞いた瞬間、私は携帯を耳に当てたまま、ダイヤはゆっくりと置いて、果南は握りつぶして……

 

 

 

 

……すぐに、十千万に向かう準備をし始めた。

 

 

「そう。そうなんだ。襲ってもらおうなんてやっぱり甘かったんだね。受け身のままじゃダメ……力づくが一番かぁ」

 

「ええ……自分たちの親の方に目を向けすぎて、彼の事をおろそかにしていた私たちにも責任はありますわ。船の上でのことは、恩返し。これからすることは、謝罪です。不安にさせて、千歌さんに相談させてしまったことへの……」

 

「そうね……こんなチャチなもので『監視』なんて言うのがそもそもの間違いだったのよ」

 

 

千歌……貴女のおかげで、私たちはまた一歩前に進めそうよ。

 

でも、その道の上に貴女は要らないの。これはAqoursとは違う。彼1人と、私たち3人だけでいいのよ……。

 

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

【国木田花丸】【黒澤ルビィ】88日後

 

 

 

みんな、覚えてる? 国木田花丸ずら!

 

オラはあれから、スクールアイドルも勉強もずっと上り調子。

 

大事な彼とも暇を見つけては幸せなデートしたりして……はぁ、本当に最高の日々ずら~♡

 

 

 

……なのに。

 

 

まだオラ達のことを邪魔しようって言うの?

 

諦めが悪いんだね、善子ちゃんってば。

 

 

「ずら丸……その、最近どうなの? 『あの人』とは……」

 

 

ほら。今日もこうして、オラ達の様子を探ろうとするでしょ。

 

よりにもよってオラ本人に聞くのが、善子ちゃんらしいといえば善子ちゃんらしいけど……。本当に気になるだけなのか、ちょっとでもチャンスが欲しいのか。どっちにしても、涙ぐましい抵抗だね?

 

「……そんなこと、オラに聞いてどうするずら? 勿論順調だよ。『浦の星がなくなった後も、スクールアイドルをずっと応援してる』って言ってくれてるし」

 

 

そう……結局、浦の星女学院はなくなっちゃったけど、オラ達はスクールアイドルを完全にやめちゃったわけじゃない。新しい学校で、新しいAqoursを始めるの!

 

……そのためには、善子ちゃんもさっさと彼の事を諦めてくれればいいんだけど、ね。こんな風にいちいち絡まれてたんじゃ、集中しきれないずら。せっかく、新しい学校でも友達出来そうなんだし……。

 

Aqoursの人気がある今なら、男の子から引く手数多でしょ?善子ちゃんの入る隙間なんて、もうないんだよ。

 

オラ達の物語は、もう『ハッピーエンド』を迎えた『その後』なんだから。逆転するようなドラマなんて、絶対起こらないの。一応、彼の事以外では仲間だからって、強く言えないオラもオラなんだけど。

 

 

「そ、そうなの。ほら、私にとっても幼馴染だから。あの人は……心配になっても仕方ないでしょ?」

 

「……そうだね、嘘ついてまで、横から盗ろうとしたくらいだもん。気になるよね」

 

「う……ご、ごめんなさい……」

 

 

まったく、しゅんとしちゃうくらいなら、最初から言わなきゃいいのに。

 

せっかく彼以外のところでは仲直りして、気兼ねなく一緒にライブだってできるようになったのに。わざわざ自分で蒸し返すんだから……これじゃ、オラの方が悪者ずら。

 

なんだか居心地が悪くなって、手元の本に視線を戻す。そうしていると、別件で部屋を出ていたルビィちゃんが戻ってきた。手にはオラ達の練習用のノートが握られている。これを買いに行ってくれたんだよね。

 

 

「あれ? 2人ともこんなところにいたんだ。新しいノート、買ってきたよ!」

 

「あっ……わ、私もう行くわね! リリーたちの様子を見てくるから!」

 

「善子ちゃん? ……行っちゃった」

 

 

さっきまで聞きづらい話をしていたのが響いたのか、善子ちゃんはすぐに部屋を出ていった。

 

自然と、この部屋にはオラとルビィちゃんだけが残される。そうするとオラ達の目線や口調も、いつの間にか普段他の人には見せない……厳しいものに変わってた。いわゆる『裏の顔』って言った方が、わかりやすいかな?

 

 

 

「……今日も善子ちゃん、様子を探りに来たの?」

 

「そうずら。かといって、何かしてくるわけじゃないし……なんだか不自然だよね」

 

 

元はといえば、オラが善子ちゃんに勝てたのは、ルビィちゃんのおかげ。

 

オラとあの人はお互い好きあってる上に、幼稚園の頃なんて結婚の約束までしてた。そして、スクールアイドルになると、奇跡的な再会を果たしたオラ達だったけど……そこに邪魔が入っちゃった、

 

善子ちゃんもまた、同じ幼稚園にいたころから彼のことが好きだった。それをいいことに、オラ達の約束を『横取り』して、彼を盗ろうしたんだ。

 

 

「だね、ルビィの方でもちょっと探ってみようかな。デート中にストーカーしてるってことは、流石にないだろうけど……」

 

「また前みたいにやるの?」

 

「ううん、ちょっと色々考えてみる。以前どうやったかバレてないとは限らないし……」

 

 

それを阻止してくれたのが、親友のルビィちゃんだった。

 

オラが善子ちゃんを問い詰めた時のタイミングを狙って、上手く録音してくれた。あとは第3者を装って、あの人にこっそりと『真実』を伝えに行くだけ。『途中から言い争いを聞いちゃったんだけど』という体で……。

 

あの時の『方法』について、善子ちゃんが気付いてるかはわからない。でも、結婚の約束や昔のことについて知ってるのは、基本的にオラと善子ちゃんだけだから……オラが何か関わってるのは感づいてるかもしれない。

 

だからこそ、未だにこっちの様子を窺ってるのかとも思うんだけど……何を考えたって、想像の域を出ないよね。

 

 

「……うん、そうだね。ちょっと調べてみなきゃダメだと思う。念には念を入れた方がいいよ」

 

「ごめんねルビィちゃん、オラにできることがあったら、またなんでも言ってね?」

 

「お互い様、だね。いつも助けてもらってるのは私の方だよ♪」

 

 

ルビィちゃんはずっと協力してくれてる。代わりに、オラも最近はルビィちゃんの『やること』にこっそり協力してる。

 

こう言うのもなんだけど……ルビィちゃん、今みたいな2人きりですらなかなか口に出せないくらい、好きな男の子相手に相当怖いことしてるずら。あれじゃあ、絶対に逃げられないよね……彼氏さん。

 

『好きな男の人だから、穢したい』とは少し違うんだろうけど、好きな男の人をつなぎ留めておくために、黒澤家の権力も、お姉さんの躰も、使えるものはなんだって利用して『与える』。それがルビィちゃんの愛し方。

 

でも、そこまでしたくなる気持ちはわかる。怖いんだよね、愛する人の心が離れていってしまうのが、自分のものにならなかったらなんて、想像すらしたくない。

 

どんな手を使っても、ライバルを蹴落として愛する人を自分のものにしたい……それが恋なんだもんね!

 

 

 

 

 

…………待って。

 

それなら善子ちゃんは本当に、一時的にでも身を引いたのかな?

 

善子ちゃんもまた『恋』なのだとしたら……本当は今でもチャンスを狙ってるんじゃ?

 

ここのところの動きだって、もしかして惚けたフリで、何か思惑があるんじゃ……。

 

 

 

「まさか……!」

 

「花丸ちゃん!?」

 

 

何か猛烈に嫌な予感のしたオラは、思わず周りにあったモノをひっくり返し、コンセントの周りを調べた。

 

杞憂であって欲しい、思い過ごしならいい!だけど……

 

 

 

 

 

……現実は、非情だった。

 

出てきたのは、盗聴器。すぐに踏みつぶして、鞄も何もかもおいて2人でトイレに移動したけど、多分もう遅いよね……。

 

完全に、やられたずら……!!

 

 

「花丸ちゃん、これってまさか……私達がやったのと同じ手で、善子ちゃんは反撃してきたってこと?」

 

「そういうことみたい、ずら……。オラたち、『ルビィちゃんのしてること』について話しちゃったから、多分聞かれてたはずずら」

 

「……録音は、されてると思った方がいいよね。ごめんなさい、ルビィが油断してたから……!」

 

 

油断してたとか、侮ってたとか……後悔してるヒマすらない。オラだけじゃなく、ルビィちゃんのやってることも明るみに出されたら……。Aqours自体のスキャンダルにもなりかねないから、すぐにどうこうってわけじゃないだろうけど。

 

 

これを知った善子ちゃんが……こういうことを知ろうとした善子ちゃんが、今後どういう手にでてくるかなんて、ロクなことにならないのは確かずら。

 

 

「ううん……ルビィちゃんのせいじゃない。そもそも、今のオラの幸せがあるのは、ルビィちゃんのおかげなんだし」

 

「花丸ちゃん……」

 

「こうなったら……オラもルビィちゃんの方法を真似させてもらうずら」

 

 

善子ちゃんの目的は、死なばもろともじゃないのなら、あくまでも彼のはず。

 

なら……今までみたいな自発的なだけじゃなくて、彼の方にも『弱み』を与えてあげるずら。

 

ルビィちゃんが好きな人にそうしたように、オラから逃げられなくなるような。例え真実を知っても、オラを選ばざるを得なくなるような……。

 

 

「例の地下室とか、薬とか、道具とか色々借りていい?」

 

「……ああ、そういうことだね。もう善子ちゃんと五分五分の条件なら、先手を打っちゃうつもりなんだ」

 

「そういうことずら。同じ『ウソツキ同士』なら……もうこっちの方が手っ取り早いよね?」

 

 

……彼にあんまり痛いことや酷いことはしたくないけど、仕方ないよね? 『お話』がヘンになっちゃう前に、お姫様と王子様が悪い魔女の魔法でバッドエンドになっちゃう前に、なんとかしなきゃいけないもん。

 

そこまで考えてふと、彼に逃げ場みたいなものがあるのかな、と思ってしまった。

 

お姫様って、もしかしてオラじゃなくて彼のこと?オラと善子ちゃんの2人に狙われた時点で、もうどっちかとつきあう運命しか選べなかったのかな?それとも、悪い魔女がオラだったりする?

 

 

 

 

 

……まあ、なんでもいいよね。

 

 

幸せになるのは、オラ達なんだから。

 

 

 

 

 

 




これからまた3~4カ月仕事で書けなくなるので、今のうちに更新しなければ……!


花丸の短編とルビィの短編は、当時も書いてたように一種の同一時間軸に近いものと思っていただければ。

佐倉行李さん、高評価ありがとうございます。褒めていただいた勢いのまま、月ちゃん短編加筆修正しちゃいました。

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