ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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(2021.1.8)加筆修正により大幅に文章量が増えたため、前後編に分割して投稿し直しました。


それでは、後編をどうぞ。






同類パートナーシップ・後編【曜&善子】

 

 

 

—曜Side—

 

 

 

 

彼の家の裏。誰にも見られない場所……。ここでついさっきの録音を聴きながら、私は『あるもの』を抱いている。

 

 

『ありがとう曜。要らないモノの処分、手伝ってもらっちゃってさ』

 

『このくらい平気だよ! ホント、曜ちゃんがいてあげないとダメなんだから〜♪」

 

『肘でつつくな肘で……あ、その制服ももう要らないから、捨てていいや』

 

『ホント!?ホントにいいの!? ……でもこれ含めて2着しかないんだから、予備で録っといた方がいいんじゃ……』

 

『相変わらず、制服にはすごい食いつきだな。……ほら、予備にするにもボロボロだからもういいんだよ』

 

 

 

ゴミを捨ててくるって言って、もってきた袋から出したもの……そう。じっくりと彼の制服を堪能してるんだ♪

 

ずっと憧れてたものが目の前に来ると、つい息が荒くなっちゃうよね。さすがにこんな表情は、彼には見せられないけど。

 

 

さあ、味見させてね~……?

 

 

 

 

————(しばらくお待ちください)————

 

 

 

 

—————はっ! い、一瞬天国が見えちゃった。エンジェルが見えちゃったよ!?これじゃ善子ちゃんみたいじゃん。いけないいけない……

 

 

…………と、とにかくこれは永久保存しなきゃね。

 

悪い女の子に盗られちゃう前に!私が家宝にして保護してあげなきゃダメだよね!?こんな美味しい……じゃなくて、危険な文化財を私以外が触ったら大変だよ!

 

この危険度……制服検定1級(?)に合格した私じゃないと扱えないシロモノに違いない。ストーカーには渡さないし、月ちゃんにもあげられないよね!

 

この分だと彼と結婚したら、絶対絶対、毎週制服もらわなきゃ……!

 

 

 

そういえば、今日もこうして片づけてるけど……ストーカーが実在するっていう確認まではとれてないね。

 

部屋の中とか、確かに女の子っぽい匂いがしたけど……Aqoursのみんなの、特に相変わらずよく来てる善子ちゃん。その匂いに紛れてるのかもしれない。彼は単に、この香りを勘違いしただけなのかな?

 

 

 

「……あ、ちょっと時間経ちすぎたかな。怪しまれる前に戻らなきゃ」

 

 

 

いけない、つい夢中になっちゃってたね。とりあえず早く戻って……

 

 

 

「曜? 貴方、ここで彼の制服を抱えて何をしてるの!? まさか貴女が……」

 

 

 

——————み、見られた!?

 

 

一瞬で心臓が跳ね上がる。

 

思わず振り返ると、そこには彼でも知らない人でもない、善子ちゃんの姿があっt——————善子ちゃん?

 

 

最近よく来てるのは分かってたけど、鉢合わせたのは初。それに、こんな風なシチュエーションでなんて。

 

 

……だけど、言い訳するよりも先に、私には一つ気になっていたことがあった。

 

 

 

(善子ちゃんの背中に見えている『モノ』は……まさか!?)

 

 

 

『なんで善子ちゃんがここにいるのか』……そして、その肩に背負ったリュックのファスナー。そこが少し開いていて、見覚えのあるモノが少し見えた。

 

私は追求を受ける前に、持ち前の運動神経を活かして飛びついて、そこを開いた!

 

 

 

「なんで黙ってるのよ!? 変態みたいなことして、先に質問に答えて————」

 

「———ちょっと善子ちゃん!『それ』見せて!!」

 

「うわっ、何すんのよ!? それは見ちゃダm……」

 

 

少しだけ揉み合いになってから、すぐに中身が地面に落ちた。

 

それを拾い上げると、やっぱりこれは……

 

 

……彼の学校の、ワイシャツ!

 

 

(それだけでも不自然だけど、制服ソムリエ(?)系スクールアイドルである私には、他の違和感も感じる)

 

 

くんくんと鼻を鳴らせば、これが彼のものじゃない……それがわかるよ!

 

さっきは家の中で色々な匂いが混ざってたけど、これと同じ匂いってこともわかる!制服に関することだし!

 

 

 

「これ、彼のじゃないよね……? 校章の穴とかヨレ具合とかはかなり似せてあるけど、実は新品だし善子ちゃんの匂いがする!」

 

「な、なんでわかるのよ~!? こっそり買ってきて、これまでに数多くの堕天使グッズを作ってきた技術を総動員して、再現したのに!」

 

「やっぱり!でもなんでこんなモノを、善子ちゃんが用意してるの……!? 場合によっては……」

 

「曜の方こそ、なんで彼の制服持ってんのよ!? しかもこんな隅っこで変態みたいに抱きかかえて!」

 

 

お互いの追及に、お互いに言葉を詰まらせちゃう。

 

ハタから見たら、確かに2人とも変人もいいところ。彼のワイシャツとか、彼の私物とかゴミを漁りながら家の裏側で、女の子たちが言い争っている光景。

 

これじゃまるで、ストーk……

 

 

 

 

……あれっ?

 

 

 

 

「もしかして……曜」

 

「まさかとは思うけど……善子ちゃん」

 

「ヨハネよ!じゃなくて……」

 

 

 

 

この時私たちは、ようやく相互に素性と目的を理解した。

 

 

 

 

 

「「あなたが、ストーカーなの!?」」

 

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

 

—善子Side—

 

 

 

 

(ま、まさか……私が最も警戒していたストーカーの正体が、曜だったなんて)

 

 

信じられない。Aqoursの仲間が、こんな形で堕天することなんて私は望んでないわよ!?もっと健全に堕天使にならなきゃ!

 

でも、そう考えると曜のこれまでの不自然な行動が、全部腑に落ちるわね……。

 

 

 

「曜……あなた、片づけは口実だったのね。このぶんだと、ゴミとか不用品とか色々と持ち帰ってたんでしょ!ストーカーみたいに!」

 

「善子ちゃんこそ、わざわざそんな手の込んだことしてまで、彼に自分のものを使ってもらいたいだなんて……どうかしてると思うよ!?そっちこそストーカーじゃない!」

 

 

くっ、ああいえばこう言うわね……! まあ、私たちの視界を共有するほどの究極の愛を理解してもらうのは、俗世の人間には簡単でないことはわかってるけど。

 

曜がストーカー気質だったのは想定外だったけど、それならそれで決めてた作戦を実行に移すだけよ。

 

せいぜい私たちの愛の深さを思い知って、悔しがるといいわ!!

 

 

「クックック……私はね、ずーっと彼のことを見ているのよ!? 健やかなるときも病めるときも、お互いが通じ合ってるの! 曜の出る幕じゃないわ!」

 

 

携帯を取り出して、普段の彼の私生活を見せつける!……ふふふ、羨ましそうね。目で追っちゃってるじゃない。その調子で、もっと羨ましがるといいわ!!

 

 

 

「な、なんて素晴らしい……じゃなくって!! こんなのただの盗撮でしょ!?」

 

「失礼ね。妬いちゃう気持ちは分かるけど、愛し合う2人に盗撮とは失礼ね。これは魔術なのよっ!」

 

 

なによ、まだこっちをストーカー扱いしようっていうの?

 

大人しく諦めればいいのに、往生際がわr……

 

 

「そんなこと言ったら、私なんていつも彼の声を聞いてるんだよ!? ほら、こんな風に!」

 

 

逆に曜から差し出された携帯からは、確かに彼の声が聞こえてくる。

 

 

(うわ、このドラマこっぱずかしいな、愛してるのは君だけ、とか……)

 

 

……で、でもこの声って独り言じゃない!? あ、生活音まで……嘘。これも魔術!?魔術なの!?本当に曜も堕天していたっていうのー!? 

 

くっ、私は映像だけだからこういうのに弱いのよ……!!

 

 

(今日もライブ、みんな可愛かったなー。差し入れに俺が美味しいものを買ってきてあげるか。曜とかセンターだったしな)

 

 

……大丈夫よ、このくらい……!

 

 

(俺はAqoursのみんなのためならなんでもするからな、このくらいお安い御用だ)

 

 

……この、くらい……

 

 

(あいつの好きなのは何だったかな、ハンバーグなんて作れないぞ俺。あ、善子が今度家に来た時に聞いてみるかな)

 

 

 

やっぱり、き、聞きたいわ……!続きを……!

 

 

「はい、ここまで~♪」

 

「あーっ!」

 

「その反応を見る限り、妬いてるのは善子ちゃんだったみたいだね~?私は彼の部屋での会話はぜーんぶ聞こえちゃうんだから!」

 

「ヨハネよ!」

 

 

く、くやしい……!

 

彼の事でこんな簡単に手玉に取られるだなんて!

 

……でも、冷静になって考えれば、曜が魔術なんて使えるわけがないわ。となると……

 

 

「ふん!どうせそれだって盗聴じゃないの!? そんなのただの盗み聞きじゃない」

 

「盗聴? なんにしても、彼の声を毎日聞けるのはこの曜ちゃんだよ! それに、中には『愛している』とか『好きだ』って囁いてくれるのもあるし……♡」

 

「どうせ切り貼りして言わせてるだけじゃない!……………………本当に言ってくれてるの?」ゴクリ 

 

 

ま、まさか毎日の独り言とか、電話とか……さっきの音声みたいなのを全部自分用に!?

 

あ、ああダメ……自分のこれまでのコレクションも勿論大事だけど、曜のもってる音声も捨てがたいわ。そして、それは向こうも同じ反応。さっきは私の出した映像にくぎ付けになってたし。

 

まさに抗いがたい魔性の魅力!彼のカッコよさは、私が堕天使となった時以上の罪といえるわね……。

 

 

「善子ちゃん、確かにその映像は魅力的だけど……」

 

「ヨハネだってば!……曜、あなたの音声は見事だと言わざるを得ないけど……」

 

 

 

結局、私たちの間で何一つ決着はついてないし、その方法も見つからなかった。こんな状況でお互いに彼に言いつけても、メリットはないし……。

 

 

 

 

 

——————そう、思っていた時。

 

何枚かの紙が風に吹かれて、ゴミの袋から、私たちの前に落ちてきた。

 

 

 

「……あれ? こんな紙あったかな。私が捨ててあげたものじゃないや」

 

 

「私が用意したものでもないわね。大事なものだったら拾って、きちんと捨てないと……」

 

 

優先すべきは、あくまでも彼の事。喧嘩を中断して2人で何枚か拾い上げた。愛する人の個人情報が洩れたら大変だかr……

 

 

 

「こ、これって……まさか!?」

 

 

そこにあった内容は、想像を絶するものだった。さっきまで興奮と歓喜で震えていた手は、恐怖と絶望で震えてる。こんな、こんな事って……

 

 

「曜——————」

 

 

「——————善子ちゃん」

 

 

 

 

 

「私達……」

 

 

「……協力しない?」

 

 

 

 

 

思わず落としてしまった、いくつかの手紙。それは、彼が海外にいる親とやりとりしたもので、最近急に片づけ始めた理由を証明するものでもあった。内容は……。

 

 

「なんとしても阻止しなきゃ……彼が『海外に引っ越す』なんて!!」

 

「彼はまだ迷っている……親といるべきか、慣れ親しんだこの地にいるべきか!私の魔術と曜の魔術の力を合わせるのよ!」

 

「私達の映像と音声を合わせれば、彼の動向は把握しやすくなる……それを利用して、こっちに残るように誘導するよ!」

 

 

いつの間にか、私達は固い握手を交わしてた。最大の敵が今、最大の仲間となった瞬間!

 

今は争ってる場合じゃない。彼のあらゆる情報と思考を私たちで支配して、あわよくば恋人になって……絶対に残ってもわうわよ!!

 

 

「名付けて、エンジェル&フォーリンエンジェル計画始動よ!……あとで、私にも音声データと制服ちょうだい」

 

「たぶん私がエンジェルだよね、それ……。じゃあ、映像と交換ね。あと、今度は彼の歯ブラシ私が使ってから置いてよ」

 

「……なによ、案外曜もわかってきたんじゃない!」

 

「善子ちゃんこそ、さっきはストーカーとか言ってごめんね? こういう愛のカタチもあったんだね!」

 

 

 

 

——————このあと、この計画自体は上手くいって。彼は地元に残ってくれた上に、私たちは揃って恋人になったのだけど。どっちが正妻かとか、マリーが海外に連れていこうとしたのとかは、また別の話。

 

 

 

 

 

 





リクエストはこの2人でヤンデレ、とだけだったのですが、この2人が単に奪い合う光景が今一つ想像できなかったので、こういった形に落ち着きました。

僕の生活圏にもスクールアイドルのストーカーが現れてほしいと思います。



いつものことながら、感想、ご評価等、お待ちしております~!




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