是非、YouTubeの3回にわたる元ネタ動画を見てから読んでください。また、皆さんもセキュリティにはどうかお気を付けを……ヤンデレが狙っているかもしれませんので()
「サイバー、セキュリティ……?」
「そう!時代は『じょーほーか』の流れなんだよ。私たちの携帯やパソコンは、常に狙われてるの!」フフン
スクールアイドル、そしてこのヤンデレSSには、全く似つかわしくない単語とその発言者に、俺は首をかしげざるを得なかった。説明不要のいつものバカチカこと、高海千歌。コイツは国語はまだしも、英語と理系の成績は壊滅的なはずだが。
「つまり、私達Aqoursもあなたも、もっと『でじたる』に気を付けていかなきゃいけないって思うんだ!」
「……」
「そうだねぇ〜、スクールアイドルとかμ's的に言うなら……『みんなでかなえるせきゅりてぃ』?ってとこかな!」
「……今のセリフでひらがなだったとこ、ホントに意味わかってる?」
花丸の次にデジタルに弱く、携帯の充電もよく切らしてしまう彼女が言いだしたのだから、傾げる俺の首の角度は、より深くなるというもので……。
「むー!じゃああなたはわかってるの!?千歌にもわかるように説明して!いち・に・さーん、はい!」
「言いだしたのは千歌だろ!?なんで俺が……」
「だってだって悔しいじゃん!せっかく千歌が教えてあげようとしてるのにー!」
だけどまぁ……実際、俺もデジタルに強いわけではない。サイバーセキュリティという単語は聞いたことはあるけど、説明しろと言われても、わからない。
本当に人並みレベルで、不正アクセスとかハッキングとか、そういう単語くらいはわかるけど。
どうせ、どっかのテレビ番組にでも影響されたのであろう、またいつものご立腹モードになるみかん少女。が騒ぐのをどうしようか……と頭を捻っていると、大声が聞こえたのか、周りにいたAqoursのみんながわらわら寄って来た。
「あはは、千歌ちゃんまーた影響されちゃってる。実はこの前、浦の星にサイバーセキュリティの特別講師が来て、講演してくれたんだよ。3月18日は318(サイバー)の日なんだって」
「内浦は確かに田舎だけど、日常的にパソコンやインターネットを使う時代デースっ!ダイヤなんて一生懸命メモしてたのよ、勉強熱心よね~♪」
「そういう貴方は熟睡してましたわね。いつかのシールまでまぶたに貼って……まったく、仮にも理事長だというのに恥ずかしい……」
曜と鞠莉はいつも通りとして、ダイヤは相変わらず真面目だなあ。しかし、セキュリティか……
「でも、特別講師って聞くと凄い難しそうだけど、みんな理解できたのか?」
「オラも頑張って聞いてたけど、お話が早くて難しくて、知らない言葉ばっかりで、理解が間に合わなかったずらぁ……」
「花丸ちゃんはしょうがないよ、この前インターネットを初めて見たくらいなんだし……そういうルビィも実は、聞きそびれちゃったところが多かったんですけどね?」
あれ、そうなのか。花丸はまあしょうがないけど、ルビィもか。やっぱり結構難しかったのかな。でも、よく考えると……
「うーん、Aqoursもなんだかんだ、ネットを使ってスクールアイドルに登録したり、ライブ動画をアップしてるわけだろ? きちんとみんな分かっておいた方がいいんじゃないか?そういうの」
千歌のみかんパソコンとか、セキュリティソフトとかちゃんと入ってるのか不安だ。あのお姉さん達がいるから大丈夫だとは思うけど。
「そうだね、私もダイビングショップのサイトとか管理していかなきゃいけないし、復習しておきたいかな。善子ちゃんとか詳しいんじゃない?ほら、配信とかやってたし」
「……やめておいた方がいいと思うわ。この堕天使、顔出し生配信なのよ?一番やらせちゃダメなパターンよ」
「顔出し?配信? なんだか、梨子も結構詳しそうだね……」
「ヨ・ハ・ネ! ていうか、配信いうなー!儀式よ、迷える子羊たちの運命を決める魔術なのよー!!」
うん、やっぱり不安だ。かといって俺も詳しくないし、どうしたものかな。
……というみんなの目線は、自然とダイヤに集まっていく。こういう時にすぐに彼女に頼ってしまうのは悪い癖だが、他に頼れる人もいない。と、当のダイヤは空気を察して咳払いをしつつ、メモ帳を取り出した。
「コホン。そうですね……今日はこれから全員、練習はオフですし。受け売りではありますが、僭越ながらこの黒澤ダイヤが臨時講師となり、今からセキュリティ教室を始めましょう」
「かっこいい!さすがお姉ちゃん!」
「あら、ずいぶんやる気ね?それなら場所はうちのホテルを提供するわ!」
うんうん、さすがダイヤだ。こういう時頼りになるな。それじゃあ、俺はこれから帰ってゲームでもするか。文系の俺に、こういうの縁はないだろうし……
「どこに行くのです……『サイバーセキュリティは全員参加』ですわよ!」ガシッ
……ダメだった。なすすべもなく首根っこを掴まれて引き摺られていく。たしかに俺もAqoursのパソコンにログインして手伝うこともあるし、大人しく諦めるか……。
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「……と、いうわけで。ここからはあなたのスマートフォンを中心に話を進めますわね。今の時代で気をつけるべきは、やはり携帯電話でしょう」
「え、なんで俺の携帯!?」
「まさか、殿方が乙女の携帯を覗き見るつもりですの!? それに、Aqoursの活動用のパソコンには、大切なデータも入っています。余計なことをして、万に一つでも何か壊れでもしたら大変ですから」
「俺の携帯は壊れてもいいのかよ!」
「万に一つと言ったでしょう。男なら諦めなさい!」
確かにスマホなら、あんまぶっ壊れるイメージはないけど。前みたいに花丸がパソコンでいきなりシャットダウン押すようなこともないし。不本意だがやむを得ないか……。
(それにしても、みんなが俺のスマホに注目する光景はなかなかシュールだ)
こんなことならケースとの間とか、もっと綺麗にしとけばよかった。画面割れはないけど、指紋とかも結構ついてるし。ホテル・オハラの一室で女子高生に見られるには、あまりにもこころもとない。
あと、心配事といえば『あんな動画やあんな写真』だけど。以前から親に見られた時の対策に、それらはパソコンにすべて預けてある。なんとかなるだろう……。
①『パスワードは長くて複雑にしよう』
「さあ、まず第一の基本として、パスワードはしっかり設定しなければなりません。数字、英字、記号を組み合わせたり、自分しか知らないような数字で作りましょう。生年月日など、わかりやすいものはぶっぶーですわ」
そうそう。たった今ダイヤが言った通りだ。パスワードが設定されている以上は、パソコンはもちろん、実験台になる俺のスマホだって勝手には開けない。
……などと考えている場合ではなかった。今なんて言った?生年月日?
「あれ、パスワードかかってる……曜ちゃん、数字4桁打つようになってるよ?」
「任せといて、彼の誕生日を打ち込んで……ほらで~きたっ!」
「そこ、俺の誕生日まで把握してサラッと開いてるんじゃないよ!?」
「曜ちゃんさすがね!それじゃあ、早速中身をチェックしなきゃ。年頃の男の子だもの、壁ドンとかないか、ちゃんと性癖をチェックしなきゃ……」
俺の携帯のパスワード4桁は、油断して誕生日にしちまってた!しかも曜に覚えられてる!?
「……えー、今の光景でわかったでしょうか。設定するだけでなく、難しくしなければいけませんよ」
「よーくわかりました!わかりましたから、キミたち俺の携帯を返せー!!」
「わわ、暴力反対~!!」
な、なんとか取り戻せた……。いくらR-18なデータが入ってないからって、好き勝手にスマホ漁られるのは危険すぎる。
っていうか、千歌はまだしも梨子と曜までノリノリなのはなんでだよ!?良識派であってくれよ君たちは。ほら、さっそくダイヤも呆れてるぞ。
「しょうがありませんわね……なら、一緒に複雑なパスワードを設定しましょう。自分しか知らない組み合わせと、と先ほど言いましたよね?」
「はい……でも、どんなのがいいんだろう」
「いきなり難しい数字にして覚えられなくなってもなんですし、とりあえず生年月日を逆さに入れてみてはいかがですか?慣れて来たら、また一緒に違う数字を設定しましょう」
うう……ダイヤの優しさが目に染みる。やっぱり持つべきものは友だな。実際、セキュリティが危なかったのは確かなんだし。
よし、しばらくこの数字で行くか!
「……パスワードは確定。順調、ですわね」
②『パスワードだけで安心せず、二要素認証を導入しよう』
「さて、彼の携帯のパスワードがあっさり見破られた教訓を活かして、次は二要素認証のお話ですわ」
「うう、オラもパスワード、好きな作家の誕生日にしちゃってたずら……」
「花丸まで気を落とさなくても……それで、二要素認証って?」
携帯のデータはとやかく言われなかったけど、それで一安心してる場合じゃない。まだ始まったばかりだし、何より聴き慣れない単語の登場は、自分に知識がなかったのだと分からせられてしまう。しっかり聞いとかないと。
「わかりやすく言えば、3種類のうち2種類……①知っているもの=パスワード、②持っているもの=スマホ、③貴方自身=指紋のうち、複数のものを組み合わせることです」
「お姉ちゃんの言うことだと……たとえば今のパスワードも、指紋も一緒に登録しておけば、彼が指を貸してくれなきゃ開けられなかったってこと?」
「その通り、さすが我が妹!理解が早いでちゅわね〜♡」
そ、そうなのか……知らなかった。スマホのところは、パソコンのパスワードにも置き換えられそうだな。
たしかに、指紋がないと開けないようにしておけば、もしパスワードを知られても安心だ。俺も登録しておかないと。
「オラも登録したいけど、やっぱりよくわからないよ。いったいどこに指を置けばいいずら……?」
「花丸はまだ使い始めたばかりだもんな、スマホ。まあ俺も知ったばかりだけど……ほら、ここに指をこう置くんだ」
「わぁ、すごい!上手くいったずら〜♪ ありがとうございます♡」
悩んでいる花丸の携帯に、設定画面を教えながら指を置いてあげた。
……なんだ?やけに嬉しそうだな花丸のやつ。
まぁ、トイレの自動乾燥機とか人感センサーつきのライトで感動してた田舎っ娘だからそれも当然か。彼女のこういう笑顔が守れるのなら、サイバーセキュリティも悪くないかな……あれ、スマホもったまま部屋を出ていったけど……?
「お手洗いでしょ。あんまりジロジロ見てると変態っぽいわよ」
善子、あとでシめるぞ……
「……指紋、ゲットずら。鞠莉ちゃんの用意してくれたこの機械につないで、保存完了だね」
③『ウイルス対策ソフトを導入して、さらに、常に最新にしておこう』
「お待たせずら~!」
「では、花丸さんが戻ってきたところで、次です。ウイルス対策ソフトは、パソコンには皆さん入れていると思いますが、なるべくスマートフォンにも入れておきましょう。そして、アップデートも欠かしてはなりません」
うんうん。これは聞いたことがある。
実際俺の家のパソコンもセキュリティを入れてるし。ただ、アップデートはちゃんとやってたか不安だな……自動更新になってるといいけど。あ、果南もちょっと不安そうな顔してる。
「うちのお店のパソコンも、一応ソフトは入れてたけど、携帯は入れてなかったね~……」
「果南さんも寝てましたものね、この前は……」ジロリ
「フフフ……果南、何のために私がホテル・オハラを提案したと思って?こんな事もあろうかと、人数分のセキュリティソフトを用意しておいたわ!」
そういえば、何かケースが部屋の後ろの方に準備してあると思ったら。鞠莉がケースを開けると、そこにはたしかにソフト(と設定用のパソコン)が入っていた!何本かあるところを見ると、本当に人数分か!
「鞠莉さん、こんなにどうしたというのです!?まさあ、ポケットマネーで……?」
「ノンノン♪それでもよかったんだけど、Aqoursのメンバーのサイバーセキュリティは、私の周囲のセキュリティにも繋がるわけでしょ?パパに頼んで、ビジネス用の余りをわけてもらっちゃったの~♪」
「これだから金持ちは……って言いたいところだけど、今度ばかりは感謝だね。それじゃ、早速設定してみよっか」
こんな所でもみんなのお世話になってしまったのか。なんだか申し訳ないなぁ……Aqoursの手伝いとか言いながら、手伝われてるのは俺の方じゃないか?
「はい、コレは持って帰ってね♪ パソコンにも入れられるようになってるし、新品で期限も長いから、あなたの家のもコッチに切り替えるといいわ」
「鞠莉……ありがとう!使わせてもらうよ」
「貴方が不正アクセスでもされたら私も悲しいからね、いいのよ♡」
セキュリティソフトも安くないしなあ。こういうのは本当に助かる。鞠莉、ありがとう!
「……まあ、小原家からアクセスできるようには、手を加えてあるけどね。貴方と私の仲だもの、オッケーよね?『不正』じゃないから勿論いいわよね?」
我の職場もAqoursとコラボしないかな……(ボソッ)
サブタイは後で変えるかもしれません。後半はほぼできてるので、近日中に公開します。