後で加筆修正するかもです。
「さあ、まだまだ続きますわよ!なにせ全部で9項目もありますからね、次はこれです!」
……さて、今ダイヤが言ったように、内容もどんどん進んできた。
しっかし、ダイヤはもちろんだけど……他の皆もやけに気合が入ってる気がするな?夏の合宿の時にスクールアイドルの講義とかやって、みんなダルそうにしていたのは記憶に新しいけど。あの時の鞠莉なんてフツーに寝てたのに、今日はワクワクドキドキしてるように見える。そうそう、花丸に連れられて図書館に行った時も、鞠莉と果南が酷かったような……
とか考えてると、ダイヤが次の項目の講義を始めようとしていた。いけない、ちょっとくらいは集中しよう。うかうかしてて、さっきみたいに油断してると、また勝手に画像漁られそうになるだろうし。はぁ、無駄に気が抜けないなぁ……。
「さて……今回はクイズ形式にした方が、分かりやすいかもしれませんね。もっとも、これも講師の方の受け売りではありますが」
④『ファイルやリンクはすぐに開かない』
「迂闊にメールを開いてしまうと、『1クリック詐欺』といったものにひっかかりかねません。知り合いからの連絡だと鵜呑みにせず、良く確認することですわ。では、曜さんお願いします」
「みんながソフトを設定してる間に、パネルを用意しておいたよ!」
おお、これも聞いたことがある。だけど、今一つピンと来てなかったんだよな。
最近はSNSが多いから、知り合い以外からあんまりメールとか来ないけど。それは何人かも同じようで、千歌と花丸あたりは、相変わらず頭の上に『?』マークが浮かんでいるし。
あ、でもAqours用のパソコンには、よそ様から色々と来るよな。Saint Snowとかラブライブ運営とか……勉強しておいて損はないか。
「あ、そうそう。このパネルに書かれてるメールは、キミのところに送られてきたメールだと思って考えてみてね。はい、梨子ちゃんちょっとこっち持って」
「さすが曜ちゃんね。えーと……ちょっと何よこれ、私の名前があるじゃないの!?」
俺がボーっとしている間に、曜は梨子の手を借りて、クイズ形式のパネルをもってきていた。曜は色使いのセンスもいいから、わかりやすそうだ。
えーっと……内容は、『俺に届いたメール』だったよな?
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from:riikooo@lovelive.ss.jp
件名:美味しいお店を見つけたよ!クリックしてみて!
梨子です!
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「うーん。どこがおかしいとか、よくわからないずら……『りんく』もちゃんとあるし……」
花丸がさっそく頭を抱えている。かくいう俺も、ぱっと見だけではどうも、わからない……。みんなと違って、そもそも授業を受けてないというのもあるんだろうけど……と悩んでいると、善子とルビィが何やら憤慨しつつ、答えを教えてくれた。
「ま、ずら丸はメールとかしないからね。こういうのは、むしろリンクがあるから危ないのよ!ほら、よく見てみなさいよ。アドレスのところがリリーのメアドじゃないし、言葉遣いもヘンでしょ?それに、なにより……!!」
「……うん。彼をウェイトレスさんの衣装で釣ろうとしてる。こんなの許せないよ、あやしい、あやしいよ!『つつもたせ』だよ! だいたい美味しいお店なら、グループのメッセージでいいのに、抜け駆けだよ!!!」バンッ
「る、ルビィ……机叩いてどうしたの?」
え、そこ……そこなの?ていうかなんで怒ってるの?
とりあえず、美人局(つつもたせ)って、検索して……ああ、ハニートラップってやつか。なんだかだんだん、サイバーセキュリティとは離れてきたような気がする。
……まあ、何はともあれ怪しいところは分かった。
(アドレスも口調もおかしいし、そもそも梨子が俺に女の子の衣装を紹介だなんて、なんか唐突だよな。曜が言いだすなら分かるけど……)
じゃあこれは、つまり……
「そう!善子ちゃんとルビィちゃん、良く分かったね!これは彼を誘惑しようとする雌b……コホン、詐欺サイトが梨子ちゃんになりすましたメールなんだよ!ま、梨子ちゃんが抜け駆けを狙いがちなのは本当の事だけど……」ボソッ
「な、なりすまし……! 確かに、スクールアイドルだから名前とかはバレてるよな。で、どっかから俺や梨子のアドレスを知ってたら……」
「そういうことだよ。だから絶対、私たち以外の女の子からの連絡を受けちゃダメだよ!!何か怪しいと思ったら、まずこの曜ちゃんにいつでも電話とかで聞いていいからねー♡」
「……チッ、抜け駆けしてるのは曜ちゃんじゃない」ボソッ
『なりすまし』!うーん……そういうイタズラメールが来ること、想像してなかった。俺って迂闊だなあ。俺みたいに男なら、今のメールみたいに女の子につられやすいだろうし。
「……というわけで、ハイ。もう一回携帯出して、メールとアドレス帳を開いて?チェックするから」
「えっ、そこまで? アドレス帳なんて、変な人は入ってないと思うけど。ていうかさっきも断ったし俺のプライバシーもあるし……」
どの辺が『というわけ』なのか。曜は笑顔で手を差し出してくるが、全く意図が分からない。
てか何のチェック?だめだめ、これ以上俺のプライバシーを侵害されるわけには……
「もちろん、迷惑メールのチェックだよ。『怪しそうなリンクが貼ってあったりしたら』危ないでしょ。他のところは見ないから、安心して出して?」
「いやあ、基本的にそういうのは来ないかr……」
「だ・し・て ??」
「……………………どうぞ」
「弱いわね、リトルデーモン……」
謎の圧に負けて、スマホを渡してしまう。こ、怖い……。
まあ、画像やらの類はパソコンに入れてあるんだし……メールには別に、やましいこともないし。見たきゃ見ろってんだまったく。野郎の携帯なんか漁って、みんな何が楽しんだかわかんねえよ……。
「曜、チェックしてる間、後ろから無音カメラの動画で全部撮れたよ。バイト先や家族の人を含めて全部の連絡先、メールまで全部ね」
「ありがとう果南ちゃん。いやあ、メモしなくてもあっという間にできるんだから、簡単な時代だよね~……さて!鞠莉ちゃん!」
「ええ。今からウチの子会社に頼んで、全員の素性を調べてもらわなきゃ。私たち以外に、女の子がいるようなら………………ウフフッ♡」
⑤ フィッシングサイトに注意しよう
「では、折り返しの5番目の授業ですが、私も少し疲れてきたので、ここで果南さんにお渡しします」
「OK、任せて! じゃあ次は『フィッシングサイト』に注意するって話だね」
「フィッシングサイト……? あ、それは聞いたことある。引っかかった人の個人情報が盗られたりするんだよな」
俺はまだ持ってないけど、クレジットカードとか。通販サイトに登録した個人情報とか、そういうのが危ないと聞いた。ライブのチケットとか予約するのに、最近は顔写真とかも使ってるし、俺も他人事じゃない。つまり……
「さっきのメールの話と同じで、変なところからリンクをクリックしたり、怪しそうなサイトに行かないことが大事って話だろ?」
「あれ、私が話す前にしっかりわかってるんだね。じゃあダイヤ、貰っといてなんだけど、ここは短めでいいかな?どうせ私もそんなに詳しくないし」
「そうですわね。内容としては④と少し被っていますし、大丈夫でしょう。あとは、検索サイトの履歴があれば教材としては一番なのですが。……先ほどのように、やはり貴方の携帯電話が一番ですわね」
「なんで!?この流れでなんで毎回俺なんだよ!?……ああうん。俺以外にないよな、ごめん」
そうだよな……千歌もバカだけど、最初にダイヤに言われた通り、女の子の検索履歴を俺が見るわけには……
……
……男子高校生の検索履歴を女子高生9人に見せるのも相当問題だろ!!!???
いかん、流されるところだった……!!サイバーの前に心のセキュリティをしっかりしなくては。何か油断したり、みんなの言うがままになってるところはないか?落ち着いて思い出せ……
そういえば昨日の検索は……あれ?待てよ。
「ねえ、ちょっといい?」
「ん?」
「履歴のところにある、このサイトってなに? なんか怪しそうだけど、そういうサイトじゃ?『XXXvid……」
「……あああぁぁぁ!?!?!?」
思わず『(色んな意味で)危険なサイト』にアクセスされそうになり、咄嗟に果南を連れて部屋の外に出る。もちろん、携帯電話ごと!
(しまった、ブックマークやデータそのものは入れてないけど、検索やサイトの履歴はそのままだった……!)
とんだ盲点だった。いわゆる成人サイトだけは、さすがにみんなに見られたらマズい。ダイヤさんにこの世から消されるか、鞠莉に浦の星永久追放を受けるのが目に見えている。まず間違いなく、明日の太陽は拝めなくなるだろう。
今度ばかりは本気で冷や汗が……やばいやばいやばいやばい—————!!
「か、果南聞いてくれ。これはだな……」
「……なんてね、冗談♪ 私だってもう高3なんだから、キミみたいな健全な男の子がこういうのに興味あることくらい分かってるって♪」
「ほ、ほぇっ?」
いたずらが成功したときのように、あっけらかんと笑う果南。
……も、もしかして。知ってた?こういうサイト……
「そんな、鳩が豆鉄砲を食ったような顔しなくてもいいじゃん。あ、もしかして女の子ってみんな清純だと思ってる?こういうことに興味ある娘も多いし、あんまり夢見ない方がいいよ~?」
「わ……わかった。とりあえず、借りでいいかな。だから履歴はここで消して、このことはどうか秘密に……!!」
「うんうん、よろしいっ。じゃ、貸し一つとして……今度ふたりっきりでダイビングと、船の上での『フィッシング』に付き合ってね♡」
(こ、これは……助かったのか?)
いつものサバサバ系女子(言う程じゃないけど)を最高のタイミングで発揮してくれた果南……感謝しかない。彼女の場合、乙女モードで顔を真っ赤にするか、今回みたいな反応のどちらかだったのだと思うけど、今回は後者で救われた。
ちょっぴり女の子の現実を教えられてガッカリもしたけど、何にしてもあの場でバラされてたら、大変なことになっていた。釣りの荷物持ちにされたのは、どちらかというと『フィッシング』されたのは、俺って気もするけど……さ、部屋に戻るか。
「……フフ。もう、検索履歴は全部見ちゃったよ。画像フォルダよりよっぽど性癖は把握できたね。ああいうのが好きなんだ……私たち以外を見るのは癪だけど、みんなに共有しておけば『最初』が有利になるし。ね、梨子ちゃん?」
「ええ果南さん、上手くいきましたね。万が一、私たちの誰かが『最初』じゃなくても……後から私たちがトリコにするのに役立つでしょうからね。私としては、最後に私たちのところにきてくれれば、それで」
「うんうん……さっきからそうだけど、サイバーセキュリティ的な情報が、アナログな手段で私たちにバレてるよね。やっぱり私たちで管理してあげなきゃダメだよ、人をすぐ信じちゃうんだからさぁ……♡」
⑥ 個人情報をむやみに発信しない
「さて、そろそろ休憩は終わりにして、次に進みますわよ。あなたのスマホがないと次にいけないのですから」
「その大前提が大きく間違っている気がするけど……もう諦めたよ。早く終わらせよう、なんだか疲れた……」
「ご安心なさい、あと4つですから。それに、この⑥に限っては善子さんに教材になっていただくのが良いでしょう。『個人情報をむやみに発信しない』というタイトルですから……」
「お姉ちゃんにさんせーいっ♪」
「オラも~♪」
「キーっ!!なんで私なのよぉー!?」
そりゃ、一番最初にも話題になってたけど、絶対あの占い配信のことだろ……顔出ししてるし。ま、スクールアイドルも顔出しっちゃ顔出しか。
「個人情報の大切さについては、今更言うまでもないでしょう。ですが、この善子さんの配信のスクリーンショットをいくつか見てください。『堕天使ヨハネの失敗シーン集』という題で、ファンの方からいただきました。なんでも、中学の頃の同級生の方3人組だとか……」
「ああああ!!それ、絶対あいつらじゃなーい!! 今度会ったらとっちめてやるーっ!」
「あ、分校で会ってたあの3人の娘か……ご愁傷様」
個人情報漏洩もいいところだな、本人の身から出た錆とはいえ。あの3人、地味にずっと堕天使配信のファンらしいからな……もっと早く知ってれば善子もワンチャン、中学で上手く友達出来ただろうってくらいいい人たちだけど、密かにこういうのが出回っているのはどうなんだ。
「……話を戻しますと、例えばここ。お母様が配信に映ってしまった時。次に、近くの商店の袋がいくつも背景に映っている時、そのほかに、カーテンが開いてしまって外の風景が見えている時……」
「俺もピンとき始めたよ。それって、善子の家や家族を特定できちゃうってことだろ?」
「まったくもって、その通りですわ。スクールアイドルとして活動している以上、ある程度は洩れてしまうものだと思いますが……これではさすがにやりすぎ、よくはないですわね」
「な、何も言い返せないわ……! リトルデーモン、ブラックダイヤの厳しい指摘……!」
(ダイヤが黒かったら石炭じゃないのか? 『黒』澤だけど……)
心の中で関係のないツッコミをしてしまったが、ダイヤの言うことはよくわかる。
画面に映し出されているスクリーンショットは、どれも善子の身の上を想像する大きなヒントとなってしまうものばかりだ。沼津のスーパーの袋、遠くに見える建物、私服、帰っている時間帯……何か悪意のある人間がこれを見たら、良くないことが起きてしまうのは想像がつく。
「うーん、サイバーセキュリティって、こうして勉強していくとアナログに洩れることも多いんだな。パスワードだってメモしてたらバレちゃうし、部屋の中身だってこうして見られた後に色々、調べられちゃうんだろうし。携帯の画面だって後ろから覗きこまれたり、後ろのガラスに反射したり……」
「ッ、そ、そうだね~気をつけないといけないよね……」
「え、ええ。その通りですわ。みなさん今や全国に人気のスクールアイドルなのですから、善子さんを他山の石とせず、個人情報にはより一層気を付けなくてはなりませんよ!」
「なんで果南とダイヤが焦ってるんだ……?」
何か核心でもついたのか?別にいいけど。
それにしても、俺も他人事じゃないな。どこから『Aqoursにくっついてるお邪魔虫』なんて烙印を押されるか、分かったモノじゃない。こうしてみんなとホテルオハラに集まってるだけでも、誰に見られているか不安になってきた。
「……ねえ、リトルデーモン。もしかして、私たちとの関係、気にしてる?」
「え?そりゃまあ……俺みたいな男が近くにいるって大々的に宣伝されたら、Aqoursの人気も落ちるだろうし、俺自身も変なファンに狙われるかもしれないし……あと、学校生活もあるしさ」
「確かに、私たちがこうして一緒にいるのを、快く思う人たちばかりじゃないわよね……」
善子のやつ。予想外に自分のことが知られていて、ちょっと反省しているのか、珍しくしゅんとしている。こんなにしょんぼりされたら、なんか俺が悪いことしたみたいじゃないか……。
「……安心しろよ。善子の身に何かありそうなら、男の俺がなんとかする。それで文句を言ってくる奴らがいても、俺は気にしないから……」
「あ、アンタ……そんなに私のこと……!!」ウルウル
「泣かれても困るって。ほ、ほら、みんな見てるし……」
な、なんだか知らないが。なんか凄くみんなキレてるような。
「……これからは、むしろ積極的に個人情報を発信していきましょうか。Aqoursには彼氏がいるという方向で……」
「私も賛成だわ。マリーのホテルにしょっちゅう出入りして、朝帰りの男の子なんて……スキャンダラスよねぇ~♡」
「彼氏って、いい響きじゃない?善子ちゃんがデレデレしちゃうくらいにはさぁ……?」
「み、みなさん? な、なんでその方向に……??」
ううっ、世間を敵に回す前に、まずこの場で敵視されてるし……さっき偽メールで女の子にデレデレして騙されるなって話をしたばっかりで、キザなセリフはまずかったか!?
「だって、善子ちゃんだけ特別扱いはしないよねっ?」
「そこでトリップしてる幸せ全開オーラの堕天使ちゃんだけじゃなく、オラたちも守ってほしいずら♡」
「エヘヘ、私をそんなに……しょうがないわねぇ~♡」フワフワ
善子にいい顔する前に、ちゃんとサイバーセキュリティに集中することにしよう。ウソの個人情報がばらまかれる前に……
後編に続く。
半年近く更新なくてすいません。残業が月150~200時間程度の日々が続いてて死んでました。しかも来月からまた半年研修……(;'∀')
書き溜めは今のうちに分割投稿して、時間が取れない時期(来年も11月くらいまでかなり厳しいです)にも、なるべく更新できる形にしたいと思います。