ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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第11話 マルの相談・後編

「あっ、ああ!そうずらぁ! 本当に相談したいのはルビィちゃんのことだったのに……」

 

えっ、今の……本題じゃなかったの?

 

それに、突然席を立って叫ぶもんだから驚いた。文学少女だけど、おとなしいだけじゃないんだなぁ……。これはスクールアイドルを始めると、意外なガッツを発揮しそうだ。

 

 

「翔先輩、私もルビィちゃんなら真っ先にスクールアイドル部に入りたがると思ってたんですけど……何か、躊躇ってるみたいなんです」

 

 

えっと、ルビィちゃんが躊躇っているって?

 

確かに、すごく人見知りな娘だったけど。スクールアイドルが大好きなら、そんなこと気にすることないのになぁ……。

 

いや、待てよ。スクールアイドルに詳しいってことは……。

 

 

「はっ!?ま、まさか……スクールアイドルに対する眼が肥えてる彼女には、千歌達はお遊びに見えたのか……!?」

 

 

自分で言ってて気がついたが、それはあるかもしれない……!

 

スクールアイドルは今や大人気の分野だ。同時に、とても奥が深い。

 

競争も厳しそうだし、本当に好きな人や詳しい人たちからすれば、俺らは学芸会もいいところなのか!? 別に千歌達が真剣じゃないってわけじゃないけど、いくらなんでも初めたばかりで太刀打ちできるわけが……!!

 

 

「さ、さすがにルビィちゃんはそんな酷いこと考えてないと思いますけど……多分、お姉さんのことだと思うんです」

 

「? お姉さんって、確かここの3年生で、もともとスクールアイドル大好きだった、っていう……」

 

 

変な方向にトリップしかけたけど、国木田さんがすかさずフォローを入れてくれたので、平静を取り戻した。……確かに、彼女についてそんな話をしていたのを覚えている。

 

 

「はい。ルビィちゃんお姉さんのことが大好きですから……それで、遠慮してるのかなって」

 

「……成程。あり得るかもしれない」

 

 

そりゃ、大好きで身近な親族が大嫌いだというものを、自分だけが好きでいるのは普通は苦労するだろう。関係が悪くなりかねないのはもちろんのこと、最悪その人から止められたりする可能性もある。

 

……でも、大事なのはルビィちゃんがどうしたいか、じゃないか?

 

 

「そうか、それなら躊躇うのも納得だけど……ルビィちゃんはスクールアイドルをしたいんだろ? 彼女の意思はどうなるんだよ……」

 

「オラも、なんとかしてあげたいって思うんです。でも、お姉さんはなんていったって生徒会長らしくって……そういうのも厳しいのかもしれません」

 

だんだん彼女の方言が出てきたのは、少しは俺と打ち解けてくれた証拠か。しかし、国木田さんとは違ってルビィちゃんのお姉ちゃんは手強そうだな。生徒会長っていえば確かにおカタそうな……

 

 

 

………………せ、生徒会長?

 

 

 

「ちょっとごめん、確かルビィちゃんの苗字が黒澤で……生徒会長が黒澤ダイヤだけど……」

 

 

「? そうですけど……ルビィちゃんと、生徒会長の黒澤ダイヤさんは姉妹ずら」

 

 

 

え、ええええええ〜!?

 

今の今まで気がつかなかった俺も大概だけど、マジなのか……!?

 

あのカタブツなダイヤと、人見知りな小動物のルビィちゃんが、姉妹!!性格はもちろん、あんまり髪の色とか似てないから気がつかなった……。

 

 

「……まさか先輩、本当に気づいてなかったんですか?」

 

「あ、ああ……。不覚だ。でも、ダイヤか。あれは確かに手ごわそうだ」

 

「えっ……先輩。その『手強い』お姉さんと、名前で呼び合う仲ずら……!?」

 

 

国木田さんの言葉も耳に入らず、頭が急速に情報を整理している。

 

そうすると……ダイヤはやっぱり、昔はスクールアイドルが好きだったってことか。でも、俺が関わった何かの事件が起きちゃって、この学校にあったスクールアイドル部はなくなり、その一件で嫌いになった。

 

そしてそれが巡り巡って、ルビィちゃんの入部まで邪魔している……。

 

ええい、それってつまり、千歌達の部活も、新入生のみんなのこれからまで、俺が邪魔しちまってるってことなのかよ……!

 

 

「くっそ~……何か対策を考えないとなぁ……」

 

「ああ、いえ……オラの考えてることが正しいって決まったわけじゃ……」

 

「なら、今度ルビィちゃんにそれとなく聞き出しといてよ。ダイヤの説得は俺にかかってるかもしれないが、彼女の加入そのものは国木田さんにかかってる!!」

 

 

こうなったら、何が何でも松浦さんの言う俺の過去を明らかにして、ダイヤにもスクールアイドル部を認めさせて、小原さんの妨害(?)も乗り越えてやる!

 

国木田さんもルビィちゃんも入部させて、まだまだ部員を集めて、千歌と曜に楽させてやる!俺はやると言ったらやる。これ以上、他人に迷惑かけてる暇はない!

 

国木田さんを変える前に、まず自分だ!

 

 

「ありがとう、国木田さん。なんだか俺の方が元気が出てきた!」

 

「は、はぁ……。マルが相談に乗ってもらったんですけど……?」

 

「いや、情けは人の為ならずって奴だなコレは。よし、ここの仕事は後回しにして、今日こそダイヤを説得しに行く! 本当にありがとうな!」

 

 

不思議なことだが、国木田さんの相談に乗ったことで俺のやるべき事もよりハッキリとした。

 

ルビィちゃんの詳しい事情はわからないが、逆に言えばダイヤを説得して、スクールアイドルや俺がそれにかかわる事を納得してもらえれば、事態がいい方向に動くのは間違いない。

 

作曲の課題は未解決だけど、今はほかのことを一歩でも進める!

 

 

 

———————だが、扉を閉めて駆けだそうとした俺は、何か柔らかくて大きな物体にぶつかられて歩みを止めた。これは、人……?

 

 

「あいたたた……な、なんだ?」

 

「ごめんなさい!ぶつかってしまって……お怪我はありませんか?って、男の人……?」

 

 

ぶつかったのは女の子か。いや、女子高だから当たり前なんだけど。

 

まだ俺のことを知らない女の子か……それじゃ、さっきみたいに自己紹介から始めよう。まずはゆっくりと立ち上がって、顔を確かめ……

 

 

「いや、男の俺にぶつかったんだからケガしてないか心配なのはこっちだよ。キミは……!?」

 

「そういうわけには。……あ、貴方は!?」

 

 

……確かめたら、なんと知り合い。

 

それも、まさか二度会うことになるとは思ってなかったはずの相手。

 

着ているのは間違いなくうちの制服だから、転校してきたってことか……!?

 

 

「キミ、桜内さんだよな……?」

 

「そういう貴方は確か、翔(しょう)さん……!?」

 

 

そう。

 

そこにいたのは、この前千歌と一緒に浜辺で会った娘。

 

東京の学校から海の音を聞きに来たと話していた、桜内梨子さんだった。

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

「行っちゃった。ふふふっ……先輩、私を元気づけようとしたのに。自分の方が燃え始めちゃってるずら。大人っぽい人だなって思ってたけど、子供っぽいところはかわいいかも」

 

あんな変な相談したのに、笑って力になってくれるなんて、本当にいい人っているんだね。これって、運命の出会いみたい……

 

……って、マルなに考えてるんだろ。そ、それこそ小説の読みすぎだよね。会ってそんなに経ってもないのに、こんなに男の人に好意を持っちゃうなんて。

 

「でもオラよりも、ルビィちゃんのこと気にしてたみたいだし……先輩たちやお姉さんみたいに名前呼びじゃないずら……」

 

 

『国木田さん』。

 

この呼び方も、嫌いじゃないけど。

 

でもやっぱり、いつかは名前で呼んでほしい。お婆ちゃんがつけてくれた、花丸の笑顔をしてほしいって願いを込めた大切な名前。

 

 

「スクールアイドルになれば、変わることができたら……こんなオラのことも見てくれるかな……?」

 

 

あの人に名前を呼ばれて、静かな部屋で二人きりだなんて。本当に本の中みたいな運命の出会いに憧れて————

 

 

「————……花丸ちゃん?」

 

「る、ルビィちゃん?」

 

 

本の世界に入り込んじゃうように、翔先輩との妄想に耽っていたオラを呼び戻したのは、さっきまで話題になってたルビィちゃん。

 

 

「近くを通りがかったんだけど、花丸ちゃんが居たから……。ねぇ、あの人って、用務員の翔さん、だよね? この前本屋さんで出会った……」

 

「そ、そうだけど。本当に用務員さんだったのはびっくりしたよ」

 

「…………うん、ルビィも『はじめて』学校で見たよ」

 

 

ルビィちゃんは、『偶然』近くにいただけのはず。なにも、怒らせることなんてしてない。

 

でも、なんでだろう。どことなく怖い雰囲気ずら……。

 

 

「ふたりで、どんなお話してたの? 私、気になるなぁ……」

 

「う、うん……。スクールアイドル部に入らないか、って事なんだけど。せっかくならやっぱり、ルビィちゃんも一緒にどうかなって……」

 

「……それって、あの人がルビィのことを誘ってくれてるってこと?」

 

 

スクールアイドルを嫌うお姉さんのために、二の足を踏んでるって思ってたルビィちゃん。翔先輩にそれとなく聞いておいてって言われてたけど、その予想は正しかった。

 

 

「そっか、そうなんだ……♪ お姉ちゃんには怒られちゃいそうだけど、それなら……」

 

 

正しかった、みたいだけど……。

 

普段通り、ちょっと怖がりながらのはずなのに……。

 

ルビィちゃんの笑顔には普段とは違う、何かとっても深くて暗い感情が見え隠れしていた。

 

 

「……あ、あれ? 私、今なに考えてたんだろ。お姉ちゃんの嫌がること、しないほうがいいのに……」

 

「だ、大丈夫ずら……?」

 

「うん。……あ、花丸ちゃん、そのスクールアイドルの本読んでてくれたんだ! 表紙に写ってる凛ちゃんのウェディングドレス、可愛いよねっ♪」

 

 

でも、ふっと元に戻る。あの本屋で翔先輩と会って、特にここ数日からずっとこんな調子。……ううん、だんだん『陰』の部分が深くなっていってる気がする。明るい笑顔の底に、とっても怖い何かが大きくなってるような……。

 

 

「ウェディングドレスかぁ、いつかルビィも着てみたいなぁ……。タキシードはあの人で、うゆっ……♪」

 

 

……翔さんに相談するの、こっちのことの方がよかったのかもしれないとすら思っちゃう。いつの間にかいなくなってることも多いし……。

 

 

ルビィちゃん、一体どうしちゃったずら……?

 

 

 

 

 




花丸ちゃん回が終わり、ついに梨子の登場でキャスティング完全完了という感じですね。ヤンデレはもう少しだけお待ちください。クソ忙しいですが予約投稿で更新していきます。

……てか。やっとアニメ第1話まで終わったよ!!第1話が詰まってるから仕方ないんですけど。

ガリュウ432さん、高評価ありがとうございました!

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