ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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μ's短編を試験的に書きながら、長編も書き進めリクエストSSも書く……なかなかハードですねこいつは……





第19話 姉の心、弟知らず

 

「曜ちゃん、衣装デザインもうできたの!?」

 

「ふっふっふ、ばっちり描いてきたよ! 千歌ちゃんも翔くんも、見て驚け〜っ!」

 

「……えっと、なんか、アイドルっていうよりも制服っぽくない……?」

 

 

もともと千歌と曜が書きためていたアイデアを、ダイヤからもらったノートを元にアレンジして、完成させていく。あと2週間といっても、やれるかどうかの面での不安は感じない。

 

期限というのは不思議なもので、プレッシャーなのは確かでも、完成させるっていうモチベーションも与えてくれる。それに、今の俺は作業に没頭して気を紛らわs……

 

 

「翔くん……モノローグに浸ってないで、感想ちょうだいよ。男の人の意見も聞きたいんだから」

 

「えっ……可愛い制服だな。アイドルじゃなくて公務員。従業員。社員……」

 

「うう、ついに翔くんにも私の趣味を認めてもらえたんだね!」

 

「褒めてないわよ、これじゃ踊れないでしょ!?」

 

 

梨子鋭いツッコミも束の間、「そんな事もあろうかと……」とか言って次のページにはちゃっかり普通のアイドル服を描いてやがって、それを出してきた。初めからそうしろよ!まったく……。

 

曜は間違いなく衣装のデザインも服飾のセンスも抜群なのに、それがどうも趣味に偏っている。趣味だからこそここまで上達したのかもしれないけど……。

 

そんな、破茶滅茶ながらも一応、大事な会議。なのに油断すると、また俺はボーッとしてしまってる。理由は明白で、考え事をしてるからだ。

 

このままじゃ真剣にやってる(?)みんなに迷惑がかかる。顔でも洗ってくると言って、部屋を出て1階に降りて洗面台に向かった。そうして洗い終わった顔を鏡で見ると、我ながらやはり心ここにあらずといった様子だ。

 

 

記憶喪失の男。

 

スクールアイドルの手伝いをする男。

 

名前を間違えられる男。

 

用務員をする居候の男……。

 

 

設定だけ見れば色々ぶっ飛んでるが、特別イケメンってことはないと思うし、能力も平均的な男だ。仮にスペックが高い方だとしても、俺より上の人間はこの内浦にだっていくらでもいるだろう。

 

 

————……そんな俺がダイヤに、告白された。他の誰でもない、今鏡に映っている俺が。

 

あれだけカタいイメージのあった彼女が、スイッチが入るとあんな風になるなんて。そうやって思い出していると、まだ彼女の熱が身体に残っている気さえしてしまう。

 

だってあのダイヤが、あの彼女が、俺に……全くの予想外だったけど、現実に起きたんだから認めるしかない。

 

ただ、予兆が一切なかったか……と言われるとそうじゃなかったかもとは思う。予兆っていうよりは、フラグっていうべきなのだろうか。俺と彼女は昔からの付き合いのはずで……それも相当に信頼しあってる間柄だったからこそ、2人だけで『秘密』も共有したはず。

 

そのぐらいなんだから、『男として好き』ってのも不自然ではない話ではあったのかもしれない。その想いがくすぶり続けてた中で、一連の出来事で彼女の中にも変化があったに違いない……のだと思う。

 

 

『返事はすぐにとは申しません。……今は、あの娘達と鞠莉さんに勝つことに集中してください』

 

 

……こんな俺をずっと待っててくれた美人に告白されるなんて。それも記憶を失って、幼馴染の家に居候している真っ最中に。何度も何度も改めて考えても、冥利につきるというか。有り難いというべきなのか。

 

逆に言えば、そんな俺の状況でも関係ない……ってくらい、ダイヤの想いは強く、真剣なものだったってことだ。と、なればますます……

 

 

「……断れない、よなぁ」

 

 

一応言っておくと、なにも断りたいわけじゃない。彼女だっているわけじゃないし、ダイヤのことは……昨日のは流されるままだったけど、少なからず自分からも求めるくらいには、間違いなく好きなんだと思う。

 

うん、そりゃ好きなんだろう。『再会』からの付き合いは短いものでも、これまでの事で彼女がどれだけ真摯かつ魅力的な女性なのかは明らかで。普通、断る男は世の中にはいない。

 

……でも、小原さんとの勝負を抜きにしたって、応じるにしても記憶を取り戻してからにすべきだと思う。俺が俺として……『翔』として女の子とつきあおうとして、それもダイヤとなら。絶対にそうすべきだ。

 

当面の生活はもちろん、俺にはいろんな意味でまだ早い。むしろ、ダイヤに発破をかけられたと思って、記憶を取り戻すのもスクールアイドルも頑張らないと。

 

 

「よし、今度会ったらそう伝えよう。絶対に伝えよう」

 

 

甲斐性なしの俺だって、なんだかんだ一人の男だ。

 

好きって言ってくれて、大切なノートまで渡してくれた元親友にきちんとした義理を通したい。

 

ダイヤのことだって笑顔にしてみせる、と決めた以上は……

 

 

「翔のやつ、さっき降りてきたと思ったら何ブツブツ言ってるの? ちょっとキモいんだけど……」

 

「美渡、年頃の男の子には色々あるのよ?」

 

 

後ろでなんか色々言われてるけど、気にしない。男の子は強く生きなきゃいけないんだ……! 例え、お世話になってるお姉さん達に何と言われようと……

 

……ってあれ? いつの間にか居間にまで出てきてた。ここまで気が抜けてしまっていたとは、我ながら相当な重症らしい。でも、2人がこの時間からここにいるなんて珍しいな。

 

 

「あれっ志満姉さんは、どうしてここにいるんです? 今日はもういいんですか?」

 

「ええ。お客さんはちょっと出かけててね、こっちの居酒屋さんで遅くまで飲むらしいのよ。私たちが小さいころまでこの辺りに住んでた方でね」

 

 

ああ、それで今も叔父さんの厨房じゃなく、こっちの台所で晩御飯の準備とかしてもらっちゃってたのか。美渡姉さんは仕事が終わってくつろいでるだけだけど。そんなにお菓子食べてたら太りまs……うわ、睨まれた。女の勘って怖い。何も考えてないフリをしとこう……。

 

 

……待てよ、昔の知り合い?

 

 

名案が浮かんだかもしれない……ここでひとつ、声をかけておくか。

 

美渡姉さんあたりに聞かれるとバカにされて落書きとかされそうだから、いない隙を見計らって志満姉さんに話しかけたい。茶々を入れられても困るし。じゃああの食いしん坊姉様をどうにかしてから……これまたひらめいた。

 

冷蔵庫の中に、千歌のプリンがある。コイツを向こうの部屋に置いて……よし、喰いついた!今のうちだ!……赦せ千歌、後で同じの買ってきてやるから。

 

 

「ごめん、実は折り入って志満姉さんに頼みたいことがあるんだけど……」

 

「なにかしら? あの無欲で枯れて仙人で悟りきった翔君が頼み事なんて珍しいわね?」

 

「ちょっと、人のことなんだと思ってるんすか……」

 

「うちの千歌にあれだけアタックされても手を出さないんだから、そうなんじゃないの? お姉さんはいつ姪や甥の顔を見られるのか楽しみにしてるのに」

 

 

うぐ、そんな風に思われてたのか。確かに千歌の身体つきはああ見えて内浦トップクラス……って違う違う。煩悩退散、色即是空。

 

……よし、落ち着いた。こういうからかいに反応を返すと、俺が千歌を意識してるみたいで、からかうのが大好きなお姉さま方の思うつぼだ。志満姉さんだけでもこれなんだから、美渡姉さんがいたら捌ききれなかっただろう。そもそも、俺にはダイヤが……

 

……じゃなくて、千歌に手を出して万が一にもおじさんに殺されたくないし。

 

 

「2週間後に千歌たちがスクールアイドル部のライブをすることになってまして。近所の知り合いの人とか、昔の同級生とかに声をですね……」

 

 

盛大に話が逸れたが、俺が頼みたいのは要するにお客さん集めだ。

 

ダイヤにもさっき言われたけど、学校の生徒だけじゃどうやったって『条件』は達成できない。つまり、学校外のお客さんを集めまくる必要がある。そして、誰しもが一番身近で誘いやすい相手といえば、やっぱりまずは家族だろう。

 

 

「そうなの? ついこの間始めたばっかりだと思ってたのに、もうライブができるところまで来たのね!」

 

「え、ええそうです! いやー、これも努力の賜物ってやつですかね!あはは……」

 

 

あ、危ない危ない。流石に志満姉さんは鋭いな。

 

まさかあんな無茶な条件と引き換えにライブを取り付けた、とは説明できない。これについても、美渡姉さんがいたら追及されてたかもしれないことだ。俺の『仕事』が絡むと心配させちゃうからな。色々と心配させちゃうだろう。

 

千歌達すらいないこの場で裏工作みたいに頼んでるのも、俺がこっそり動いていると3人が知ると気を遣わせるからだ。みんなには、俺のことよりもスクールアイドルに集中しててほしい。

 

 

「話の腰を負っちゃったわね。えっと……ライブを見に来てくれる人数が欲しいってことでしょう? 何人くらいなの?」

 

「100人くらいですかね? 学校の方から、やるなら体育館を満杯にしてみせろみたいな事言われてまして……」

 

「あら、なんだか多いのね……? 一応、色々声をかけてみるけど。書道の先生とか、喫茶店のマスターさんとか」

 

 

……う、ドン引きされてる。確かに個人にお願いする人数じゃなかったかもしれない。俺だって言われたら驚くとは思う。

 

しかし、1人でも2人でも多い方が心強いんだ! ここは、『アイドルの恥はかき捨て』の姿勢で……

 

 

「しょーくん、いつまで顔洗ってるの? みんな休憩入ったよ」

 

「え!? なんでもないぞなんでも!」

 

「……あら、千歌には内緒だったのね? 相変わらず翔くんはシャイなんだから。でも、ふふふ。2人でこんなに相性ピッタリだなんて流石ねぇ」

 

 

不思議そうな顔でこっちを見つめる千歌、いつもより2割増でウフフと笑う志満姉さん。しょうがないだろ。千歌にも、姉さん達にも……手間はかけさせても、心配はさせたくないんだ。ただでさえ変則的に、俺の事情に巻き込んじまってるんだから……。

 

 

でも、相性って何の話だろう? 物凄く生温かい目で見守られてる気がする。いかにも『思春期のカップルが似たようなこと言っててカワイイ』みたいな感じの。

 

俺でさえ意図がつかめないんだから、今降りてきた千歌は当然从c*・ヮ・§?って感じの顔になっている。だがそこは深く考えないアイツの性格か、すぐに平常モードに戻って冷蔵庫に向かった。

 

 

……え、冷蔵庫?

 

 

「変なしまねえ? ま、いっか。休憩のためにおやつ買ってあるんだー、あのお店の限定みかんプリン♪」

 

 

あ……。

 

 

「あー美味しかった、まったく翔のやつも迂闊なところにプリンを……」ガラッ

 

 

 

美渡姉さんと、千歌の視線が重なる。

 

……俺、ライブの前に終わったかもしれない。

 

 

 

 




WiFiがあれば更新できる。そう、海外出張先からでもね。

姉さんのあの反応は、TVアニメ版をご覧の方には察しがつきますよね……?次回の20話とはちょっと前後編のような作りになってます。

グルジオさん、高評価ありがとうございます!!!!
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