ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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国内外の多数の出張から帰ってきました。

梨子ちゃんのヤンデレって、性的な方向でばかり考えてしまう私がいます。R-18は書けないですが、偉大な先人である他作者様の方向性もそうなので、だいたいみなさん同じ考えですかね?(というか私の場合グロがないのでついついその方向に走りがち…)

少し長くなりそうだったので前後編に分けました。




愛の旋律 ・前編【桜内梨子】

ドンドンドン…… ドンドンドンドン……

 

 

僕一人しかいない部屋の玄関のドアを、誰かが叩く音がする。

 

そして、僕のことを呼ぶ声も……。

 

 

「ねぇ、いるんでしょ~? 鍵開けてよぉ」

 

 

僕は最近、どこに行っても彼女に……桜内梨子に会う。

 

その手段はわかってるんだ、シンプルな話で……彼女は僕をストーカーしてる。そしてその理由も見当がついていたりもする、僕が認めたくないだけで。

 

 

桜内さんは……僕に異常な程の好意を抱いているのだ、と。

 

 

彼女のことは嫌いじゃないし、むしろ好きな方……だった。幼馴染の千歌だってお世話になってるし、ひとりのAqoursのファンとしても、彼女のことは応援してる。

 

Aqoursは僕に元気をくれたし、応援するときのブレードを桜内さんの色にしたことも一度や二度じゃない。

 

 

でも……いくらなんでもストーカーされることになるなんて、一体だれが予想できたことだろう。

 

 

だから僕は怖くなって、近所に買い物に行こうとする両親を無視して電気まで消して、今晩は留守番して逃げていた。なのに、それは完全に徒労に終わってしまった形になる。電気を消す瞬間も、初めからきっと見られていたんだろう。

 

内浦に来た当初こそ、都会の高嶺の花で儚い少女って感じだった彼女だったのに。千歌たちとスクールアイドルをする中でいつの間にかたくましく育っていて……今ではこうして2階の窓に登ってきている。こんな成長は僕は望んでなかったけど。

 

 

バンバン、バンバンバン……

 

 

(なんて考えてるうちに、だんだん押されてきてしまった)

 

 

ドンドンとドア叩く音がバンバンと窓を叩く音にランクアップした。ちょうど登りやすい物置とか台になるものがあって便利なんだ。親に撤去を依頼したいけど、大人にどう思われるかわからなくてまだ相談できてない。今の桜内さんは大切で、デリケートな時期だから……。

 

まぁ、撤去したり移動させても、どうせ次は脚立か梯子を持ってくるんだろうけど。

 

 

「このままじゃ近所迷惑だよー? 誤解も招いちゃうし、開けてよー?」

 

 

彼女にとっての周囲への『誤解』とは、多分『カップルが仲たがいしている』という意味での誤解なんだと思う。

 

こういったストーカー行為の節々はご近所や親にも目撃されてはいるが、今のところはまだちょっとした冗談の類だと思われている。というか、そもそも僕たちはカップルじゃない。

 

 

一体どうしてこうなってしまったのか、ベッドの下で震えながら思い返す。

 

 

そう、あの日僕が千歌について行って東京に行かなければ……

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……この携帯落としたの、キミかな?」

 

 

そう。桜内さんと最初に出会ったのは、東京。

 

僕はその時、偶然千歌について行って東京に遊びに行ってたんだ。そこでやけにたくさんの荷物をもって、焦って走る女の子とすれちがった。そして彼女の鞄から、可愛らしい携帯電話がスルリと落ちるのが見えた。

 

 

—————————届けないと!

 

 

生来のお人好しの僕は、考えるよりも先に体が動いていた。

 

走って追いかけたけど、どうも知らない男に追い回されていると思われたらしく(事実だけど)、向こうも必死に逃げる形になってしまった。

 

そしてなんとか路地裏のあたりで追いついたけど、どうしても止まってくれなかったから手を前に出したところ、いわゆる『壁ドン』の形になってしまったのだ。萌えシチュとか言われるヤツ。

 

 

そして回想の冒頭の言葉を言って、携帯を渡す。

 

彼女は「ありがと……」と小さく言ってくれたけど、通行人に警察に通報されてたら大変だと気づいたので、別れを告げて逃げるように静岡に帰った。

 

知らない土地で誤解されて捕まるなんて絶対嫌だったし。

 

 

 

……話を戻そっか。どうも、その「壁ドン」がよくなかったらしくって。

 

桜内さんはその……そういうシチュエーションとか漫画とか好きなタイプらしく、あの日焦って走っていたのも沢山の荷物も、そういった同人誌絡みだったから逃げてたのもあったようで。

 

僕たちは桜内さんが引っ越してくる形で、運命的にこの静岡で再会した。そして彼女は、以前の事もあって、僕に一目惚れしてしまったらしいのだ。

 

とんでもない美人である桜内さんに好かれているんじゃないかと思えた時、僕は飛び上がって喜んだ。「もしかしたら、あの美人に好かれてるかもしれない!」ってはしゃいでたら、千歌のやつはなんだかやけに不機嫌だったけど。

 

いやキモイのはわかるけど、それでも嬉しいでしょ普通!

 

……って思ってたのも束の間。最初に僕が語ったように、そこから桜内さんからの、ストーカー紛いの日々が始まったんだ。

 

 

『ねえ、今日一緒に帰らない?学校は違うけど、道は一緒だもんね♪』

 

『千歌ちゃん達と何を話してたの……?ねえ、私には話せないこと?私って、キミにとってその程度なのかな……』

 

『毎日カップラーメンばかり食べて。いくら男の子でも体壊すよ?その……よかったら、私料理の練習してるから晩御飯作りにいってあげられるんだけど。いい?』

 

『おはよう♪ え?私がお部屋のお掃除に来るのは当たり前じゃないの?こんなに散らかして、ズボラなんだから。あれ、何か変だった……?』

 

『ほらこれ!ちょっと気が早いかもしれないけど、お母さんから姓名診断?の本借りてきちゃった。これで一緒に子供の名前考えようね』

 

『私、悩んでるんだけど……将来住む場所、内浦か東京かどっちにしようかって。学校は無くなっちゃうから、教育面では東京かもしれないけど。内浦の景色も絶対、多感な子供たちには大切だと思うの』

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

……もう一度言うけど、断じて僕は桜内さんとつきあってなんかいない。周りは彼女のあまりにも当然のような態度に騙されて気づいていないけど、そもそも告白された覚えすらない。

 

でも、それを桜内さんの名誉のためだとなしくずしにして、今まで黙っていた僕にも問題があったのかもしれない。どこかでハッキリと言うべきなんだ。「キミが勘違いしているんだ」と。「僕たちは恋人じゃないんだ」と。

 

彼女自身のためにも、僕自身のためにも……。

 

 

「もう、あんまりイジワルしないでよね。開いてる窓が一つだけあったから入れたけど、こんなゲームで試さなくたって私は貴方だけの彼女なんだから♪」

 

「梨子、それは……」

 

 

……やってしまった。全部鍵をかけたつもりだったけど、梨子が見張ってると思うと隠れることを優先してしまって、母さんたちの部屋の窓をよく見てなかったんだ。

 

ついさっき、次からはハシゴがどうこう言ったけど、今日すでに準備していたらしい。

 

 

「……なんだかすごく辛そうだね。もしかして、一人になりたかったの? 学校で嫌なことでもあったのかな……?」

 

 

なんでその気遣いを、他のところに回せないんだよ……!

 

 

「確かに悩んではいるよ……。桜内さんの言う通り、一人にして欲しいんだ」

 

「もう、また『桜内さん』だなんて。そう呼べる時間が残り少なくて、名残惜しいのはわかるけど……そろそろ、『梨子』って呼んで欲しいな?」

 

 

彼女はストーカーになってから、僕の言葉も都合よく解釈するようになってしまった。マトモな会話は通じず、本心から自分を彼女だと思い込んでいる。

 

さっきも言ったとおり、僕以外には極めて自然な対応をとっているから、周りは全く気づいていないけど。千歌あたりは薄々気づき始めている気もする。

 

 

「そうじゃない……僕と桜内さんは恋人じゃない。そりゃ、嫌いじゃないけど……だけどこんな関係は間違ってるよ!」

 

「……? 確かに、恋人どころか永遠を誓い合った仲だけど、その言い方はちょっと酷いと思うよ? それとも、さっき言ってた悩みって、私たちのことについて何か言われたのかな……」

 

 

不安そうに首をかしげられても、僕の答えは変えられない。もう、言うんだ。今日で終わらせよう。

 

 

「酷くなんかない、事実を言ってるんだ。桜内さん……俺たちの間に恋愛関係なんかないよ!いったいどうしちゃったんだよ……!?」

 

「……最近気づいたんだけどね?貴方の優しさに私以外のみんな、あんまり気づけてない気がするの。何か話せない悩みがあるのはわかるけど、二人きりの時はガマンしなくていいのよ?」

 

 

やっぱり、会話が噛み合わない……。ここまで来ると、イライラするよりも恐怖が勝ってくる。正面きって言っても、全然通じないなんて……。こんなの、どうしたらいいんだ?

 

 

「ほら、この携帯。貴方と私を繋いでくれた愛の証……♡ 機種変しても、今も肌身離さず持ってるの。辛い時はこれを見て、一緒に……」

 

もう、やめてくれよ……!その光のない目で、愛おしそうに僕を見ないでくれ!

 

 

「梨子っ……!」

 

 

 

その瞬間、僕は咄嗟に彼女の名前を呼んで、携帯を払い落としてしまった。

 

壊れはしないまでも、携帯は床に落ちて音を立てる。僕は思わず手を上げてしまったことに後悔して桜内さんを見ると、彼女は唖然とした様子でわなわなと肩を震わせていた。

 

 

『信じられない』

 

 

彼女の目はその一言だけを無言で語っている。

 

桜内さんにとって、正しくあの携帯は僕たちをつなぐ愛の証だったのかもしれない。だとしたら、僕は図らずも『正解』を選んだと言うことなのだろうか。

 

じゃあ、今しかない……!?

 

今がチャンスなのか……!?

 

 

「ウソ……だよね? 私をからかってるだけ、なんだよね……?」

 

 

桜内さんは生気を失い、まるで幽鬼のようにフラフラと僕に近づいてくる。動揺のせいか、目の焦点も心なしか揺れているように感じた。

 

 

「ウソじゃ……ないよ!毎日毎日、キミのストーカー行為にはもうウンザリなんだ……!」

 

 

彼女が近づいてくるのに合わせて、僕は後ずさりして距離を取った。梨子の目には涙も見えている。その悲しみは演技じゃないこともわかってる。本当は辛いけど、今逃したらきっと二度と言えなくなる。

 

 

「東京で偶然出会って……この内浦でも再会できたんだよ?私たちって、運命の相手なんだよ……!?」

 

「本当に偶然だっただけだよ!僕たちは告白もしてないじゃない。デートだってまだだし、結婚の約束なんてない。料理も掃除も頼んだ覚えなんてないし、運命もないよ!!」

 

 

つい、強い口調が出てしまった。僕ももしかして、たまっていた鬱憤があったのだろうか?

 

どちらにせよ、その語気がトドメだったのか、梨子は気力を失ってその場にへたり込んでしまった。

 

虚空を見つめてブツブツと何かを呟いているくらいだから、相当なショックなんだろう。こんな状態で彼女を置いて行くことは、本来ならすべきではないのかもしれない。

 

それでも、僕はもう……!!

 

 

「ごめん、桜内さん……お母さんに電話して迎えに来て貰うから。今日はもう、帰ってくれ……」

 

 

その後、桜内さんのお母さんはある程度察していたのだろうか。意味深な表情をしながら彼女を連れて帰っていった。

 

いつか、こうしなきゃ行けなかったんだ。そうしないと僕が保たなかった。仕方、なかったんだ……。

 

親が帰ってきた後も、僕はずっとモヤモヤとした気分だった。

 

どうしたらよかったんだろう。彼女を傷つけない方法もあったんじゃないか。

 

これを機に桜内さんがもし、自分を傷つけるような方向に行ってしまったらどうしたらいいんだろうか。

 

もし明日、何事もなく学校で会ったらどうしたらいいんだろうか。

 

 

 

 

……そんなことばかり考えて、とても眠れなかった。

 

 

 

 




長期の出張の間に185000UAありがとうございます!慢心せず、目指せ200000UA。

リクエストSSも含めたら書きかけの短編が10個以上温まっている状況です。長編の『聖良、理亞過去編~現在とヤンデレに至るまで』とか、短編でも『ダークルビィちゃんヤンデレハーレム計画風雲編』とか、『DV彼女果南ちゃん!編』とか『千歌VS曜、仁義なき戦い編』とか。早く書かないとですが仕事が……お待たせしてすいません。

アンケートを設置したので回答よろしくお願いします。

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