ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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世界中大変で私もえらい大変ですが、更新していきたいと思います。

Aqoursのライブが見たい……





第29話 怒れる乙女はお年頃

「えーっ!? 『()()入部』〜!?」

 

 

千歌がそんな大声を上げたために、みんな思わずそちらを振り向いてしまう。やっと部員が増えてくれるかと思ったのに、焦らされたような気待ちになるのは分かるけど。

 

 

何もそんな声出さなくったって———————

 

 

 

「…………体験入部って、何?」

 

 

——————全員が盛大にズッコケてしまった。このバカチカ、単に分かってなかっただけかよ!? 毎度のことだけど、心配して損した……。

 

まぁ、俺にも聞きなれない言葉なんだけどさ。そこはなんとなくでいいから、少しは想像してくださいよ高海千歌さんや!?

 

 

「千歌ちゃん……多分、仮入部って事だと思うよ。ほら!『お試し』とかそういう感じの」

 

「練習を実際にやってみて、それでやっていけそうだったら入るし、合わなさそうならやめておくし……って事でしょ?」

 

すかさず、曜と梨子がカバーしてくれた。うんうんそういうこと。

 

スクールアイドル部に限らず、高校に入って初めての部活なんだから、最初から気負い過ぎる必要はないだろうし。

 

 

「そ、そうです! ごめんなさい、一生懸命やってる先輩たちに、なんだか失礼かもしれないんですけど……」

 

……って言っても、さっきの叫びを聞いたルビィちゃんは、恐る恐る横目で千歌の様子をうかがっていた。

 

その千歌の方といえば、曜と梨子の説明を聞いてるのか聞いてないのか、下を向いてプルプル震えている。今のルビィちゃんみたいに、コイツの事をよく知らない人だと、確かに不安にもなるだろう。

 

 

 

だけどこの反応は、『ただ興奮してるだけ』っていう時のパターンで……

 

 

「ううう……やった、やったーー!これでラブライブ優勝だよ!もうAqoursはレジェンド確定だよぉー!」

 

 

ほーら、いつも通りの予想通り。

 

「2人とも入部ありがとう~!」なんて言いながら、感極まってまとめて抱きついた。ルビィちゃんの「ピギッ!」という独特の驚きの声と、国木田さんの「ずらっ?」という独特の語尾が同時に聞こえてくる。

 

曜はもちろんのこと、梨子も理解してきてるんだろう。あちらもこの結果が分かっていたように、やや呆れ気味の反応だ。

 

 

「まだ体験入部なのに何言ってるのよ。それに、流石に夢大きすぎでしょ……」

 

「ごめんねお二人さん。千歌ちゃんは感極まっちゃうと、いつもこうだから」

 

 

にしても、今回の千歌といい。手つないだ時もそうだけど、仲の良い女の子ってすぐくっつくんだなぁ。……なんだろう、うっすらと昔の記憶が思い出せる気がする。困ったらすぐハグをしたがる女の子が身近にいたような……ダメだ、思い出せそうにない。

 

そうだな。俺も女の子だったら、千歌の柔らかいかr……

 

 

い、いかん。また煩悩が。だいたい記憶の事だろう俺よ。

 

 

「しょーくんだってそう思うよねっ♪ 私たち『スクールアイドルAqoursは、ラブライブ優勝までもう誰にも止められないんだ』ーって!!」

 

「ぅおわっ!? ち、千歌~!?」

 

 

なんて考えてると、千歌の奴が思いっきり抱き着いてきた。 こ、こやつ心が読めるのか。じゃなくて!普段はお互い齢もあって恥ずかしがるのに、こうして感動するといつも子供に戻るんだから……!

 

 

うっ、またあの物凄く大きく育った内浦産のみかんの感触が……!!

 

 

だ、だめだだめだ。国木田さんとルビィちゃんも見てる! おばさんや志満姉さん美渡姉さんの悪い笑顔も目に浮かぶ。

 

俺の心の中のダイヤだって『翔さん、私ではなく……まさか女の子なら誰でもよかったのですか?』とか蔑んだ目で見てる。小原さんも『ケダモノね』とか言ってるし、松浦さんも『千歌よりも私とハグしようよ!』って……………………ま、松浦さん!?

 

 

「あっ、しょーくんニヤけてるー。ホントはしょーくんも部員が増えて嬉しいんでしょ? ラブライブに向かって突っ走ろーね!!」

 

俺の心はどうなってるんだ……ってごちゃごちゃ考えてる場合じゃない。と、とにかく千歌を振りほどかないと。

 

 

「違うっての、ただ落ち着けってだけだ! は、はーなーs……」

 

 

 

「———————はい、千歌ちゃんそれまでね。これはさすがに『違反』だよね〜……?」

 

「そうそう、離れようね~。じゃあ、お話あるからちょっと来てくれる? 翔くん達は待ってて」

 

「ほぇ? ち、違うのおふたりさん! これは他意はなくてですね~……ちょ、ごめん!お願いだからゆるして~!」

 

 

……え?

 

あ、連れ去られていく。

 

何が何だかわからないまま、突然怖くなった曜と梨子に、千歌が引きずられていった。一瞬呆けてしまったけど、2人の表情を見た瞬間に、俺はある一つの事実だけを察した。千歌はこれからとんでもなく酷い目に遭う……という事実に。

 

ち、千歌が何をされるのかも気になる……。なんだろう、何があの2人の琴線に触れてしまったんだろう?

 

聞こえてくる悲鳴から何かお仕置きじみたことをされているのはわかるが、怖いから考えちゃいけない気がする。そっとしておくのが一番なのかもしれない……。

 

ダイヤに謎の対抗心を抱いていることといい、未だに意図がつかめない松浦さんといい、理事長といい美渡姉さんといい……なんだか女性のことがわからない。あれ、さっきまで、松浦さんについて何か考えてたような……思い出せないなら、あんまり大事じゃないのかな?

 

 

「あ、あの~。千歌先輩は大丈夫なんですか?」

 

「ああ……きっと大丈夫だと思う。きっとじゃれてるだけだよ、きっと」

 

「うゅ。あ、あんまりそうは見えませんでしたけど……」

 

 

おっと……千歌達のことばかり気にしてしまってたけど、此方の2人のことを忘れるところだった。うん、こうしてみると国木田さんとルビィちゃんも、基本はあんまり喋らない方なのかな。少なくとも、おとなしめなタイプなのは間違いないよな……。

 

千歌と曜は元気バリバリだし、梨子もああ見えて、根は結構アクティブだし。そういう意味ではAqoursにとっては新しいタイプのメンバーなのかもしれない。

 

そうなってくると、1人で入ってくるわけじゃないとはいえ……気を遣う所も多くなりそうだ。ただでさえ1年生なんだし、ちゃんと不安は取り除いてあげないといけない。そうだな、何から話してあげよう。

 

 

「えーっと、なんだかヘンなの見せちゃったけど。とりあえず体験入部ありがとう。千歌たちだって、まだ始めたばかりだし、失礼だとか考えなくても大丈夫だよ。何かわからないとことか、あったりする?」

 

 

とりあえず、当たり障りのないところから当たってみた。『練習の厳しさ』とか『グループ名の由来』とかを想定してたんだけど、かなり重要でかつ、意外なことを切り出された。

 

 

「そんな、むしろ入れてくれて『ありがとうございます』ずら。それで、そのことなんですけど……」

 

「あ、それは私から言います。実は、『体験入部しよう』……って考えてくれたのは花丸ちゃんなんですけど。『これならお姉ちゃんにもバレないんじゃないか』って。お姉ちゃん、スクールアイドル部のことを色々気にしてるみたいなので、しばらく言わないようにした方がいいのかな……って思うんです」

 

「ルビィちゃんが今言った通りずら。なので、しばらく生徒会長さんには秘密でお願いしますずら」

 

 

そうだったの?と国木田さんの方を見ると、意味ありげなウインクが返ってきた。あ、かわいい。

 

やはりと言うべきか、俺の懸念もそこだったんだけど……ルビィちゃんは大好きなお姉さんこと、ダイヤの奴をかなり気にしているらしい。『スクールアイドル部に入部する』なんていきなり話したら、どんな反応が返ってくるかわかったものじゃない。毎日顔を合わせてるんだから、なおさらだろう。

 

だがそこは、国木田さんが上手い方法を考えてくれたってわけだ。本格的に部活に入ると当然、生徒会に入部届けを出す必要があるし、スケジュールの関係ですぐバレるに決まってる。

 

……だけど、体験入部なら必ずしもそうじゃない。しかも、迷うルビィちゃんの背中を押しつつ、国木田さんにとっては『自分を変えたい』というチャレンジの第一歩にもなる。

 

 

「そういうことなら分かったよ。ダイヤや他の人には秘密にしておくし、千歌達にもそう言っておく」

 

「ありがとうございます先輩! やったね、ルビィちゃん。いよいよ本物のスクールアイドルだよ~!」

 

「よっ、よろしくお願いしますね! これで翔先輩とも……

 

 

以前に相談に乗った時に『他の人も誘えばいい』と言ったのは、確かに俺だったけど……うん、これなら当面はバッチリだ。条件についても、千歌達は快く了承してくれるだろうし。

 

 

「こっちこそよろしくね! さっきも言ったけど、悪いようにはしないからね~♪」

 

 

あ、本人が後ろから戻ってきてた。案の定ボロボロだ……やっぱ何があったかは聞かないでおこう。多分それが一番だと思う。

 

曜と梨子も帰って来てるし、掃除を終わらせて早めに練習を始めるか。俺達も苦労したように、初心者の2人も最初はてこずるだろうから、しっかり助けてあげないと……

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

「ワン、ツー、スリー、フォー!」

 

 

——————とかのんびりと構えていた俺は、それがいい意味で裏切られるとは思っていなかった。ルビィちゃんが、かなりスジが良いのだ。

 

 

運動部にいたことはない、って言ってたけど……伊達にスクールアイドルを追いかけてたわけじゃなかった……ってところか。好きこそ物の上手なれってことわざもあったな。今だって華麗にステップを決めて、みんなに絶賛されている。

 

そういえばと、『部活になったAqoursが学校のどこで練習するか』考えてなかった俺達に対して「μ'sは屋上で練習してたらしいですよ!」と、ついさっき教えてくれたのも彼女だ。ステージの上でも、そうでないときも大活躍できるのかも。

 

 

「や、やりました!できましたよ! 翔せんぱーいっ♡」

 

「さっすがルビィちゃん! オラも頑張らなきゃだね」

 

「う、うん。いきなりこれだなんて素直に凄い。いやあ、まさかここまでとは思ってなかったなぁ……」

 

 

だからこうして富士山の見える絶景で練習できてるし、Aqoursの将来も明るいって思えてきた。体験入部どころか、今ここにいるメンバーの中で一番成長してしまうかもしれない……って、安心するところなんだろうけど。

 

俺には簡単に安心できない、大きな不安要素を一つだけ感じていた。

 

 

……なんだかルビィちゃん、何かするたびに、俺のことを見てないか?

 

 

今だって、アイドルがステージで向けてくれるカメラへの視線、みたいなものを感じていた。これは自意識過剰じゃないと思う。だって第三者だって気が付いているから。

 

千歌、曜、梨子の目がめちゃくちゃ怖いし。さっきと同じオーラをまとってるし、ドスの利いた話し声が聞こえてるし……。

 

 

「……翔くんやっぱ年下好き?ていうかルビィちゃんも年上好き? ていうか翔くんのこと絶対好きだよね?」

 

「私たちも一応1年分は年下だけど、恋愛って『2歳差からのほうが相性がいい』ってこの前の雑誌に書いてあったわ……これは強力なライバル出現かも」

 

「む~~~!姉妹揃ってしょーくんにあんな顔して! さっきもしょーくんは私でドキドキしてくれてたし、負けないもん……!」

 

 

遠いから内容まではよく聞こえてこないけど、なんだか聞いたらいけない話だってことは肌で感じている。だって怖いし!

 

そしてもう1つ、恐怖が増す理由……さっきの千歌の件はよくわかってなかった俺でも、今回のは何が問題なのかがハッキリとわかったからだ。

 

 

 

——————俺はこの3人に、『純真無垢で男との距離感がわからないルビィちゃんに手を出そうとしている変態』だと思われている!!

 

 

そうだ、そうに違いない。それ以外にあり得ない。くっ、ルビィちゃんがスクールアイドル部に仮入部しただけで、ここまで元気になってくれるとは思ってなかった。それはそれでいいことなんだけど、この誤解を何としてでも解かなくては……

 

 

 

……そうだ。少し素っ気なくしてみよう。ルビィちゃんを傷つけない程度に。

 

今の状態が続けば、後ろで黒いオーラを出してる3人に何をされるかわかったものじゃない、ちょっと罪悪感はあるが、みんなが幸せになるためだ。心を鬼にして……って、満面の笑みでそんなに近くに寄ってきていいのかルビィちゃん!?

 

 

「翔先輩、もっともっといろいろルビィに教えてくださいっ♪」

 

 

ア、アウトー!そのセリフ回しはアウトだよルビィちゃん!! ほら、後ろからのプレッシャーが強くなったよ!怖がらせちゃうから『気づいてくれ』とも言えないけど!

 

 

「こんな積極的なルビィちゃん、初めて見たずら……。スクールアイドルへの想いが、人見知りも克服したのかな?」

 

……あれ、でも国木田さんの言った通りだよな? ルビィちゃんが男との距離感がわからないのは確かだけど、それだけなら、なんで俺にはこんなに近づけるんだろう? 他のどんな男にもできるってわけじゃないし、女の子にだって恥ずかしがりがちなのに……

 

 

あ、それどころじゃなかった。今ちらっと見たけど2年生3人はもうキレる寸前じゃないか!?

 

 

落ち着け、落ち着くんだ翔。ショウじゃなくてカケル。ちょっとでも遠ざけるんだ、言葉を選んで、選んでさりげなくだ……!!

 

 

「い、いや。俺が踊ってるわけじゃないしさ、教えてるの千歌達だしさ~……それに、男の俺にあんまり近づきすぎたらよくないっていうか、その……」

 

 

よし、これでたぶん完璧——————……

 

 

 

 

「えっ? わ、私また先輩に馴れ馴れしく!? もしかして汗臭かったりしました!? ご、ごめんなさ~~~い!!」

 

「「ル、ルビィちゃ(~)ん!?」」

 

 

 

……

 

………………えっ。

 

こういう時、素っ気なくしてもダメだったの!?

 

 

 

待ってくれルビィちゃんと、国木田さんとハモったのも一瞬の事。彼女は顔を真っ赤にしたまま行ってしまい、もう屋上には影も形もなくなっていた。やばい、完全にやっちまった……。

 

国木田さんも唖然としてるし、妹を泣かせた男としてダイヤに申し訳が立たない(スクールアイドルを許可なくやらせてる時点で立ってない気がするけど)。

 

 

そして何より、背中に感じるこのチリチリとした感覚、心臓を鷲掴みにされたような恐怖の正体は……。

 

 

 

「———————翔くん、ちょっと私たちとお話しよっか。今度は私じゃなくて翔くんの番だよ」

 

「ルビィちゃんに手を出そうとした上に泣かせるなんて、そんな悪い子は……この曜ちゃんがしっかり管理してあげないとね~……?」

 

「花丸ちゃんが見てる前じゃダメだからね、あっちに壁があるから、そこに行きましょう。大丈夫、痛い思いをするのはちょっとだけだから……」

 

 

 

……あ。

 

なんか俺って、定期的に社会的な死を迎えてない……?

 

 

 

 

 




恋ゆえに怒る乙女。


生活環境が変わったことにより、土日や長期休暇に一気に書くスタイルに戻りました。ただでさえ更に仕事が多忙になっているのにこの仕打ち……。これまで以上に集中力と、仕事の時間の管理を徹底していかなければ。

GWも大規模更新する予定だったんですけど、仕事でそれよりはペースが落ちそうです。

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