ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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LAライブ放送が最高すぎて燃え尽きています、べーたです。





第31.5話 同じキモチなのに【国木田花丸】

「あ、あの〜……レジ、良いですか?」

 

 

それが、翔(かける)先輩との最初の会話でした。

 

スクールアイドル部の仮顧問?それとも、マネージャーさん? 未だによくわからないけど、とりあえず用務員なのは確実そうです。

 

……うーん、呼びにくいからやっぱりご本人も言ってる通り、『翔(しょう)先輩』って呼ぼうかな? 用務員さん以外にもいろんなバイトしてて、本屋の店員さんだったよね、最初は。

 

 

「君は確か……国木田さん?」

 

「本屋さんでバイトしてたカケルさん、ですか……? 本当に用務員さんだったんですね!」

 

 

まさか、いつも行く沼津の本屋さんでスクールアイドル部の勧誘を受けるなんて意外だったけど……。学校でも会えるなんて、もっと意外だったずら。

 

その後、部活でもお世話になるだなんて、まるでオラの好きな小説みたい! おばあちゃんも良く言ってるけど、本当に人と人との『ご縁』って不思議だよね。

 

 

そうして知り合った翔先輩は、オラが出会った来た人の中でも、とってもいい人です。

 

まだあんまり仲良くないはずなのに、オラの相談にも親身になってくれる!

 

 

「……それは今の自分が輝いてない、ってこと?」

 

「はい。オラ……私も、こんな風に本ばかり読んでる目立たない子ですけど、本当はキラキラしたものを持ってて、でも何かが間違って、こうなっちゃったんじゃないかなって……思っちゃうことがあるんです」

 

 

……オラの悩み。

 

それは、ルビィちゃんと一緒にスクールアイドルで輝いてみたいのに、二の足を踏んじゃってる事……。

 

ルビィちゃん自身が躊躇っているのが一番の理由だったけど、オラだってすっごく不安だった。運動は苦手だし、アイドルなんて詳しくないし。何より、やったところで、本当に自分を変えられるのかなって悩んでいたんです……。

 

 

 

「踏み出すより思い切って飛び込んじゃえばいいんだよ。何もしなくて変わらないままならさ」

 

 

 

でも、翔先輩のその言葉と……

 

 

 

「私たちの夢だってただ見てるだけじゃ、始まりません。叶えるために、始めたんです!上手く言えないけど、今しかない瞬間だから……輝きたいって思って!」

 

 

 

千歌先輩たちAqoursのライブを観に行って、オラは決心したんです。

 

 

 

——————スクールアイドルってすごい。先輩たちってすごい。オラも、なってみたい!

 

 

突然の停電だって乗り越えて、こんなにたくさんの人に応援してもらって。最高のステージでみんなを笑顔にしてみせた!オラの周りを包み込む歓声……気がついたら、自分も声を出してた。ルビィちゃんと一緒に、夢中で拍手してた!!

 

それは何もかも、未知の体験でした。

 

でもでも、そんな物凄いことをやってみせた千歌先輩たちも『初めて』だったはず。ならきっとオラも、今始めることで変われるんじゃないかなって……そう思えたんです。うずうずして、我慢できなくなったオラは、いよいよ入部届を出そうとしました。

 

 

だけど、もう1つの解決していない悩みが、またオラの足を止めようとします。……ルビィちゃんのことです。

 

 

ルビィちゃんは、もともとオラ以上にスクールアイドルが大好きで、自分でもやってみたいって思ってました。むしろ、オラに最初に興味を持たせてくれたのは、ルビィちゃんがきっかけだったくらいですし。昔、友達になって以来……ずっと彼女がアイドルになりたがっているのを見てきました。

 

なら喜んで一緒に入部するところ!って思われそうなんですけど……。なんと彼女のお姉さん、生徒会長の黒澤ダイヤさんは、昔と違ってスクールアイドルを嫌っていたのです。

 

 

「それって、あの人がルビィのことを誘ってくれて……あ、あれ? 私、今なに考えてたんだろ。お姉ちゃんの嫌がること、しないほうがいいのに……」

 

 

ルビィちゃんは、誰よりもお姉さんのことが大好きで、尊敬しています。

 

それこそ、スクールアイドルと同じくらいに……。この2つを比べることになったルビィちゃんは、ずっと悩んでいました。お姉さんをイヤな気持ちにさせないようにするべきか、自分の夢を大切にするべきなのか。

 

だからオラは、最初は部活に誘うべきか迷っていたんです。そんな時、またまた翔先輩の言葉を思い出したんです!

 

 

「……じゃあさ、他の人も誘おうよ」

 

「ほ、他の人って……?」

 

「そのまんまの意味。ルビィちゃん、だっけ……? あとは誰かが背中を押すだけって感じだと思う!」

 

 

———————オラが、背中を押してあげられれば。ルビィちゃんは、大好きなスクールアイドルができるかもしれない。例え、短い間でも……!

 

そう思って、来る日も来る日も考えていました。そしたらふと、昔読んだ青春小説を思い出して、いい案が浮かんできたずら!

 

 

「ルビィちゃん、この前のライブ凄かったよね! やっぱり、一緒にスクールアイドル部……やってみようよ」

 

「えぇっ!? い、いいの花丸ちゃん! でもルビィ、人前とか苦手だし……お姉ちゃんが嫌がると思うし……」

 

「うんうん。それで、オラにいいアイデアがあるんだけど……こうしてみない?」

 

 

それが、3日前に先輩たちに伝えた……体験入部!

 

 

「実は、私たち2人を……『体験入部』させて欲しいんです!」

 

「体験入部~?」

 

 

先輩たち3人が驚いてる中、翔先輩も意外そうにオラ達をちらっと見た。ふふふ、『その手があったか』って思ってるの、顔に書いてあるずら♪

 

オラ達2人で体験入部するっていうアイデア……。我ながらバッチリだよね!

 

正式な入部届は出ないから、お姉さんにはしばらく隠し通せる。オラも自信がないのを誤魔化せる……っていうのは、恥ずかしいから秘密だけど。

 

そこからは、 5人と1人で練習が始まったんですけど……とにかく、そこからはルビィちゃんはとんとん拍子!

 

 

「や、やりました!できましたよ! 翔せんぱーいっ♡」

 

「さっすがルビィちゃん! オラも頑張らなきゃだね」

 

「う、うん。いきなりこれだなんて素直に凄い。いやあ、まさかここまでとは思ってなかったなぁ……」

 

翔先輩も驚いてるけど、オラも驚いてるずら。こんなに上手くステップが踏めるなんてきっと天才だよ!

 

しかも、驚かされたのは練習のことだけじゃなくて……

 

 

「翔先輩、もっともっといろいろルビィに教えてくださいっ♪」

 

「こんな積極的なルビィちゃん、初めて見たずら……」

 

 

スクールアイドルへの想いが、人見知りも克服したのかな? とにかくこれは結果オーライでした。実はオラの体験入部のアイデアには、もう一つ思惑があったりして……

 

それは……ルビィちゃんと翔先輩を急接近させること!

 

あっ。その理由から説明しなきゃダメだよね……。ここ最近のルビィちゃんは様子がおかしかったけど、その理由にオラはついに気づいてしまったずら。

 

 

 

なんとなんと!ルビィちゃんは翔先輩に、『恋』してるずら〜!!

 

 

 

え゛っ……し、 知ってたずら!?

 

ま、まあ、恋愛経験のないオラでも気づいたくらいだもんね……。

 

あのルビィちゃんを見て気がつかないのは、よっぽど鈍感でダメな男の子くらいだと思うずら。おばあちゃん達の時代ならともかく、今時そんな人いるわけないz……

 

 

……肝心の翔先輩が気づいてないっぽいずら……。

 

 

じゃ、じゃなくて! ルビィちゃんがここのところ、オラと翔先輩と話した時に怖くなったり、スクールアイドルと一緒に翔先輩のことを考えてたりするのは、恋に違いないよねって話。

 

恋ゆえに女の子は嫉妬し、恋ゆえに近づきたい……文学的ずら〜!

 

その気持ちに気がついたオラはこの体験入部を通して、ルビィちゃんが翔先輩と話せるようにお膳立てしてあげようとしてました。その結果は、見ての通り大成功!……ってほどでもないかな?ルビィちゃんは大事なとこでまだ逃げちゃうし。

 

でも、十分進歩してると思う!

 

 

 

……オラと、違って。

 

オラだって『同じキモチ』なのに……。

 

 

 

「国木田さん、今日も練習お疲れ様。まだ慣れてないけど、俺たちもそうだから気にしないでいいよ?」

 

そういって、タオルとドリンクを持ってきてくれる翔先輩。

 

 

「今のステップはちょっとズレてたな。前のこの動作の、この辺りで意識し始めると———って、俺も素人だったね」

 

動画と目の両方で練習をチェックしてくれる翔先輩。

 

 

「え、もうこんな時間? 2人ともバスの時間あるでしょ、あとは俺がやっとくから帰る準備して!」

 

体験入部のオラ達の都合も、しっかり汲んでくれる翔先輩……。

 

一緒にいるだけで、心がポカポカしてくる。練習中に声をかけられたり、目が合うだけでどうしようもなく顔が赤くなっちゃうのがわかる。

 

ルビィちゃんと同じ想いっていうのは、2つ。1つは『輝きたい』ってこと。

 

もう1つは……オラも『翔さんが好き』ってこと。

 

……こっちも、自覚するのが遅かっただけで、周りには全然隠せてなかったかな? 今なら、恋愛小説で読んできた登場人物の心が、まるで自分のことのように思えてます。そして、()()()()()()()()()()も……。

 

ルビィちゃんの気持ちに気がついたとき、自然と自分の気持ちにも気づいたんです。ああ、オラも同じなんだ……って。

 

いけないって思ってる事でも、先輩と一緒ならいいかなと思えちゃう。離れてても、見えてなくても。大好きな人が近づいたらわかる気がしてくる。後ろからでいいから、ずっとずっとその姿を見ていたくなる……。

 

だからだんだん、胸の奥が苦しくなっていきました。ルビィちゃんと翔さんが日に日に仲良くなっていくことで……。自分でお膳立てしておいて、変ですけど。

 

 

ルビィちゃんはきっと、スクールアイドルを通して、このままどんどん変わっていける。もしかしてもしかすると、人見知りを完全に克服して、告白だってすぐできちゃうんじゃないか……ってくらい。

 

でも、オラは?

 

ダイヤさんとの区別のためか、自然と下の名前で呼んでもらってるルビィちゃんと違って、まだ『国木田さん』って呼ばれてる、オラは……。

 

あんなに輝きたいって、翔先輩と仲良くなりたいって思って来たのに、上手くいってないずら……。それは表向きには、スクールアイドル初心者っていうのと、運動をしたことがなかったから。

 

「こ、これを一気に登ってるんですか~!?」

 

「もっちろん! ……って言いたいところなんだけど、いつも途中で休憩しちゃうんだよね

 

「……オラには、無理ずら」

 

でも、もっと根本的なところでは、輝いていくルビィちゃんみたいにできない……っていう諦めでした。

 

もともと、背中を押してあげたいって目的はありましたけど、もう十分。ルビィちゃんなら、もう自分の足で走っていけるはず。自分のキモチを大切にさえすれば。

 

それに比べて……オラじゃ、あんなに綺麗なスクールアイドルになれっこない。スクールアイドルじゃなきゃいけない理由もないし……。翔先輩にはきっと、ルビィちゃんの方がお似合いずら……。

 

ただ、心がそうやって弱ってるところは、翔先輩にはすぐにわかっちゃったみたいです。

 

「……もし、違ってたら悪いんだけどさ。スクールアイドル部、『やっぱりやめとこうかな』って悩んでる?

 

「はい、そうなんです。……でも、ルビィちゃんがあんなに楽しそうにしてるのに、言いだせなくって」

 

半分は、嘘でした。この後に説明した理由も。

 

言えるわけないですよね、「貴方が好きだけどルビィちゃんの方が相応しいと思います」……なんて。

 

「……それでも、俺は国木田さんにも、スクールアイドルをやる方の楽しさを知ってほしいんだ。輝けるかどうか、国木田さんが望むものかどうかは、まだ諦めるには早いんじゃないかなって思ったりも……」

 

片思いしてる翔先輩にそんなことを言われても、オラは続けますと即答はできませんでした。そのくらい、このキモチに悩んでいたんです。

 

 

————そんなオラ達の状況は、大きく変わろうとしていました。

 

「翔さん、これはどういうことなのか……説明してくださるのでしょうね?」

 

私がヘトヘトになっちゃって、遅れて翔先輩と一緒に上がった階段の、その後ろ。

 

そこには、ルビィちゃんのお姉さん……ダイヤさんが待ち構えていたのです。すっごく怖い雰囲気で、ルビィちゃんは怯えて半泣きになっちゃっていました。その様子に耐えかねて翔先輩が前に出て、口げんかが始まったんですけど、ダイヤさんも当然負けていません。

 

 

「そっちこそ、はぐらかしてるんじゃないのかよ? ダイヤ、本当はお前がイライラしてるだけじゃないのか。俺たちの部活申請を止めようとした時みたいに、昔のスクールアイドル部のことでさ!」

 

「ええ、イライラしていますとも。私に隠れてルビィを連れて、こんなところでどういうつもりなんですか! だいたい、思い出してもいない貴方がそれを言うんですの!?」

 

「ああ、言わせてもらうよ! 俺達の昔のことで、今頑張ろうとするルビィちゃんを縛る理由がどこにあるんだ。『ダイヤの個人的な考え』以外でさ!」

 

「それは———————!

 

オラも2年生の先輩達も、どうしたら良いのか分からずついオロオロしてしまいます。それを変えたのは、ルビィちゃんでした。

 

 

「—————待って! お姉ちゃん、翔さん!!」

 

今までのルビィちゃんからは、信じられないくらい大きくて、ハッキリとした声。

 

「私が悪かったんです……。やめておきます、スクールアイドル」

 

それくらい、2人が……大好きな人同士が喧嘩しているのが嫌だったんだと思います。でも、その代わりに出した結論は、あまりにも悲しいものでした。

 

「いいんです!……お姉ちゃん、ごめんなさい。翔さんも、ご迷惑をおかけしました……」

 

 

ルビィちゃん本人が一番、そう言うのが辛かったはず。

 

やっと。やっと夢に触れることができたのに。こんなことって———

 

 

「……——っ!」

 

「「「ルビィ(ちゃん)!」」」

 

耐えきれずに駆け出してしまうルビィちゃん。呆然としてる翔先輩達をおいて、さっき休憩したベンチのところで追いつけた。

 

 

……追いついたルビィちゃんの目は真っ赤になってて、涙がたくさんこぼれてる。

 

 

「ルビィちゃん、そんなに急に決めなくても。もっとゆっくり話し合って……!!」

 

いくらお姉さんにああ言われたからって。それだけで揺らぐ決意じゃなかったはずだよ!? あんなに、あんなに笑顔で練習できてたのに。さっきだってオラの言葉を聞いて、躊躇いながらも走り出してくれたルビィちゃんが、どうして……

 

「ごめんなさい、花丸ちゃん。私、気づいちゃったの……」

 

「気づいたって、何に……?」

 

「なんなのか分からなかった、翔さんへのキモチの正体。お姉ちゃんと話してる翔さんを見て分かったんだ。これって、恋だったんだね……」

 

……思わず、息を呑んじゃう。ルビィちゃん、わかっちゃってたんだ。

 

「でもでも、それならますます、スクールアイドル部をやめることないんじゃないの!? これから幾らでもチャンスが——……」

 

「ううん、ダメなんだ。私が翔さんを好きなのと同時に……お姉ちゃんも、翔さんが好きだって分かったの。ずっと一緒にいたお姉ちゃんだから分かる。あんな声や表情、怒ってるだけじゃなかったもん……」

 

ルビィちゃんの今言ったことを、なんとか否定したいオラが心の中にいました。でも、人見知りだからこそ、他人の気持ちの機微に敏感な彼女がお姉さんについて言ったこと……きっと間違ってない。

 

前々から、ダイヤさんと翔先輩が仲良さそうな素振りがあったのも、『もしかしたら』って疑っちゃう。両想いじゃないとは思いたいけど、嫌な想像が止まらない。そうでなくたって、ダイヤさんみたいに綺麗でかっこいい人が。あんなに近くに……

 

その想像については、ルビィちゃんが否定してくれた。

 

「お姉ちゃん、ここのところ辛そうだから……翔さんと付き合ってるってことはないと思う」

 

……そ、そうだったよね。オラはまだしも、ルビィちゃんにはまだ、チャンスあるよね?

 

あ、あれ? それが分かってるなら、何がダメっていうの……?

 

 

「……ごめんね、花丸ちゃん。ルビィ、いつもいつも相談に乗ってもらってたのに……これから最低なこと言っちゃうかもしれない」

 

「う、うん……大丈夫だよ?」

 

「お姉ちゃんに頼りっきりの私を変えたいって、言ってきたよね。スクールアイドルになる夢を叶えたいし、翔さんともっと仲良くなりたい。そうやって、お姉ちゃんと違う自分になりたかったのに……こう思っちゃったんだ」

 

 

聞こうとした答え。それは聞かなきゃいけないのに、怖かった。

 

次にルビィちゃんが口にする言葉が、彼女自身の想いを、努力を何もかも壊してしまうような気がして————

 

 

「私のスクールアイドルになりたいって夢も、翔さんに恋してる気持ちも……結局、お姉ちゃんの真似でしかなかったのかな、って……」

 

 

 

 




ラ!フェス放送も神すぎて魂が抜けています。Blu-rayまだでしょうか?

ヤンデレバトルじゃないのに心にクる展開はこれはこれで大変ですね。

梨子推しの人さん、高評価ありがとうございました!励みになります。
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