ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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お待たせしました、後編です。今回こちらは梨子ちゃん視点から。

遅れて申し訳ございません。仕事が、仕事がぁ…!多いんです…!!どうも5月末まではまだしばらく忙しそうですが、Aqours長編(まだ構想だけ)を書き終えるまで、本作は「完結」とはできません。





愛の旋律 ・後編【桜内梨子】

 

 

————————彼に、拒絶された。

 

 

その事実は、私の心をズタズタに引き裂いた。

 

彼がウソをつくはずない。そんな人じゃないから好きなった。

 

出会いも運命だったし、心から愛してる。今、この瞬間だって……。

 

 

 

『はぁ……はぁ……この携帯落としたの、キミかな?』

 

 

最初は知らない人に追われてる、と勘違いして逃げちゃったけど、彼は本当は携帯電話を届けてくれただけでした。

 

まあ、逃げちゃった理由はたくさん『趣味の』荷物を持ってて、見られたくなかったのもありましたけど……。

 

とにかく、彼は悪いところなんてない、ただ優しいだけの人。

 

そして偶然だったんだろうけど、壁ドンされちゃったときに確信した。

 

 

———————この人が、私の『運命の人』なんだ……って。

 

 

 

前にいた音ノ木坂も女子高だったから、恋愛経験らしい経験があったわけじゃないけど、それでも駅とかで男の人に声をかけられるのは嫌気がさしてた。

 

ああ、この人は『そういうこと』が目当てで私に近づいてきてるんだって、声色だけでもすぐにわかる。

 

 

……でも、『彼だけは違うんだ』ってすぐにわかった。

 

彼と一緒なら。彼みたいな人と同じ学校に通えていたら、傍にいてもらえたら……恋を知っていたなら。

 

『ピアノであんなことになって、引っ越すこともなかったかもしれない』と思ったのを、今でも覚えています。

 

 

そんな私だったけど、内浦では千歌ちゃんをはじめとして、いろんな仲間に巡り合えた。

 

引っ越しを後悔なんてしたことない、内浦のきれいな海も、そこに住むみんなのこともすぐに好きになったし、スクールアイドル活動で私はたくさん変われた。犬嫌いも克服できたし、以前よりもずっと明るくなれた気がする。もう一度、ピアノも弾けた……。

 

 

そんな中でも何より嬉しかったのは、やっぱり彼と再会できたことだったけどね?

 

あの時私が感じた優しさはやっぱり本当だったんだと、付き合っていくうちにわかっていったんです。

 

彼は本当に善意だけで、私を追いかけてくれた。

 

慣れない土地で不安でも、携帯電話を届けるためだけに……。

 

 

 

私は彼に、出会ったその日から恋をしていました。当然ですよね?あんな出会い方をしたら、誰だって惚れちゃいます。……まぁ、この積極さも、千歌ちゃんの影響かもしれませんけど。

 

そしてその恋は、ある日突然成就したんです……!

 

 

『桜内さん、やっぱりピアノ……弾きに行ったほうがいいと思うんだ』

 

『僕は音楽なんて出来ないけど、9人でこのライブをする事はきっとまたいつかできる。でも……ピアノの悩みを今解決しなかったら、きっとずっと後悔すると思うんだ』

 

『千歌も分かってくれたし。大丈夫、こっちはAqoursのみんなや僕に任せて。きっとやり遂げてみせるよ』

 

『このシュシュ、だっけ?も貰っちゃったし。これがあれば桜内さんがいてくれるような気にもなれる。この歌の歌詞……どれだけ離れてても、「一人じゃない」なんでしょ?』

 

 

これって、私の想いが通じたって事ですよね?

 

彼がついに、私の気持ちを受け入れてくれたって事ですよね!?

 

 

 

告白してもらえた!彼の方から……!!

 

感極まって泣き出してしまった私は、怪訝そうな顔で涙を拭ってくれた彼のハンカチを返し忘れてしまったんですけど。そのハンカチを持っていると、さっきのシュシュの話とは逆に、彼がずっとそばにいてくれるような気がしました。

 

ハンカチから彼の匂いがした……彼を感じられたんです!

 

そこからはもう、止まりませんでした。帰ってきてからは暇さえあれば夫婦の絆を少しでも深めておきたくて色々としてあげましたし、私物も『使わせて』貰っちゃいました♡

 

自分でもちょっとはしたないかな、って思いましたけど。そんなものを吹き飛ばしちゃうくらいの気持ちよさでしたし、婚前交渉って言うんでしょうか?それって早い方がいいかな?って……。

 

 

 

たしかに、彼は恥ずかしがってあまり応えてくれなかったけど……そんな深い関係の私たちが引き裂かれる訳がない。

 

 

……そうよ、あり得ない。

 

きっと彼にも何か事情があったんだわ。例えば、誰かに脅されてる、とか敢えて私を遠ざけようとした理由が……。

 

彼との会話は全部録音してる。パソコンの容量がちょっと苦しくなってきちゃってるけど、彼の声には替えられない。

 

携帯を見るのが辛いし、拒絶される言葉を聞き返すのは本当に嫌だけど、一縷の望みをかけてデータを移動させて、再生する。

 

流れてくる言葉は、私の記憶と何も違わない。少しは期待しちゃってたけど、今日の出来事はやっぱり現実、なんだよね……。

 

でも、だんだん辛くなって、再生を止めようとした時。絶望の中に救いの言葉が聞こえてきました。それは、また彼の方から。

 

 

『梨子…っ!!』

 

 

あっ……

 

 

 

 

ふ、ふふ……そうよね……♡

 

 

ただでさえ無理して人前では『桜内さん』なんて呼んでるのに、嫌ってるのなら名前で呼んだりしないわよね……♡ 彼はやっぱり私のことを愛してくれてるんだわ……♡

 

 

……じゃあ、あんな言葉を言ったのは何か深い理由があった?

 

一番考えられるのは、誰か彼を狙う泥棒猫に入れ知恵されたとか、私たちを妬んだ人に脅されたとかだけど……Aqoursのみんなのことはちゃんと監視してる。一番のライバルっぽかった千歌ちゃんが具体的な行動を起こしてないし、彼にそんなことを吹き込んだようにも見えないし……。

 

 

それなら、本当に彼自身の意志?

 

もしそうなら、私の愛が足りなかったことくらいしか思いつかないわ……。

 

だってあんなに優しくて、私のことを愛してくれている彼だもの。そんな彼でも我慢できなくなるくらい、私に至らない点がきっとあったのよね。

 

そうよ、彼が怒ってることにも、それでも本当は私のことを愛してくれてることにも気づかなかった私だもの。何かしてしまったのかもしれない。

 

もう一度。

 

もう一度会って謝らなきゃ。

 

携帯を握りしめて、出かける準備をする。髪を整えて、これ以上彼に嫌われないように気をつけた。

 

……そうしたらきっと分かってくれる。夫婦って、すれ違いや喧嘩はつきものだものね。むしろ、それでも離れない関係って事だし。

 

待ってて。すぐ逢いにいくからね……♡

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

彼の行動パターンは把握できてる。今は両親もいない時間。イレギュラーな事があっても、正面のドアと裏口を見られるように仕掛けてある小型カメラでいつでも大丈夫。

 

勿論、『掃除』の時に部屋の中にも仕掛けてあるんだけど……その場所は、まだ内緒です♪

 

……でも、彼は私に愛想を尽かしてるんだから、普通に行っても多分会えない。

 

だから、ちょっとだけ悪いことをしちゃう。ごめんね?本当なら時間をかけてゆっくりとどれだけ私が貴方を愛してるか、『わかってもらう』はずだけど。

 

私が耐えられないの。貴方の事が好きで……

 

 

好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで

 

 

 

好きすぎるから……1日でも、1秒でも早く貴方と仲直りしたいの。

 

だから許して……ね?

 

 

「桜内さん、これってどう言う事なの!?離してよ!!」

 

「また『桜内さん』だなんて……ごめんなさい。怒ってるのはわかるし、悪かったのも私。でもまた……『梨子』って呼んで欲しいな?」

 

 

今、彼は私の元でベッドに四肢を縛り付けられている。縄だけじゃなく、手錠も。私が一瞬の隙をついて、後ろからベッドに拘束した。本当は『そういうプレイ』のために練習してたけど……。

 

ふふ、貴方もやっぱり私のこと好きなのよね?そうじゃなきゃ、警戒しながらあんなに簡単に背中を向けてくれるはずない。本当はわかってたけど受け入れてくれるなんて、本当に優しいんだから……♡

 

本当は彼を傷つけるみたいで嫌だけど……貴方も望んでくれるなら。それに、これは仕方のない事なの。私たちが早く仲直りする為に……

 

 

「こんなのおかしいよ……『どうしても謝りたい』っていうから家にあげたのに。なんで……!?」

 

「なんで、って……貴方も仲直りを望んでたから家に入れてくれたんでしょう?私たちの大切な家だけど、やっぱり貴方の働いたお金で建てた家だものね。寂しいけど貴方が入れてくれなければ一旦帰るつもりだったわよ?」

 

「この家は親の家だし、そもそもこんなこと僕は望んでないよ……!? だいたい、僕らは夫婦じゃないってば!」

 

 

まだ怒ってるんだ。そうだよね。まだ貴方がなんで怒ってるのかもわからないダメな妻だもの……。

 

でもそんな苛立ち、二人の愛ならすぐ忘れられるよ?

 

まずは邪魔なものを脱いで、ね……?

 

 

「り、梨子……!?なんで服を脱いでるの……!?って、僕のも脱がさないでよ!」

 

 

!!

 

 

 

今……

 

私は思わず軽く『達しそう』になったほどで、溢れ出る笑みを抑えきれなくなる。彼の魅力的な身体を前にして、申し訳なさそうな顔も限界だ。

 

 

「やっと『梨子』ってまた呼んでくれたね♡ こうまでされてやっと呼んでくれるなんて……こうして正解だったね。早く仲直りしましょう♡」

 

「ち、違う。苗字だと長いからつい咄嗟に……んっ!?」

 

 

抑えきれない身体の疼きをおさめたくて、彼に私の愛を伝えたくて、お互いの唇を重ねあい、舌を絡ませる。その瞬間、私たちは身体も心もまた快楽でつながれた。彼とキスをしている、その事実が二人を仲直りさせてくれるはず。

 

『初めてじゃないはず』なのに、まるで『初めて味わう感覚』……。病みつきになりそう、ううん。もう病みつきになってる♡

 

あれっ……?あんまり長くシすぎたのかな。彼は呼吸が苦しそう。

 

本当なら彼が苦しんでる顔は見るのは辛いんだけど……なんだろう、大好きな人のこんな表情も私、ゾクゾクしちゃいます……♡

 

 

「んんっ……♡ はぁ……ちゅっ……♡♡」

 

 

……離れようとするけど、手を使えなきゃ離せないよね?こんな時でも舌を噛まないのが、二人の愛の印。貴方ならまだまだキスをしていたい私の気持ち、わかってくれると思ってたよ……♡

 

 

「んっ!? あぅ……」

 

 

……なんだかグッタリしてるけど、ヤりすぎちゃったね。でも、貴方の身体も準備万端みたいだし。気絶しちゃったってことは、もう私の好きにさせてくれるってこと?

 

じゃあ、やっと許してもらえたんだね……!

 

お母さんも言ってた。夫婦の喧嘩は時間か、愛を確かめ合うことでしか仲直りできないって。

 

OKってことよね?じゃあ、『初めて』を今日ついに……

 

 

 

……あれ?私たち、何度も身体を重ねてるはずよね?なんで今『初めて』なんて考えたんだろう?

 

 

 

 

 

 

————……ああ。そっか。

 

本当に『初めて』なんだ、私達。

 

 

 

だとしたら。

 

どこまでが『勘違い』で、どこからが『本当』なんだろう?

 

 

 

……もう、どっちでもいいよね?

 

今日私たちがこうしてまた夫婦の愛をもう一度思い出すことが大事なんだし。彼が怒ってた原因は分からずじまいだけど、仲直りしたらきっと教えてくれるよね。そう考えたら、明日も楽しみになってきちゃった♪

 

「じゃあ、これからもずっとずっと。私の隣にいてね……♡」

 

その言葉で私は、四肢を縛られていながら私に身体を預けてくれた、愛しくて堪らない彼と繋がった。

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

「梨子……あんまりくっつかないでくれないかな」

 

「いいじゃない、私たちの仲でしょ?それとも、『アレ』をバラまいちゃおっかな……♪」

 

「……! きょ、今日もいい天気だね。でもちょっと肌寒いから、て、手を繋がない……?」

 

 

ちょっとわざとらしいけど、合格♡

 

アレ以来、私たちはなんの気兼ねもなく付き合えるようになりました。

 

こんな風に『お願い』すれば聞いてくれるし。理想の夫婦です……♡

 

どれだけ『勘違い』だったかなんて、もうどうだっていいんです。彼が私を愛してくれないなら、愛して愛して、愛さざるを得ないようにしてしまえばいい。夫婦でないなら結婚すればいい。本当の事にしちゃえばいいんです。

 

恋愛もスクールアイドルも、ピアノも同じ……自分から積極的に行かないと、ね?なんでも恐れずやってみなくちゃ。

 

それを教えてくれた千歌ちゃんやAqoursのみんな、この街には感謝しなきゃね。

 

あ、噂をすれば……

 

 

「おはよう!……梨子ちゃんも、ね」

 

「おはよう千歌ちゃん♪」

 

「……おはよう、千歌」

 

 

彼の挨拶、なんだか元気がなさそう。きっと私以外の女が来たから嫌な気分になってるのね。ごめんね?千歌ちゃんも彼を狙ってるのは許せないけど、それでも大切な友達だから。

 

 

「今日も仲よさそうだねー、二人とも。いつ頃結婚しちゃうのかなぁ……?」

 

「もう結婚してるようなものだよ、千歌ちゃん♪貴方もそう思うよね?」

 

 

千歌ちゃんの目は笑っていないし、彼に色目を使うことに私の視線も厳しい。私達の間に軽く火花が散ったような気がした。

 

 

「へぇ~……でも私達スクールアイドルだからさ!あんまり他の人のいるところで男の人と、っていうのは良くないと思うな」

 

「……そうね。ごめんなさい。家に帰ってからゆっくりとシましょう?」

 

 

私が彼の方を向いて言った言葉に、軽く舌打ちが聞こえる。彼は挟まれた形になって、オドオドと困惑するばかり。そんなところも可愛いけど、千歌ちゃんの横恋慕についてはキッパリと断ってくれないから、今晩はオシオキだね。

 

 

「ああ……今晩も楽しみだね……?」

 

 

左側から憎しみを溢れ出させる千歌ちゃんから、私は彼を右側にして守るように真ん中を歩き始めた。

 

千歌ちゃんが何をしてこようと、私は負けない。

 

昨日も彼と繋がった熱いお腹をさすりながら決意する。

 

 

 

私はもう、『一人じゃない』んだから、ね……♡

 

 

 

 




改めて一期の初期を見直すと、梨子ちゃんの性格変わったんだなぁとしみじみ思うことがあります。逆襲怪獣ちかっち?いつも通り構想だけあります。

前回はアンケートの回答ありがとうございました!結果は此方です。
(30) μ's長編後日談デート(μ's解散後一年間のお話)
(19) μ's長編×サンシャイン(聖良・理亞のお話)
(45) Aqours短中編
リクエストSSも交えつつ、いくつか執筆とネタ出しを進めていますが、完成および投稿の優先度について参考にさせていただきたいと思います。アクセス数から察してはいましたが、短編と長編はどちらもほぼ同じくらいの人気があるみたいで……有難いことに、どちらを優先するか悩みますね。

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