ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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1人の加入につき、だいたい4話くらい使ってる計算に気が付きました。(だから何という事はないのですが)





第36話 フォーリン・ガールズ

「紹介するよ、1年生で不登校で、俺の友達の津島善子。花丸ちゃんとは幼稚園時代の友達らしい」

 

「ちょっと、不登校は余計よ!!あと、ヨハネ!」

 

「善子ちゃんもAqoursに入ってくれるずら~!?これで翔先輩を入れて7人だね!」

 

「ずら丸、だからヨーハーネー!だってのー!!」

 

「……なんだかまた、随分と変わった娘ね」

 

「ま、また私の知らない女友達。いつの間に……」

 

 

何やら項垂れている曜はさておいて、概ね彼女の紹介と、俺との馴れ初め(?)は話し終えた。動画に関してはまさに即戦力と言うことで、みんな期待の眼差しを向けている。当の本人は恥ずかしそうだが。

 

 

「うう、頼りにされるのは嬉しいけど。まさかこんな形で学校の人たちに私の正体(動画配信)がバレてしまうなんて……一生の不覚!!やはり我が下僕(ショウ)には口止めしておくべきだったわね……」

 

「それがなくても、堕天使についてはクラスの最初の自己紹介で、既に知れ渡ってるずら」

 

「誰が下僕だよ、誰が……ドリアン事件バラしちゃうぞ」ボソッ

 

「………………善子ちゃん、だったよね? 翔さんに今なんて言ったの?」ニコッ

 

「だからヨハn……ヒィっ!?」

 

 

うわっ!ルビィちゃんの笑顔の『圧』に、善子もたまらずビビってる。俺もオーラを感じるだけでちょっと怖い……庇ってくれるのは嬉しいけど、一応彼女は俺とルビィちゃんの仲を心配してくれてたんだから、ほどほどに頼むね……。

 

……と目で訴える。アイコンタクト!

 

 

「翔さんがいいなら、いいですけど……」

 

「うう、ルビィちゃんを見習わなくちゃ!」

 

「ま、まぁそれはともかくとして!浦の星が廃校になりそうだから、色々やってやろうってわけよね?」

 

 

花丸ちゃんが、さっきのルビィちゃんから何を見習おうとしてるのかは謎だが、とりあえず収まってくれた……。

 

初見でこのくらい触れ合い(?)があるのなら、もしかしたら俺のもう一つの目論見も、上手くいくかもしれない。今回、善子に依頼したのは単に動画関係を頼みたかったから、ってだけじゃなくて……

 

 

 

『わ、私がスクールアイドル……? ……やめとく。私『堕天使』とかやってるし。まだクラスにも馴染めてないのに、変なヤツだーって迷惑かけちゃうかもだし……ね』

 

 

……かつて寂しそうに、そう呟いた彼女に、仲間を作ってあげたかった。改めて学校に行きたいと思うきっかけを作ってあげたかったこともある。

 

お節介だと笑われるかもしれないけど、何度もお世話になっちゃったし。その恩返しってところかな。加えて言えば、彼女がAqoursに入って欲しいなぁという下心もなくはないけど。それでみんな仲間になるのなら、それはそれでいいことだと思うし。

 

「ま、廃校になっても、どうせ都会の沼津の高校に行けるから、そんなに興味ないけど……むしろより相応しい環境に移るだけだわ」

 

「そこは天界とか魔界じゃないのね」

 

「沼津の高校かぁ……善子ちゃんの昔の知り合いもいっぱいいるのかな?羨ましいずら!」

 

「……廃校絶対はんたーい?! き、気が変わったわ、全面協力してあげようじゃない!」

 

わかりやすっ!? お前、幼稚園と高校のみならず、中学時代も堕天使してたのかよ……でもみんな、そんなに気にしてないと思うんだけどな。実際、同じクラスで例の自己紹介を見てたルビィちゃんと花丸ちゃんも気にしてないんだし。

 

Aqoursとも、いい仲間になってくれるといいんだけど。

 

 

「カメラは用意してあるわね?それじゃあ、早速始めるわよー!」

 

 

 

そしてその期待は、幸いにも裏切られる事はなかった。

 

 

「クックック……これが我が降臨の地、闇の都NUMADU!ここに今、エクスキューションの雷が!!」

 

「確かに、自分用の動画も撮って良いって翔さんは言ったけど……」

 

「降臨の地って、アレただの地面ずら……だいたいえくすきゅーしょんって何ずらか……」

 

「にゃあー!そこ、撮ってんだから後ろで茶化さないのーっ!!」

 

 

……うん!馴染んで、いる!そういうことにしよう!

 

なんか既に、ルビィちゃんと花丸ちゃんに揶揄われるキャラが内定してる気がしないでもないが、とにかく第一歩だ。

 

 

「ちょっと翔くん、善子ちゃん本当に大丈夫なの? なんだかすごく不安になってきちゃったんだけど……」

 

「彼女の事なら心配ないと思うよ。むしろ俺が心配なのは……」

 

 

不安そうな梨子は、俺の視線の先に目を向けて、更に不安そうな様子になった。向こうには、練習中兼、脚本制作中の2人の姿があって……

 

 

「どうですか?この雄大な富士山!晴れた日はよく見えますよ〜!」

 

「それと、この綺麗な海!泳げばとっても気持ちいいであります!」

 

「更に、みかんがどっさり!」

 

「沼津に行けば、駿河湾の深海魚もどっさり!」

 

「そして他には……」

 

「えっと、他には……」

 

「……特に何もないでーす!」

 

「それじゃダメじゃん!?」

 

 

あっちの千歌と曜。一応、真面目にやってはいるんだけど、とてもじゃないが、学校と内浦の魅力を紹介するPVとしては、その……外に出しちゃいけないやつだ……。

 

それは本人たちも自覚しているようで、「今のところをカットしよう!」と言う話をしてるのも聞こえてくる。ただ、カットしたら、代わりにいい紹介が浮かんでくるというものでもなく……梨子と俺はこの状況に顔を見合わせて、大きなため息をついてしまった。

 

難しいなぁ、PVって。

 

 

「……その通りみたいね。はぁ、どうしたらいいんだろう。私はこの街の人たちや海に助けてもらっちゃってるし、大好きではあるんだけど」

 

「それは俺もだよ……今まであまり意識した事のない地元の良さって、すぐに言葉にするのは難しいんじゃないかな。俺は記憶喪失ってのもあるけど」

 

「そうね、地元の良さ……かぁ。確かに私も、東京や前の高校でPVを撮れ……って言われたら、悩んでたかも。言葉だけじゃなく、映像にもしなきゃいけないんだもんね」

 

 

綺麗な海、輝く太陽、温かい人、富士山、淡島、水族館にみかん、沼津港に……と、ちょっと思い浮かべただけでもたくさんのいいところがある沼津、内浦。

 

(……ここから沼津行くの、バスで500円以上かかるな。それに、伊豆長岡の商店街まで自転車は、かなりキツイらしいし……)

 

以前自転車でチャレンジしたようちかりこの3人はヘトヘトになっていたから、とてもオススメはできない。

 

沼津市街だって、バスや車なしでは厳しい。こうしてみると、成程確かに内浦にある女子高、浦の星女学院は廃校になる条件が揃ってしまっているように思えてしまう。

 

(それでも、この学校と内浦には、俺もすごく魅力を感じている。……残せるものなら、残したい)

 

短い間でも、先生や生徒たちから伝わってくるものがある。それはみんなが、この学校と内浦が大好きだと言う事。バスが少なくても、都会みたいな目を引くものがなくても、ここにだってきっとそう思わせる素晴らしいものがあるんだ。

 

……ただ、それをうまく言葉にできないし、表現もできてない。

 

 

「泣き言を言ってもしょうがないわよね。とにかく、今は千歌ちゃんのエネルギーと、あの善子ちゃんの編集を信じてみましょう?」

 

「そうかもな……よし、一通り撮影したら、いつもの喫茶店に集合して見てみようか」

 

 

梨子の言う通りだ。泣き言を言っても、始まらない……俺にできることは、可能な限りAqoursのみんなの力になって、廃校を阻止できるほどのPVを作り上げる事だ。

 

まだネットに残っていた、μ'sのPVもそうだった。驚くほど等身大のままで、普通の高校生のままで輝いた彼女たちのように。Aqoursもきっと———……

 

 

 

 

 

「うーん……編集はしてるけど、元がこれじゃあね……正直、魅力的とは言えないわ」

 

「むしろ編集してくれてありがとうっていうか……」

 

「こんな映像しか撮れなくてごめんなさいっていうか……」

 

 

———……っていうのは、流石に夢を見過ぎたか。千歌と曜が、力なく頭を下げる。近所の喫茶店で、改めて作戦会議を行う俺たちの間に、無力感が漂い始めてしまった。

 

『以上、がんばルビィ!こと、黒澤ルビィがお伝えしました!』

 

今の映像も、ルビィちゃんが必殺技、がんばルビィのポーズを取るけど、普段なら可愛いと喜ぶところが、みんな苦い表情のまま。

 

「うゆゆ……アイドルっぽく決め技で誤魔化そうとしたの、バレバレですよね……」

 

「うーん……それぞれのスポットに、ちゃんとした魅力があるのは確かなんだけどね。今のところだって、すごく楽しい水族館だし」

 

「じゃあ、私たちがそれをちゃんと伝えられてないのかな?」

 

「それもあるかもしれないけど、学校の生徒を募集するって目的に対して、なんだか散発的な感じになっちゃってるのかも。学校の施設ってわけじゃないし」

 

曜の指摘は、その通りかもしれない。

 

俺たちは一言にPVを撮ろうと言っても、学校の魅力を伝えたいのか、地域の魅力を伝えたいのか、自分自身でもよく分からない状況になってしまっているのだろうか?

 

(別に、内浦と浦の星を無理に分けて考えることもないと思うけど……うまくいかないな)

 

この二つの魅力は一体のモノと考えても、バチは当たらないと思う。だけど、上手く融合できてない。

 

どうしたら……どうしたら、いいんだろうか。もしかして、何か全く別のアプローチが必要なんじゃないだろうか?一朝一夕に、そんな能力身につくわけないんだし……。

 

そう考えていたとき、唐突に善子が立ち上がった。

 

 

「あ、ごめんなさい!そろそろ終バス来るから、先に帰るわね。編集は帰ってからも、もう少しやってみるから」

 

「ああっオラたちも急がなきゃ! 善子ちゃんありがとうずら!でも、無理しないで、『どーがはいしん』の合間でいいよ」

 

「だからヨハネ!まったく……この堕天使ヨハネもまた、あの学びの廟が無くなれば不完全な状態でラグナロクに望まざるを得なくなるからね……ちょっとした余興よ」

 

 

ようするに、沼津の高校に行くと黒歴史を抉られてしまうからだろうに、本当に堕天使キャラが好きなんだな。でもそれで実際、彼女はそれでたくさんのリスナーに人気になってるわけだし。それがいかに難しいかは、ラジオ局でちょっとバイトさせてもらった俺には分かる。

 

善子のそういうバイタリティを、俺は見習うべきなんだろう。

 

 

「あの配信、かなりの人数が見てたものね。恋占いとかしてて……お客さんたち優先でいいのよ?」

 

「そーそー!私たちは私たちで頑張るからさ!お願いする立場だし」

 

「フフッ……そう言ってもらえるとありがたいわね。それじゃ……」

 

 

そう言って彼女を見送ろうとしたとき、またしてもしばらく黙っていた千歌が、何かに気づいたように立ち上がった。机の上にあったプリンがぷるっと揺れる。

 

 

「そうだ!これだよこれ、押してダメなら引いてみようよ!?」

 

「ち、千歌?」

 

「津島善子ちゃん……いえ、堕天使ヨハネちゃん!!」

 

「はっ、はい?!」

 

 

善子の手を握って、目を輝かせた千歌が言う。『いつもの一言』に、今度は独自のアレンジが加わって。

 

 

「一緒にスクールアイドルやりませんか!?()()使()()()()()()()()()()っ!!」

 

 

「……え?」

 

「あ、終バス行っちゃった……」

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

「はぁい!霧の大地、静岡が誇る深海の底の底……沼津に降り立った堕天使ヨハネよ!」

 

「「「「「みんなで一緒に……堕天しない?」」」」」

 

 

———どうしてこうなった?

 

今、カメラを持つ俺の目の前には、堕天使モードの善子と同じくゴスロリに身を包んだ、6人になったAqoursの姿があった。

 

それぞれのゴスロリがカラーや意匠が異なり、なんだかんだライブ用として設計されているのは、流石に制作担当の曜の実力、と言うべきなのだろうか。というかこの短期間で用意したのかこれ。

 

 

「ヨハネ様のリトルデーモン4号、く、黒澤ルビィです……一番小さい悪魔、かわいがってね!」

 

「ルビィちゃん、かわいいずら〜♪」

 

「ありがとう花丸ちゃん!……翔さん、どうですか♡」

 

「ああ、確かにこういうの可愛……じゃなくてー!」

 

 

こちらに笑いかけながらくるりとその場で回るルビィちゃんは、悪魔というより天使の部類だ。思わず見惚れてしまった、これじゃ本当に年下趣味だ……。

 

「や、やってしまったわ……」

 

概ねみんなノリノリだが、基本真面目な梨子は恥ずかしさのあまり、かなり凹んでる。どうも彼女は、善子みたいなタイプには振り回されしまうのかもしれない。

 

……うん、俺が女の子でやれって言われたら、間違いなく恥ずかしくてやれないね。ファーストライブの準備の時、ろくに手を繋ぐことすら出来なかったんだし。あれは未だに恥ずかしい。ダイヤにキスされておいて今更だけど。

 

 

「でも千歌ちゃん、どうして急に堕天使だったの?」

 

「うん、善子ちゃんにあやかろうって言うのもあったけど、調べたら堕天使系スクールアイドルっていなかったんだよね。それで、やってみようって!」

 

「気分転換や奇策は必要かもしれませんね。Aqoursは、スクールアイドルとして路線や方向性は無かったわけですし。必要ってわけじゃないんですけど、キャラ付けは大事だと思います」

 

 

こうなってる理由は、概ねたった今、千歌が説明してくれたとおり。

 

スクールアイドルに詳しいルビィちゃんも、もしかしたらチャンスがあるかもしれないと言ってくれたので、やってみた。

 

……衣装が人数分あるあたり、ライブ用でなくても曜も何か企んでたんじゃ、と思わなくもない。後で問い詰めて、写真撮らせてもらおう。(これは決して俺の趣味じゃない、衣装の勉強です)

 

 

「とにかくこの動画をAqoursのチャンネルにアップして、チェックしてくれる人が増えて、少しはこの学校に興味を持ってくれる人が現れるといいんだけどなあ」

 

「美少女2人の新加入に、さらにもう1人堕天使だよ!?絶対いけるよー!」

 

「クックック……ついにこんなにもリトルデーモンが産まれるなんて……ついに世界の趨勢は、我が天界議決により決していくのですね!」

 

(……とはいえ、この形が正解なんだろうかと悩む自分もいる)

 

いや、俺は好きだし、スクールアイドルとして間違ってるなんて事はないと思う。これで笑顔になる人いるたちだって、決して少なくはないだろう。

 

まずAqoursの知名度を高めて、そこからってのは、手段として正しい。堕天使がより受け入れられれば、善子の友達とか学校とかの問題も、同時に解決できることにもつながるし。

 

ただ……これが学校のために、なるのかというとなんだか即答しづらい。奇策はしょせん奇策に過ぎないんじゃないかという気もする。そして、今や大人気のスクールアイドルの中で、一見ありがちな堕天使が一つもないということも、僅かな引っ掛かりを覚える。

 

それがもし、『思いついたけどやってない』事なのだとしたら、と。

 

 

「クックック……ついに、ついに私もリア充になる時が来たのね……!!」

 

 

……善子の笑顔は本物だ。水を差すみたいで、今こんなことを聞くのは心苦しい。

 

でも俺のそういう態度が、きっとルビィちゃんとダイヤとの事もなし崩しにしてしまってるんだし。ちゃんと確認しなきゃ。

 

 

「なぁ、善子。なんていうか、これで良かったの?」

 

「ヨハネよ!……良かったって、どういうことよ?元はと言えばショウが誘ってくれたんじゃない」

 

「ああうん。元々俺が誘ってたけどさ、堕天使系スクールアイドル、本当にやりたかったのかなって確認だよ」

 

「そのこと? まぁ、あの最初のライブも楽しかったし、やりたくないなんて事は全然ないわよ。堕天使が堂々とできるのなら、尚更ね」

 

アップロードが完了し、みんなの会話が別の話題にうつってたところで、こっそりと裏で内緒話をする。善子の反応は上々だったことに一安心したら、今度は俺の話題にされてしまう。それも恋の行方。

 

「それよりもショウ、前話してた件といえば、ずら丸やあのルビィって娘とはどうなってるのよ?入部はちゃんとしてるみたいだけど、ところどころで散々アタックされてるじゃない。私も今朝、睨まれちゃったし」

 

「え、あ、ああ。なんかごめん。ルビィちゃんはちょっと暴走気味なのと、彼女自身からは、その……まだ返事は求められてないみたいなんだよ」

 

「その言い方……だいたい察したわ。どうせ『振り向かせますから〜』みたいなありがち感じでしょ。ずら丸は『まだ』で、ルビィの方は……第三者の私があんまり踏み込む事じゃないけど、大丈夫なのよね?」

 

 

————大丈夫、なわけない。

 

ダイヤに多分ストレスをかけてるだろうし、ルビィちゃんは、今のうちはただ楽しいだけかもしれないけど、いつまでもと言うわけにはいかない。もしかしたら、それに合わせる形になってAqoursのみんなに不快感を感じさせるかもしれない……と危惧してもいる。

 

善子の言い方は、ルビィちゃん以外の存在も示唆してるけど、ダイヤのこと知ってるのかな?どっちにしても、俺がやらなきゃだよな、しっかりしないと……。

 

 

「ごめん、心配かけてるな。でも大丈夫、トラブルになるような事はしないよ」

 

「違うわよ、アンタの方。……恋なんて、根っこは勝手なものよ。相手が勝手に好きになって、勝手に告白して、勝手に悩んじゃうんだから。占いでよく相談されるからわかるのよ」

 

「そう……かも」

 

「そうなの!……だから、ショウはルビィのことは気にし過ぎずに、自分の身の振り方の心配してなさい。その上で誰を選ぶかは、こちらが勝手にできることなんだから」

 

 

って思ってたけど、正確には彼女が心配してたのは俺の方だった。

 

確かに、忘れてしまった過去の件を除けば、何もかも女の子の方が勝手に……と言えなくもない。そんな『責任の取り方』はしないけど、確かに悩み過ぎても仕方ないのかもしれない。ただでさえ、今の俺は仕事とスクールアイドルとか、優先すべき事もある。

 

……本当に、名前の通り善い子なんだな。

 

 

「わかった、気にし過ぎないようにしてみる。今度こそ大丈夫だよ」

 

「……なら、私も大丈夫よ。せっかくショウがくれた仲間とチャンスだもの。これをきっかけに堕天使ヨハネの名を世に広め、学校を廃校から救って、素敵な彼を見つけてみせるわ!リア充になるのよー!」

 

「そういうところは普通の女の子なのになあ」

 

「何か言った!?」

 

 

 

Trrrrrrr……

 

 

そんな笑い話の最中に、またしても電話。

 

基本的に俺に電話がかかってくると、深刻な話が来るジンクスがある気がする。そんな奇妙な不安を覚えながら、善子に断って画面を見た。

 

相手は……

 

 

『翔さん? 先程アップロードされていた学校のPVについて、お話ししたい事があります。今すぐ全員で生徒会室に来なさい』

 

「も、もしもしダイヤさん。ひょっとして怒って、らっしゃいます……?」

 

『まさか。ただしっっっかりとお話しさせていただこうと思いまして。……主に、ルビィに堕天使(あんなこと)をさせている件について。それはもうしっかりと……覚悟しておくことですわ』

 

 

oh……

 

 

 

 

 

……この時の俺は、『やっちまった』という感覚で空を見上げることに精一杯だった。

 

だから、とてもじゃないが気がつけなかった。

 

 

「…………♡」

 

 

電話の向こう側から、ほんの僅かに漏れた音。ダイヤがその舌で艶かしく、自身の美しい唇を舐めた音に。

 

ましてや、厳しい口調を装いながら、その表情は『笑顔』だったことなんて、分かるわけがなかった。

 

 

 

 




堕天(意味深)

自分で背負おうとする男と、見てられない女。善子が言ってるもう一人は花丸ちゃんの事です。以前から彼女の気持ちに気付いてるので。あとダイヤですが、35.5話の後に(ゴニョゴニョ

べっけべけさん、高評価ありがとうございました!

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