ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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実は本小説を書く上で一番構成をどうするか悩んでいたのがこの章だったので、今後の更新ペースはもうちょい上げられると思います、仕事次第ではありますが。

歌詞機能のおかげで表現の幅が広がって助かります。





第39話 ユメのヒカリ

「あのーっ、皆さーん!私たち、浦の星女学院でスクールアイドルをやっている、Aqoursです!私たちは学校を残す為に、ここに生徒をたくさん集めるために、皆さんに協力して欲しいことがありまーす!」

 

 

海開き。

 

内浦の数少ない、一大イベントの一つだ。たくさんの想いが詰まったスカイランタンが夜空を照らす、幻想的なお祭り。……まあ、どんなものだったかは、俺は記憶喪失で忘れちまったんだが。

 

まあ俺のことはいいや。さっきのとおり、地元の人たちと浦女の生徒。そしていくらかの観光客が集まるいつもの砂浜に、千歌の声が響きわたっている。そう、千歌の言ったように、ここにいるみんなに手伝ってもらわないといけない事があるんだ。

 

 

「ショウ、この堕天使ヨハネと、使い魔たるリトルデーモン達のデビューライブなんだから、しっかり撮っておきなさいよ♪」

 

「勝手に使い魔とかリトルデーモンとかにしないでほしいずら……でも翔先輩、オラ達、初めてのライブですけど。ホントに頑張りますから、見ててくださいね!」

 

「ふふふ、善子ちゃんと花丸ちゃん、本当は緊張してるんですよ……ルビィもですけど。でも翔さんが、こうして励ましてくれるから、頑張れるんです……♡」

 

「善子じゃなくて、ヨハネよー!」

 

「ピギッ!?」

 

「もう、ルビィちゃんを驚かせちゃダメだよ! 翔先輩も何か言って欲しいずら!」

 

 

……俺が何か言う前に、日々の中でいつの間にか仲良くなった3人が、楽しく談笑している。やっぱり同学年同性同クラスは偉大だな。みんなインドア系っていうのもあるのかも。

 

ルビィちゃんはああ言ってるけど、ライブ前だって言うのに、俺が思ってたよりずっと緊張してないようだ。最初のライブの時はようちかりこは相当緊張してたらしい(その時間は雨に打たれてた)んだし。

 

ある意味、成長した先輩たちがいい影響を与えてるのかな……?

 

そう思ってチラッと振り返ると、向こうもこちらを見つけて声をかけてきた。

 

 

 

「しょーくん、1年生のみんなだけじゃなくて、こっちも見てよ~」

 

「今回の衣装、自信作だもんね。千歌ちゃんが自信あるのもわかるかな?」

 

「それに、千歌ちゃんは集まってくれたみんなに協力してくれるよう、声をかけてくれてるもんね。……今回の事が終わったら、ちゃんと御礼、言ってあげてね?」コソッ

 

「む、梨子に言われなくてもそのつもりだよ。てか、もちろん梨子にもな。千歌がそっちに言ってる間、こうして準備してくれてるじゃないか」コソッ

 

「え?// ……そ、そう?あ、ありがとう……」

 

実際、この楽屋(仮)を主に準備してくれたのは梨子だ。十千万は地元の人の集会とかお客さんで使う予定があるし、お母さんはその料理とかで忙しいため、今回はその隣の梨子の家とお母さんに場所を借りた。

 

その感謝を述べていると、ヤキモチを妬いた曜が腕を引っ張ってくる。

 

 

「翔くん、私だって頑張ってるよ!」

 

「? そりゃそうでしょ。いつもありがとう、衣装だってルビィちゃんと一緒に6人分、作ってくれたし」

 

「……なんか心がこもってないー!」ムスー

 

 

なんだか最近、曜が千歌みたいになってきた気がする……甘え方とか特に。しょうがないなと頭を撫でてやると、『これで許してあげるであります!』と大人しくなった。

 

 

やれやれと思いながら裏手に行くと、視線を感じる……さっき別れたはずの、ルビィちゃんだった。

 

善子の加入以来、練習漬けの日々だったけど、俺が他の女性と話してて嫉妬されてしまうのは、相変わらずだった。見られてたのは俺の迂闊さで、ちょっと何か言われるかなと思ってたんだけど。実際には違った。

 

いつもなら後ろから迫る、背筋が震えるようなあの視線が、今日は『いつも通り』というか……オドオドしている。

 

 

「翔さん……実は、ライブの前に話しておきたいことがあるんです」

 

「? それって、ライブについて何か……」

 

「いえ、違うんですけど……話そうと思ってなかなか話せなくて、でもライブ前は、スッキリさせておいた方が良いと思ったんです。モヤモヤしたままは、良くないと思って……」

 

 

最近は人見知りも解けてきたルビィちゃんだからこそ、歯切れの悪い言い方にそのモヤモヤの厄介さを察してしまう。

 

みんなの力になるのに、断る理由はない。

 

 

 

「実はお姉ちゃん、最近また変なんです。もしかして……翔さんと何かあったから、じゃないかって思うんですけど……」

 

「! ……そ、それは」

 

「……本当は、私のせいもあると思うんです。だけど、今の翔さんの反応を見て、なんとなく想像がつきました」

 

 

俺のバカ……。ダイヤの話題が来るとは思ってなくて、思いっきり動揺しちまってたじゃないか。見るからにビビってて、隠し事がありましたと自分で言ってるようなものだ。

 

だけど、ルビィちゃんの言う『私のせい』というのは、気になる言葉だった。

 

 

「翔さんはもう気づいてますよね?私が入部するときのことで、お姉ちゃんも、翔さんの事が好きだって……」

 

「う、うん。改めて言われると、恥ずかしいし……ルビィちゃんに返事をしてないのも申し訳ないけど」

 

「そ、それは気にしないでください!きっと翔さんを今日のライブで振り向かせて見せm……じゃ、じゃなくて!私、あれからお姉ちゃんに、告白について伝えたんです」

 

「!? それって、ダイヤにルビィちゃんの気持ちを、教えたって事……?」

 

 

それは、俺にとっては衝撃の一言だったけど、同時に『そうだったのか』と思わせもした。あの時のダイヤの変貌ぶりの、直接の理由かどうかはハッキリとはしないけど……副因とか遠因なのかもしれないと、即座にそう思ったからだ。

 

 

「はい。お姉ちゃんにも、ずっとスクールアイドルから目を逸らしていてほしくなくて、前を向いてほしくて言ったんです。翔さんのことでも、スクールアイドルのことでも、お姉ちゃんに負けたくないって。お姉ちゃん、まだスクールアイドルのことが好きなはずなのに……」

 

「……そう、だよな。そうじゃなきゃ、何度も俺を助けてくれるわけ……」

 

「はい。……それで、モヤモヤしてたって事についてなんですけど。確認したくて……翔さんは、まだお姉ちゃんと付き合ってるわけじゃないんですよね!?」

 

「うっ、うん!そ、それは間違いない」

 

 

一瞬、輝きが消えたあの怖い目になりかけたルビィちゃんの雰囲気は、それを聞いて元に戻る。嘘は言ってない……2回、キスをされてるけど。それは流石に聞かれない限りは言えない。今のルビィちゃんにソレを話すと、彼女とダイヤの間に、決定的な亀裂が入るんじゃないかと思えた事が、理由だ。

 

ルビィちゃんの尊敬する『カッコいいお姉ちゃん』がそんなことをするだなんて、俺自身がそもそも説明に困る。かといって、いつまでも彼女にもAqoursのみんなにも、隠し続けるのも限界がある。

だから、少しだけ話した。

 

 

「実は前に告白は、されてたんだけど……ルビィちゃんと同じで、返事は後でいいって言われてて。だから付き合ってはないよ。本当に」

 

「……信じます。お姉ちゃんも私も、やっぱり姉妹なんですね。それでいて、やっぱり私もお姉ちゃんの真似ばっかりじゃなったんだ。知らずに同じ告白の仕方、してたんですから」

 

「そうだね。それは間違いないよ」

 

 

……嫉妬して、とても怖くなるところもよく似ている、とは言わないでおく。

 

取りあえず、これでルビィちゃんの疑問も晴れたかな、と思って準備に戻ろうとしたが、まだ話はもう少しだけ続くようだった。そしてそれは、さっき俺の脳裏をよぎった疑問にもつながることだった。

 

 

「あ、ごめんなさい翔さん。最初に言った、お姉ちゃんが変だって話に戻っちゃうんですけど。ずっと上機嫌なんです。部屋の中でじっと携帯を見つめて笑ってたり、それがすごく不自然で……」

 

「ダイヤが、そんなことを……? ルビィちゃんが告白について伝えただけなら、そうなるのは確かに変だけど」

 

「はい、そうなんです。……だから、翔さんが何か知ってるんじゃないかって思ったんですけど」

 

「いや……ごめん。俺もダイヤが変なのは気づいてるんだけど、なんでそうなったのか、全然心当たりがないんだ。連絡も、前に生徒会室で話したときから、すごく何気ないメッセージくらいで」

 

 

そう、俺が一番疑問なのは、そこなんだ。あの変わりようの理由も、今ルビィちゃんから聞いたことも気になるけど、あれだけの事を仕掛けてきていながら、ダイヤの様子はこの2週間、ごく普通のものだった。

 

特別、学校で声をかけてくるわけでもない。すれ違うことも数回あったが、挨拶や『ルビィはよく頑張っていますか?』『調子はどうでしょう?』と、軽い話だけして終わった。それでも、目だけは……瞳だけは、あの襲われた時のままだったから、それが余計に怖い。きっと、ルビィちゃんの言う一人で不自然に上機嫌で笑っているとかは、同じ表情を指しているのだと思う。

 

俺の前だけじゃなく、家でもそうなのか……?

 

 

「ごめんなさい、本番前に変なこと聞いて、なんだか私だけスッキリしちゃいました。答えは分からずじまいですけど……」

 

「いいんだよ、俺もダイヤが変だなとは思ってたし。それに……海開きを手伝いに来てるんだろ?ダイヤも。ルビィちゃんの初舞台を見に来てるのもあるんだろうけどさ」

 

「はい。でも生徒会長ですから、こっちにばかりは来られないとは思います」

 

 

そう、忘れちゃいけないのが、今日このライブもまた、ダイヤが見ているであろうということだ。そして、俺達の事を試している小原さんも。彼女たちの思惑は俺には分からない……だけど、少なくとも最高のライブを見せてやるくらいのことはしたい……って、贅沢か。

 

 

「ダイヤの事は分かったよ、俺も気にしておく。ルビィちゃんは、後は今日のライブに集中してほしい」

 

 

俺はPV撮影を兼ねてのカメラ役に過ぎないが、ダイヤはまだしも小原さんは何らかの妨害を仕掛けてくるかもしれない。そういうのに対抗手段があるかは別として、目を光らせておきたい。

 

この前の停電のようなアクシデントも不安だ。宣伝は今回は十分。俺はサポートに徹する。

 

 

「はいっ!……翔さん、可愛く撮ってくださいね♡」

 

 

そういってみんなのところに駆け出すルビィちゃんの背中を見送りながら、俺は胸の中で決意を新たにしていた。

 

今日のライブを、絶対に素晴らしいものにする、と。

 

小原さんにもダイヤにも、新しい6人のAqoursを見せつけてやろうと、俺はビデオカメラの動作チェックをもう1度行うことにした。画質に限界はあるが、携帯のカメラも。

 

 

 

 

 

「…………ずいぶん、ルビィちゃんと仲が良いんだ。ダイヤだけじゃなくて」

 

 

 

 

 

——————その背中を、手伝いをする生徒の喧騒の中で一人、俺たちを見ていた蒼い髪の少女が見ていた。

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

「「「「「「Aqours~サーン、シャインっ!!」」」」」」

 

 

6人のかけ声(俺は今回も恥ずかしくて入らなかった)で、始まったライブ。

 

 

 

ランタンが仄かに夜を照らし、空に昇ってゆく……。

 

それにあわせるように、彼女達は舞い、歌っていた。ルビィちゃん、花丸ちゃん、善子の順に、歌い上げるように……優しい歌声が響く。

 

今回の曲調は、前回とはうって変わって、あまり激しいものじゃない。激しいものを合わせる時間まではなかったっていうのもあったけど、一番はやっぱりこの夜空や空に浮かんでいくランタンとの組合わせを、みんなでを考えた結果だ。

 

 

「気持ちだけ ほかになにもない…?」

 

「ちがうんだよ こっち来て こころの眼で見たら」

 

「誰の胸にも 願いがある」

 

「「「大切なこの場所で 感じてみよう」」」

 

 

……そして、歌詞も。花丸ちゃんとルビィちゃんのふたりの気持ちは、ただ『スクールアイドルをやりたい』ってだけのものじゃない。上手く言えないけど……あのPVの一件があってから、それ以上に強い想いや決意になった気がする。

 

それには、善子の願い、夢、好きな事……そういうものからくる、あの勢いもいい影響を与えているんだろう。

 

 

 

「波が映した 星の輝き 遠いあこがれの色」

 

「いつか叶うことを 信じれば」

 

「明日への道が多分」

 

「「「分かるんだ」」」

 

 

続いて、千歌と曜、そして梨子が歌い上げる。この3人だって、まだ夢は始まったばかり。俺と同じで、憧れたμ'sに手が届くのか、明日がどうなるのかさえわからない。今のライブだって。

 

だけど、精いっぱい……今この場でランタンを上げてくれている街のみんなと、ステージを見てくれている観客の人たちと一緒に文字通り輝いて、笑顔になっている。そして、俺も。

 

 

「「それは階段 それとも扉?」」

 

「「夢のかたちは いろいろあるんだろう」」

 

「「そして繋がれ みんな繋がれ」」

 

「夜空を照らしにいこう!」

 

 

千歌がそう歌うと、サビに入っていく。そしてランタンは、ますますその勢いと輝きを増した。

 

 

……夢のカタチ、それは1年生3人のAqoursへの加入を通して、俺にも突きつけられたこと。俺の夢は、誰かを笑顔にするって夢は、本当に正しい形なのか?自分は、それで幸せになるのか?……その答えは、実はまだはっきりとは出ていない。

 

だけど、俺にはそれを一緒に考えてくれる6人の仲間が、つながりができた。

 

 

「消えない 消えない 消えないのは 今まで自分を 育てた景色」

 

「消さない 消さない 消さないように ここから始まろう 次は飛びだそう」

 

 

……そして、記憶を失っても消えなかった内浦と、大切な人達がいてくれる。

 

 

 

「それは階段なのか それとも扉か 確かめたい夢に出会えて……」

 

 

 

おばさん……『俺自身のための夢』、それが具体的に何なのか、まだ俺には何も見えてこないけど。

 

 

 

「……『よかったね』って 呟いたよ!」

 

 

 

だけど、こんな素敵な光景を……こんな最高のライブをみせてくれる仲間たちがいる。夢を、輝いたその先を一緒に目指してくれる仲間が6人もいる。ダイヤや小原さんが壁になったって、乗り越えてその先に行って見せる。

 

 

 

「私……心の中でずっと叫んでた。『助けて』って……『ここには何もない』『私は何もない』って……でも違ったんだ!」

 

「千歌ちゃん……!」

 

「追いかけてみせるよ!ずっと、ずっと……この場所から始めよう!できるんだ!」

 

 

 

ライブを大成功で終えて、円陣を組んで涙ぐむ千歌達。梨子、曜、ルビィちゃん、花丸ちゃん、善子こと堕天使ヨハネ……ついに、Aqoursっていうグループが本格的にチームとなって、千歌達の夢が前に進み始めたのだと実感する。

 

 

 

 

俺もきっと掴んで見せる。この綺麗な夜空と、今日のみんなのライブに誓って。

 

 

俺は俺の夢を—————……

 

 

 

 

 

 

 

「やっほ。……翔、いいライブだったね」

 

「? 松浦さん……?」

 

 

 

 

ライブに熱中しすぎていたせいだろう、声をかけられるまで、後ろに近づいてきていた人の気配に気がつかなかった。それは、またしばらく会っていなかったはずの、松浦果南さん。ファーストライブの時はあんなことがあったが、今日はなんだろうか。

 

……先ほどまでの興奮のあまり、未だダイヤも小原さんも俺のところに現れてこない理由にも、考えが至らずに。そして、ライブを終えたみんながこの後、俺を探し始めるであろうことにも、気が回らなかった。

 

 

進み始めたのは、みんなの夢と、くすぶっていた愛情だけじゃない。

 

夢と夜空を明るく照らす優しい光。

 

それは失ったはずの俺の過去も、その輝きで照らし出そうとしていた……。

 

 

 

 

 

 

ラブライブ!

   ~ヤンデレファンミーティング~

 

Aqours長編

   「10人目の名前を呼んで」

 

 

          ③「ユメの夜空」 了

 

 

 




次回、第4章開始。


喜びも束の間、ここから一気にヤンデレと3年生との過去が動き出します。

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