ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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アニメで言うと、『まだあのへん』なのに、こっちはもう45話ってエグくないですか?

つま恋開催してくれ……!!





第44話 口づけに縛られて

(……あれ、俺はみんなのライブを見届けて。……それで、どうしたんだっけ……確か果南と……)

 

 

今の自分がどうなっているのか、理解したくなくて……とにかく息をしようと頭を動かすけど、果南はそれすらも両手で抑え、固定してしまう。

 

……そうなればもう、現実を見るしかない。

 

それがどれだけ認めたくなくても。視界いっぱいにひろがる、目を瞑って心底幸せそうに俺の唇に吸い付き、舌を入れてくる果南という現実を認めるしかないんだ。

 

何秒か、何分か。口が離れると同時に、いつもの彼女からは想像のつかないほどの妖艶な笑みが俺に向けられる。そして、また口づけも。

 

認めたところで、抗うことができない。

 

 

「そうだよ、私に任せて……ちゅっ、何も考えなくていいからね♡」

 

「あ……俺はそんな、う、むッ!?ぁ……」

 

 

ライブの大成功の余韻など吹き飛ばしてしまう、暴力的な果南の愛。

 

俺が膝を折る姿に満足そうな果南、それを見て唖然とする千歌。

 

 

「しょー……くん、そんな。そんなのって……」

 

 

……異常な光景だ、間違いなく。

 

こんな光景、テレビドラマでもそうそう流れやしない。でも、これが現実だった。

 

 

 

「ああ千歌? ごめんね、忙しい時間に翔を貰っちゃってて。見ての通り……私、翔のこと好きなんだよね♡」

 

 

 

果南の最後のセリフも、そうだ。

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

————そんなことがあったのが、一昨日。時間にすれば、だいたい40時間ほど前。

 

『6人』でのファーストライブ、そして『Aqours』としてのセカンドライブを終えて、ますます勢いに乗るメンバーたち。ラブライブ優勝……というのは流石に夢のまた夢だけど、『もしかしたら』……そんな明るいムードだ。

 

 

 

「ああっ、見て見て!今日も順位が上がってるずら!」

 

「すごいわね、堕天使でちょっと上がった順位も4000位くらいまで落ちてたのに……この前のライブを終えて、今日は99位よ!」

 

「ヨーソロー♪ 何処のグループにもある、ライブ後の一時的な盛り上がりだとしても……100番以内ってかなりいいんじゃない!? パパにも伝えなきゃねっ!」

 

「まだ2回目のライブでここまで行けるなんて……あわわ。ルビィ、嬉しいって言うより緊張してきちゃいましたぁ……お姉ちゃん、喜んでくれるかな?」

 

 

だけど、それも無理もない事だと思う。

 

この前のランタンを背景に踊るライブ動画は、すでに50000再生を超えている。それにつられて、最初のライブの動画の再生数も30000を超えた。これは、2回目のライブを終えたばかりにしては破格のものだろう。

 

(それは俺たちの見つけた内浦の魅力が、他の皆にも伝わった……って事でもあるんだし)

 

 

そのうえ、ランキングは急上昇。曜の言った通り、ライブ後に順位があがって、また次のライブまでどうしても落ちていくものだが、それにしたって100番以内は快挙と言っていい。上昇率はなんと1位。新人グループが驚異の追い上げ方をしているということで、掲示板やSNSで話題も増えている。

 

これで喜ばない方が、むしろどうかしてるよな。善子の教え方が上手かっただけだけど……動画説明のはしっこの方に、ちゃんと『撮影・編集:用務員S』って書いてもあったから、俺も褒められてる気にもなる。

 

 

「クックック……私の堕天使キャラがついに受け入れられたのよ、日本中に! そうに決まってるわー!」

 

「その割に、登校し始めてからクラスでは必死に普通ぶってるずら……」

 

「あっ、コメントではルビィちゃんと花丸ちゃんが人気みたいよ。『ルビィちゃんかわいい、天使です』『花丸ちゃんが歌ってるところをもっと見たいです』……まだまだあるわ。残念ね、善子ちゃん?」

 

「い、いやぁ。そんなぁ……///」

 

「ちょっと!なんでルビィとずら丸ばっかりなのよーっ!? 私は、堕天使ヨハネはぁー!?」

 

 

 

ところが、その『どうかしてる』のが2人……この雰囲気の中で、俺と千歌だけは笑顔がぎこちない。口数も少なく、周りからもそれはバレバレだった。

 

 

「ああいや、善子もその、応援されてると思うぞ。……ち、千歌もそう思う、よね?」

 

「……えっ!? あ、う、うん。そうだね……うん、そうだよね。しょーくんが言う通りだよ……」

 

「あんたたち……」

 

 

……正直、浮いている。今の善子の反応のとおり、みんなに心配もかけてしまっている。だからこそ、なるべく明るい話題で盛り上げて、笑わせようとしてくれているんだろう。

 

(Aqoursがせっかく大躍進してるっていうのに、俺は何をしてるんだよ……!?)

 

俺は……ダイヤと果南からのキスに、完全に縛られてしまっている感覚に陥っていた。それはスクールアイドル活動がどうこういうよりも、自分がこれからどうしていくべきかとか、これまでに何を間違えたんだろうとか……上手く言えないんだけどそういう縛られ方、迷い方だ。

 

(それだけじゃなくて、果南に関係を迫られてたところを、千歌に完全に目撃されてしまったんだから……)

 

あれから1日以上経ってるけど、千歌は家の中でも俺を避け続けている。

 

 

『あ、しょっ、しょーくん。私お風呂掃除してくるから!』

 

『……ごめんね! 千歌、ちょっと走ってくる!!ほら、ライブイベントで恥かけないでしょ!?』

 

『ば、晩御飯の準備しなくちゃ!それにー……あ、宿題あったんだった!集中するから、部屋に入ってこないでねー!』

 

 

ライブ後のささやかに豪勢な夕食ですらそうだった。気まずくて、ギクシャクして、すれ違ってばかりで、会話もままならない。

 

学校を廃校から救おうと気合いを入れていたのに、思いっきりマイナス要員と化してしまっている。

 

 

『ちょっとツラ貸しな翔!あんた、うちの千歌に変なコトしたんじゃないでしょーね!?してもいいけど、ちゃんとタイミングとかデリカシーとか考えて……それとも、千歌から襲った?』

 

『そ、そんなことしてませんよ!? 俺にそんな勇気無いのはしってるでしょ! だいたい、千歌にそんなことされてたら、避けてるのは俺の方だし』

 

『それもそうね。何があったのか、無理には聞かないけど……あんまり長引くようなら家族会議よ?』

 

 

姉さん達も、いつも通りなら思いっきりからかうところなのに、今回に限っては真面目に心配しているようだった。……それほど、他の人から見た俺たちが異常だったってこと。

 

 

「「「「「…………」」」」」

 

 

今だってそうだ。5人の喜びと笑顔は本物でも、その目は心配そうに俺たちを見つめている。

 

笑顔がどうとか言ってた自分の限界と意味、それをまたしても考えてしまう。

 

……何があったか知られたら、やっぱり軽蔑されちまうのかな。特にルビィちゃんには、とても話せやしない。自分の事でも、姉の事って意味でも。

 

 

 

————そうやって空気が重くなり始めた矢先に、先ほどまで眺めていたパソコンに一通のメールが送られてきた。

 

 

 

 

「『Aqoursの皆さん、東京スクールアイドルワールド運営委員会より』……とうきょう?」

 

 

 

 

それを花丸ちゃんが読み上げて、それを理解した俺達に衝撃が走るまで、30秒はかかったと思う。

 

 

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

『東京だよ!東京のスクールアイドルのイベントだよ!?燃えてきたよー!!』

 

『それはいいけど、交通費とか大丈夫なの? 結構部活で使っちゃってるし、全員がいけなきゃ意味ないし……』

 

『う~ん……お小遣い、とにかく前借りで行く!!再来月、その次も!』

 

 

千歌はかなりノリ気だ。憧れの東京に、スクールアイドルとして呼ばれているんだから、それも当然だろう。この前見てしまったことを吹き飛ばしたい、というのもあるかもしれない。(ちなみに交通費はここ2、3か月分くらいの俺のバイト代からも大きく消えたが、本望だ)

 

もちろん千歌だけでなく、曜もみんなもかなり浮き足立っている。ルビィちゃん、花丸ちゃんに善子もそうだ。

 

 

『今回のライブイベントに出てるスクールアイドルグループ、有名なところばかりですよ!去年優勝したスクールアイドルもいるみたいで……私たちが呼ばれたんですよね!?』

 

『すごいずら~!もしかしてもしかして、このまま行ったら、ラブライブ優勝できちゃうかも!』

 

『以前までのAqoursでは、無理だったかもしれないわね……しかーし!このヨハネの魔力と、あまねくマナの集いし魔都・東京のパワーが併されば、それも不可能ではないわ。これはその前哨戦よ!』

 

 

全国から注目を集める、スクールアイドル達がライブをするイベント。交通費が自分たち持ちなのは不本意だけど、運営委員会的には上位グループの贔屓をしたくなくて、こうなってるとか。そこに新人グループであるAqoursが呼ばれたのは、ひとえにランキング上昇率が原因だろう。

 

沼津の、内浦のAqoursのライブ。それが東京から全国に認められるようになっていけば、もちろん学校にもプラスになって、廃校阻止に貢献できるはずだ。ダイヤと果南と、小原さんと俺のやっていたという、かつてのAqoursの失敗を払拭する機会にもなる。

 

(でも……果南から聞いた過去の話はまだ、みんなには話せていない)

 

 

まだ全容がつかめてないのと、大事な時期にみんなを混乱させたくない理由はあった。ダイヤと果南の熾烈なアタックと、ルビィちゃんへの返事、何より千歌に見られてしまったことを考えれば、いつまでも隠せるものではないとは分かる。

 

……本当は、避けられていなければ、千歌本人にだけは打ち明けたい。だからって、打ち明けても解決することじゃないとも分かっていた。俺がなんとかしないといけないことだからだ。

 

悩んだ俺は、原点に立ち返って……仲間を頼ることにした。何度も助けられた仲間に。

 

 

「———じゃあこれで、東京の地理とか電車の予定はOKね。でも、どうして急に私にだけ?計画立てるくらい、別にこっそりしなくても良かったと思うけど……」

 

「その、俺も迷惑だと思ったんだけどさ。東京出身なのと……知ってると思うけど、千歌とちょっと気まずくて」

 

「そう、よね……みんな呼ぶと、リーダーの千歌ちゃんも当然呼んじゃうから。それにしても早いものね、私が東京から転校してきて、まだ2カ月くらいしか経ってないのに、こんな風に話せる関係になれるなんて」

 

そう言って、ちょっと複雑そうに笑う梨子。今回相談したのは、目の前の彼女。

 

今回の行き先が東京ということで、彼女がそっちの出身で向こうの地理に詳しいから……ってのが、表向きの理由。

 

ただ、それだけじゃない。唯一この辺りの産まれではない彼女が、Aqoursの中でもいい意味で距離があって『相談しやすい相手』に感じていた……ってのもあった。千歌のことだから曜でもよかったかもしれないけど、彼女は千歌に近すぎるとも感じられたから。あと、梨子は家も隣だし。

 

そしてそれは多分、正解で……俺は心のどこかで話しやすさを感じている。と思う。

 

 

「ほんとにな……俺もいろいろ、複雑で。こっちに記憶はないのに、みんなには旧知の相手だから。ありがたいけど、やりづらさもあるんだ。梨子みたいに相談できる相手がいるのは、助かってる」

 

「わ、私だけなの……?」

 

「? う、うん。梨子だけだよ。こうして、こっそりアドバイスをもらえるのは特に」

 

「そう……なんだ。翔くんの頼りになれてるんだ、私だけが」

 

 

彼女は、俺のこともわかってくれているし、千歌のことも分かってくれている。

 

誰とも旧知の仲ではない(記憶を失う前の俺とも)からこそ、俺達のことをフラットに見ることしてくれる。その彼女になら、話すことができる。

 

 

「実は俺……千歌に見られたくないところ、見られちゃってさ。それ以来ずっと避けられるんだ」

 

「見られたくないもの?……そうね。確かに千歌ちゃん、凄くやる気を出してたけど……あれもちょっと空元気が入ってたと思うわ。翔くんともっと一緒に喜びたかったんだと思う」

 

「梨子もそう思ったんだ。やっぱ間違いないよな……でも、俺も起きてしまってる事に対して、どうしたらいいかわからないんだ。それで、千歌に避けられてても、何も言えないで……梨子の部屋に上がり込んでる」

 

「……何があったのか、教えてはもらえないの?『仲間だから』とか『友達だから』って言い方で、話しづらい事まで無理に聞いたりはしないけど……」

 

 

思うところがあるのか、時折考え込むようにする梨子。

 

その彼女に対して、俺はついに話した。俺に起こってたこと、果南とダイヤと、ルビィちゃんのこと。そしてこの前の、ライブ後のことを。

 

 

「実は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分でも荒唐無稽な話だとは思った。でも、現実に起きたこと。

 

梨子は俺が話してる間、全部黙って聞いていてくれた。こういうのが包容力っていうのかもしれない、なんてバカなことを考えたりもしたけど、そのおかげで話し終えた俺の気は、少しは楽になっていた。

 

そして、そんな俺を……梨子はただ、受け入れてくれた。

 

 

「翔くん……辛かったのね」

 

「り、梨子……?」

 

「いいのよ、しばらくこのままで。……いままで誰にも、相談できてなかったんでしょう?一人で抱え込んで……」

 

 

正座のまま下を向いていた俺を、後ろからそっと抱きしめる梨子。

 

その温かさと優しさが、まるで記憶には無くても母親のように感じられた。千歌のお母さんに、自分の夢について話をされた時のような感覚。

 

それのおかげで、俺の弱音も堰を切ったようにあふれ出してくる。……今の記憶にある限りで、こんな風に弱い部分の本音を吐き出したのは、初めてだったかもしれない。

 

 

「俺は……誰かを、みんなを笑顔にできたらって、それだけだった。記憶がないのを言い訳にしてたのもあるかもしれないけど、恋愛なんてあんまり考えてなくて、ましてやそれがみんなとの部活に、こんなに関係してくるなんて……どうしたらいいかわからないんだよ」

 

「辛かったね……翔くん」

 

「……そういう資格はないんだ、きっと俺は。みんながスクールアイドル頑張ってる間、一人でそんな関係ないことに悩んでたんだから……」

 

「そんなことない……誰にだって、大切な人にも話しづらいことや、相談できない事だってあると思うわ。むしろ、大切だからこそ傷つけたくないって気持ちも、あると思う」

 

 

俺のその弱さを、梨子は肯定も否定もせずに、受け入れてくれる。

 

具体的にどうしたらいいのかなんて、お互いに分かりっこない。だけど、今はそれが心地よかったし、解決にむけて頑張る気力にもなった。気力は、きっと一番大事なところだし。

 

 

「今日聞いたことは、とりあえず私の胸にしまっておくわね。タイミングが良くて、ルビィちゃんもOKなら、もしかしたら私からみんなに打ち明けて、話し合うことになると思うけど……」

 

「梨子なら、それをするべき時を間違えないって信じてるよ。何かあっても恨んだりしない、その時が来ても、むしろ自分から話せない俺の失敗なんだから、全然気にしないでくれ」

 

 

梨子にそういう許可を言ったのは、かつてのダイヤとの約束が彼女に重圧になってしまったのではないかという気遣いもあった。

 

それはそれで、肝心な話を他人に頼ってしまっている情けなさもあるかもしれないけど。いつまでも自分の弱さや失敗を抱え込んで、千歌やみんなのマイナスになるのはもっと良くないと思えた。

 

誰かに相談する……シンプルだけど、それが『過去の失敗』を繰り返さないための1つの方法だって感じられる。

 

「……本当はね?心細いのは私もなのよ。本当は東京がちょっと怖いの。生まれ育った場所だけど、私はそこで失敗して出てきてるんだから……」

 

「そうだったのか……確かに、ピアノのことだって解決したってわけじゃないものな」

 

「うん。だから私が翔くんや千歌ちゃん達を頼るように……翔くんも私を……私を頼ってほしいの。その方がお互い、気も楽でしょ?」

 

 

そういって力なげに笑う梨子に、俺は感謝した。

 

……うん。やっぱり、梨子に相談して正解だったかもしれない。

 

 

「千歌ちゃんは私がケアしておくし、東京も少しは気晴らしになると思うわ。だからとにかく、目先のライブイベントに集中しましょう?」

 

「そうだね。本当にありがとう、おかげで、根拠はないけどなんとかなりそうって思えたよ」

 

「ふふ、そんなに気にしなくても大丈夫よ。翔くんは一人で悩まなくていいの、私がついてるから……」

 

 

俺は感謝を胸に、梨子の部屋を出た。ジュースを貰った梨子のお母さんにお礼を告げて、十千万に戻る。

 

すぐには無理かもしれない、だけど千歌とまたきっと話す機会を得られると信じて、仕事に入った。東京への交通費や部費は、まだまだ稼がないといけないんだから。

 

 

 

 

 

 

 

「そう、私だけを頼ってね……私だけを」

 

 

 

 

 




梨子ちゃんも何かが来始めてますね(ニッコリ

さて、いよいよAqoursの大きな転機となる東京でのライブが来ました。そしてそれは同時に、あのライバルとの出会いでもあります、お楽しみに~。

4/5からは活動リニューアルとして、Twitterアカウントがこちらになっています(今んとこ更新の告知くらいですけど)→ @Beta_Yandere_LL

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