ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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お待たせしました、これまた久々に鞠莉視点(摩利支天ではない)です。

彼女だけやってないのは流石に不公平ですもんね~……ま、しょせん遅いか早いかの違いでしかありませんが。どうせみんな病むので。





第47話 愛憎は渦【小原鞠莉】

『私が、スクールアイドル……? そんなのムリよ、やったことなんてないし』

 

『いいえ、経験など関係ありませんわ!この学校を廃校から救うためには、スクールアイドルが必要なのですっ!!』

 

『鞠莉ってスタイルいいしさ、絶対うまくいくって! ほら、翔だって見たがるかもよ。私たちのアイドル衣装!』

 

『え、ショウが……? そ、それならやってみようかしら……』

 

『……チョロいね』ボソッ

 

『ええ、チョロいですわね……』ボソッ

 

 

 

 

 

「……また、あの頃の夢ね」

 

せっかくの休みの日の、何もない目覚めだっていうのに、最悪ね……。

 

最近、いつも2年前の夢を見てる気がする。まだ何も失われてなんていなかった、楽しかっただけの日々の事を。

 

(あの頃は、果南とダイヤとショウに連れ出されてきた中でも、まだお嬢様らしさがあったわね。我ながら……あんなに恥ずかしがってたのだから)

 

それがスクールアイドルをするうちに、いつの間にかその楽しさに夢中になってた。それと同時に、元々好きだった内浦も、ダイヤと果南の事も、ショウのことも学校の事も、ずっと好きになれた。

 

……だから、留学も。ママからの無理矢理なお見合いも断り続けてた……。

 

結局、お見合いは断り続けてるし、留学も『浦の星がいよいよ今年でなくなる』って聞いて、途中ですっぽかして帰ってきちゃったから、何もかも振り出しには戻ってるけど。

 

 

(そう……振りだしに戻ったはず、だったのに)

 

 

私と、果南と、ダイヤ。ショウを含めた4人の最高で、同時に恋愛を巡っての歪さを抱えた関係は、ショウの記憶喪失もあって完全に一度リセットされた。

 

小原家の使用人から報告を受けた時は、耳を疑ったのを覚えてる。これからスクールアイドルで浦の星女学院を廃校から救おうって、そう思ってた帰ってきた私には文字通り『寝耳にウォーター』……って感じだったからね。

 

前理事長から受け取った書類の中にあった、新米用務員の名前『翔(カケル)』……改めて何かのジョークかと思ったけど、本気だったみたいね。記憶喪失になってつい最近帰ってきてたっていう『設定』も、本当だった……。

 

でも、一度最初に戻ったって、たった2カ月と少しの間にも、時は進んでいく。

 

 

(私が何かする前に、千歌っち達の新しいAqoursが始まって……それに果南とダイヤも)

 

 

私が帰ってきた時点では、2人共ショウに対しての態度はそんなに特別なものじゃなかった。だけど、ダイヤは……

 

 

 

『ちゅっ……うふ、ふふ♡ んっ!ん……♡』

 

『はぁ、はぁ、なんでこんなこと……!?』

 

『翔……あなた、ルビィに告白されたのですよね?私への告白を袖にして妹となどと……そんなに私の気を引きたいのですか? まったく……本当、この期に及んで罪な人ですわね?ふふふ……』

 

 

スクールアイドル部に厳しくしているように見せて、本当は……

 

それとも、やっぱり本当はショウが記憶を取り戻していて、ダイヤがそれに協力してるかさせられてるんじゃないか、だなんて思った私は、生徒会室に録音機を仕掛けさせた。

 

でも、そこに録られていたのは……私にとって起きていてほしくなかった内容の、オンパレード。

 

 

『だ、ダイヤ……変だよ、どうしちゃったんだよ!?こんな、これのどこが……』

 

『愛しているからに決まっています。翔のことを』

 

『そういうことじゃ……』

 

『私からの愛情のこもったキス……それなら、頑張る理由としては十分なプレゼントでしょう?』

 

『と、とにかく「ボク」はもう行くから!』

 

 

……これを聞いて、ショウの方からダイヤを誑かしてるなんて思える方がどうかしてるわよ。

 

ダイヤはむしろ、自分の方からアイツに近づいていたんだわ。私や千歌っち達の前では生徒会長ぶってたのに。

 

それに、果南も……

 

 

 

 

 

『色々ちょっかいかけてるみたいだけどさ……それじゃ、本音ではまだ翔のこと好きなの、バレバレだよ? こうしてここに来てそんな事聞いてくるのも、恋のライバルの確認のつもり?』

 

 

————ダイヤだけじゃなく果南まで、それに私まで……まだ、ショウの事を好き?

 

千歌っち達スクールアイドル部を奪おうとしたのも、学校を廃校から救うためじゃなくて……本当は嫉妬してるから?

 

 

……確かに、昔は好きだったわ。同じ幼馴染のダイヤと果南と競い合って、スクールアイドルをする中でいつか誰かを選んでもらうことも、あるかもしれない……とまで思ったことさえあった。だけど、その気持ちはあの日の東京で、全部なくしちゃったはず。

 

なのに、果南には……

 

 

『そこで『翔を』じゃないのが、いい証拠だよ。本当は、翔じゃなくて……千歌達とダイヤに嫉妬してるんだよ、鞠莉は』

 

 

 

……ショックが大きすぎて、何も言い返せなかった私。これじゃ、果南のいうコトを認めてるのと同じじゃない。

 

(でも、もしも。もしも果南の言うことが、正しいのだとしたら)

 

 

私は今日までずっと……好きな相手に。ショウにさんざん酷いことをしてきたのに。この2か月以上の間……

 

好きな相手だから、気を引きたかった?こっちを見てほしかった?……そんなの、言い訳にもならないわ。

 

 

(だから違う、違うはずよ。そんなことありえない……)

 

 

自分を責めるたびに、自分を守ろうとして、自分の気持ちを否定する。その繰り返し。

 

それも、そろそろ限界かもしれないわね。ショウには嘘つきだなんて言っておいて、自分は自分になんて。

 

果南に言われたことが、また頭の中をよぎっていく……。

 

 

『何が違うって言うの? ……いい加減認めたら。本当は自分が一番翔のこと好きなんでしょ。……恋人になりたいって思ってるんでしょ!鞠莉もさぁ!?』

 

 

……違わない。

 

好きじゃなきゃ、こんなに嫌いにならない。

 

『どうして?』なんて考えたりしないし、同じ条件でそれを確かめようとなんてしない……!

 

 

 

大雨の中で、私は小原家の力を使って、同じ状況を作り出した。それが、『停電』。

 

……そういうやり方をしてるあたりが、単なる嫌がらせじゃなくて、ショウとの関係に未練があった証拠なのね。

 

そして、私がPVの時に言ったように結果が全て。ショウは新しいAqoursの、素晴らしいライブを見せてくれた。ダイヤの力も借りてではあるけど……少なくとも私の中に、『彼女たちなら浦の星を廃校から救えるかもしれない』って、希望が生まれるくらいには。

 

そういえばダイヤが発電機を用意してたのは、私がこうするかもしれないって予測してたから?ありえるわね……。

 

 

『勝負の結果がどうこうじゃない。今ここに集まってくれたお客さんや、応援してくれたいろんな人の笑顔……自分たちの輝き、目指したい夢のために歌おうとしてるんだ。それがわからない2人じゃないだろ……!?』

 

『———……鞠莉、昔のことはもうやめようよ。いいよショウ、引き留め続けてごめんね……行って』

 

『これで勝ったと思わないことね。果南とダイヤがどう思ってるか知らないけど……私はまだ、アナタのしたことを忘れたりはしないわ』

 

『鞠莉さん、もうおやめなさい! ……勝負の結果は明らかですわ。スクールアイドル部は発足しても良いのでしょう?』

 

 

あの時、果南は気がついたのね。『ショウは私たちを裏切らない』って。そして以前からそのことを本当は知ってたダイヤは、上手く私の目を欺きながらショウとスクールアイドル部を助けた。それは、ショウを自分の彼氏にするためっていうのも、あったかもしれない。

 

なんにしても、2人は私を置いてずっと遠くに進んでた。ショウを好きだって、認めることができて……そんな自分に嘘をつくことをやめた。なのに、私は一人だけ……

 

 

(2年前のあの日と同じで……ずっと目を、曇らせ続けてたんだわ。本当の事を知るのが怖くて……気がつくのが遅れてた)

 

 

私は、ショウのことが未だに好き……

 

 

『よし!ルビィちゃんの誕生日に向けて、そして浦の星の廃校を阻止するために頑張ろっか!』

 

『果南さん、そういうアナタこそ緊張しがちですが、本当にやれるんですの~?』

 

『ダイヤも、憧れのスクールアイドルを始められて嬉しいのは分かるけど、調子に乗ってケガしないでくれよ。鞠莉も、あの2人のペースにあんまりあわせないでね』

 

『ありがとう、ショウ。私も、こんな格好恥ずかしいけど……でもやってみるわ。学校のためだからね!』

 

 

スクールアイドルをやっていく中で、私はどんどん積極的になれた。スクールアイドルにも、恋愛にも。今くらい明るい性格に変われたのも、それがきっかけ。

 

 

『ちょっと鞠莉、なんだか最近積極的になってない!?』

 

『ええ、私も感じていました! 気持ちは分かりますが、今はまだスクールアイドルに集中すべきですわ!』

 

『ノンノン!恋もスクールアイドルも勢いが大事なのよ、2人に負けてられないからね♪ ……果南はさっきさりげなくショウとペットボトル交換してたし、ダイヤはタオルに手を伸ばしてたじゃなーい』

 

『げっ、み、見られてたの!?』

 

『くっ……手強くなりましたわね、鞠莉さん……!!』

 

『みんな、相変わらず仲良いなぁ……何の話してるんだろ。あれ、こんなに水飲んでたっけ?タオルも違和感が……』

 

 

彼の笑顔が好きだった。

 

ショウさえいてくれれば、私を選んでさえくれれば、ママのもってくるお見合いなんてどうでもよかった。それに、果南とダイヤもいてくれた日々が、最高に幸せだったのに……

 

 

『ショウ、なんだか最近変じゃない?何か大変なことがあるとか、私たちに隠し事してるんじゃ……』

 

『い、いや……なんでもないよ。それより、鞠莉の方こそ大丈夫なの?今度の東京のイベントに向けて、新しいフォーメーションをやってるけど、その負担だって』

 

『ふふ、心配性ね?このくらいヘッチャラデース!』

 

『ならいいけど。……その、留学の話だって来てるのに、鞠莉のお母さんのこととか』

 

『……そのことなら、いいの。私は今ここで、ショウと果南とダイヤと4人で頑張っていられる日々が、十分幸せなんだから』

 

 

そして、そんなに好きだからこそ、あの時なんで彼がウソをついたのか、ずっと知りたがってる。東京のライブイベントの、あの日に。

 

 

『ショウ、どうしてよ!どうしてこんなこと……』

 

『……もう、ダメなんだ。無理だったんだよ』

 

『何が無理なの!あんなことする必要なかったじゃない!私たちはまだ———』

 

『僕が、ダメなんだ。……ごめん、全部僕のせいだ。無理だったんだ、スクールアイドルで、誰かを笑顔にできるなんて……』

 

 

でも……それはわからないまま。

 

そして、それをわからないままにしているうちに、いつの間にか完全に1人になっちゃったのかもね。過去の事にこだわってたのは私だけ。ダイヤも、果南も遠くに行っちゃった。ショウですら……

 

 

 

いいえ、ショウが……もしあの時、本心でなかったのなら。

 

 

 

 

……まだ。

 

あの録音や果南の言いぶりを聞く限り、ショウはまだ、誰のモノにもなってないんじゃない?

 

それに、私の中にはまだ別の疑問も残ってる。例えショウに何か理由があって、当時の事があったのだとしても……その真実はまだわかってない。

 

そうだとすれば……

 

 

(私にもまだ、できることがあるはず……チャンスがあるはずよ。真実を知って、しかもショウを私のものにできるチャンスが)

 

 

……だいたい、果南もダイヤもヘンなのよ。

 

ショウはあの時私を散々悲しませたのよ?行きたくもない留学に行くきっかけにもなったし、2年間も無駄にしちゃったんだから、その責任をとってもらわなくちゃ。

 

そうよ……ショウは私を見てなきゃダメなの。私を好きにならなきゃいけない責任があるのよ、ゼッタイそう。私に何をされたって我慢して、また昔みたいに一緒にいてもらって、笑顔にしてもらわなきゃ……。

 

きっと、ショウは私を笑顔にする義務があるんだわ。そう言う運命に決まってる。そうじゃなきゃ、2人揃って奇跡的に一緒に内浦に帰ってくるわけないもの。果南やダイヤなんて気にすることない……今日までの苦しいことも、すれ違いも、全部最後に結ばれるためのフラグに決まってるわ。

 

いいえ、『最後』っていうと語弊があるわね。愛し合う2人がゴールインして、そこからやっとスタートなんだから。廃校を阻止したら、ママのお見合いなんて無視して結婚式を挙げましょう。そう、それがいいわ。場所は……このホテルオハラよね、やっぱり。そうしましょう。

 

 

そのためには……いくつか仕掛けが必要になるわね。

 

小原家の力を使って動きすぎると、ただでさえ留学を蹴って帰ってきた私はママにもっと睨まれる。そうしたらそれこそ、上手く動けなくなるから……

 

 

「そうね、まずは今まで通りの私を演じて……果南とダイヤを焚きつけちゃおうかな~♪」

 

 

ショウは確かに押しに弱い。それもあって、2人は猛烈にアタックして彼を支配しようとしている。……でも、わかってないわね?ショウの芯の強さと奥手さを。

 

いくら貴方達がアタックしたって、きっと記憶を失って、しかもAqoursの活動が大事なショウは首を縦にはふらないわよ。私はあの2人に疲れ切った隙をついて……

 

 

「私だって、伊達に2年も海外にいたわけじゃないわ。男の子は追わせなきゃダメだって、アドバイスをもらったものね♪」

 

 

向こうの男の子も確かにいい人たちだったけど、私にはやっぱりショウがいたから……かしらね?恋愛する気までにはなれなかった。だけど、経験豊富な友達から色んな話を聞けたのは大きな収穫……。

 

でも、まだ足りない。ショウに私を選んでもらうためには……

 

 

 

「今度、海開きの時に2回目のライブをするって言ってたわね。そのライブ次第では……」

 

 

 

……東京のスクールアイドルの、ライブイベント。かつて私たちが離れ離れになった原因。

 

その毎年の新グループ枠の確保に、私は小原家の力を使わせてもらうことにした。

 

もっとも、そんな工作が要らないくらい……ひょっとしたら素晴らしいライブがかもしれないけどね。

 

 

 

「さあ、これでお膳立ては十分よね。ショウ、まってなさい……2年間アナタの事を考え続けてきたのは、ダイヤと果南だけじゃないのよ。私をこんなに苦しめた責任……必ずとってもらうんだから……♡」

 

 

 

憎しみと愛情は紙一重……果南も言ってた、月並みな言葉だけど。今ほどその意味を実感することはなかった。

 

 

 

 

 

 




私はヤンデレを区分けすることは、パターン化を嫌うのでしたくないのですが、策略系とか愛憎型とか呼ばれる部類になるのでしょうか。

この4章から次の5章でみんな自分の恋を自覚し終えて全員病み始めて、その次あたりで爆発させたいなと思ってます(笑顔)

今週もタフな仕事だった……

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