偉大なる他作者様の逆DV気味なヤンデレ果南ちゃんを見てたら、どうしても私も書きたくなってしまって……。もしも女性に暴力を振るわれるタイプのヤンデレSSが苦手な方は、ブラウザバックをお願いします。
恋が始まることが、恋の終わりにつながるだなんて……私はつい昨日まで考えてもみなかった。
Aqoursの練習とデート尽くしだった夏休みもそろそろ終わり。梅雨の時期なんてとっくに過ぎてるのに、雨がざあざあと降り続けてる。
まるで、私の涙みたいに……
「果南。俺たち、もう限界だと思うんだ……」
……ずっと前から、好きだった人。
もちろん、今この瞬間も。これからもずっと……大好きな人。
初恋の相手はダイヤで、中学時代は鞠莉が気になってた節操なしなあいつ。ま、男の子だから仕方ないけど、もうちょっと私を見てくれてもよかったんじゃないかな。
ライバルの多い恋だったけど……Aqoursが新しく結成されて、私たちも入っていったこの夏に、ようやく私はその心を奪えたんだ。
本当にうれしかった。これでやっと私は幸せになれるんだって思ってた。10年近くこの胸の中で暴れてた嫉妬に悩まされることは無いって。
——————……そう、思ってたのに。
私、松浦果南が別れを切り出されたのが、昨日のこと……。
「ど、どういうことかな? 私は全然、幸せだと思ってるんだけど……!?」
一体どうしてこんなことになったのか、全然わからなかった。
幸せなカップルだと自分では思ってたし、Aqoursのみんなも祝福してくれたのに。でも、確かに最近は元気がなかったし、みんなからも遠回しに心配されてた気がする。
もしかしたらそれなのかもとは思った。でも突然すぎたから頭が真っ白になって、私の口からは震えながらそんな言葉しか出てこなかった。
「それがわからないから、もう嫌なんだろ……!毎日毎日暴力ふるって、もうウンザリなんだよ」
「暴力?暴力なんてふるってないよ……?」
最初に付き合うとき、『浮気しそうになったらお仕置きするからね!』と約束した。貴方だってそれには納得してくれたはず。
だからちょっと浮気しそうになったり、ダイヤや鞠莉、Aqoursのみんなに目線を向けたりしてたから、私しか見れないように『愛してあげた』だけだよね……?
ほんのちょっと痛いだけだと思うんだけど。他の娘見てたら軽く足を踏んだり首を『ほんの少しだけ』締めたり、浮気っぽいことしたらその晩は私が上になってシてあげたりしたけど……。もしかして、それがダメだったってこと……!?
「まさか本当に自覚なしだったなんてな……。特に他の女の子……Aqoursのメンバーであっても話しているのを見られると、首を絞められたり、お風呂に沈められては引き上げられを繰り返されて拷問されたり!『キミは永遠に私と一緒なんだよ?』『絶対別れてあげないから』とか脅してきてさ!」
私、脅してなんか……!
「……果南の事は今でも好きだよ、でももう無理なんだ……ちょっとでいい、俺たちは距離を置こう」
それが、彼にとってずっと嫌だったの?私はただ、貴方に『大好き』って、いつでも言って欲しかっただけなのに……。
「今こうしてても、怖くて震えてるんだ……! 今度は何をされるのかって……」
————————あまりのショックに、私は逃げていく彼の手を掴んで追いすがることすら出来なかった。
引き止める言葉も出てこなくて、素通りして行く彼をただ、見つめるだけで……。
……あれから1日経って、天気は変わって雨音が窓を叩いてる。まるで、私の涙が雨になって落ちてくるように。
ずっと独りで泣き腫らしてた。こんな時、アイツがいてくれたらその胸に飛び込んでやるのに。あの匂いと温かさを感じながら、やっと私のものになってくれたんだと慰められてしまえるのに……。
でも今はひとり。……10年以上、待ち続けたんだよ?結ばれるのを。鞠莉とダイヤだって狙ってたし、千歌だって好きだった。でも、私を選んでくれた。
なのに……たった1ヶ月。私の愛が受け入れてもらえなかったせいで、それだけであっさりと全てを失ってしまうなんて。
10年間の思い出を何一つ消したくない。捨てられないよ……。
今思えば、最初の出会いの時から凄く自然に仲良くなれちゃったもんね、私たち。ハグして、山に登ったり海を泳いだり。ダイヤと鞠莉とも出会って、家を抜け出して、星を見て。一緒に学校に行って……。
それじゃ、当たり前すぎたんだろうね。ひと月前に勇気を出して告白した時から、気持ちを確かめようともしなかった。彼の心が離れていくことにも気付かずに、自分勝手な愛情を押し付けてたんだ。
夏の最初に始まった恋が、夏の最後と一緒に終わっちゃうなんて。ずっとこの幸せな時間が続いていくと信じてたんだ、私だけが……。
それは、一方的な思い込み。本来恋人って、お互いの気持ちが大切なはずなのに……。
「やっぱり、私の愛が足りなかったんだよね。きっと……」
そうだよ、きちんともう一度話し合って……気持ちを伝えれば、わかってくれるはず。やり直せるはずだよね?
そうと決まれば、お店の手伝いがない日だからって、いつまでも閉じこもってはいられないよ。
会わなくちゃ。
会えればきっと、わかってくれる……
—————そう、思ってたのもまた私だけだった。
彼の家に行った私を待っていたのは千歌だったんだから。
「千歌、なんで通せんぼしてるのかな……? 私はただ、彼に会いに行きたいだけなんだけど」
彼の家の玄関の前で千歌が私の道を塞いでいる。精一杯平静を装って聞いたけど、私は震えが止まらなかった。実際、身体だけじゃなくて声もそうだと思う。
千歌を怖がってたわけじゃない。彼に捨てられるのが怖かった。
……もしかしたら、私と別れて彼は千歌を選んだんじゃないかっていう、想像からくる怒りと怖さで震えていた。
「『なんで』? ……それ、果南ちゃんが一番答えをよくわかってるんじゃないの?」
「……どういう、意味? 答えになってないと思うけど」
「あの人から聞いたよ。果南ちゃんの暴力の酷さ……。あんなにアザやキズまでできてさ!!」
私とは対照的に、千歌の声は有無を言わせない強さがある。彼から聞いた?何を?暴力……? 私のこと、誰かに漏らすくらいイヤだったんだ……
それに、アザって……千歌に裸を見せたってこと……!?
「……何知らないフリしてるの、果南ちゃん。最低だよ!好きな人を傷つけて!それで自分だけ『愛してる』なんて……私なら絶対にそんなことしない。果南ちゃんよりあの人を幸せにしてみせる。もう二度と彼に近づかないで!!」
あの千歌が、本気で怒ってる。
明るくて優しくて、ちょっぴりドジだけど。ここまで本気で怒る千歌を見たのは初めて。
普段の私なら、気圧されてたかも知れない。
でも……今の私の中にあった感情は、激しい怒りだった。
『彼に近づくな』?
————————千歌、何様のつもり?
私は彼だけのもので、彼は私だけのもの。
彼は私の恋人であって、千歌の恋人じゃない。
まさかとは思うけど、そこに割り入ってくるっていうの……?
だったら、さぁ……
「その『近づくな』……っていうのは、彼の意思なの?」
「……そうだよ。今の果南ちゃんを彼に近づけるわけにはいかない。絶対またあの人を傷つけるもん!」
……ふーん……そっかぁ。
わかっちゃったなぁ、千歌だったんだね?
『私の彼氏に嘘を吹き込んで、自分のものにしようとした』のは……!!
どうせ私から彼を奪いたかったんでしょ?好きだったもんね?千歌も彼のこと、ずっと。
そこまでしてでも彼が欲しい気持ちだけはわかるよ。あの人くらい魅力的な人、誰だって虜になる。もしあのAqours9人揃った日、選ばれたのが私じゃなかったら……おかしくなっちゃうか、今の千歌みたいに奪おうとしたはず。
たとえそれが、Aqoursの仲間でも、ね……。
「……なら、直接確かめてくる」
「あっ! ッ……!?」
千歌を押しのけて、ドアを開けてすぐに内側から閉める。
このくらいお手の物だよ……昔、よく閉じ込めあって遊んだもんね。
ここで出てきた時点で鍵をかけてないのが千歌の甘さだけど……今は彼と引き合わせてくれる幸運に感謝だね。やっぱりさ、私たちはまた仲直りする運命なんだよきっと。
後ろから千歌がドアを叩く音が聞こえるけど、気にしない。聞こえたらそこで聞いているといいよ。私と彼がどれだけ深い関係なのかを、ね……。
「千歌、何で大声出して……? 」
私が上がってきた階段の音を、千歌だと勘違いしたみたい。
千歌に間違われるのはちょっと癪だけど……ふふ、そんな抜けてるとこも可愛いよ……♡
「やっ♪ 元気してた?」
気前よく挨拶したつもりだけど、ドアを開けた先にいたのが私で、心底驚いた顔をしてる。
……そんなに、千歌がよかったの?
私じゃなくて?
「ねえ、私たちやっぱりやり直そうよ。 千歌が邪魔したんだよね? イヤだったことは謝るし……またデートすれば誤解も解けるからさ。きっと……」
そうだよ。私たちの関係が切れるわけない。これからも、ずっと一緒に……
ほら、あなたも喜んで……
「か、果南……来ないでくれ!」
……おびえて、る?
私を見て、どうして怖がってるの?
じゃあもしかして、千歌の言ってたことって———————————
「なんで怯えてるの……? ただ前みたいに、愛し合う関係に戻ろうっていうだけなのに……」
「その『愛し方』が問題だって言ったろ!? もう、怖いんだよ……果南が……! だから千歌にも言ってたのに……」
———————————この瞬間、私の中で何かが切れた。
さっきの千歌の時の比じゃない。ここまで『毒されちゃってる』なんて……
そうだよ、あなたが私の愛を否定するのもきっと千歌がなにか吹き込んだんだ。本当はあなたも喜んでくれてたんだよね?
たとえ本当に『イヤ』なら……
……私が『スキ』にさせてあげないと
「そっか。そうだったんだ。ごめんね……」
「果南? わかってくれt……!?」
「そこまで千歌に毒されてるんだって気づけなくて、本当にごめんね。私、あなたのこと誤解してた。あなたが私を拒絶するはずなんてないのに……。だから、私で上書きしてあげるね……♡」
思わず身をよじる彼の身体を、思いっきりハグして逃がさないようにする。
「無駄だよ♪ 貴方が体力で私に敵うわけないじゃん。昔からずっとそう……私が守ってあげなくちゃいけないのに、貴方は無理しちゃうんだから……」
ああ……1日ぶりに感じる彼の匂い、感触、温かさ……全部サイコーだよ!!!!
いくら抱きしめても足りない!! どれだけ長くハグしてても足りない……!!私をこんなにしたのはあなたなんだから、責任とってさ。もうこれからの人生、ずっと一緒にいて永遠にハグしてもらわないと……ね♡
……あれ? ちょっとだけ強く抱きしめすぎちゃったかな? 少しぐったりしちゃってる。
私だけ楽しんでも意味ないよね。前までの私とは違う……千歌につけいるスキを作っちゃった私にも責任があるんだよね。
だからこれからはちょっとだけ優しくシてあげる。今度は一方的じゃない。私のことも感じてほしいな……?
「ねえ、黙ってちゃ何もわからないよ?素直に話してほしいな……?」
そう言って抱きしめる力を緩めて、今度は優しく胸に顔を包んで頭を撫でてあげる。
怖がらせちゃダメだもんね。あくまでも、私の愛をわかってもらうだけだから。そう、私は暴力なんてふるってないんだよ。これはただの愛情表現……そうでしょ? 傷つけちゃうのも、ちょっと過激なのも……お互いがお互いのものだっていう証を、強く身体に刻むため。それをこうして刷り込んであげるから……。
「か、果南……どうして、急に、やさしく……!?」
「急に、じゃないよ? 私はずっとこうだったよ。私たちはちょっとすれ違っちゃっただけ……そう、私はあなたのことが大好きなの。ずっとずっと……付き合う前からそう。怖くなんかないよ……?」
「そう、なのかな……でも確かに、あんなに怖かった果南がこんなに急に……」
「だからさ、それが誤解なの。全部千歌のウソ……。でも、私もちょっと強くシすぎちゃったよね。それはごめんね?」
強い力で片手を掴んで、でももう片方の手では壊れものを扱うように頬を撫でてあげてる。
彼が私を怖がってるなら……それを利用してあげる。
『わかって』もらう。『それこそが私たちの愛』なんだってことを。
昔TVか本で聞いたことがある。本当に怖い相手に優しくしてもらった時……恐怖は全部、愛情に変わっちゃうんだって。ましてや赤の他人なんかじゃなくて……元から愛し合ってる私たちならなおさら、かもね♪
「あ……ああ、果南。俺ってもしかして、間違ってたのかな……。ナイーヴになってただけ、だったり……」
「うんうん。きっとそうだよ。でも大丈夫、私は何にも気にしてないから。これからはまたずぅーっと、私が守ってあげるからね……♡」
本当は自分の意志だけで私を受け入れてほしかったんだけど……ま、いっか。
結果として私のモノになってくれそうなんだし。
私に溺れて……堕ちていく目を見ていると、前までのことなんてどうでもいいや。今外で降ってる雨が止みかけてるように、私の涙も止まっていた。
「たくさん、痕つけちゃったからね……今度は、私に貴方の愛を刻んでほしいな……?」
そうすれば、今度は貴方からも私から逃げられなくなってくれるよね? ……いや、そうしないといけない。今しかない。ここで畳みかけないと、また千歌達に誑かされちゃうかもしれないからね。
身体にも心にも、しっかりと教え込んであげる……。誰があなたのパートナーなのかを……。
どんどん二人で深いところへ潜っていくように……愛情の海に沈んでくの。二度と抜け出せないくらい深くに。もう、誰にも邪魔されないくらいお互いに愛の証を刻みあって、ね。
せっかくだから、下で騒ぎ続けてる千歌にも聞かせちゃおうよ……?
放心気味の彼の服を脱がせてあげて、私も脱ぐと、お互いの日焼けの痕が見えた。
この痕がなくなる頃には……きっともう、私達は離れられなくなってるよね。
もう前のことはいいよ。上を向いて、これから二人でまた作っていく明日のことを考えよう?
夏は、まだもう少しあるんだから……
今度は二人だけで、『楽しかった』って言えるようにしようね……♡
10連休2日目は果南ちゃん。本当は誕生日に合わせたかったのですが、延び延びになってしまっていました。
この後男の子が果南ちゃんに完全屈服しちゃうシーンにつきましては、皆さんのご想像にお任せします。
サンシャイン単体での短編の書き溜めはいったん終わったので、残り8日はμ'sと長編の外伝や後日談、以前活動報告で募集したリクエストSSになるかもですね。しかし、なかなかヤンデレネタを出し続けるって大変ですね……。皆さんもごゆっくり身体を休めてください。