ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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曜ちゃんに相談という時点で、賢明な皆さんは既に嫌な予感がしていると思いますが、おそらく当たっていることでしょう。

ちょっとキリが悪くなりそうだったので、以前の回を0.5話にしてまた追加しちゃいましたゴメンナサイ






第51話 どうして?

——都内、某所の公園。

 

子供たちが遊び、親がそれを見守り、カップルがクレープを食べる。スーツを着たサラリーマンや、女子高生も忘れてはいけない。憩いの場というのは、こういう場所を指すのだと思う。

 

だが、俺と曜はそこで2人、そこに似つかわしくない暗い顔で話をしていた。

 

 

「今頃みんな、自由時間楽しんでるかな……」

 

「少なくとも、じっとしてるよりは楽しいと思うな。千歌ちゃんには、梨子ちゃんがついてるし」

 

「1年生のみんなも、スイーツだもんね。練習漬けの毎日の気晴らしとか、本番前の景気づけになってるといいけど」

 

「うーん……私たちも、一応スイーツに入るのかな?クレープだけどね」

 

 

他のみんなに対抗して……というわけではないんだけど、キッチンカーで買ってきたおそろいのクレープが、俺たちの手に握られている。これは、相談事がスムーズに進むようにという考えで買ってきたんだけど、御覧の通りあまり効果はない。口は食べることより、喋ることに使われている。

 

 

「それにしても、まさか翔くんが……果南ちゃんとだけじゃなくて、ダイヤさんともそんなことになってたなんて。それに、さっきの電車で1年生のみんなにまで……」

 

「うん。情けない話だけど……同じ仲間の、年下の女の子を相手に、俺は怖がってたんだ。色んなこと思い出しちゃって、自分じゃどうしようもなくなって」

 

 

彼女は、何があったかについては、千歌から既にある程度聞いてはいた。だから俺は、俺の身に何が起きていたのかについて、少しずつだけど話したというだけだ。

 

……もっとも、それだけでも十分なインパクトがあるのは言うまでもない。曜も一通り聞いてから、受け止めるのに少し時間が必要だったし。

 

「……情けなくなんて、ないよ。果南ちゃんと生徒会長にあんな事されて、フツーで居られる方が難しいと思う。むしろ、今こうして私と普通に離せてるんだから、まだ大丈夫だってポジティブに考えよう?」

 

「女子高で働いてるのに、女性恐怖症なんて……ルビィちゃんの逆パターンか。あの理事長は大喜びしそうだけどね」

 

「あの理事長はいつも翔くんをいじめるんだから、あの人のことは考えなくていいよ! 今は私が目の前にいて、ちゃんと話を聞いてあげてるでしょ?」

 

 

そう……俺たちがこうしている理由は勿論、千歌とのことでの、相談だ。

 

それだけでも解決策が見えないのに、現在進行形で事態が悪化中ともくれば、2人揃って沈むのも無理からぬことだと、理解してもらえるとは思う。全部俺が招いておいて、偉そうだけど……

 

 

「……千歌ちゃんがあんなにショックを受けちゃってたんだから、本人はもっとでしょ?私だって、自分のことみたいに怒ってるもん……果南ちゃんのこと、信じてたのに裏切られた気分だよ」

 

「いや、曜は変わらず仲良くしてあげてくれよ、俺のせいで2人が喧嘩なんてことになったら……」

 

「もう!そうやってまた他人の心配するんだから!翔くんは被害者でしょ!?」

 

 

ひ、被害者って大げさな。心配のあまりか、曜の口調は気遣いながらも強いな。俺がこの期に及んで、まだ自分のこととして捉えられてない無自覚さが、一番の問題なんだろうけど。

 

 

……無自覚、か。

 

それはきっと、かなり悪いことなのだろうと、俺は考え始めていた。

 

 

『愛しているからに決まっています。翔のことを……』

 

『ごめんね千歌、見ての通り……私、翔のこと好きなんだよね♡』

 

『待ちません♪ ……私、翔さんに恋しちゃったみたいです♡』

 

 

3人からの、告白。

 

 

『翔先輩、オラ達、初めてのライブですけど。ホントに頑張りますから、見ててくださいね!』

 

『ショウに手取り足取り教えてもらうのは私よー!?』

 

『ふふ、そんなに気にしなくても大丈夫よ。翔くんは一人で悩まなくていいの、私がついてるから……』

 

 

3人からの、兆候(善子はまだよくわからないけど)。

 

 

 

『私は、ずっとしょーくんが綺麗な夢を追いかけてる……そんな後ろ姿に憧れてたんだ』

 

 

 

……そして、千歌の想いも。

 

 

 

『しょー……くん、そんな。そんなのって……』

 

 

あの時の彼女の表情を思い出すたびに、胸の奥が締め付けられる。記憶を失くして、どこからか流れ着いた俺を拾ってくれた『幼馴染』。スクールアイドルのすばらしさを教えてくれたという点でも、千歌は恩人にして、最大の『友達』だ。

 

でも、千歌は。千歌の気持ちは、『友達』じゃなかった。もっと大きくて、温かくて……

 

 

(……いつまでも、無自覚じゃいられない。俺だって、流石に気付くよ)

 

 

俺の周りにいる女性の多くが、俺のことを……

 

 

 

「自意識過剰ってやつなのかもしれないけど、みんな俺のこと、好きなのかな」

 

 

視線を遠くのカップルに向けて、俺はそうつぶやいた。曜もそれにつられてそっちを見て、どこか納得したように返す。

 

「……うん、そうだね。女の子の側の私から見ても、そうだと思う。みんな、隠してたわけじゃないんだけど、ルビィちゃんが一時期積極的すぎたからね」

 

それで目立たなかったのかな、と少し笑いながら、彼女はクレープを一かじりした。とはいえ、真実そうだとしても、俺は罪の意識をどこかで感じざるを得ないでいる。

 

誰かを笑顔にする……それって、俺から見て笑顔でさえいればいいって意味じゃあ、絶対ないはずだから。何も言えずに黙ってしまう俺を見て、曜は少し所在なさげに、またクレープを口に含む。

 

 

「本当に……どうするべき、なんだろうね」

 

 

彼女の視線の先には、さっきの俺と同じように、カップルや家族連れが楽しそうな声を上げている姿があった。いい案が出てこないのは、曜のせいじゃない……そもそも俺自身が、この状況に対して入り込めていないせいだ。俺はぼんやりをしてて、あの人たちにはハッキリとあるもの。

 

それは……人を愛するということ。

 

笑顔がどうとか、みんな全員が大事とか、そんなことばかりの俺だけど……それは逆に言えば、特定の誰かに恋をしたり愛したり、そういうことのない人間、と言う意味でもあるのかもしれない。以前、千歌のお母さんに指摘されたように、その夢は記憶とともに最初の想いが消えてしまってから、凄くあいまいなものになってるんだと思う。

 

「人を好きになるって、どういうことなんだろう。……曜はそういうこと、あったの?」

 

「え、私が翔くんを……?」

 

「? いや、俺じゃなくて……曜って人気者だし、男の子に告白されることも珍しくないと思ってさ」

 

 

俺はみんなが好きだ。Aqoursのメンバーはもちろん、よいつむトリオや先生たち……学校のみんなだって。沼津や内浦のみんなも好きだし、あんなことをされてもダイヤと果南を嫌えないでいる。理事長は……苦手だけど嫌いってわけじゃない。

 

我ながらお人好しな考えで、あまちゃんなんだろうなとは思う。

 

……それでも。その俺の『好き』と言う気持ちと、みんなが俺を『好き』という気持ちは、違うってことくらいは、わかるつもりだ。

 

だから勇気を出して、曜にちょっと踏み込んだ質問をしてみた。戸惑わせてしまって申し訳ないけど、Aqoursの中で一番社交的なのは間違いなく曜だし。最初の曲を作るときは恋愛経験がないーってみんなで騒いだけど、告白された経験はあると思った。

 

果たして、それは正解ではあったのだけれど……地雷でもあった。

 

 

「……そ、そうだね。私も何度か告白されたことはあったよ。けど、全部フっちゃったから参考にはならないかも」

 

「それって、水泳が大事だったとか、相手がイマイチだったとか?」

 

「ほとんど知らない人が多かったし……ううん、本当はね? 好きな人がいたんだ。ずっと前から。だから断ってたの」

 

「え゛っ!? す、すきなひとがいる!」

 

 

いっ……いかんいかん、驚きのあまり、思わず変な声が出てしまった。危うく、手に持ったクレープを落っことすところだったよ……。そんな俺の反応を見て、曜は愁いを帯びた表情から一転、ジト目で不満げな表情になってるし。

 

 

「なーに? 翔くんが聞いといて、曜ちゃんに好きな男の人がいたら悪いの!?」

 

「いや、そんな事はないけどさ。てっきり曜って、モテてはいても、恋愛自体にはあんまり興味ない方かと勝手に思ってたんだ。水泳部とスクールアイドル部掛け持ちで忙しいし、基本的にほぼ千歌と一緒にいるイメージがあったから」

 

「っ、興味……確かに、沼津駅の前を歩いてる女子高生みたいな感じじゃないけどさ。私だって……女の子はみんな、自然に恋をするんだよ。黙っていても、好きな人に気づいてほしい。この気持ちを察して、向こうから告白してほしい……ってね?」

 

 

それは……そういうものなのかな?

 

確かに、男の子は恥ずかしがるところはあるだろうし、女の子の方だって誰もが告白する勇気が出るわけじゃないだろうから、内に秘めた想いというものはあるんだとは思う。実際、俺の周りにいる女性も、昔馴染みが多い(らしい、記憶ないし)。果南とダイヤ……それに千歌は、その分かりやすい例だろう。自然に恋をする、という意味でも。

 

(しかし、いざ曜がそういうことを話すと、なんだかつい意識しちゃうな……)

 

相手はどんな男だろうとか、その人って沼津住んでるのかなとか、俺と違って(?)健全な関係を築けているのだろうかとか、ライブ見にきてくれた人の中にいたのかな、とか……。

 

なんだか、親友に先に恋人ができたみたいな感想を勝手に抱いてしまうなぁ……。

 

 

「……って、私じゃなくて翔くんの話でしょ?とにかく私は、『好きな人』がいたから、告白を断れたんだ。さすがに、翔くんみたいに何人も同時にとか、ヘンなことされたりはないけどね」

 

「そんなに『好きな人』を強調しないでくれ、なんだかショックが……」

 

「へぇ~、ショック受けてくれるんだ? ……ひょっとして、ちょっとはヤキモチ妬いてくれてる?」

 

「う、ほっとけ!」

 

 

からかわれたのを誤魔化すために、今度は俺がクレープを頬張った。うん、美味しい。甘いものを食べて頭を働かせて、いい案出して……早いとこ曜に愚痴るのもやめにしよう。こっちが人を好きになることについて悩んでるのに、向こうはナチュラルにその辺を理解しているのだから、モヤモヤもしてしまう。

 

 

……だからこそ、曜に甘えてばかりはいられない。早く話を進めなきゃと思って、「ごめん、すごく変な言い方しちゃうんだけど」とことわってから、あえて突飛なことを言った。

 

 

「千歌と仲直りするには……他のみんなの告白を断って、千歌と付き合うべきなんだろうか」

 

 

———……当然、これは極論だ。

 

曜もそれを分かっている。心の中で否定してほしいと思ってるし、彼女は否定してくれた。

 

 

「……それは、違うと思うな。それで千歌ちゃんが『選ばれて』も、どっちも嬉しくないと思う。翔くん、まだ誰のことも好きじゃないんでしょ?友達としてはともかく、女の子としては……」

 

「うん……もちろん、普通の友達以上には大好きだけどさ。それでも……」

 

「いいんだよ、誰かがどうこう、言えることじゃないし。私のことも、千歌ちゃんと同じくらい好きなんでしょ?やっぱり恋人になるなら、お互いに好きじゃなきゃ続かないと思うんだ! ……それに、誰かの告白を断るのに、そっちのほうが誠実だと思う」

 

「誠実か……確かに。なんとなくで、なんてダメだよな。断るにも受けるにも」

 

 

ただ千歌のために、というだけで彼女を『選ぶ』なんて、絶対にやってはいけない。自分のためにも、相手のためにも。

 

……となってくれば、この後どうするかも手段は絞られてくる。たとえそれが、結論の先送りでしかないことであっても。

 

「だからさ、翔くんは一度はぜんぶ、断った方がいいよ!そもそも、記憶喪失でそれどころじゃないのに、みんなしてこんなことするんだから……こんなんじゃ、翔くんが苦しいだけだよ。みんな翔くんを苦しめてるよ!」

 

「そ、それは大げさだと思うけど……わかったよ。俺は俺の責任をとるよ。今晩こそ、無理やりにでも千歌と話をする。果南が無理矢理だったことは説明するし……それで、みんなからの告白はいったん断る!」

 

「それはいいけど……やっぱり分かってないよ。翔くんの責任って何? 『惚れさせた責任』っていうなら、ちょっと自惚れ過ぎだと思うな。逃げ腰になれとは言わないけど、自分のせいだーって言っても千歌ちゃんには誤解されちゃうかもよ? ほんのちょっとでも、翔くんから手を出したんだって」

 

「う……そうかも。わかったよ、ありのままだね」

 

「そうそう、それがいいよ!ほら、私がちゃんと千歌ちゃんが逃げないようにお膳立てするからさ。大事なライブの前に、しっかりしとかなきゃね」

 

 

 

さすが、曜は千歌のこと分かってるなぁ……俺との関係も、本当に心配してくれてるし。彼女の助けがあったら、この数日間のギクシャクした関係も、きっと解決できるに違いない。曜に相談して本当に良かった。

 

だから、俺は残ったクレープを景気づけにと一気に胃につっこみながら、素直に感謝を述べた。

 

 

それが、彼女の気持ちを一番踏みにじることだと気がつかずに。

 

 

「ありがとう! 今晩、旅館で絶対解決するよ。曜に話して、ちょっとは気楽になった。やっぱり持つべきものは()()だよね!」

 

 

俺はきっと、こんな言葉を記憶を失くす前も、戻ってきてからもずっと続けていたんだろう。そして、そのたびに彼女を傷つけていた。

 

 

「……そ、そうだねっ! 私は()()、なんだから……これからも、なんでも相談してね。いつだって力になるよ?」

 

 

結局、何も変わってはいなかったんだ、俺の悪いところは。

 

誰の気持ちもわかってない、親友と思っていた相手の事すら。

 

 

みんなにはあんなに偉そうに言ってきておいて、スクールアイドルをやろうなんて、あれこれ言っておいて自分は——……。

 

 

 

()()といい曜といい、本当に助かるよ。こんな俺の相談に乗ってくれて———」

 

 

 

 

「———……()()、ちゃん?」

 

 

 

残り少なくなった彼女のクレープが地面に落ちるときに、音はなかった。

 

代わりに何かもっと大事なものが、音を立てて壊れたような感覚。

 

 

 

 

 

「どうして……いま、梨子ちゃんの名前が出るの?」

 

 

 

 

そう言いながら俺を見る曜の目は、確かにダイヤと果南と、同じ目をしていた。

 

 

 

 

 




あっ……(絶望)




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