ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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なんだかんだ52話。一年アニメ分、4クール目もついに終わりですね。

私が書くヤンデレ曜ちゃんはいつも暴走しています。気づけば久々の7000字超え……今回はいよいよ『あの人』も登場。ラストのセリフは某作品のオマージュです。




第52話 もう一つの出逢い

「———……梨子、ちゃん?」

 

 

震える手、光を映さない瞳。怯えと怒りを孕んだ声。

 

 

「どうして……いま、梨子ちゃんの名前が出るの?」

 

 

……その全てが、ここ最近の俺の見てきた、あの女の子達と嫌でも重なる。

 

ベンチから立ち上がって、ゆらりと俺の前に立った彼女の姿は、俺にその恐怖を蘇らせるには十分すぎる。俺は身体が縮こまる感覚を強く覚えながら、絞り出すように言葉を発した。

 

 

「そ、それは……」

 

「教えてよ。梨子ちゃんが……なあに?」

 

「この前っ!……その、相談、してたんだ。千歌のこと、どうすればいいかとか。東京の地理で、アドバイスが欲しいとか……」

 

「ふーん……そうなんだあ。私よりも先に相談してたんだ、千歌ちゃんについて……」

 

 

曜は今、間違いなく怒っている。奇しくも、今朝の1年生の時とは同じ理由で、逆の構図。逆というのは、今度は1年生ではなく曜のほうが、激しい嫉妬をむき出しにしているということ。

 

ちょっとでも地雷を踏めば、次の瞬間殺されているんじゃないかと思うくらい、俺の身体には強い視線が刺さっていた。

 

……強いというだけで大きな声を張り上げているわけじゃないが、それでもこの異様な雰囲気に、遠くの人からも少しずつ、注目を浴び始めている。それでも、曜の責める言葉は止まらない。

 

 

「確認なんだけどさ……別に、梨子ちゃんと翔くんはつきあってるわけじゃないんだよね?」

 

「も、もちろん! 告白を断る理由だって、さっき話した通りだ。俺たちはそんな関係じゃなくて……」

 

「それなら、よけいに私が適任だよね?私の方が、相談に乗ってあげられるよね? だって、千歌ちゃんと昔から仲良くて、翔くんのことだって知っててあげられるのは私だよね!?違う!?」

 

 

だからこそ、距離が近いからこそ、相談しづらかったのに……

 

「曜は、千歌のこと見ててくれてたから、これ以上負担をかけたくなかったんだ! 梨子は家が隣だったし、言った通り東京の話だってしたかったし……」

 

「負担でも迷惑でもないよ!……それだけ?それって私についての理由で、梨子ちゃんを選んだ理由じゃないよね。私じゃなかったら……私以外だったら誰でもよかったってことなの」

 

 

……俺は、誰に、何を言い訳してるんだろう?本来なら、話題に出ている梨子はもちろん、曜とも付き合っている関係ではない。お互いに話が通じていない状況だ。

 

でも、これは……彼女の反応が、すべてを物語っている。

 

曜の方の気持ちは、俺の感じていた友情とは違っていた。『みんな』だけでなく、彼女もその一人だったのに、俺は気づいてはいなかった。

 

 

「……どうして、私じゃないの。なんで翔くんはいっぱいつらい目にあってるのに、私に相談してくれないの?私でもいいじゃない。私だって翔くんの『友達』でしょ 何が梨子ちゃんと違うって言うの?」

 

「うっ……」

 

「私だって!私だってずっと前から翔くんのこと好きだったのに!千歌ちゃんに勝てないって思って我慢してたのに……こんなのひどいよ。翔くんの口から出てくるのは、いつも他の女の子の名前ばっかりじゃん!!」

 

 

笑顔の中にある、彼女の我慢、悲しみ。俺のしてきたことは……2年ぶりに流れ着いて帰ってきて、一緒にスクールアイドルをしてきたことは、曜に喜びと同時に、大きな痛みを与えていた。

 

(俺はそんなことにも気がつかず、『親友』『友達』そんな言葉を使って、彼女を傷つけ続けていたのか……!?)

 

さっき話していた『相手』というのも、間違いなく俺のことだったんだ。そうだとすれば、俺はこの数ヶ月間、ずっと彼女を……

 

 

 

「教えてよ……どうしたらいいのか。私じゃ翔くんの『特別』にはなれないの……!?」

 

「曜が、俺のことを好きなのは、嬉しい、けど……」

 

 

それは……俺の鈍感さ、そして自分のことだけ考えていた無自覚の最たる例であると同時に、自分が夢と言っていた言葉の空虚さをつきつけられるものだった。

 

自分本来の夢がない、もしかしたら自分を好きじゃない……?

 

だから他人のこともみんな平等に好きで、好きじゃないんじゃないのかという、己の虚しさ。

 

それが、ただ自分を苦しめるのならまだ良い。だけど現実には、彼女をこんなにも……

 

 

……何を言えば良いのかもわからなくなって、出てくるのは相変わらず空虚な言葉ばかり。曜はそうなってしまった俺の両腕をつかんで、引きずっていこうとした。

 

 

「じゃあ……教えてあげよっか」

 

「あっ……な、何を!?」

 

「わからない? 私がどれだけ翔くんのこと好きなのか、さっ!」グイッ

 

 

力の抜けていた俺は、なすすべなく連れて行かれてしまう。

 

その行き先とは、すぐ後ろにあった大きな木の後ろ。漫画ならその木陰で読書をしている人も居そうなところだが、少なくとも今日この瞬間は誰もいなかった。

 

……それは幸か不幸かどちらだったのか。俺は周りから見えないような形で木の幹に押し付けられ、逃げられなくなる。声をあげようとしたけど、曜の顔がすぐ目の前に来て言葉を発せない。

 

「翔くん……」

 

「よ、曜っ……」

 

「しーっ、叫ばないで……みんなに気づかれちゃうよ?」

 

 

彼女の息は荒く、嫌でも期待に胸を躍らせていることが伝わってくる、これからやろうとしていることに。その吐息の香りすら感じる距離。

 

目には俺しか映さず、周りにはむしろ見てみろという雰囲気すら出していた。

 

俺は抵抗できずに、完全になすがままだ。予測できなかったから、そしてそれは鈍感だったからと言われてしまえばそれまでだけど、曜のことを親友だと思っていた俺には、彼女のこんな表情は……

 

 

「いいでしょ、もう2人とシちゃったんだから。翔くんの方が初めてじゃないのは許せないけど……千歌ちゃんよりも先だからいいかな」

 

「や、やめてよ……こんなの間違って……」

 

「違わないよ!!……ずっとこうしたかったんだから。翔くんは梨子ちゃんに相談して千歌ちゃんを気にして!1年生のみんなのことに悩んで3年生の人達とはキスして!私は『友達』だからどうだっていいの!?私とはキスしたくない!?」

 

激しい怒りと、強すぎる愛情とでコロコロと表情が変わる曜と、唇と唇はもう数cmの距離に来ていた。お互いが喋るだけでも、次の瞬間に起きてしまうことを想像して、ますます萎縮してしまう。

 

そして、彼女からキスのために頭を抑えようと、ついに両手が頬に伸ばされる。それはあの2人にされたことまで思い出されてしまって、目を閉じて、僕はつい咄嗟に————

 

 

パシッ

 

 

「えっ……?」

 

 

———その手を、払ってしまった。

 

 

「ごめん、曜!僕……俺は……記憶が戻るまでは、誰かとそんな関係になれなくて、その……」

 

「しょ……う、くん?」

 

「それだけで、曜が嫌いとかじゃ……あっ……」

 

 

震えながら目を開けると、そこには僕……俺以上に震えて、目元に涙を滲ませている『いつもの』曜の姿があった。さっきまでの光景は幻だったのかと一瞬思ったくらいだったけど、彼女自身の言葉がそうじゃないと物語る。

 

 

「え、わ、私こんなことしようとしたわけじゃ……なんで、こんなこと……ゆ、ゆるして翔く、ごめんね?ごめんね……!?」

 

「曜……!? あ、俺は怒ってなんてないよ。大丈夫だから……」

 

「い、いやっ! お、お願い……嫌いにならないで!? しょうく————」

 

 

曜は、自分のしようとしたことを恐ろしく嫌悪しているようだった。話に聞いていた恋敵たちと、まったく同じ行動……それが、彼女自身を酷く苦しめている。

 

だけど俺は、その彼女を抱きしめて安心させることに躊躇してしまった。10秒にも満たない時間。そしてそれに対して、とてつもなくひどいことをしてしまった……そんな罪悪感を覚えるが、時すでに遅く……。

 

 

「あっ……曜!!」

 

 

俺が伸ばした手は空を切って、彼女は走り去っていく。その場に俺と、涙の溢れた僅かな跡を残して。

 

 

先ほどまで恐怖に震えていた足は一歩も動かず、その背中を追うことが、俺には出来なかった。

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

 

———自己嫌悪に苛まれながら、トボトボと歩く。

 

(俺は、何をやってるんだ、彼女の気持ちにずっと気がつかず、傷つけてしまって……)

 

あれから30分は経ってるけど、未だに連絡をとる気力がない。いつのまにか、みんなで降りた秋葉原駅の前に戻って来てしまっていた。何やら近辺でイベントが始まったらしく、さっきより人通りがずっと増えている。

 

 

『やっと着いたっ! うーん、久々の東京だから、色々制服見たいな~♪』

 

『曜ちゃんは相変わらずだね~……梨子ちゃんはアキバ、結構来てたの?』

 

『え!? お、音ノ木坂が近くにあるから、一応ね!!』

 

 

……不安でも、楽しかった時間。たった2時間ほど前のやり取りですら、遠い昔のように感じてしまう。

 

やっぱり、理事長の言ってた通り、俺が原因でスクールアイドルは不幸になるんだろうか。でも、ダイヤたちの告白のタイミングからして、2年前のことは別の理由なのかな……考えても仕方ないけど。

 

 

『こ、これが……渋谷の険しい谷!? め、目が回るずらぁ~……いったいどこから何を見たらいいずらぁ~!?』

 

『花丸ちゃん、ここは渋谷じゃなくて秋葉だよぅ……谷じゃなくてビルだし。それに、あんまり驚いてると、田舎者っぽく思われちゃうよ?』

 

『そうそう。「ずら」っていうのも特に田舎っぽくて、周りに笑われるわよ? ま、このヨハネに限ってそんなことはないけどね!クックック……』

 

 

楽しそうに歩いている、元気いっぱいの女子高生を見れば、みんなのそんな会話も思い出される。絶対善子の堕天使モード暴走形態の方が笑われると思うけど、なんて考えながら、気晴らしになるかと思って、街並みを眺めてみた。

 

めまぐるしく歩く人の数……そして、それを受け入れる無数の巨大な建物。

 

 

(秋葉原でこれなんだから、渋谷とか新宿とかはどれほどのものなんだろう。それを全部足しても、東京のほんの一部だ。こんなにすごい街が、いくつも続いてる……)

 

電車の窓からも見ていたが、改めてこうしてみると、ビルの高さも綺麗さも圧巻だ。沼津と単純に比べられるものじゃないとは、わかってるけど……この街はきっと、それだけたくさんの人に必要とされているからこそ、これだけの規模なんだと思う。さっきの公園の人数も、その証なんだろう。そう思うと、山も海も見えないのに、温かい場所とも感じる。

 

 

「……東京、なんだよな。ここが」

 

 

記憶を失ったせいで、沼津、内浦しか知らない俺……まあ、そういう記憶喪失になる前は多分、何回かは来ていたんだろうけど。ふと、自分のことを考えた。

 

 

(こんな大きな街なら、俺の『2年間』を知ってる人もいるのかな……)

 

……答えの出ない、ただの希望的観測。

 

記憶のない2年の間……普通に考えたら『ここだ』って可能性は薄いんだけど、逆にどこにいたのかって聞かれると、東京以外に思い当たらない気もする。人を隠すなら人の中っていうか。ここにいたのなら、誰にも気づかれなくても不思議はないような気がするというか。

 

あのμ'sと、そのライバルであると言うA-RISEが出会い、ぶつかり合ったのが、この秋葉原だ。

 

それを思うと、そういう不思議なこともあり得るのかも知れない……と、そう感じていた。俺も相当、スクールアイドルにハマっちまってるみたいだ。これじゃ千歌のことを笑えなくて——……

 

 

(……ダメだ、また思い出してる)

 

さっきの曜とのことを……これじゃ、千歌のことも他のみんなのことも何も解決しないまま、投げ出しているのと同じだ!でも、今度こそ完全に行き詰まってしまった。

 

どうせ今晩、必ず同じ宿に戻ることにはなる。でもその時、何を話せばいい?曜にどんな顔をして会えばいい?そもそも、走っていってしまった曜は帰ってきてくれるんだろうか。

 

駅前の巨大なモニターにうつる、有名なスクールアイドル達の姿を見て、この後のライブに————

 

 

 

「困りましたね……やはり通じません」

 

 

 

———悩む俺の目に、一人の女の子の姿が映った。

 

歳は多分、俺と同じくらい。清楚な服装を着こなし、紫の美しい髪を横にまとめてあげている。大きなカバンを持っているあたり、彼女も何処かからの観光客だろうか。

 

 

なんでその娘が気になったかというと……困った顔をして、携帯と周囲を交互に眺めていたからだ。俺がお人よしだったからだけでなく、彼女が人を惹きつける魅力があったからだと思う。それとも、傷ついてたから誰かに慰めてほしかったのか、いいことをして誤魔化したかったのか。

 

なんにせよ、俺は自然と彼女に声をかけていた。

 

 

「あの……大丈夫ですか? 困ってることがあったら、力になりますけど」

 

 

こんな時でさえ、他人の心配をしてしまっている自分がいると心の中で苦笑しつつ。彼女は一瞬、不思議そうな顔をしてから、事情を話してくれた。

 

 

「ええ、実は妹とはぐれてしまって……ほら、ここから神田明神にかけて、見ての通り大きなイベントをしてますから。それに巻き込まれてしまったんです」

 

「あっ、あれですか。たしかにすごい人混みですから……妹さんは携帯を持ってないの?」

 

「もちろん持たせています。ですが……落としていないのだとしたら、また調子が悪くなったのでしょう。古い携帯を、思い出があるからと大切に使うのは良いですが、最近壊れかけていたのに……こういう時に困るから早く買い替えようと誘っていたのですけど」

 

「仲良さそうな妹さんですね。でも、それで通じないのか……困りましたね」

 

 

ダイヤとはまた違ったタイプで、理知的な女性みたいで、会話がスムーズに進んでいく。大切な妹と聞くと、ルビィちゃんのこともフッと思い出す。あの2人は外見はあんまり似てないけど、中身や夢はよく似ている。この人の妹さんはどんな娘なんだろう?

 

 

「ええ。こういう時の合流場所も決めておけばよかったのですが、失念してました。もっとも、決めていたとしても、ついスマートフォンに頼りがちになってしまいますからね、地図については」

 

「それはそうですね。俺、こうして話してますけど、観光客で地図は携帯に頼りっぱなしだし……」

 

「あら?そうでしたか。私も観光客みたいなものですから、お互い土地勘はないみたいですね。宿の名前は覚えているので、誰かに道を聞いたりできればいいんですけど。あの娘、すごく人見知りなので」

 

「じゃあ、ますます早めに見つけてあげないと。でも下手に動くと、入れ違いも怖いですね」

 

 

人見知りか、そんなとこもルビィちゃんと同じだな。まあそれは置いておいて、何かいい方法はないものか。あれ?確か、梨子と一緒に誰か行方不明になった時のため(暴走した善子とか)に、って……

 

 

「あ、そうだ!半分くらい壊れてても、GPS機能がどっかで生きてたらなんとかなると思うよ。キャリアがあの会社なら……ほらこれ。ここの家族サービスを使えば、位置がわかるかもしれない」

 

「え、そんな機能があるんですか? ……確かに、いけるかもしれません。早速使ってみますね!」

 

 

思い出せてよかった。携帯の電話番号などで、特定のグループや家族の携帯電話を探すことのできる機能。充電が切れているわけじゃなくて、携帯の通話や表示の部分が壊れているだけという前提ではあるけど、ある程度正確な位置を知ることもできる。

 

果たして、その結果は……

 

 

「あっ……出ました! ここは、あの神田明神から……私たちのとってる宿のあたりを歩いてるみたいですね。おそらく、迷いながら宿を目指しているのでしょう」

 

「そうなんですか? じゃ、向こうの電池が切れたりGPSまで壊れちゃう前に、早く行ってあげてください。知らない土地で、なにか悪い人に声かけられても怖いし」

 

 

不幸中の幸いとは、まさにこのことだろう。目の前の女性は大きく安堵の息を漏らし、こうしてはいられないとばかりに置いていた荷物を背負ったり、スーツケースを転がす態勢に入った。こうなれば、しっかりしている方みたいだし、もう安心だろう。

 

「じゃ、もうOKですね。急に声かけてすいませんでした、後は気を付けて……」

 

 

ちょっとだけいいことができたと、心の中で小さく救われた気持ちになって、俺は自分の問題に向き合おうと気合いを入れなおす。俺はもう、行かなくちゃ———……

 

 

「……ちょっと待ってください。どこにいくんですか?」ガシッ

 

「え?」

 

「まさか、ここまでお世話になっておいて御礼もなしにお返しするわけには行きません!」

 

 

空いた方の手で、がっつり腕を掴まれている。一瞬だけ、果南のことを思い出して体がこわばったが、彼女の表情は全く異なるものだったので、あくまで一瞬だった。そんな俺の内心など気に留めず、彼女が続ける。

 

 

「地図を見ながらとは言え、私一人では東京の地理にも明るくありませんし……ついてきてくれたら、お茶の一杯でも奢らせていただきますよ?」

 

「……それは、腕を掴んで笑顔で有無を言わさず引っ張りながら言うセリフではないんじゃないかな?」

 

「ふふ、そうかもしれませんね。ですが……私では不満ですか?旅先の、お茶の相手としては」

 

むう、なんというか、カリスマ性って言うか……不思議と人を惹きつける力のある人だ。もしかしたら、人気の(スクール)アイドルって、みんなこういう人たちだったりするんだろうか。だとしたら、俺たちはまだまだ上を目指せるな。

 

もしかしたら、この出会いには何か意味があって……俺自身にとっても、いい機会なのかもしれない。さっき知り合ったばかりの人に俺の事情を相談するのもなんだけど、沼津から離れた一期一会の出会いの中に、何か現状を打開するヒントがあるかもしれないと思えたから。

 

 

「そ、そんなことはないけど。その大荷物を持って歩かせるのも、申し訳ないと思ってたし……いいですよ。待ってる人たちがいるから、夕方まででしたら」

 

「私が勝手に持って来ている荷物を心配するなんて、ヘンな人ですね?それで大丈夫ですよ、私たちも、やることがあってきてるので、そんなに時間はないんです」

 

「わかったよ、それじゃあとりあえず、妹さんを迎えに行きながらだね。えっと……あ」

 

 

と、話したところで、俺は彼女と妹さんの名前を聞いてないことに気づく。

 

 

「そういえば、名前がまだでしたね……妹と函館から来ました」

 

 

それは向こうも察したようで、強気の笑みを浮かべられながら、自己紹介を受けた。函館と言うところで、北海道からわざわざとおどろくのもつかの間。此方に向き直る彼女の姿は、まるで一凛の花のように美しくて、思わず見惚れてしまって……。

 

 

 

 

「私は鹿角聖良……ご覧の通りの女です」

 

「そうでしょうけど……」

 

 

 

 

この出逢いは、後から考えれば……千歌と再会したときと同じくらい、運命的な出逢いだった。

 

Aqoursという大きな輝きと対になる、もう1つの大切な人達。

 

疑いようもなく……俺自身のすべてを大きく覆すきっかけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ラブライブ!

   ~ヤンデレファンミーティング~

 

Aqours長編

   「10人目の名前を呼んで」

 

 

          ④「リフレイン」 了

 

 




ラブライブ、11周年。Aqours6周年。

本SSは3周年とちょっと。

μ's長編とは違った意味で新しいヤンデレ長編は、まだまだ起承転結の『起』が終わったばかり。




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