正午すぎのけだるい時間。作業台の机の上を午後の光が照らしている。
アリスは、人形作成の続きをしていた。
四季異変の影響は徐々になくなりつつあり、本来は夏であるが、この間まで冬のように寒かった魔法の森は春のような陽気に包まれていた。
アリスはふと窓の外に目をやると、
馬酔木の花は葉や枝に毒があり、牛馬が食べると足がふらつき、酔っ払ったようになることからその名がついた。別名女酒盛りとも言うらしい。
普段は気にもとめていなかった馬酔木の花なのに、今はその花を見ると嫌でも先日の宴会のことを思い出してしまい、恨めしくなる。
吐いたあと、早苗や魔理沙に介抱され、アリスは魔法森に帰った。早苗と魔理沙には感謝している。
しかし、年下の早苗に迷惑をかけ、世話をかけてしまったことは恥ずかしいことであった。
また、アリスが介抱されている間の霊夢の憐れむような視線が耐え難い屈辱であった。
そして何より、いい年をしているにもかかわらず、自己管理能力がなく、それ故の嘔
吐という惨めな行為に至ってしまった自分が情けなかった。
思いに耽けているうちに、アリスは憂鬱な気分になってきた。
人形は胴体が完成し、あとは頭部の修飾だけであったが、作業を続ける気になれなくなってしまった。アリスはベットに寝転がる。
あんな恥ずかしいところを見られたんじゃもう誰にも顔を合わせられない、もう、外に出たくない。人里に行くのも必要最低限にしよう、とアリスは思った。
気づくと室内は夕闇に染まっていた。どうやらあのあと眠ったらしかった。
ゆったりと体を起こし、ベットに腰掛ける。
何もする気が起きない、、、
しばらくぼーっとしていたが、アリスは人形の髪の毛の部分の材料が足りなかったことを思い出した。
面倒だけど人里に買いに行くか、、、
ついでに食材等も買いだめしてしばらく外出しなくても良いようにしよう。
アリスは外出する準備を始めた。
人里につくとあたりはすっかり暗くなっていた。食料が売っている店は営業時間が短いので急がなければならなかった。
なんとか食料を買えたアリスは、主目的であった人形の材料が売っている手芸店へと向かった。
「こんばんは。」
「いらっしゃいませ。今日は何をお買い求めでしょうか?」
店主の老人とはもう長い付き合いになる。
アリスは彼が青年のときにこの店を継いだときからこの店を利用しているのだ。
この店主はアリスが歳を取らず、彼女が人間ではないとわかっていても詮索しない。
アリスに人間と同様にものを売ってくれるありがたい存在であった。
「このメモに書いてあるものをください。」
アリスはメモの書いた紙切れを店主に渡す。
「かしこまりました。少々お待ちください。」
店主が注文の品を準備をしている間に、店の奥から少年が出てきた。店主の孫だ。
少年は和服を着ており、目の細い、日本人らしい顔立ちをしている。
少年は店主の影に隠れながらおそるおそるアリスに話しかけた。
「こ、こんばんは。」
少年はアリスに頭を下げた。
「こんばんは。」
アリスは少年に微笑みかける。アリスは子供が嫌いではなかった。単純でわかりやすいからだ。
「お姉ちゃんは人形劇やってた人だよね?もうやらないの?」
「あら、君は私の人形劇を見たことがあるのね。そうね、しばらくは人形劇を演る予定はないかな。」
「そうなの?またやるの楽しみにしてたのに・・・」
「ありがとう。私の劇面白い?」
「うん!友達みんな面白いって言ってるよ!」少年は急に馴れ馴れしくなる。
「そう・・・じゃあまた劇やろうかしら。考えておくね。」
「やった!待ってるね!」
少年と話をしているうちに店主は品物を用意できたようだ。
アリスは店主から品物を受け取り、お金を支払い店を出た。