人里を出てからしばらく歩き、人がいないことを確認するとアリスは茶色いショルダーバッグから上海人形を取り出した。
アリスは食料の入った袋を地面に置くと、両手で上海を持ちぶつぶつと呪文を唱えた。
上海はパチパチと目を開け手元を離れ宙に浮いた。
「その荷物をお願いね。」アリスは上海に命令した。
すると上海は自分の体の3倍はあろうかという大きさの食料が入った袋を持つとふわふわと宙を舞う。
そしてアリスの右斜め上にいる状態で家に向かって動きだした。
あたりはすっかり暗くなり、魔法の森には夜の帳が降りていた。
普通の人間ならばこの暗闇の中まっすぐ目的地にたどり着くことは容易ではない。
しかしアリスは魔法使いであり、人間ではない。
昼間の速度と変わらない速さで森の中を歩いていく。
そして何事もなく家にたどり着いた。
家に入ると明かりもつけずにベッドに身を投げ出す。
上海に荷物を片付けるよう命じ、しばらく放心していると、先程の少年との会話が思い出されてきた。
アリスは話の流れでよく考えもせずに今度人形劇をやるなどと返事してしまったことを後悔した。
なぜまたやるなんて言ってしまったのか・・・
アリスが人形劇に乗り気でないのには理由が3つあった。
一つは人形劇の新作のネタがないこと。
二つ目は宴会の事件もあって人前に出たくなかったということ。
そして最後の、そして最も重荷となっている理由はアリスが人間関係に疲れ切っていたということであった。
新しい異変が起きるたびに増える妖怪、人、神様。
そんな奴らに自分が嫉妬するとは思いもよらなかった。いや、嫉妬という感情が自分にあったことにすら今まで無自覚だった。
宴会での件もあり、アリスは孤独を感じ始めていた。
今まで気づかないふりをしていたが、私は孤独だったのだ。
アリスはまた憂鬱な気分になる。
自分が孤独であると思い込み始めるとあらゆることが疑わしくなってくる。
霊夢の言う通り、人形が趣味なのは孤独で寂しいから。
人形劇をするのもそう。子供を喜ばすことが自体が目的なのではなく、子供と仲良くなることで孤独を紛らわせたかったから。
宴会に行ったのもそうだ。自分がいないところでみんなが楽しく過ごしていることが耐えられない。仲間はずれにされたくないから楽しくもないのに参加したのだ。
上海が健気に食料をしまっているのが目に入ると、アリスは急に上海が憎くなった。
そしてベッドから起き上がり、上海の眼の前まで行くと、右手で思い切り殴りつけた。