その晩、アリスは夢を見た。
魔理沙が突然家を訪ねてきた。
「アリス、私の魔法薬盗っただろ?」魔理沙は無表情でそう言った。
「なんのこと?私そんなもの盗んだ覚えはないけど。」
事実アリスにはそんな心当たりはなかった。
「嘘をつくな!今からその証拠をみせてやる。」
魔理沙の話を聞くと、しばらく前から倉庫の魔法薬の量が知らないうちに減っていることに気が付き、倉庫に罠を仕掛けておいたらしい。
その罠というのが倉庫に入った侵入者に通常では目に見えない魔法の印をその体に刻むというものだった。
そして魔理沙はアリスの家にある人形一体一体に、当てるとその魔法の印が浮かび上がるという光を照射していった。
魔理沙は人形を一体一体入念に検査をしていく。
その間、アリスは心当たりがないにもかかわらず緊張し、変な汗をかいていた。
「違う・・・これも違う。これも、これも違う・・・」
調べていない人形の数が少なくなるにつれ、魔理沙の顔は醜く歪む。
そして検査していない人形は最後の一体となった。
アリスは息を呑む・・・
上海人形に光が当てられた。
光が当てられたその瞬間、上海の胸のあたりが輝き出した。
「そらみろ!やっぱりお前が盗んだんじゃないか!」
魔理沙は右手で持っていた上海をアリスの足元に投げつけた。
上海は仰向けで床に横たわり、無表情でアリスをにらみつける。
「ち、違う!・・・私じゃない・・・」その声は震えていた。
「じゃあその人形の魔法の印はなんなんだよ。それがお前が盗ったっていう動かぬ証拠だよ!」
「私の魔法薬を返せ!盗んだことを謝れ!土下座しろ!」魔理沙はアリスに詰め寄る。
アリスは魔理沙の口撃を受けているうちに自分が本当に魔理沙の魔法薬を盗んだような気になってきた。
そして罪悪感がにじり寄ってくる。
「あ・・・ご・・・」アリスは何か言おうとしたがうまく言葉を発せなかった。
「謝れ!」
魔理沙がアリスの服の襟を掴み上げる。
「謝れ!」
そこで、目が覚めた。
嫌な夢だ。
ベッドの中で、少し黒く薄汚れた白い天井が目に入った。
アリスの冷や汗でパジャマはぐっしょりと濡れている。
魔理沙があんなこというはずがないのに。どうしてあんな夢を見たのだろう。
そう自分に問いてはみたが、問う以前にアリスはその答えを自覚していた。
自己嫌悪のせいだろう。
アリスは時計に目をやった。
時計はカチッ・・・カチッ・・・と狂いのない機械的な一定の規則で時間を刻んでいる。
六時か。いつもより一時間も早い。
そういえば今日は魔理沙が家に来ることになっていたな。
なんでもスペルカードバトルの研究のために人形の操り方を教えてほしいのだとか。
熱心なことだ。
アリス自身、スペルカードバトルなどだいぶご無沙汰であった。
異変が起きてもアリスが動かずとも巫女や魔理沙、最近では妖精までが解決してくれるようになった。
私の助けなど、もう必要ないのだ。
アリスはゆるゆるとベットから抜け出し、着替え始めた。
着替え終え、紅茶を入れると、しばらく呆然と過ごす。
そして作業台に座り、人形の作成に取り掛かった。