馬鹿とテストと薄い影   作:のろし

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第十二話

 

 

 

 

 ―――明久の家 AM7:20―――

 

「おはよう。あれ?姉さん、何してるの?」

 

「おはようございますアキ君。今日の飛行機で向こうに戻るので、その準備をしていたんですよ」

 

「え…急すぎない?もう少しゆっくりして行っても…」

 

「そうもいきません、まだあちらに残している仕事もあるので」

 

「そっか…」

 

「そんなに姉さんと離れるのがさみしいんですか?」

 

「べ、別にそんなんじゃないよ!ただ、なにも夏休みに入った途端にって思っただけで…」

 

「そんなにさみしがらなくても大丈夫ですよ。実は、仕事の都合で9月から此方へ来ることになっているので、その準備をしに帰るんです」

 

「え………そうなんだ」

 

 

 

 

 

 

 ―――文月学園Fクラス AM8:30―――

 

「―――というわけでさ、嬉しがってるのを気付かれてギリギリまでからかわれちゃって…」

 

「遅刻ギリギリになってしまった、と?」

 

「うん」

 

「明久よ、お主の姉上はいったいどんな人なのじゃ?」

 

「どんなって…僕から見ても常識はずれな人かな。でも、すっごく良い人だよ!」

 

「へぇ…アキにお姉さんがいたのね?」

 

「知りませんでした…」

 

「…予想だにしなかった」

 

「しかし明久、お前って…」

 

「「「「「シスコンなんだな(ですね)(なのね)(なのじゃな)」」」」」

 

「なんでそうなるのさ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 ―――学園長室 AM11:00―――

 

「「どういうことだ、ババァ長!」」

 

「部屋に入ってくるなり罵倒とはいい度胸だね!?」

 

 召喚獣の不具合(と言っていいだろう)のことを問い詰めに、学園長室へ来たが、勢い余ってついでに罵倒してしまった。改めて学園長に今回のことを聞く。

 

「すまない。あー…召喚獣のことなんだが」

 

「あれは仕様だよ」

 

「何故かいつもと違うってはえぇな、おい!」

 

「学園長、仕様ってどういうことですか?」

 

 明久が学園長の言葉に疑問を持ち、質問した。

 

「仕様ってのはね、この場合はプログラムの構造や内容のことさね」

 

「言葉の意味くらいわかってますよ!」

 

「「…え?」」

 

「なんでそんなに意外そうな顔をするのさ!?これでも現代国語は高得点だったんですよ!?」

 

 明久が叫ぶも、仕方ないだろうといった目で返してやる。加藤の奴に教えられた教科は確かに俺でも驚くくらいの出来だったが、お前がバカだという現実は変えられない。召喚獣だってデュラハン(頭がない→バカ)だったしな。

 

「で、仕様ってことは当然なんか考えてのことなんだよな?」

 

「ああ、そうさ。夏休みでも登校する可愛い生徒への、ちょっとしたプレゼントって奴だよ。夏だし、肝試しみたいでいいだろ?」

 

「なるほどな。だったら、当然これを使ったイベントを考えてるんだろ?」

 

「……頭の回るガキだねえ」

 

 そう言ってババァは思案顔になり、俺たちに告げた。

 

「そうさね、明日と明後日の二日間を、アンタらのレクリエーションの時間として提供してやろうじゃないか。設備を作って、肝試しイベントをしたらどうだい?」

 

「…ただの肝試しじゃ「ダメさね」…そうか。なら、チェックポイントでも作って、そこで勝負させるか」

 

「なるほどねぇ…なら、作った設備はとっておきな。お盆休みを使って、一般公開をするから」

 

「学園のイメージアップってところか?ご苦労なこった」

 

「アンタらがおとなしくしてくれれば、こんなことはしなくて済むんだけどねぇ…」

 

「「アーアー聞こえないー」」

 

 

 

 

 

 

 ―――文月学園Aクラス AM11:30―――

 

「―――で、あるからして、このXに代入するのは―――」

 

 7月も残すところあと僅かとなった某日。文月学園の2-Aクラスでは夏期講習が行われていた。もちろんほぼすべての生徒は参加しており、夏休みに入ってからの一週間を、勉強に費やしていた。明後日で最終日になるのだが…。因みに、1年生に夏期講習は存在しない。校外学習を夏休みを使って行うから、その分の休みの補填となっているらしい。

 

「―――では、講習を終わります」

 

『ありがとうございました』

 

 今日の講習は終了したので、後は図書館で勉強でもしようか…と思っていたところに、事務放送が響き渡った。

 

『連絡事項を通達します。明後日の2年生の夏期講習は、学園長先生の好意により、召喚獣を使っての肝試し模擬試召戦争となりました。参加は自由ですが、召喚獣の扱いにより慣れる機会ですので、たくさんの生徒の皆様の参加をお待ちしております。参加される生徒の皆様は、職員室か、講習担当の教諭陣に参加の意を伝えてください。なお、初日は舞台設営の準備等がありますので、有志による設営のボランティアを募集しております』

 

 ………あぁ、夏ですしね。

 

「うわ、面白そうだね?加藤君、僕らも参加しようよ?」

 

「確かにそうね。裕紀、参加してみない?」

 

「…まあ、召喚獣の扱いに慣れる機会なら、それもいいでしょうね。高橋先生!」

 

「はい、なんですか、加藤君」

 

「肝試しに参加したいんですが…」

 

「…わかりました。Aクラス全員がこれで参加になりますね」

 

「…Aクラスの人も行動が早いですね」

 

 3年生の夏期講習に適用されないのは、おそらく受験を意識しているからだろう。仮に行われても参加する生徒はごく少数になるだろうから、という配慮だと思えば、不思議はない。

 

「にしても、召喚獣を使って肝試しって…姿が変わったりしてるのかな?」

 

「さあ?確かにちょっと気になるわね。高橋先生、召喚許可をいただけませんか?」

 

「…本当ならそう容易に許可を出すべきではないのですが、あの告知で興味をしめさない生徒はいませんよね。わかりました。『―――承認』」

 

「「「『―――試験召喚獣召喚(サモン)』」」」

 

 床に幾何学模様が浮かび上がり、その中心から召喚獣の姿が現れる。3人の召喚獣がそれぞれの前に出てくる。工藤さんの召喚獣は…のっぺらぼうか。優子さんの召喚獣は…化け猫。それぞれに本人の特徴を受け継いでいるためか、可愛らしいという印象が強いが、肝試し用だけあって、オカルトな姿に変わっていた。

 

 

 

 さて、私の召喚獣は―――――――?

 

 

 

 

 

「ところでさ、召喚獣の妖怪が僕たちの本質だって言うなら、加藤君はどうなって

るんだろうね?」

「あぁ?…そうだな、妖怪じゃないが、閻魔大王あたりはどうだ?怖いが公正」

「うーん、僕は地蔵菩薩かもな、って思ったんだけど」

「明久のイメージは優しさ中心なのじゃな?ワシは…性は違えども鬼子母神あたり

かと思うのじゃが…」

「加藤の召喚獣?…怖くないのならいいな。エルフとか?」

「加藤君の召喚獣ですか…。きっととっても優しい妖精さんとかだと思います!」

 

 

 

 

 

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