馬鹿とテストと薄い影   作:のろし

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第十四話

 

 

 ―――文月学園新校舎3F AM11:45―――

 

 

「全く、なんだってんだい。ありもしない不具合を原因に仕立て上げて、後輩を貶めるのがアンタらのやり方なのかい!?」

 

 そう言って先輩二人をじろりと睨みつける学園長。その姿には普段からは想像できないほどの威厳に満ちていた。

 

「大体、その点数はソイツの実力さね!それを不当に貶めるようなやり方、気に喰わないねぇ…」

 

「だ、だからなんだってんだよ?」

 

「は?私はただ、私が作ったシステムと、そのシステムのもとに頑張る生徒がけなされたのが嫌なだけだよ!アンタごときにどうしようなんざ思ってもいないさ」

 

 芯から科学者であるらしい。システムをけなされたのが気に入らない、努力して結果を出した人間を貶すのが気に入らない。どこまでも傍若無人ではあるが、その生きざまには好感が持てる。

 

「ったく、こっちの坂本に用があんだよ。さっさと来な?」

 

「…どうしたババァ長」

 

「その呼び方やめい。ちょいと大がかりにするために、援助してやろうと思ってね」

 

「…良いのか?」

 

「客を呼ぶためさ。結果、それをどう使うかをみる実践的な授業にもなる。但し…設備含めて、壊すんじゃないよ?盆に客呼ぶから」

 

「おう、それはもうきいたぜ」

 

「なら、ルールにでも書いときな。破壊行為はどのような理由があれ禁止、ってね」

 

 置いていかれている二人の先輩が、気を悪くしたのか突っかかっている。それを見た学園長が、一言。

 

「いい加減にしな!そんなに小競り合いをするくらいなら、3年も一緒に肝試しに参加したらどうだい!バカみたいなまねするくらいなら、正々堂々肝試しで決着をつけな!!」

 

 男気あふれる学園長先生の言葉に、3年生もうなずくしかないようだった。そのまま「あとは頑張りな!」と言って去っていく学園長。と言うわけで、ここに2年対3年の大肝試し大会が開かれることとなった。

 

 

 

 

「ルールはこうだ。

 

 1.二人ひと組での行動が必須(但し、参加者奇数のため、余る一人は一人で参加できる)

 

 2.二人の内どちらかが悲鳴を上げてしまうと両者ともに失格

 

 3.チェックポイントはA~Dの各クラスに1つずつ置くこと

 

 4.チェックポイントでは代表者二人との試験召喚獣による勝負。撃破で通過扱いとする。なお、一人で参加した者がここに来た時は、代表を一人出しての一騎打ちとする。

 

 5.1組でも全チェックポイントを通過すればおどされる側、1組も通過できなかったらおどす側の勝利とする

 

 6.おどす側の一般生徒は召喚獣によるバトルを認めない

 

 7.召喚時に必要な教師は各クラス1名ずつ配置

 

 8.通過確認用におどされる側はカメラを携行する

 

 9.設備等への故意な接触、破壊を禁止する」

 

 かなり作りこまれたルールに、私は驚いた。一体どれだけこの企画に一生懸命になったのか。その情熱を是非他の処へまわしてほしい。

 

「で、悲鳴の定義をどうするんだ?多種多様だろ?」

 

「そうだな…カメラを携帯する、それを待機所のモニターにつなぎ、悲鳴をパソコンで確認、音量が一定値を超えたら失格でどうだ?」

 

「そんなことができんのか?」

 

「…俺に任せろ。今日中には環境を整える」

 

 土屋君がそう言って作業にかかりだした。本当に彼は何者なんだろう。

 

「で、驚かす側と驚かされる側だが…3年の先輩方に驚かす側をやって貰おうと思う」

 

「あ?願ってもないことだがよ、いいのかそれで」

 

「実際、召喚獣の扱いに慣れてるのは3年だし、なんだかんだで騒いだことは悪いと思ってるからな。せめてもの罪滅ぼしだ」

 

「…気持ち悪ぃな」

 

「なんとでも。で、負けた方に罰ゲームをつける。これで士気も高まるだろう?内容は…そうだな、体育祭の準備と片付けを、勝った側の分までやるってのでどうだ?」

 

 そう言って提案した坂本君に、二人の先輩はにやにやしながら問いかけてきた。

 

「おいおい、お前にしちゃあずいぶんヌルイ提案だな。まさか、俺たちに勝てないからか?」

 

「いや、全員の意見を聞きたいところだが、意見を聞いてるひまもねえ。それを踏まえると、こっちで勝手に決められる内容はこの程度になる。なに、別にアンタらが俺たちと勝負したいって言うなら、チェックポイントに居てくれれば、到達して勝負するよ!そこで譲歩してくれ」

 

「チェックポイントで直接対決か…悪くねェな。乗った!」

 

「じゃあ、明日の出来、楽しみにしてるぜ!」

 

 

 

 

 ―――裕紀の家 PM6:30―――

 

 

 

 病院で、巻いていたギプスを取り換え、検査をした。医師曰く、「右腕の骨は仮骨ができてきている。問題はないが、神経の断裂は治りそうにない。定期的なマッサージで血流を保護するように」とのことだった。もう痛みはないのに、まだまだギプスはとれないらしい。帰りついた我が家に、先客がいた。姉さんだ。

 

「よっす!今日はバイトの日だぜ!ゆーきにはどんな衣装が似合うかな!」

 

「姉さん、ただいま帰りました。いらっしゃい。残念ながら今回はそんなに服を着れそうもないよ?この腕だし」

 

「そう思って今回はメイク品の方なんだよ。…とほほーい」

 

「メイク品?」

 

 どうやら今回はメイク品のモニターらしい。姉さんが試作品を出してくるのを待つ。

 

「ん、コレなんだけどさ。口紅でしょ、ファンデ、マスカラ、アイライン…それとアイシャドウ」

 

「…舞台用の化粧でもしろと?」

 

「これね、バイト代のほかに、持ってっていいってさ。演劇部で使いなよ。モニターの期限は再来週だから、他の子の意見も聞いてね」

 

 本当に舞台用だったらしい。部費ではここまで良いものは購入できないから、とても助かる。

 

「ありがとう、姉さんの処の化粧品、持っていくと喜ばれるから」

 

「そいつぁ何より。で、どうだい?怪我の具合は。もうそろそろ3週間はたつんだよ、いい加減まっさらな腕をみたいね!」

 

「医者が治りが遅めだって。あと2カ月でギプスはとれるよ」

 

「ちょっと伸びちまったか…ま、命に別条がなくて何よりだ!」

 

「そうだね、まだ死ぬわけにもいかないから、ラッキーだった」

 

 そう言うと、私は制服を着替えに自室へ戻る。着替えついでに前回の服を持ってきて、感想を言うことにしよう。

 

「これは?」

 

「着心地、というか裏地がいまいちかな。もう少し吸水性がほしいよ」

 

「こっちは?」

 

「それはよかったよ。珍しくボーイッシュだったし、派手すぎないから化粧次第になるのが惜しいけど」

 

「ふーん、じゃ、最後にこれ」

 

「ウェディングドレスは一生着る機会がないからコメントはないよ」

 

「ありゃりゃ…自信作だったんだけどな…」

 

「…装身具の兼ね合いもあるからもうちょっと装飾は少なめがいいね。もしそのままにするなら輝きが鈍い石を使った方がいいかも」

 

「そうやってちゃんとコメントくれるゆーきが大好き!」

 

 いつも言っているが、ゆーきではなく裕紀(ひろのり)だ。とはいえ、もはや直ることは諦めているけれど。

 

「私はお世話になってるので姉さんのことを有り難く思っています」

 

「ぶー」

 

「さ、ご飯食べていくのでしょう?今日は」

 

「んー。今日のメニューは?」

 

「麻婆豆腐です。この間ちょっといいモノを見たので」

 

「コピッた?」

 

「味の再現をコピーと言わないでほしいな。少なくとも、前までの麻婆豆腐よりおいしくなってるから」

 

「お前はなんで食べた物の味を再現できるんだろうね」

 

「まぁ、それ以上にするまでに時間がかかるから、器用貧乏な感じだけれどね」

 

 私としては、両親がなくなる前に覚えたかったけれど。母の味は、もう再現できないから。

 

「あ、そうそう。女装用の衣装は結構好評だったんだけどさ、今度は男装用の衣装っていうことで…誰かいい人知らない?」

 

 いきなり聞いてこられても、すぐには思い浮かばない。

 

「条件は?」

 

「あー…、コレと言ってあるわけじゃないんだけど、ぺッタンコから牛までかな」

 

「………歯に衣着せぬというよりは、歯に地磁気でもあるような喋り方だね。バストサイズをとりそろえたい、と?」

 

「あったりー」

 

 …なるほど。私に聞いたところで優子さんを紹介するくらいしかできないのだが…。あ、

 

「聞いてみるだけはしようか?この間知り合った人たちに」

 

「マジで!?ゆーきに女の子の知り合いだと!!?」

 

「優子さんを女の子として認めていないのか、ただ単に忘れていたのかによって、その発言に対する行動を決めさせてもらうけど?」

 

「忘れてました!!!」

 

「そう。…この間のテストのときに、勉強会を開いてもらってね。その時の人にちょっと聞いてみるよ。ダメならあきらめてほしいけど」

 

「全然オッケーだよ!これで勝つる!」

 

 そう言って姉さんは部屋の中を走りだした。…埃が舞うからやめてほしい。

 

 

 

 

 ―――裕紀の家 PM8:30―――

 

 

「―――と、いうわけなんですが、モニターとして参加してもらえればと思いまして」

 

『…私は構わない。他に参加するのは?』

 

「優子さんにはもう確認をとっています。あとは島田さんと姫路さん、工藤さんにも話をしてみようかと」

 

『…わかった。ところで、それは男子も来る?』

 

「え?いや、特にその予定はないですけれど?」

 

『…雄二が来てくれるって言ったら、一緒に行ってもいい?』

 

「そうですね…まあ、元々人数を見越して姉の仕事場を使えるようにしてもらいましたから、姉に確認をとってみます。ちょっと待っていただいても?」

 

『構わない』

 

「はい、わかりました。…姉さん、男の子は来てもいいのかって」

 

「うん?女装用衣装のモニターでもいいなら。ゆーきは線が細いから、ガタイのいい子や小柄なことかもいたらいいんだけど。バイト代は出すって言っといて」

 

「そう、わかった。…お待たせしました。坂本君が女装用衣装のモニターとして来てくれるなら大丈夫だそうです。モニターとしてのバイト代も出すそうですから、坂本君の了承が得られるようでしたら、来ていただいても構いません」

 

『わかった。無理強いはしないから』

 

「理解しているなら問題はないですよ。では、遅い時間にすみませんでした。おやすみなさい」

 

『ん、おやすみなさい』

 

 これで霧島代表はOK、っと。…あとは工藤さん、島田さん、姫路さんだけれど…島田さんと姫路さんは学校でいいか。番号知らないし。

 

「工藤さんも、強引にアドレス教えてきたからなぁ…」

 

「なになに?押しの強い娘がいるのか?彼女にする気かよ、このこの!」

 

「…今の私と恋愛関係になりたがる人はいませんよ。押しが強いのは確かだけども」

 

 私は工藤さんのアドレスを出して、早速電話をかけた。

 

『―――ハイハーイ、貴方のアイドル、工藤愛子でーっす』

 

「…こんばんは。工藤さん、加藤です。ご機嫌よろしいようで何よりです」

 

『…せめて突っ込んでほしかったかな、ボクとしては』

 

「お笑いについては不勉強なもので。今お時間よろしいですか?」

 

『大丈夫だよー。なになに?デートのお誘い?』

 

「私に誘われても嬉しくないでしょう?私の後見人から、バイトのお誘いです。服飾関係の人なんですが、男装衣装をシリーズ化したいそうで、女性のモニターを求めてるんです。優子さんと霧島代表にはもう声をかけたんですが、いかがですか?」

 

『…別に誘ってくれても全然構わないんだけど…バイトかぁ。良いよ、いつ頃やるの?』

 

 

「再来週、土曜日に後見人の仕事場にあるスタジオで。衣装をいくつか着用していただいて、感想を貰うだけの仕事なので。詳しい時間はまたお伝えします」

 

『わかったー。その日なら大丈夫だから、よろしくね?』

 

「ありがとうございます。では、おやすみなさい」

 

『お休みー』

 

 …さて、坂本君が来るとなると、吉井君や土屋君も誘うべきだろうか。秀吉は優子さんについてくるそうだから改めて電話しなくてもいいか。

 

「姉さん、とりあえず三人OK貰ったよ」

 

「マジか、サンキューゆーき!お前になら抱かれてもいい!」

 

「謹んでご遠慮いたします」

 

「断られたー!ゆーきのイ・ケ・ズ!」

 

「…今からでも断りの電話を」

 

「ジョーダンジョ―ダン。しかし、ゆーきにも友人ができたのか…良かったよかった」

 

「え?」

 

「え?」

 

 …………………………

 

「友人じゃないの?」

 

「向こうがそう思っていない可能性を考慮すると、一概に友人とはいえない、かな?」

 

「…お前ってやつは…」

 

 …何かおかしいことでも言っただろうか?気になりつつも、姉さんが帰る時間になったので、送り届けた。

 

 

 

 

 

「男装ねぇ…胸か?アタシの胸を見ていったのか!?」

 

「…雄二には私の全部を見てほしいから…頼んでよかった」

 

 

「う~、加藤君ってかなりのにぶチンなのかな?」

 

 

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