「……みー。かぁいそかぁいそなのです」
「沙都子の奴……いつの間にあんなトラップを……」
ぐったりと大の字で伸びている前原君に対して、古手さんが笑顔で頭を撫でてあげているその光景。
結論から言えば、前原君の敗北感が滲み出るその姿に苦笑いをするしかなかった。
何はともあれ無事に還ってこれたのだ。これ以上の救済はないことだろう。
「ほっほっほ! 圭一さんも学習しないですわねぇ。最大のトラップというものは最後の最後にとっておくものなんですのよ!」
勝負の勝者はここぞとばかりに嬉しそうに力説していた。
あそこまで高々と笑えるのだから、ある意味前原君いじめに精通しているのかもしれない。
彼女はとてもそれを楽しんでいる、いわゆるSっ気のある女の子だ。
しかし、学習しないと言う事は何回かこんな事を繰り広げている、という話になる。
まさか僕まで火元が飛んでくるとは思わないけど、第二次被害を被りそうで怖い。
この人達との距離感を保たないといけないのかも、と苦々しく感じていた。
……とにかく気になることを先に聞いておこう。
「あのさ……。結局、あの子って誰?」
「あぁ、紹介がまだだったね。沙都子!」
沙都子、以前からそう呼ばれている少女は高笑いをやめてこちらに向き直った。
しかし、その表情は憮然としており、口元はへの字に曲がっている。
「せっかく蜜の味を噛み締めていましたのに……。一体何ですの?」
「あははは……。ほら、今日転校してきた子。梨花ちゃんと沙都子には言ってなかったからね」
そう言って僕の背中を叩いてきた。
自分で紹介しろと言う事だろう。それぐらいは理解できる。
一歩前に出て、とりあえず簡単な自己紹介を再度行う事にした。
「え~と。僕は篠原孝介……て言っても朝紹介したばっかりだから分かっているとは思うけどね。まぁ、よろしく」
「をーっほっほっほ! 北条沙都子と言いますの。こちらこそよろしくお願いいたしますわ」
「見て分かったと思うけど、沙都子は世界一のトラップマスターだよ。孝ちゃんも沙都子には気をつけるこったね」
「あー……はい」
言わなくても先程の一方的ないじめをトラップで行うその行動力、危険因子。敵にしたらいかに恐ろしい存在であることは間違いないだろう。
まぁ、確認したいのは別件にある。
「あの、もしかして、北条さんって古手さんと一緒に住んでる?」
「え? えぇ、一緒に住んでいますけど……。梨花の事をご存知でして?」
やはりそうなのか。
頭の中で腑に落ちていなかった問題が解けた。
どうやら昨日古手さんが言ってたサトコってこの人の事をさしていたのか。
しかし母親ではなく、同級生の女の子と一緒に住んでいるとは驚きだ。
僕と違って納得の出来ていない北条さんに、軽く説明する。
「実は昨日古手さんとは会っていてね。買い物の話に北条さんの話が出てたし、もしかして一緒に住んでるのかなぁって思っただけだよ」
「そうですの、梨花? 何で転校生と出会った事、言ってくれなかったのですか?」
古手さんは北条さんに伝えていないようだ。
また何故、みながその疑問の答えを聞こうと古手さんの答えを待つ。
彼女は会話の終始前原君の頭を撫でていたのだが、会話の矛先が自分に向けられたため、こちらに笑顔を向けてきた。
「……みぃ、ごめんなさいなのです。沙都子がまたブロッコリーとカリフラワーを間違えたおかげで、言う機会が無かったのです」
むっくりと前原君が起き上がって心配するような目で北条さんを見た。
「おいおい沙都子ぉ? お前まだ色の違い分かんないのかよ?」
「ち、違いましてよ!」
「あはは! 沙都子ちゃんまたやっちゃったんだぁ」
「そ、それは……!」
「またカリフラワーを間違えたって、お前も意外にお子ちゃまだなあ」
「り、梨花ぁ~~~!!」
バカにされた北条さん以外全員笑う。
自分も自然とその1人に加われていたのが、純粋に嬉しかった。
9月も終わり!
これから始まる文化祭、体育祭、そして文化部ならコンクールなど、イベントが近づくのを感じていきますねー。
10月なんてあっという間、これからも楽しんでいきましょう!
そして、この小説も楽しんでいただけるよう頑張りますよー!