他の作品との兼ね合いがありますので、ご了承ください(;一_一)
楽しい時間は早く過ぎてしまう。それは遊んでいるとき、自分の趣味に没頭していた時によくあること。
対して自分が早く感じるときは忙しいことやしんどいことばかり。最近は引っ越しの準備をしていたことだし、それが影響していた。
そういった意味では久々に楽しい時間を過ごしたと言える。
昼休みにはみんなで弁当を奪い合いで盛り上がり、午後の授業では前原君の頭の良さに感服し、色々と教えてもらった。
考えてみれば長かったのかもしれないのに、外を見ればすでに日は傾いていた。
そして放課後。
本当なら鞄をしょい込んで帰宅するはずなのだが、自分は今学校の中にいる。
その理由はただ1つ。
「さて諸君。今日は部活をするのだが、この2人、前原圭一と篠原孝介を新たな部員として加えようと思う。そこで部員の諸君に聞く。新たな部員として迎え入れても大丈夫だろうか?」
「やっぱり、僕もやるんだ……」
「何か言ったか? 孝介?」
「あ、いや……。何でもない…………」
隣から聞いてきた前原君の言葉にお茶を濁しつつ前を見る。
今ここにいるのは園崎さんに竜宮さん、前原君、北条さん、古手さん、そして僕。
部活のために僕らは4つの机を合わせた長方形のステージを囲む様に座っていた。
配置としては3、3で向かい合う様に分かれているのではなく、長方形の横に2人ずつ、そして両脇に1人ずつといった構成。
そして自分の隣には前原君、両脇には園崎さんと竜宮さんが、そして真正面には北条さんと古手さんが座っていた。
「レナはさっき聞いたけど心変わりはないね?」
「うん。レナは賛成だよ!」
「沙都子は?」
「私は……圭一さんが部員になるのは認めますわよ。でも孝介さんはまだ来たばかり…………。私達の部活についていけるかその実力が分からない以上、賛成は出来ませんわ」
難色を示す北条さん。どうやらある程度観察してから部員になれるかどうかを判断するようだ。
しかしついていけるって、不安しか感じないのだけれど……。
……まぁ、もう部員にならないとは言えないし、流れに身を任せるしかないんだけど。
「う~ん、沙都子の意見も一理あるね。……梨花ちゃんはどうだい?」
みんなの視線がまだ口を開けていない古手さんに集まる。
「…………ボクはいいと思うのです」
そう言うとにっこりとこちらに笑いかけてくる。
どう反応したらいいか困って、とりあえず笑ってごまかしておいた。
「意見をまとめると圭ちゃんは全員の許可が下りたけど、孝ちゃんは賛否が分かれちゃったねぇ~~」
「レナさんと梨花はどうして賛成ですの?」
唯一の反対意見を持つ北条さんが2人に聞いていた。
北条さんにとって僕の入部させることは意外に感じているようだし、その質問は妥当な判断だと思う。
竜宮さんの答えはすぐに返ってきた。
「レナはみんなと遊ぶ方が楽しいからかな! かな!」
「だな! ここで孝介を仲間外れにさせるなんて、意地悪な奴だけだ。なぁ沙都子?」
「な……私は孝介さんがボロボロになって打ちひしがれるのが可哀相だと思ったからこその配慮ですわ!」
だからボロボロになるって部活として正しいあり方なのか?
運動は苦手だからドタバタものは正直御免だし、とにかく文化部であって欲しい。
遠くを眺めるように周りを見ていると、メンバーの盛り上がりがよく分かる。
そしてそれを園崎さんが一旦落ち着かせるために手を叩いた。
「はいは~い。レナの意見は聞いたから、次は梨花ちゃん」
「……みぃ」
またこっちを見てくる。
眉一つ動かさず、まるで値踏みでもするような視線は僕に何を求めているのだろうか。
そんなことを感じずにはいられない。
そわそわしてしまいそうになったとき、古手さんからの意見が出た。
「……興味があるのです」
「…………へ?」
思わず声を上げてしまった。
興味、そんな言葉を使われると思わなかったのだ。
「あははは! こりゃあ面白い意見が出たね!」
「梨花? 孝介さんのどこに興味ありますの?」
「……とっても不思議な猫さんなのですよ。にゃーにゃー」
招き猫の様に手を形作り、小学生、いや、古手さんだからこその可愛らしさがあった。
それだけで場が和み、先ほどまでの不穏な空気が窓の外へと飛び出してしまった気がした。
しかし古手さんの発言には異議を唱えたい。そんなのあるわけがない、と。
そう思っていたのに竜宮さんは古手さんの言葉にすぐに同調してきたのだ。
「あ、それレナにも分かるかな! 孝介君ってとーっても不思議な感じ! 何か私たちと違う感じがするんだよ!」
「ははは……。それって褒め言葉として受け取るべきなのかな……?」
「不思議かどうかは俺にはちっとも分からんが……魅音。お前もそういう所を感じたから入部試験認めてるんじゃないか?」
指摘を受けた園崎さんは目を丸くした。
「へぇ~。圭ちゃんって鋭い所もあったんだ」
「『も』ってどういう意味だよ! 俺は鋭い所だらけだぞぉ!!」
「確かに叫び声は鋭いですわね。鋭すぎて耳がおかしくなりそうですわ……」
「ほほぅ……ならその耳を変えてやろう。今度は形変わるまで引っ張ってやる!」
「くっくっく! まぁ、落ち着きなよ。確かにおじさんは初めて見た時からただならぬオーラを感じたね」
「みんなして……。そんなオーラ無いと思うよ。だって僕だし」
転校する前自分が何か秀でていたものがあったかと言われると何一つ挙げる事が出来ないのだ。
むしろ劣っているものを挙げるとなると数え切れない。
……。
そう考えている自分がなんだか悲しくなってきた。
勝手に悲しむ僕をよそに、話は進んでいく。
「それを調べるためにも孝ちゃんにはこれから受ける試験をやってもらいたいのさ」
「……で、沙都子? お前はまだ反対するのか?」
「皆さんは孝介さんを高く評価しすぎですわ。やはりこういうのはよく見てから決めるべき――――」
「つまり沙都子は孝介が怖い訳だ」
「なっ……!」
明らかに自分の事をバカにされたと思った北条さんが息を飲んだのが分かった。
それに対して前原君は余裕そうな笑みを浮かべる。
もしかしてさっきの弄られた仕返しのつもりなのだろうか。
「そ、そんな事ありませんわ! 孝介さんなんて私の手にかかればめった打ちでしてよ!」
「んじゃあ、何でそんなに否定的なんだぁ? より自分のリスクを減らすためにはもってこいの相手だろ。それを拒否するって事は孝介が怖いと自白しているのと同義だぜ? お前は孝介のただならぬ雰囲気に牽制しようとしてるだけなんだあ!」
「いやぁ、流石にそれは無いと思うんだけど」
「そんな事はないぜ! さぁ、どうなんだ、沙都子!」
「……をーほっほっほ!! 私がそのような雰囲気に屈すると? ……いいですわ! 生け贄は1人で十分だと思っていましたけど、孝介さんもろとも逝かせてあげますわー!」
「へっ! それはこっちの台詞だ! 後で後悔しても知らないぜ。沙都子!」
2人は目線だけで火花を散らす。
その間にいる僕は一体どう反応すればいいのでしょう。
前原君は僕を仲間に入れるためにあえて北条さんを挑発したのは分かる。
それで成功して、僕を入部までこじつけた、その力は感服せざるを得ない。
ただ、それで被害を被る可能性を考えてくれているのだろうか。
……流れに身を任せると思ったし、このまま黙っておこう。
もう、なんでもいいや。
部活を始めたひぐらしメンバー。
今回は何をするのか!?
……ま、アニメ見てる人なら良く知るあれですよね。