ひぐらしのなく頃に 決 【訳探し編】   作:二流侍

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■訳探し編【Ⅲ-Ⅱ】

「……ぁぅぁぅ」

「……?」

 

 微かだが声が聞こえた。とても小さくて弱弱しげ、セミの騒音にかき消されそうだったけど、その中に紛れ込むかのように聞こえてきた。しかし、周りに誰かいたか。

 そう思って周りを見回しても近くに人はいない。幻聴だというのだろうか。

 先程のおじいちゃんはすでにこちらに背を向けて遠くへ歩いてしまっている。誰かに先ほどの声を尋ねる事も叶わなさそう。

 別に疲れたという事でもないというのに、何故このような事が……。

 疑問を首で傾げることで体現していた僕に聞こえてきたのは、はっきりとした声。

 幼い女の子の甲高いわめき声だった。

 

「あうあう。梨花の言う通りなのです! 有り得ないのですぅ!!」

 

 後ろだ。今回ははっきりとセミの騒音に負けない声量を出してくれたおかげですぐに特定できる。

 素早く振り向く……が、そこには真っ直ぐに伸びた道路。そして両側に広がる畑が目に映るだけ。

 遊び半分で隠れようにも場所も存在していない。となると、結論として誰もいないことだけが残されていた。

 やっぱ幻聴……なのかな。

 

「孝介君!!」

「うわっ! ……りゅ、竜宮さんか」

 

 突然肩を叩かれたため、必要以上の声を上げてしまった。あまりされないけどこういう時ってやっぱり怖いものなんだ。特に今だったら心臓が掴まれたような気持ちになれたし。

 竜宮さんは驚かしたくてこっそりと後ろを狙ったのだろう。

 僕が予想通りの反応をしてくれたことに気を良くしていた。

 

「ちょっと、竜宮さん! いるなら変な演出しないでさっさと出てきてよ……」

 

 怖いモノはあまり好きじゃない自分にとっては十分堪能出来たと言わざるを得ない。

 とりあえず先ほどの声も幽霊アトラクション的な演出のためだろう。変に気構えしないで済んだことにほっと胸をなで下ろしていた。

 しかし、竜宮さんとは別人みたいな声だったし、演技の幅が広いなぁ。

 

「え? 私、何も演出なんてしてないよ」

 

 ……いや、演出してくれないと困るんですが。

 

「だって、さっき『あうあう』って」

「あははは! 孝介君の気のせいじゃないかな、かな! 私そんな事してないよ?」

 

 不思議そうに首をかしげる竜宮さん。これ以上嘘を付く必要はないから、先ほどの発言は虚言ではないのだろう。だからこそ僕は疑問に感じていた。

 竜宮さんだと思って安心したのにまた振りだしに戻るとは……。

 

「あ、圭一君、魅ぃちゃん! おっはよー!」

「お、相変わらず早いな――――って何だ、そのボストンバッグ!?」

「えへへ。お弁当を用意したんだよ!」

「おいおいだからってボストンバックは……弁当以外にも何を用意してきたってんだ――――」

「ないよ!」

「……はぇ?」

「これぜ~んぶお弁当。みんなに食べてもらいって想ってたら作れたかな、かな!」

「……そ、それ全部お弁当なのかよ」

「レ、レナ~も大変だったね」

「そんなに大変じゃなかったよ。……みんなが喜ぶ姿が見たいよ、はぅ~!」

「あはは、は!」

「それは…………ありがとうな」

「……圭ちゃんがそのまま真っ直ぐ帰れば良かったのに『ピクニック、レナの弁当食いたいなぁ』なんて言うからぁ」

「あれは魅音が『レナの弁当っていつも凄いよねぇ』なんて話をしたからだろ!?」

「あたしのせいだって言うの~!? 酷いよ圭ちゃん!」

「だ、だってこんなに大量の弁当なんて予想出来るか……」

「2人とも何の話をしているのかな、かな?」

「「何でもありません!」」

「そ、そうなの?」

「あぁ……て、ていうかどうしたんだ孝介の奴? さっきからボーッとしてるんだが」

 

 僕の名前を呼ばれたような気がした。

 

「……え? あ、ううん。何でも無いよ」

「一体どうしたんだよ? なんか考え込んでいたように見えたんだが」

 

 そうか、自分はみんなの会話をそっちのけで考え込んでしまっていたことを気にしてくれたようだ。

 とりあえずみんなの不安そうな顔で見てくるのをどうにかしたい。

 

「うーん。ちょっとね」

「体調が悪いの?」

「いや、めちゃくちゃ元気だよ。大丈夫」

「はぅ~。心配だよ~」

「あはは、別に問題はないから」

「それならいいけど……」

 

 そうだ、あれは幻聴だ。そう考えたほうが自分の中でも納得が出来る。

 思い込みの激しい人が見たくもないものを見てしまうというのがあるが、それの聴覚部分の話であるのだろう。気にしていると、どんどん悪化してしまう。

 割り切りが大切、それに友達が目の前にいるんだから。

 みんなの不安を払しょくさせるために笑みを作って見せた。

 

「それよりもさ! 母さんが大学イモを作ったし、後でみんなで食べよう!」

「「……」」

「……。あれ? 前原君達、怒ってる?」

 

 落胆というか、善意で傷口に塩を塗ろうとしないでとばかりに苦々しい顔でこちらを見てきた。

 竜宮さんだけは嬉しそうに顔を輝かせている分、2人の反応に差を感じてしまう。

 何故だろうか、そこまで困るような事を言っていないはずなのに。

 

「……はぁ、孝ちゃんは分かってないようだね」

 

 園崎さんが指で竜宮さんのボストンバッグを指した。

 

「……そのボストンバッグがどうしたの?」

「さっき話していた内容から俺達の言いたい事を察する事が出来るだろ?」

「えーっと。さっきはあんまり聞いてなくて……ははは」

 

 やはりこういう事を言うのは気まずいし、少し後悔してしまう。

 恥ずかしさを紛らわそうと、俯き頭を掻いた。

 もしかして、ボストンバックに物凄い部活道具でもあるのだろうか。それとも竜宮さんの新たな一面を見る事が出来るチャンスなのか……。

 そんな憶測を頭の中でめぐらせている中、前原君と園崎さんは互いに顔を見合わせて、

 

「……まぁ知らない方が幸せって事もあるか」

「あははは。全くだね」

「へ?」

「さて、と。今日は色々と見に行くんだし、さっさと行かないと!」

「うん! 早くしないと梨花ちゃん達を待たせちゃうよ」

「よっしゃあ。いっぱい見に行くぜぇ!」

「え? あ、ま、待ってよ!」

 

 結局中身はチャックを開けてのお楽しみ……ということにされた。




明日投稿出来るか少し不安……。

出来なかったら、すみませんが明後日になるかもです。


あと、ちゃんと投稿前、そして投稿後も確認はしているのですが、誤字や脱字があれば報告していただけると嬉しいです><
何度も改稿をしているのもそのせいだったり……w
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