仕切りなおすように雛見沢めぐりを始めたときは園崎さん、竜宮さんを先頭にして回った。
雛見沢、やはり予想通りというか、しょうがないと思うべきか、村自体そんな広くは無いし、施設も少ない。
ゆっくりと回っても、昼前には残り1つで雛見沢の全ての施設を確認できると言われていた。
……とはいえそれまでずっと歩き続けていた僕たち。
歩いた距離はかなりのモノだ。施設の1つ1つは少なくても距離はあるし、坂を上ることはなくとも長い道のりであることには変わりない。
みんなはかかとにローラーでも付けているのか、歩くのが早く、僕は後ろからついていくのに必死だった。
つまり、自分が言いたいのはたった1つ。
「……みんな、体力あるね…………」
「孝介が体力無いだけだろ」
「運動、苦手なんだよ……」
残り1つを迎えて体力0になりました。
昔住んでいた時から体力が無いって分かっていたけど、それでもこんなに差が出るとは正直思っていなかった。これが都会と田舎の差というものなんだろうかと感じてしまう。
膝をついて息を整えている自分に対し、息1つ乱れていないみんなは辺りを見回して、
「ここで梨花ちゃん達と会う約束していたんだけど……」
「早く来てしまったかな? かな?」
集合時間は正午だったはず。
周りに時計は無いけど、太陽は真南ではなかったはず、まだ少し東に傾いていた。
2人がまだ来ないのも納得が出来る。
「どうするんだ? 少し時間余ってるぜ」
「ん~……。これからどっか行こうにも、そこまでの時間は残されていないしねぇ」
「ははは、僕はここで待機したいなぁ……なんて」
「大丈夫かな? かなり疲れてるよ~」
竜宮さんが僕の事を心配してくれている。
本当ありがたい事なのだけれど、やはり心配されるなんて情けない。これならもっと鍛えとくべきだったと昔の自分に後悔していた。
とりあえず、少し体力も戻ってきたしちゃんと立とう。
そう思って態勢を変えれば、目の前でニヤニヤしている園崎さんの顔が見えた。
「ん~。ただ待つのも暇だからねぇ」
こういう時は何かしら既にやることを決めている証拠だ。
……すごく嫌な予感がしてならない。
「ヤッパリ? ズツーガイタイシココハ――――」
「よし! ここでミニゲームをしようじゃないか!」
「話聞いて!?」
体力が底をついている僕にとってそれは罰ゲーム宣告でしかない。
「あぁ、本当にやるの……」
「いや、そんな分かりやすい嘘言われてもね~?」
確かに頭痛は今はしてないけど、これから起きそうなんだよ……色んな意味で。
「ミニゲーム? 部活とは違うのかよ?」
「ちっちっち。圭一ちゃんはこれだから甘いんだよ」
園崎さんはビシッと指を立てたかと思えば、得意げに語りだした。
「あたし達の部活は誰か1人でも欠けたら駄目なんだよ。沙都子、梨花ちゃんがいない今のゲームを部活と呼ぶなんて言語道断、愚の骨頂!! だからミニゲームって言うのさ」
「な、なら罰ゲームも無いの?」
「もちろんあるさ! だからこそのこれ」
何でそんな事想定しているのかと全力で園崎さんにツッコミたくなる。
園崎さんは大きくもない至って一般的、普通の黄色のリュックサックを肩から下ろして、漁り始めていた。
いつも学校に行く時の鞄をそのまま持ってきたし、特に違和感なんて無かったけど――――
「負けた人はナース服を着て午後を過ごしてもらう」
この瞬間違和感に変わりましたぁ!
「おい! 確か午後って隣の興宮までじゃなかったか!?」
「そうだよ。ただでさえ人数が少ないこの状況でやれば、隣町まで羞恥を晒す可能性が高いというこの状況!」
そして体力がもう無い僕。
たとえジャンケンだけでも爆発音が上がる程の激しい戦いにとって、致命傷極まりない。
「うぉお! そいつは燃えてきたぜぇえええ!!」
「はぅ……みんな手加減してね」
「……おうふ」
「よし! じゃあ今回のゲームを発表するよ! 今回は――――」
僕の意見を聞かずにゲームは始められた。仕方がない事である、これがこの部活の掟といってもいいのだから。
そして数十分後、結果は見るまでも無いだろう。
僕の疲れによる集中力低下が原因であっさり負けてしまった。
まあ、もう諦めていた部分があったので、そこはまだしも。
泣きっ面に硬球ボールというべきか、その後がまさに地獄で……。
ナース服に着替えさせられた僕は竜宮さんのかぁいいモードから逃れるための超マラソンが強制開催してしまうし。
合流した古手さん達に笑われて恥ずかしい思いをしないといけないし。
その後の昼休み、竜宮さんの想像以上のお弁当に伊賀もたれてしまうぐらい食べないといけなかったし。
流石に物理的に胃が痛くなるとは思っていなかった。
そして昼には予定していた通り隣町に移動。
図書館や園崎さんの経営しているゲーム屋さんも紹介してもらった。
……で、忘れてもらったら困るけど、その間当然メイド服だった訳で。
案内されている間ずっと周りから慈愛に満ちた目で見られていたのが、末代までの恥となると思っていた。
もうここまでの出来事を簡単に言えば、今日の出来事で村どころか隣町まで有名人になりました、はい。
そして夕方に戻った僕は村に着いた瞬間にうずくまっていた。
「も、もうやだ……色々と」
「孝ちゃんナース服慣れてきた?」
「慣れる訳無いよ! というか慣れたくない!!」
立ち上がって全力で突っ込むと、前原君に肩を叩かれた。
「大丈夫だ孝介。……俺も最初はそう思っていた」
「あぁ! 凄い危機感を感じちゃう一言だ!!」
「「「ははは!」」」
「笑わないでよ!」
いつの間にか僕が笑いの中心となっていた。本当なら嬉しいこの状況……なのかもしれない。
友達なんてこんなもの。誰かと一緒にいればこうやって馬鹿やって笑うこともあるはず……。
「さーて、オッサンの道はこっちだから」
「あ、うん」
古手さん達とはもう別れていた。そして今園崎さんともお別れのとき、というわけだ。
もうそんな場所まで来たのか……。意外に感じてしまう。
「んじゃあ私は帰るわ。圭ちゃんにレナ。孝ちゃんをよろしく」
「いや、別に1人で大丈夫だよ……」
帰り道だって覚えたし、そんなに心配されるような事は――――
「あぁ、しっかり着替えさせないよう見張っとく」
「そっち!?」
この罰ゲーム、家に帰るまで続くらしい。
なんという恐ろしい部活だ。人の何は蜜の味という言葉を見事に体現させている……。
「じゃあ、私はこれで」
「うん。バイバイ魅ぃちゃん!」
「孝ちゃん、逃げようなんて考えないように」
最後に忠告して園崎さんは僕達に背を向けて走り去っていった。
2人ならなんとか説得して着替えられそうな気もするけど……やっぱり部活の鉄則だし、諦めるしかないのか。
悲しい思いを足に乗せて、歩き始める。
「はぁ、今日も遊んだなぁ」
「ははは、次は純粋に楽しみたいよ……」
「まぁそういうなって」
会話を弾ませながら、僕と前原君は歩き続ける。
……そして、その状況の違和感をすぐに気づいた。
「あれ、竜宮さん? どうしたの?」
竜宮さんだけが僕達と同じ行動をせず、その場で立ち止まっていた。
「え、うん……あのね…………」
彼女は何か言おうか言わないか悩んでいるようだった。
「何だよレナ? 言いたい事があるなら遠慮せずにはっきり言えよ」
「うん……2人ともまだ帰らなくても大丈夫?」
サァ、とこの夏の季節にあった生温く、湿気た風が僕の頬を撫でる。
だけどそこになでるような優しい風とは感じない。少しだけ打ちつけられたような、厳しい風。
今までになかった風を、僕は肌で感じていた。
そして何故だろう。竜宮さんの質問に僕は断るべきなのかもしれないとも感じていた。
遅れてしまい、すみませんでしたー!
というわけで展開は早めかもですが、ついに原作を知っているものなら知っているあの場面……!
さぁ、どうなっていくか……。
そして昨日は関西コミティアに行っていました!
色んな作品が立ち並んでおり、見ている作品全てに力が入れられており、どれを買うか悩むくらい。
自分は文庫が好きなので、文庫ばっかり買ったんだけど……w