ひぐらしのなく頃に 決 【訳探し編】   作:二流侍

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■訳探し編【Ⅲ-Ⅳ】

「何だよ? 宝探しくらいならいくらでも手伝ってやるって。な、孝介?」

「うん」

 

 竜宮さんに促されるままに付いてきたのだけれど、まさか長い距離を歩くことになるとは……。

『自分のお気に入りの場所に行きたい』

 それだけの頼みごと、僕らは快く2つ返事でここまで来たのだが、ちょっとだけ後悔している。

 

「2人ともありがとうね!」

「……だがレナ、こんな所にかぁいい物なんてあるのか?」

 

 それは確かに同意したい意見である。

 今いる場所はゴミ山だろうか。見た目で判断すればその言葉が一番合っていた気がした。

 電化製品、雑誌、自転車などの乗り物……本当に何でもありそうな気がしてしまう。

 途中で見かけた看板の工事中。つまり何かの工事現場だったところがこんな場所になったというのだろうか。

 しかし工事現場にしては山奥だ。長い長い細い道と斜面を歩いてきたし、複雑ではないものの面倒なことには変わりない。

 こんな場所、土地勘の無い僕なんかは迷ってしまうだろう。

 不法投棄で集められたゴミの山だからこそ足場が悪く、1つのアトラクションと化している。

 唯一腐敗しそうな物が置かれていないのが救いか。

 匂いはないものの、それだけでは僕らのテンションは上がらなかった。

 ……まぁ、1人を除いているのだけれど。

 

「一杯あるよぉ! ぜぇーんぶお持ち帰りするんだ!」

「全部は無理じゃないかなぁ……」

「ううん! 全部かぁいいんだから持ち帰るの~!!」

「そ、そうか……」

 

 僕達と竜宮さんのかぁいい基準には月とスッポン並に違いがあった。

 

「じゃあ圭一君達はここで待ってて! すぐ済むから!」

「竜宮さん1人じゃ危ないよ。みんなで行った方が――――てうわ!!」

 

 そういった早々、踏んでいたゴミがボロボロと崩れた。地盤が緩いのと違い、穴に落ちるような感覚に似ている。肝を冷やすという表現が一番しっくりきそうだ。

 危うく転げ落ちそうになったのだが、前原君が腕をとってくれたおかげが大きい。落ちる事はなかった。

 何とか態勢を取り戻しつつ、下唇を噛んでしまう。

 下を覗けばはっきりとしている。間違って落ちていたら笑い事では済まなかったと。

 

「大丈夫か、孝介?」

「ごめん前原君。助かったよ」

 

 そんな事してる間に竜宮さんは1人でパッパと移動していた。

 この場所をかなり熟知しているのだろうか、その足に迷いが見えない。

 

「しかしレナはすげぇな。足場の悪い道をあぁもすいすいと行けるんだからな」

「どうしよう……。ここで待ってる?」

「それが一番だろ。レナは慣れているらしいし、俺以上にしっかり者だからな。怪我する事は無いだろ」

「まぁ、そうだね」

 

 僕たちはその場で待つことにする。

 既に夕焼けは役目を終えたとばかりに沈もうとしている。

 時間は掛けないと竜宮さんは言っていたが、さて、本当に帰ってくるのか。

 とりあえず時間を潰そうと考えた結果、前原君に1つの確認をしようと思った。

 

「前原君さ」

「ん? どうした?」

「さっきの竜宮さんの事を言ったセリフ。そんな風に言えるなんて、本当に信頼してるんだね」

「ま、当たり前だろ。レナは俺達の仲間なんだからなぁ」

「……そうなんだ」

 

 仲間、その言葉が少しだけうらやましいと思ってしまった。

 僕は転校前の中学でそのような信頼関係における友達なんていなかったような気がする。もともと人と喋るのが苦手だった僕はそのような関わりを持とうとしなかった。

 でもこの人達を見て、少しだけその関わりがうらやましい。自分もそうやって信頼できる関係を築きたいと思っていた。

 ……僕は、そんな仲間を……前原君たちと築けるのだろうか。

 

「……」

「どうした孝介? 何か悩んでいるのか?」

「え、あぁうん。なんでもないよ」

「そうか? 考えてるように見えたが……」

 

 実際そうだから嘘を付きづらい。僕は何も言えず、ただ目線を逸らすことしか出来なかった。

 そう、今は前原君たちとこうやって遊んでいる。

 でもこれがずっと続くのだろうか……そんな不安を感じてしまうのだ。

 ただの友達としてなら今の関係で満足できるのだろう。十分遊んでいるし、関係は良好といえる。

 ……でも、その先は作れるのだろうか。もっと、心を通わせられる、不安を打ち解けあえる存在。

 そして……頼られる存在になること。

 親友という言葉。それが彼らと共に出来るのだろうか。

 それを考えたとき、胸が縮むかのように、苦しくなる。これは不安からなのか、それとも自分の未熟さゆえなのか。

 沈む夕焼けのもの悲しさを感じながら、そんな迷いを巡らせてしまっていた。

 

「……しかし、レナの奴どこ行ったんだ? 姿が見えないんだが……」

「あまり遠くへ行っていないとは思うんだけど」

 

 もしかしたらこの斜面を下りないといけないのかもしれない。

 前原君と今後の方針を取ろうかと考えたとき、

 

「……?」

「どうした、孝介?」

「今、誰かいたような……?」

 

 辺りを見回してみる。当然僕達以外に誰もいない。

 鳥やひぐらしも日が暮れだすこの時間帯なのか、姿は見えなかった。

 今度は幻聴ではなく、幻覚でも見たというのか。

 

「何だよ、何かいるのか?」

 

 前原君も周りを見ようとした時だった。

 突然砂利を踏む音とフラッシュの光が僕達を驚かせた。

 

「あははは、ごめんごめん。夕日をバックにした自然体を撮りたくてね」

 

 第三者の声。それも思った以上の若く、そして凛々しくも感じる声だ。

 見れば冷蔵庫の後ろに隠れるようにして、顔を出す中年の男性がそこに立っていた。

 眼鏡をかけて緑の帽子を浅く被っており大人しい男性なのかと感じさせる。

 だが服装と違い、腕は太く体躯のある姿を見せられてしまうとイメージが180度変わってしまった。

 もしかして結構暴力的な人なのかもしれない。

 下から尋ねようと、顔色を窺いながら男性に声を掛けてみた。

 

「えっと……どちら様ですか? こんな所に何かご用でしょうか?」

「その質問は君達もだろう」

 

 あっはっはと笑うその姿に敵視といった様子はない。

 彼はカメラを手に持って、シャッターを構えてアピールをしてきた。

 

「まぁ僕がここに来たのは野鳥の撮影かな? でも今は鳥達もお休みのようでね」

「だから俺達を撮ったんですか? 普通被写体に断ってから撮るもんじゃないですかね?」

 

 前原君がそっけなく言う。

 確かに悪い人ではなさそうだが、まだこの人の疑いが晴れた訳では無い。

 だからこの反応は当然だと言えるし、前原君の物怖じしない言い方に驚いた。

 やだ、かっこいい……。

 なんて、心の奥底でしか思えないけど。

 

「それは悪かったね。今まで断った事が無いんだよ」

「ふ~ん」

 

 前原君の反応は顕著に見えた。怪しくて仕方がない。そんな目をしている。

 彼もそれを感じとり、どうしようかと悩んだ挙句、

 

「と、とりあえず自己紹介させて貰おうかな。僕の名前は富竹。見ての通り、フリーのカメラマンをしていてね。時々こうやって雛見沢に来ては美しい景色なんかを撮らせてもらっているんだ」

 

 その後も続く富竹さんの自己紹介僕達は聞いていた。

 富竹さんも僕達の誤解を解こうと必死なのだろう。聞いてもいない話、そこまでいらないような話をそりゃあもう長々と喋り続けていた。

 早く竜宮さんが帰ってきて欲しい。じゃないとこの人の会話を止めさせる手段がない。

 そんな願いを神様は聞き入れてくださったのか、竜宮さんが大きな声でこちらに向かって叫ん出来たときは小さくガッツポーズをしそうになった。

 

「二人ともぉ~! もう終わりにするねぇ~!!」

「あれ? あのお連れさんのかわいい女の子はあんな所で何してるんだい?」

 

 上手く説明出来ません。

 宝探しです、なんて言っても相手には理解出来ないだろう。

 証拠はかぁいい話を聞いた自分でさえ理解が出来ていない事実である。

 

「――――さぁねぇ。昔殺して埋めたバラバラ死体でも確認してるんじゃないすかあ?」

「……え?」

「は、ちょ、ちょっと!?」

 

 慌てて富竹さんの聞こえないよう声を殺して前原君に注意する。

 

「誤解を招く事言って……! そんな物騒な事言ったら駄目だよ!」

「しまった! いつもの部活のノリで言っちまった……」

「富竹さん凄く焦っているよ! 早く誤解を解かないと!」

「あ、あぁ。流石に悪いことをしちまったぜ……」

 

 富竹さんが言葉を聞いてからずっと苦々しい顔をしている。

 前原君もいたずら心とはいえ、このままでは悪印象になることは間違いない。

 流石にこの誤解は解いてもらわないといけないだろう。

 全く前原君は……いくら富竹さんが怪しいからといって、こういう軽率な発言がいけない。もっと場を考えて欲しいものだ。

 その事については前原君も反省しているようで、

 

「いやぁ、すいません。今の冗――――」

「嫌な事件だったよね。確かまだ右腕が見つかってないんだろう?」

「「……え?」」

 

 僕達は確かに謝ろうとしたはず。だって冗談を言ったのはこっちだ。

 だからこそ、こうして前原君は頭を下げて謝った。

 だけどその言葉を遮るかのようにして返ってきた言葉。その言葉をにわかに信じる事が出来ずm僕たちはそう聞き返すしかなかった。

 




篠原孝介の迷い、そして前原圭一に知られる真実……

今回が大きな転換の部分なのかも。
そんな気がしました。
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