「じゃあねぇ二人とも、また学校でぇ~!!」
「うん、また明日」
「じゃあな」
手を振って竜宮さんの後ろ姿を見送っていた。走り去る彼女は振り返る事もなく、僕らの前から消えてしまった。
これで2人、前原君とはもう少し道中を共にしていく。
前原君は鞄を担ぎなおしたて、こちらに向いてきた。
「んじゃ行くか孝介。お前も道こっちなんだろ?」
「うん。僕達の家って結構近いみたいだね」
「ははは! そうだな。今度お前の家に遊びに行くか、みんなで」
「か、家族がいるから部活はなしでね?」
あんなことをしてしまえば、両親から心配されてしまいそうだ。
……いや、部活外でもみんな暴れそう。というより暴れないメンバーなんて別人だと疑いそうだけど。
「お前の家も二階建てなのか?」
「うん。一応新築ということらしいけど、もっていうことは前原君も家は大きいの?」
「まぁな、なるほど。ここらへんには新築を建てていると考えてよさそうだな。家がないのも納得だ」
両側に伸びる畑にそれを囲むように堂々としている山。確かに家は存在しない。
いつ見てもこの畑と山、そして空の3つはいつでも鑑賞できる。今では星空を仰ぎ見ることが出来る。
曇りなき満点の星空、そんな光景でさえ都会の僕にとってはまた新鮮。
もう太陽は山に隠れてしまった。道には街灯の代わりの月明かりが照らし出される。
蒸し暑いこの季節でも、心なしか涼しげな気持ちになれる。
「……なぁ、孝介?」
穏やかな気持ちになる中、少し先を歩いていた前原君の足は止まった。
「何?」
「レナの件なんだが……」
「竜宮さん? 竜宮さんがどうしたの? あ、まさか今更になってケンタ君人形が欲しくなったとか――――」
「俺が右腕の話をしようとした時のレナ、嘘付いていなかったか?」
「……」
僕なりに誤魔化そうとはしていたのだけど、前原君には通じなかったようだ。
そう、それは僕も感じていたこと。前回の一応という言葉にはそういった意味を持つ。
竜宮さんは、僕らに何かを隠そうとしてああいったのだと。
そう分かってしまった。だから自分を騙そうとしていたのだ。
それを前原君は……納得出来ていない。
前原君と僕の違いはそこだ。竜宮さんの言葉に納得しているか、してないか。
反論する事は出来ないまま、僕は前原君の言葉を待つことになった。
「信じたくはねぇが、レナは俺達に何か隠してる」
「ま、前原君。いくらなんでも……」
「あぁ分かっている。疑うなんて信じたくないさ……。だが……だがだぜ? それならレナはどうなんだ?」
「え?」
「あいつは、俺たちを疑っているんじゃないのか? 信用出来ないって……」
「それは……」
前原君はその答えに迷っている節がある。
竜宮さんの言葉は僕たちに自分のことを疑われたくない。
そんな感じにも聞こえる。それが前原君の中でずっと気になっているのだろう。
……だけど前原君は前言っていた。竜宮さんは仲間だって、だから信じているって。たった数時間前の台詞なのにそれを覆してしまうというのだろうか。
「俺は……まだ少し分からねぇ。仲間っていうのは嘘付き合っていきていくものなのか? それが信頼し合える関係になるのか?」
「……それは、分からない…………」
「レナは大切な仲間だ。それは今も変わってはいない。だがよ、前と違ってそこに確かなモノが無いんだ。何かを失ってしまったような気がしてならないんだ。俺は……大きな枠でしか信じていなかった。口だけは立派だったのに、いざとなるとこれだぜ。全く……何を信じていたんだろうな……」
「前原君……」
前原君はきっと悔しんでいるのだろう。竜宮さんを疑い、悩む自分を。
それは強く握りしめられた拳から痛いほど感じ取れた。
「孝介、俺はどうしたらいい? こんな時、お前ならどうしている……?」
「……」
そう、きっと前原君は僕に答えを貰いたいのだろう。
それは今同じように感じている僕だからこそ、彼は信じていられると思ったのだ。
どんな形であれ、仲間だと信じてくれたのだ。
それに応えてあげたい。適切なアドバイスで彼の沈みゆく底なしの沼から引っ張り出してあげたい。
……だけど、僕が言えたのは苦渋を含ませた謝罪しかなかった。
「ごめん……僕には分からないよ……」
母さんなら適切な答えを出してくれるかもしれない。今この場に母さんがいれば何を言っているのだろうか。彼女との関係はそれまでだったのか? それとも信じていくのが仲間、とか言うのだろうか。
だが、そんな事を考えても所詮は空想の中で描いた絵空事。何一つの根拠も存在しない。
そしてそこに、自信が存在しないのだ。
こんな時に助けられない自分は友達なんて一生出来ないだろう。そんな気持ちにさえなってしまう。
「……俺こそ悪いな。お前に聞いた所で困らせるってだけなのにな」
「そ、そんな事は……」
「孝介はよ。レナのいう事を信じるのか?」
その質問には彼の迷いが含まれているようだった。
そして僕も迷う。どうすれば、彼を友達として助けることが出来るのか。
導き出された言葉は僕の希望論だった。
「そう……だね。僕はみんなが隠し事してるのはあり得ないと思っているから」
「隠し事……か」
「竜宮さんはきっと理由があってそうしているんだよ。だから――――」
「孝介……お前は正直な気持ちをちゃんと伝えてくれるんだな」
「え?」
「俺はお前を信じたい。お前は隠し事していないって」
「前原君……」
「仲間の疑念を晴らしたい。そのためにはお前の協力が必要になるかもしれない。だから……」
「……」
初めてだった。こんな風に頼られると思えたのは。
自分の中で少しだけ嬉しく思える。このように小さなことかもしれないけど、これが僕自身が望んでいた信頼関係。これが仲間なのだと思えた実感でもあった。
いつもは頼ってしまう自分も、このように頼られることもあるのだ。そして、その期待に応えたい。
助けたいその一心は強い気持ちとなって、言葉に表れた。
「うん。僕で良ければ」
「ありがとうな……。よし、俺はこっちの道だから!」
ふっ切ってみせようとしていたけど、その反面、少し無理しているように見えた部分もあった。
だがここから先は前原君が自分で結論を見つけ出さないといけない。
そのためには僕の協力も必要なのかもしれない。でも前原君はきっと最後には自分自身で答えを見つけ出せる。
だって僕よりずっと強くて、自分に真っ直ぐな少年なんだから。
だから僕は前原君を信じる。
それが前原君のいう仲間だと信じたいから。
「……それじゃあな孝介。また学校で盛り上がろうぜ!」
「うん。じゃあまたね前原君」
最後に見せた笑顔、あれが彼の見せた希望であると信じていたい。
そう思いながら、僕は彼と別れ、自宅までの一直線に伸びた道を歩き続けた。
「今日は色んな事があったな……」
本当に、色々ありすぎて日記帳の1ページでは収まらない量の出来事が詰まっている。
今日を比べてしまうと、今までの出来事が些細な出来事で済んでしまいそうなぐらいだ。
夜はすでに更けっている。既に母さんは晩御飯をテーブルの上に乗せて僕の帰りを待っていることだろう。
急いで帰ろうと、走ればすぐ目の前に家が見える。
明かりがついた一階を眺めながら、僕は玄関の扉に手を掛けた。
「只今――――」
そんな時、自分は今置かれている状況にようやく気付いてしまった。
「僕の私服って確か園崎さんが持ってたような……」
さて、前原君の問題の前に、まずは目の前の問題を処理しないと。
結局策も思いつかない僕はため息を付くしかなかった。
ようやく アニメ『ひぐらしのなく頃に 拡 アウトブレイク』
を見ましたよ!
何でしょう、初見だった人はあの展開についていけるのか!? と思わせるような場面が多かった。
やはり原作のひぐらしに比べると、少し残念な気がしてしまいましたね……。まぁこれは一個人の意見なのですが