「――――という訳で勝利数2の沙都子の優勝!」
「くそぉ! まさか最後にカード入れ替えなんてされてたとは……」
「をーほっほっほ! 最後に見せた驚き顔が何よりの至福ですわー!」
北条さんの表情は輝きに満ち溢れていて、勝利したことがいかに嬉しかったかを見せつけていた。
前原君を罠にかけたということも上機嫌の1つなのかもしれない。流石トラップマスターと言われる北条さんだけのことはあるな。最後の最後まで彼女のカードの入れ替えは気づかれることはなかった。彼女が言うにはかなりの序盤にめくれたのを入れ替えといたと言うが、つまりそれは序盤でこの結果が見えていたということ。
……ここまで読みきるとは、もはや知能だけでカバー出来るものではない。
これは彼女の完璧な勝利と言われても納得してしまいそうだ。
「そして最下位は全敗の孝ちゃん!」
「うん……」
「孝介君…………大丈夫、きっと罰ゲームの回数もこなせば慣れるよ!」
「それフォローになってないから!」
そして忘れてはいなかったけど、僕の最下位という泥沼から逃げきれなかった。
圧倒的大差での敗退。正直ここまでの戦力差を見せつけられると心を折られる。
しかも全敗なんて悲しすぎる。どっかに身を潜めて自分を慰めたいぐらいに。
やっぱ自分にはこういった決闘事は苦手なのかなぁ……。
「さぁて。今回はどんな罰ゲームが待っているのかねぇ」
「ははは……簡単なものがいいなー」
「そうさねぇ。メイド服を着て町中を駆け回るとかかね?」
「その時の僕、多分メイド服と一緒に哀愁を纏ってそう……」
「ようは慣れだよ! 孝介君!」
「竜宮さんはさっきから慣れで誤魔化そうとしてない!?」
駄目だ。最近は自分のポジションが危うい気がする。
前までは眺めているだけで、こんなにツッコんでなかったのに……。
「あれ、そういえば梨花ちゃん? いつもの様になでなでしてやらねえのか?」
「本当ですわ。今回の孝介さんなんて梨花の恰好のターゲットですのに」
「……みぃ。まだ罰ゲームが行われてないのです」
「でも古手さん。罰ゲームやることは確定だし」
「……それに篠原が負けとは限らないのですよ、にぱー☆」
「え? それって、もしかして―――――」
「何言ってるんだ梨花ちゃん。孝介はもう負けてるじゃねぇか」
前原君がそう言って訝しむも、古手さんの表情は変わらず微笑を浮かべていた。
さっきの言動、そして表情……。
もしかして古手さんは気づいているのかも。僕が考えたアイデアを。
いやこうやって今も疲弊した兵士のような様相を見せてるし、まさかそんなはずはないと思いたいのだが。
「んじゃあまぁ、罰ゲームのクジを引いて貰おうかねー」
「をーほっほっほ! 孝介さんには悪いですけど辛い罰ゲームをやって貰いますわー! ……私のを引けばいいだけですし」
「ま、まぁ確率は6分の1だから……」
「ぐへへへ。その確率は間違えだぜ、孝介。6分の5が辛ーい罰ゲームになっているからな!」
「だとは思うけど……」
中身を掻き混ぜたガサガサと紙切れのこする音を出した後、挙げた北条さんの手に1枚の紙が握られていた。
「いっしっし! 孝介はどんな罰ゲームを受けるんだぁ?」
「お、圭ちゃん楽しそうだねぇ?」
「当たり前だろ。罰ゲーム見るだけで済むんだからな」
「じゃあ読みあげますわよー!」
読みあげる前に、みんなに見えないように内容を確認する北条さん。
だが読んで数秒、あり得ないものを見るようなどう反応していいのか分からないような、そんな憮然とした表情に変わった。
この表情。もしかしたら……。
「……沙都子。早く読みあげるのです」
「え、えっと『最下位は前原君の顔に墨でお絵かきをする』ですわ!」
「残念だったなぁ孝介………………は?」
「え、ちょっと沙都子ちゃん! それどういう事!?」
「どうもこうもここにそう書いてあるんですもの!」
みんなが北条さんのところに詰め寄って中身を確認する。そこには確かに先ほど宣言していた内容がまんま書かれていた。みんなは見るからに動揺しているように見える。
「……どうするのですか、魅ぃ?」
いや、僕以外にも1人落ち着いていた子がいた。
そしてもう1人。
「あちゃー。まさかこう来るとはねぇ……」
顔は驚いているのだが、こうなると予期していたのだろうか。
口元がニヤけている部長さんが僕のことを楽しそうに見てきていた。
「こ、孝介の奴……まさか俺に罪をなすりつけていくとは……」
「え? な、何で僕だと思うの?」
このルール。別に相手に見せ合いっこする事も無かったはずだ。僕自身一言もそのような節を見せたつもりはないのに、何故だろう。
「こんなの誰にでも分かりますわよ」
「そうだねー。私でも分かるかな」
「え、本当に?」
そう言うと、沙都子ちゃんが僕の書いた紙のある一部分を指す。
「ここ、前原君って書いてありますわよ。この中でそう呼ぶのは孝介さんぐらいしか当てはまりませんわ」
「あ、あぁ……なるほど」
三人称って難しい。
「で、魅ぃちゃん。これって罰ゲームとしてありなのかな、かな?」
「ん~~」
悩むのが当たり前だろう。何て言ったって罰ゲームの内容が他人に罪を着せさせるものだ。
こんな事をさせていけばいつか酷い事になってしまう。
「ご、ゴメン! やっぱりこんなの反則…だよね」
「ん? まぁ言っても私だって――――」
そう言って中身をゴソゴソと漁り始める園崎さん。何をしているのかと疑問符を浮かべている僕に対して、1枚の紙切れを見せてくれた。
手に取って読み上げてみる。
「えっと……。『罰ゲームは無し』って。…………え?」
「私もなんだかんだ言っといて保険はかけていたのさ」
「な、なるほど……」
あの時、園崎さんが笑っていた意味がようやく分かった。なるほど、可能性を低くすることを考えろと言いたかったのか。
「んな!? み、魅音。お前そんなセコい事考えていたのか!」
「まぁ私は相手に罪を着せるという非道までには至らなかったけどねぇ」
「うっ……」
「こんなことを考える孝介って……」
ジトジト、ニヤニヤ。辛いので外を見つめようと思います……。
「で、どうしますの? これを認めてしまいますと今後圭一さんがただのモルモットになってしまいますわ」
「おい、沙都子! それは一体どういう意味だよ!!」
「まんまの意味ですわ! 今後このような事態があれば、相手に擦り付ける事が可能ですもの!」
「それで何で俺だけなんだー! みんなまともに書けよ!」
「じゃあ圭ちゃんは何を書いたの?」
「え……。い、いや、別に今はいいじゃねぇか……」
「……僕は知恵に向かってカレーの悪口を言う、でしたのです」
「私はかぁいい物を探して貰うだったんだよ、はぅ~!」
「な、何でこういう時だけみんなこう優しいんだ……」
「……で、圭ちゃんは?」
「いや……何でもねぇ」
「圭一さんはどんな罰ゲームを考えていらしたのですかねー? 箱の中を見れば一発ですわ」
「あ、ちょっ、待て!」
北条さんが前原君の制止を振り切って、僕達にバッと広げて見せてくれた。
書かれた内容はこう書かれている。
『今日と明日の2日、メイド服を着て、更に1位の奴を呼ぶときは[御主人様]と言う』
……心なしかメイド服と御主人様という文字が太く、そして濃く見えた。
「酷いモノを見た気がしますわね」
「ご主人様って……何? 主従関係が好きなの?」
「うがあぁああ!!」
その対応が前原君の気持ちを見事に表しているような気がしてならない。
……あれもし当たってたら悲惨なことになっているのは言わないでおこう。
非常に迷いましたが一旦ここで終えようと思います。
最近は一話にかける文章量が多くなった気がする……。
※最近遅れがちになってすみません。
更新早め早めを意識しているのですが、この現状です。
改稿などの都合上、少し手間取ったりしているので、すみませんが気長に待っていただけると幸いです(;一_一)