「いや、こいつは違うんだ! 俺は決してやらしい気持ちで書いた訳ではないんだ!」
「……みぃ。圭一の頭はいつもやらしい事で一杯なのです、にぱー☆」
「だから違うんだぁあ!」
「圭ちゃんサイテー」
「な……! お、お前らだって俺にやらせた時は、もっとキツイ罰ゲームだったじゃねぇか!? だから――――」
「だから仕返しという事でして? 圭一さんの心はミジンコのように小さいですわねー」
「はぅ、仕返しだなんて……。レナはとってもショックだよ……」
「ウソだろ……」
明らかに動揺している前原君。そりゃあそうだろう。いつもされたからやり返す、それなのに今回に限ってのこの集中砲火だ。ある意味罰ゲームよりも心にくるだろう。部活としてそういう言葉攻めもあるのかもしれない。
……まぁ流石に罰ゲームを体感した僕は責めることはしないけど、この言葉だけは贈らせてもらおう。
「どんまい、前原君!」
「おい、孝介! お前顔がにやけているぞ!」
それは前原君の幻覚だろう。
今の気持ちは罰ゲームを回避出来て安心した気持ちで一杯なのだから。
「な、何でこうなったんだ……!」
「だって圭ちゃんだし~」
「俺が不幸の対象とでも言いたいのかよ!?」
「……みぃ~。そんなかわいそうな猫にはなでてあげるのですよ」
「梨花、そんなことをしていては落書きが出来ませんわ」
そう言っている北条さんはペン(油性)を片手に困り果てたように言っている。
「な、何で沙都子が罰ゲームを執行するんだよ!?」
「圭一さん。私との約束。まさか忘れたとは言わせませんわよ?」
前原君が挑んだ一騎打ち。その罰ゲームを執行せねばならないと北条さんは言っている。
言いだしっぺだからこそ、反論は出来ないだろう。汗をだらだらと流しながら後退させている。
今頭の中で、どうやってこの状況下から逃れられるのかを考えているのだろう。
そんな時間は与えないとばかりに、じりじりと追い詰める北条さん。
壁に追い込まれた前原君は逃げ場のないモルモット、抵抗は出来そうになかった。
「さぁ、覚悟はよろしくて?」
「ち……ちょっと待て! 孝介の件はどうなるんだよ!?」
「孝ちゃんが書いた罰ゲームはもちろん無しだよ。そんな事したら罰ゲームとは言えなくなるからね」
「なら孝介君の罰ゲームはどうなるのかな、かな?」
「でも今回引いてしまった罰ゲーム。こんな事初めてだからね。仕方ないと言えば仕方ない」
「……魅ぃはどうしたいのですか?」
「だから今回はなし!それでいこうと思うんだけど、どうかな、諸君?」
「やった……!」
これはまさかの展開。罰を受けずに済むし、罪悪感が残る前原君の擦り付けもしなくて済んだ。
自分としてはこのまま仕方ないよねーみたいな流れに持っていけたらいいんだけど……。
もちろん、そんなことを許すはずの無い人が1人。
「そんなのありかよ!?」
「私は構いませんわよ。圭一さんを思いっ切りいたぶる事が出来ますもの!」
本当に前原君に何か恨みでもあるんじゃないかと錯覚してしまいそうなぐらい、無慈悲でしかない発言だった。他のみんなも納得したように頷いている。
僕としては嬉しいんだけど……。
「ほ、本当にいいのかよ、お前ら!?」
「どうしたの圭ちゃん、今更になって?」
ニヤニヤと笑ってはいるが、この笑いは罰ゲーム執行のための笑いじゃない。
なんか、こう……何かに期待をしているような気がした。
どうしてだろう、凄く嫌な予感が……。
「よく考えてみろ! 孝介に罰ゲームを執行しないって事はこれからの部活に大きく影響するんだ!」
「へぇ、どんな風に?」
「これから先、こんなハプニングが起きたら全て無しになっちまってもいいのか!?」
「確かにそれは一理ありますわね。いちいち無しにしていたら部活として成り立たなくなりますわ」
その時になって何で嫌な予感がしたのかを理解した。
前原君が言いたい事。それは――――
「だから孝介にもこの罰ゲームをさせるべきだ!」
「ま、前原君! それはあんまりだよ!」
「お前には言われたくない!」
「何で!?」
「お前の胸に聞いてみろ!」
前原君はただでは死なないということか。
自分のやってきたことを肯定するつもりはないけど、流石にこっちに飛び火させる必要はないじゃないか……。
「ほほう。圭ちゃんは孝ちゃんにも罰ゲームをやって欲しいと」
「あぁ」
「……圭一は篠原をイジメたいのですよ、にぱ~☆」
それは違うと信じたい。だけどこうやってこちらにまで被害を出させようとしているのだから一概に否定が出来ないこともまた然り、といった感じだ。
どうなるか、園崎さんは指をパチンと鳴らして何かの合図を送った、
「2人ともお願い」
「逃げ――――て! もう腕が掴まれているだと!?」
「え?」
後ろを見れば、にこやかな裏にドがつきそうなSっ気の顔が見えた。
「竜宮さん、古手さん!?」
「ごめんね、圭一君」
「……篠原も顔を塗り塗りなのですよ、にぱ~☆」
逃げることも出来ない状況。これはつまり、やられることはたった1つしかない。
「え、ちょっと!?」
「そっちは圭ちゃんをお願い。レナは手首を抑えて、逃げないようにさせて。梨花ちゃんは孝介の腕を掴んでてね。私で片付けるし」
「「「了解(なの)です(わ)!」」」
見事な掛け合いと共に、すぐに実行される。指示は的確だし、その動きはまるで無駄が無い
この部活ってなんでこういう時は、強力なチームワークを見せてくれるのだろうか……。
「結局やられるのか……」
まぁもともと罰ゲームは僕が受けるはずだったんだ。その執行猶予を少しだけ伸ばしただけ。
当然の報いだろうけど、希望が見えていただけにちょっとショックなのも事実だ。
諦めて嘆息をすると、園崎さんが小声で話し掛けてきた。
「ごめんね。圭ちゃんを試したかったんだよ」
「へ? 試す?」
「そう、試す」
園崎さんは面白おかしそうに笑いながら、未だ抵抗を続けている前原君の姿を見つめる。
「圭ちゃんはこういった状況下でどんな言い訳、もしくは行動を起こすのかを知りたくてね」
「ど、どうして前原君に?」
「私はね。圭ちゃん、普段はダメダメだけど、ここぞって時にやってくれる奴だと思うんだ」
「……」
「……ばっちゃが言ってたんだけど、自分の想いに正直になれる人ってそうそういないと思う。それが例え仲間を困らせる事になっても……信じるという意味で困らせてでも、自分の芯を通せる人ってなかなかいないからね」
前原君に期待する目。しかしそれと共に奥底に悲しみを携帯しており、彼女は何かを見極めているようにも思えた。
友達、その言葉は彼女にとってどう捉えているのだろう。自分の芯を通す人のことなのか、それとも困ったときでも、信じてもらえる人のことをさすのか。
分からない自分はとりあえず、話を合わせることにした。
「で、どうだったの? おばあさんが言っていた芯のある人だった? 前原君は?」
「どうだろうね? ま、今回はここまで、とりあえず及第点って所だよ」
「及第点の基準が分からない……」
「あ、後圭ちゃんが言ってなくても罰ゲームはするつもりだったから」
「えぇ~!? だったらさっきまでの安堵感を返してよ!」
「あははは! 部活をなめてもらっちゃ困るよ。そんなやわじゃないから」
にやにやしながら僕の顔にお化粧……。あの時の園崎さんが今までで一番輝いている笑顔だったことに、複雑な心境だった。
今回は前原君の会話が多い。
まぁ、もう少ししたらもっと凄いのが見れますよw
そして遅れました、すいません。
更新スピードは徐々に戻したい、リアルの生活との兼ね合いを見ながら!