ひぐらしのなく頃に 決 【訳探し編】   作:二流侍

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今回は区切りが難しく、量を多めにしました!

これをうれしく思われるなら幸いですが……


■訳探し編【Ⅴ-Ⅲ】

「さぁて、小さい場所ですが、どうぞぉ」

 

 次に大石さんの言葉を聞いたのは車の前だった。それまで無言が続いていて、お互いがお互い牽制し合っているのは、獲物と猛獣の静かな目線の攻防、周りが気にならないほど張り詰めた空気から分かることだった。

 ……なるほど、園崎さんの言っていたことはこういうことからなのだろう。

 嫌な雰囲気を肌と目で感じていながら、僕は白色の変哲もなさそうな4人乗りの車に乗り込んだ。

 

「後ろに座りますかぁ。なんなら助手席でもいいんですよぅ? んふふふふふ……」

 

 変な誘いは無視しておこう。この人の胡散臭さは半端なものではない。まるで嘘という衣服を身にまとって、内心を全く見せない詐欺師のようだ。それほどまでに大石さんの言動には信用という言葉の重みが欠如しているように見えた。

 僕は対角線となる後頭部座席に座る。

 大石さんも受け入れると思って無かったらしく、軽く肩を竦めた後、自分も運転席に座る。

 だが、ここでまた2人の牽制のし合いが始まった。大人の余裕ってやつなのか、大石さんはこちらをルームミラーを使って見てきた。一応ミラー越しの相手の視線をしっかりと受け止める。

 視線でもお互い動じない。

 無言が続く。

 これが大石さんの策略なのかはそんなのは知らないけど、自分から話しかけるつもりは無かった。

 ……そしてこの根比べ、結局動きを見せたのは大石さんだった。

 胸ポケットからタバコのケースを取り出すと、

 

「一服いいですかぁ?」

 

 1本のタバコを胸ポケットから取り出して、ひらひらとこちらに振ってみせた。

 

「別に、構いません」

 

 僕は端的に答える。

 

「ありがとうございます」

 

 一応警察。形だけの礼をして、大石さんは大きくため息に似た声を出しながら、上手そうにタバコを吸っていた。

 

「すいません。クーラーの温度上げて貰えませんか?」

「おや、冷えましたか?」

「まぁ、そうですね」

「それは申し訳ありませんねぇ」

 

 別に寒くはない。ただ自分にとってのちょっとした反抗だった。

 やはり大石さんは僕から話を切り出して欲しいらしい。

 しかも竜宮さんたちを無視して、2人になる必要性があるのだから、あまり聞かれたくない話なんだろう。

 いくら鈍い僕でもそんなことぐらい分かる。

 でもあえてそれはしない。ペースに呑み込まれてはいけない。

 それは竜宮さんの忠告、園崎さんの態度から生まれた警戒心のおかげだった。

 

「いやぁ私も暑がりなもんでしてねぇ。つぅ~いつい、クーラーの温度を下げてしまうんですよぅ。ほら今の会話も少し寒くないですか?」

 

 大石さんはタバコを離さず、車のクーラー設定を弄っていた。本当にゆっくりと、自分の車であるはずなのに、設定を1つ1つ確認しては押している。そして、押してすぐに「どうですかぁ?」なんて呑気な声でこちらに確かめてくる。

 この間、そして言動。

 焦らされている自分がいる。いつもの僕ならもう話について聞こうとするはずだ。

 大石さんに注意しなければいけないのはもう確信的なものに変わっていた。

 うっかりと感情のままに情報を流してはいけない。それだけを今は考えよう。

 そう思っていた時だった。大石さんはミラーではなく、直にこちらを見てきたのだ。

 

「じゃあ、本題に入りましょうか」

「やっとですか」

「いんやぁ、篠原さんは我慢強い。完敗ですよ、んふふふふ……」

 

 本当にそう思っているのか分からないような笑いを見せた後、彼は警察手帳とは違う手帳を取り出してきた。

 あるページを開いて、それをこちらに見せてくる。そこには落書きや殴り書きと言ったような汚らしい文字があちこちに書かれていた。その中で、大きく活字で書かれた文字。おおよそタイトルであろう項目を僕は口にした。

 

「『雛見沢でのダム建設、反対運動』」

「そうです。この言葉、篠原さんは知っていますかぁ?」

 

 知ってるも何も、これはとても最近知った事だった。

 だから驚く事は何もない。そして別に口にする必要もないだろう。

 大石さんは僕が驚くそぶりを見せないことを確認して、話を続けていたのだから。

 

「なら、話が早い。園崎家が裏で働いたとされるバラバラ殺人事件の事もご存知ですよね?」

「……え?」

 

 今の言葉に不穏な内容が含まれていた。

 

「おんやぁ? ここまでの情報は聞いていないんですか?」

「いや、その事件については知っています。……けど、園崎さんが裏でっていう部分が」

 

 大石さんは気をよくしたようで、何度も頷きながらタバコを吹かす。

 

「この情報は色んな妨害の中から私が取ってきた情報なんでねぇ。確実とは言えません」

 

 ですがこの可能性は高い情報なんですよ、と大石さんは話を繋げておくのを忘れなかった。

 

「園崎家ではダム建設反対グループにおいて、中核を担う程の財力と権力を持っていましてねぇ。言ってしまえば、この村は園崎家が占めていると言っても過言では無いんですよ」

 

 確か父さんも言っていた。そして雑誌で書いていた内容も総合して、ある1つの推測ができる。

 ここ雛見沢は昔古手家、園崎家、公由家の三大勢力、言うならば御三家になっていた。

 だけど時代と共にその差は生まれ、今のような園崎家がトップになった。そしてその大きなきっかけが、ダム建設反対運動。

 

「でもだからって村を反対運動しているのに、なぜ?」

「それが団結力につながると思っていたのでしょうかねぇ。実際に何か起こせば、人は後に付いていきやすいですし」

「でも別に園崎家がやる必要性も、ない……」

「んっふっふ。私だってそれぐらい理解してます」

 

 手帳をパラパラとめくって、ある部分を指さし、なぞりながら読み上げる。

 

「実はねぇ。このダム建設、村全員が反対とは言っていないんですよ」

「……一部は認めた人達もいたって事ですよね」

「それは知っていましたかぁ? そうです国からの十分の補償金や、仮住宅地の確保もありましたからねぇ。それでいいと言う人もいたんですよぉ」

 

 確かにダム建設となれば、村一体が機能しなくなるだろう。そうなれば国からの援助が出るのは当然だ。雑誌ではそういっていたが、補償金や仮住宅までの情報は出てこなかった。

 大石さんは長い間調べているのかもしれない。それがよくわかる一言だった。

 

「その反対派のリーダー核となっていたのが北条さんなんですよ」

「え、北条さん!? まさか……」

 

 僕の驚きに大石さんも満足げに頷いて手帳を閉じた。

 

「ご察しの通り、あなたの友達の北条沙都子さんの親です。いや、父親っというべきでしょうかねぇ」

「確かに北条さんの親の話なんて、知らないし……聞いた事もない。でも、確か古手さんと一緒に住んでるとか……」

「あらぁ? こちらの情報も知らなかった感じですかねぇ?」

 

 なんだよ、僕の周りでは多くの情報がひた隠しにされていたとでもいうのか。

 自分はてっきり遠い親戚か、仲が良かった。そんなので、親子共々住んでいると考えていた。

 古手さんは確かに聞いていたけど……ということは、2人でしか暮らしていない。

 あまりの内容の連発に、僕の頭は目まぐるしく掻き回っていた。

 自分はてっきり遠い親戚か、仲が良かった。そんなので、親子共々住んでいると考えていた。

 気付けば自分は大石さんの術中にはまっている。もともと竜宮さんとダム建設跡地であのような話し合いがあった後なのだ。興味しか出てこない。それが大石さんが望んでいることだとしても。

 

「2人とも親はいないんですよ。不運な事にね」

「親が……いない…………」

 

 自分は友達としての地位にいていたと感じる時もあった。だけど……そんな大切な事に気付けなかった。いや、気づかせてくれなかった。気丈に振る舞って、僕に心配させまいと気を使ってくれた。

 …………それは本当に僕を信頼してくれているからなのか……それともただ……。

 

「事故……と周りでは片付けられています」

「……どういう事ですか?」

 

 大石さんは何か違う意見を持っているのはハッキリと分かった。

 

「いやねぇ、これはど~も胡散臭いんですよ」

「どこがですか?」

 

 言いながら気付いた。この人は事故と思ってない。

 

「実はですねぇ。古手家の頭首なんですが、実はダム建設反対のグループでは無かったんですよぉ」

「でも、古手家って……」

「えぇ、御三家です。それなのに反対も賛成もしなかった。他の2つと違って、言わば中立の立場。そんな微妙な位置にいたんですよねぇ」

 

 成る程。この古手家、北条家は確かにダム建設反対の雛見沢にとって厄介だったのかも知れない。

 1つはもちろん賛成のリーダー核。反対派にとってこの人がいなくなれば良いと思うだろう。

 そしてもう1つ。御三家という立場にありながら、中立というか傍観者。これでは村の結束に影響が出るかもしれない。

 考えればこの2つが無くなれば、園崎家……いや、雛見沢はかなり変われただろう。実際反対派の勢いは凄いようだったし。先ほどのを総合すれば、この核となるものを消せば、あとは反対派の思うが儘。園崎家が狙うことも十分理解できる。

 だけど……。

 

「そんな事したら、駄目だ」

 

 この言葉の大半は僕の願望で生まれていた。

 

「はい?」

「確かに2つは園崎家にとって疎ましい相手だったかもしれない。だけど、」

「殺人をして、もしばれたらただじゃあ、済まない。ですか?」

「……」

 

 全くもってその通りだ。

 

「そうです。だからこそ、彼らは『裏で』行動したんですよ」

「え?」

 

 大石さんはここでもタバコを一服した。

 

「篠原さん。あなたぁ、綿流しについて知っていますか?」

「えぇ……。雛見沢の中で盛大に行われる祭ですよね?」

 

 大分前、本当に転向して間もないころに言われた話だ。隣町も来ての大行事であると。

 だけどそれが一体何を意味しているのだろう。それがさっぱり分からない。

 そんな思いからか、一瞬眉を潜めてしまう。

 先程の言葉、今の表情を見て考えを読まれたのか、大石さんは苦笑いをした。

 

「どうやら知らされてないようですねぇ」

「だから何を?」

 

 もう、何かを知らせていないことが怖かった。

 ここまで身近にいて、それなのに、1つも知らない。そんな自分が惨めで、つらかったから。

 

「篠原さん。じつはね。このお祭りにはちょっとした怪奇があるんですよ」

 

 大石さんはミラー越しに僕を見つめてきた。無知な自分のさらに奥底の情報を見透かそうとするように。




明日もこの時間、もしかしたらもうちょい早く更新できるかもです。

……大石さんが悪いのか、孝介のメンタルが弱いのか。
どっちが正しいのか、いまだによくわからないw
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