ひぐらしのなく頃に 決 【訳探し編】   作:二流侍

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■訳探し編【Ⅰ-Ⅲ】

 知恵先生と別れた僕らは規定のドリルを購入しようと本屋に向かった。

 言われた場所は学校から少し離れ、入り組んだ場所で、本当に本屋をしているのかさえ怪しい。

 時間もすでに夕方を超えようとしている。これでは店で見れるのはシャッターの下りた扉だけ、なんてこともありえそう。

 ……などと、色々な不安を抱えていたのだが、全部杞憂ですぐさま買えた。

 

 店主が優しかった。既に店じまいを始めていた彼はにこやかに営業を再開。

 ドリルは何を使うか、どういう文具が今後必要になるかまで話してくれたのだ。

 おかげで迷う事なく買えた。値段も安くしてもらうし、あの人は利益のために店をしているのではないのだろうと感じさせられる。

 そして、その帰り道。太ももの上に乗せたノートの山を崩さないよう気を付けながら、僕は助手席に深くもたれていた。

 

「良かったな。明日から学校行けるようになって」

 

 父さんが嬉しそうにそう言ってハンドルを右に切る。

 何もかも父さんの言うとおりになっているのは少し癪である。

 素直に頷きたくなかった僕は、口をとがらせながら反論した。

 

「別に、明後日でも良かったよ」

「なんだ? お前は早く学校に行きたくないのか?」

「明日も明後日も一緒だよ。……もう」

 

 勝手すぎる親は迷惑である。どうせなら自分のタイミングで転校の手続きをしたいぐらいなのに……。

 鬱屈しそうになる気持ちを抑えようと窓から顔を出す。

 風と共に負の気持ちを飛ばしてくれると思っていたが、生ぬるい風でしかない。

 それは顔に嫌気を届けてくるだけだった。

 

「孝介、お前は勘違いしているぞ。もしかしたらその1日が大きく変わってしまう時だってあるんだ。時は金なりって言う位だしな」

「そんな変わる事ないと思うんだけどなぁ……」

 

 この外に移る景色のように一向に変わらないことがあるのだ。

 いくら1日があっても、この景色が大都会に変化する訳でもないのだ。

 所詮出来ることなんて小さなことばかり。変化なんてそんなものだと思う。

 ……それを口にしないまま、車は大きく跳ねているのを感じていた。

 

 家に着くと、母さんは荷物を整理していた。

 どうやら業者さんは無事荷物を運び終えたらしい。

 

「孝介、2階に荷物置いといたから見といて」

 

 冷蔵庫の中に生ものを入れていた母さんは、こちらを見ずに指示をしてくる。

 既に自分の荷物を運んでおいてくれたのだろう。これはありがたい。

「うん」と簡素な返事だけして2階に上る。

 自分に割り当てられた部屋は畳で敷かれた少し広めの部屋だ。。

 2階にある3つの部屋から一番広いと思って選んだのだが、物が置かれると少し手狭に感じてしまう。

 上手く整理して何とか空間を作らないといけないだろう。

 

「よいしょっと」

 

 ドア近くに置かれていたいくつかの段ボールを部屋の真ん中まで持っていく。

 大きな家具などは業者の人が運んでくれたようだ。隅っこに置かれていたが、とりあえずそこでいいだろう。

 とにかく邪魔だと感じる本や着替えの山々を整理しようと判断した。

 

「しっかし今思うと沢山の本を読んでたんだなぁ」

 

 本のために段ボール1つ分を使用してるのだから我ながら凄いと思う。

 このままいけば、本だけでこの部屋が埋め尽くされるのかもしれない。

 ……まぁ、そんなことなれば母さんが捨ててしまうだろうけど。

 

 とにかく本を片そうと、どんどん取り出していく。

 タイトルを確認して、必要かどうかを判断しては棚に移す作業が行われていた。

 大抵必要なものに分類される自分の甘さに苦笑いをしてしまいそうだ。

 作業が手馴れてきて――――半分くらい作業が完了した頃だろうか。

 

「ん……なんだろう? これ」

 

 1つの本によって作業の手が止まった。

 紫色の古びた本。所々色あせていて、しおりのための紐が付いている。

 どうやら日記帳か何かのようだ。

 

「こんなの読んだ覚えないなぁ」

 

 どこで読んだのか、いつ読んだのか。全く覚えがなかった。とにかく内容を読んでみたら分かるかもしれない。

 試しにペラペラとページをめくってみる。

 

「あれ? 何も書いてない、全部白紙――――あ、最後のページに何か書いてある」

 

『有効に使え。これは運命に抗う本なり』

 

「運命に抗う……どういう意味だろ? 訳が分らない」

 

 言葉の意味はなんとなしに理解できるけど、それがどういった現象を生み出すのかは全く理解できないのだ。

 頭に浮かぶのは疑問符しかなかった。

 

「孝介、まだ荷物整理してるのかぁ? とりあえず夕飯にするぞ」

 

 どうやらこれにかまっていたら結構時間を使ってしまっていた。

 

「分かった。すぐ行くよ」

 

 怪しげな本を段ボールに戻して1階へ向かう。何の本かはまた後で調べよう。

 口笛を吹きながら、今日の晩ご飯はカレーだと、スパイスの効いた匂いから心を躍らせていた。

 

 

 

「さて、どうしようか……」

 

 ご飯を食べたのち、また怪しげな本と向き合ったのはいいけど。さてさて、この本をどう対処するべきなのか……。

 最後に書かれた内容を推理し、唸った。

 

「もしかしたら書く事で何か起こるのかな?」

 

 さっそく今日の出来事を書いてみる。雛見沢に引っ越した事、学校での出来事、カレーがいつも通り美味しかった事……。書き始めると中々終わらない。

 終えたときには、ニページ位白紙を黒い文字で埋めていた。

 

「よし! 何か来い!」

 

 ペンを置き、期待の眼差しで何か変化はないかと本を凝視する。

 シーン……

 何も変化は起きない。静かにしているためか、空しさは倍増である。

 それでもとしばらく粘ったが結局何か起こるという事は無かった。

 

「やっぱりそうだよね……。ははは、何期待してんだろ、僕」

 

 本をそのままにして仰向けに倒れると、目の上に時計が掛けられているのを見つけた。

 その時計を見るともう日付が変わっていることに気づいてしまう。

 

「あ、やばい! もう寝ないと」

 

 何せ明日からは学校だ。初っ端から遅刻なんて恥ずかしい事このうえない。慌てて布団を敷いて中に篭る。

 

「はぁ……結局何だったんだろ、あの本…」

 

 すっきりしていないためかあまり眠くはない。それでも寝ないといけないと感じていた僕はギュッと目を瞑って夢の世界に入ろうとした。

 




まぁ、一日一回更新を目指していきますかなぁ。
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