僕は今までの事を包み隠さず話した。自分が思ったこと、感じたこと、疑問に思ったことについて……全てだ。何も分からない自分の今出せるだけの情報を相手に渡す。
それはとても時間がかかることで。いつの間にか、味噌汁からは熱を失ってしまっていた。
それでも、2人とも何も言わない。ただ黙って僕の話を聞いてくれた。
「――――だから僕は悩んでる。これからのこと」
ここで終わりということを示すため、僕は伏していた目をそっと閉じる。
「そう……」
母さんはそう言って僕の頭を撫でてきた。
「雛見沢にそんな事件があったなんてな……」
父さんは少し怪訝な顔をしていた。
それはそうだ。こんな村に物騒な事件があれば、嫌な感情的になるのも当然。
そう思っていたが、
「で、お前はどうして悩んでいるんだ?」
話を聞いてなかったのか、そう思わせる質問に額のしわを寄せざるを得ない。
「だから、僕は大石さんの話が本当なら何で信頼してくれないのかって……!」
「……つまりお前は、大石さんの話を聞いて竜宮さん達を信用出来くなったって訳か」
「そこまでじゃ……ううん。やっぱりそう思っているんだと思う」
それが正しい気持ちなのだろう。嘘に嘘を重ねて見えない真実なら、そこを明かしておくことが必要だ。今は本音を言うべき場所であるはずなのだから。
「お前は竜宮さん達の裏の真実、いや真実ではないか。とりあえずそういった暗い過去、今を知ってしまった。そして何故、友達なのに教えてくれなかったのかも疑問に思った」
だから、と父さんはここで一息入れる。
「今まで感じていた気持ちに影が差してしまった、そう言いたいのか」
「……うん」
「孝介、お前は園崎さん達に聞いたのか? いや、聞くのか。さっきの疑問を?」
「そ、そんなの……」
聞ける訳がない。そんなの直接聞いたら嫌われる事は間違いないのだ。勝手に探りを入れているということは園崎さんたちから見れば、私たちを疑っているんじゃないか、ということ。
それは相手を信用していないと同じ。
だからこそ、家族である2人に聞いたって言うのに。
「父さんはな。お互いがお互いの意見を言えないのは、真の友達じゃない。そう思うぞ」
「確かにそうかもしれないけど。父さんは分からない? そんな事言えば、せっかく出来た関係が崩れるかもしれない」
「孝介。お前こそ園崎さん達を信用していないのか?」
「えっ?」
「お前はさっきから嫌われることを恐れているよな? それは何でだ?」
「そ、そんなの……」
友達がいなくなるのが、怖いからに決まっている。
「話を変えてみようか。もしお前が園崎さんたちにこう言われてみよう。『お前は何か怪しいしてないか』ってな。さて、どうする?」
「そ、そんな根も葉も無い事実、否定するに決まっている」
「それでいざこざが起きたとしよう。お前は園崎さん達を嫌いになるか?」
「そ、それは……」
僕なら…………嫌いになれない。
どうしても、いや、きっと分かり合えると信じてしまうだろう。それが僕の望むことなのだから。
そんな気持ちを教えてくれたのは他でもない。ダム建設の帰りで笑って見せた前原君の言葉だった。
「それは相手も同じだと思うぞ」
「え……?」
「話を聞けば優しい子たちだよ。よく分かる。そんな子たちが、お前をたった1つの誤解だけで嫌いになるわけがない」
「そう、かな?」
「仲間なら信じろ。ぶつけてみろ。それが正しいなら、きっと相手にも伝わるはずさ」
父さんはそう言うが、僕の中にいるもやもやとした部分は未だその解決策に納得がいかない。その言葉を口にせずにはいられなかった。
「で、でも。僕と違って園崎さん達はそう思わないかもしれないし……」
「はは、だからお前は園崎さんたちを信じていないと言ってるんだよ」
「……うぅ」
そう言われてしまえば、確かにそうだ。結局、自分も信じ切れていないのかもしれない。
結論を叩きつけられて何も言えない自分に、母さんが助言してくれる。
「友達を信じるために、孝介は苦悩している優しさを持っている。でも、それだけではだめ。一歩踏み出す勇気が必要なの」
その時、遠くで玄関前の廊下の受話器が騒ぎ立て始めた。
この流れを察した父さんが無言でこの場から離れる。
母さんも父さんが離れるのを待ってから、話を進めた。
「最近も……私にこういった相談をしたわね?」
あの古手さんに対する話なのだろう。
「友達との話ばかり。孝介、なんでそんな心配するの」
「そ、それは――――」
――――トモダチ……そんなの……もう――――
激しい頭痛と共に、何かが頭の中に響いた。何かが入り込みそうで、それを拒否するかのように警鐘は自分の頭にガンガン響く。
そして、それと共に冷水を浴びせられたような感覚。何か自分の胸に突き刺さるような鋭さと痛みもある。全てが唐突に自分の中で処理しきれず、たまらず口元を抑える。そうしないと喚き散らしそうだからだ。
信じられなくなっている自分に嫌悪感でも抱いていて、それがこのような感覚に陥れてしまうのか。
一応、病は気から、という言葉もあるけど、これはいくらなんでも急すぎる。
「孝介?」
「あぁ……ごめん。何でもない」
「顔、真っ青よ……本当に平気?」
「大丈夫だから……気にしないで」
一瞬だけの感覚は消えるのもまた、一瞬。
余韻を残すような鈍い感覚が残るが、先ほどよりも辛くはない。
大丈夫だと示すために、僕は笑って見せた。
「孝介……あなた……」
その時、少しわざとらしく踏み鳴らす足音が聞こえた。
電話から帰ってきた父さんがこっちを見ている。
何か僕に言いたい、そんな目をしていた。
「孝介、お前に電話だ」
「え……?」
まさか大石さんからなのか。こんな夜遅くにも関わらず、何を――――
「竜宮さんだそうだ。お前に話があるそうだ」
「あ……うん」
竜宮さんが、この時間になんて。
どう反応していいか分からないまま、とにかく出ないと、そういった責任感から立ち上がる。
「父さん達はここで待ってるからな」
その言葉は、嬉しいのか悲しいのか。いまいち自分の中で整理出来ないものだった。
あとがきを書き忘れていたw
この一週間は部活での公演が控えているので、若干更新に支障が出るかもしれないです(;一_一)
早めの更新と言いながらの、この言い訳。本当に申し訳ありません……。