ひぐらしのなく頃に 決 【訳探し編】   作:二流侍

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■訳探し編【Ⅴ-Ⅷ】

 あれからどれほどの時間が経っていたのだろうか。

 時計を見れば、時間にして15分ほど経っていた。短針はすでに9時を通過しており、良い子は寝る時間である。

 夜の静けさをその場で感じるためにも目を閉じた。

 そこに映るのはみんなが笑って手の振る姿。竜宮さんに、園崎さんに北条さんに……古手さん。みんな部活の時のように、無邪気で楽しそうで、嬉しそうに笑っている。そんないつも見せてくれる姿が映っていた。

 だけど……1人足りない。今笑っているのはこのメンバーだけ。僕に友達を信じる大切さを教えてくれたその人はいない。目に映らない。

 

『それじゃあ、レナのお宝を取った場所で待ち合わせね』

 

 僕の答えは2つ返事しかなかった。目的はたった1つ。

 みんなであの楽しい日々に戻すこと。

 

「……よし!」

 

 小さな気合い。その小さな呟きさえ、今は自分の中で自信に繋がる。

 口約束を果たすためにも、僕は服を着替るために一旦食卓に向かった。

 

「どうだった――――って言わなくても、よく分かる顔をしているな」

 

 父さんはルームウェアから外出用の黒いジャケットの服装に着替えており、入ってきたこちらに向かって笑いかけてきた。

 

「とりあえず竜宮さんたちに会いに行くことにしたよ」

「そうか。お前が信じた通りに動いていけばいい」

「……その……ありがとぅ……」

 

 面と向かって感謝するのは何だかむず痒い。

 思わずこめかみを掻いて誤魔化しながら、正直な気持ちだけは伝えようと思った。

 父さんはその言葉を受けて、目をぱちくりとさせて一言。

 

「何だ? いきなり俺に惚れたか?」

「んなわけないでしょうが」

 

 母さんの脳天チョップを受けた父さんは「うにゃっ!」と情けない声を上げている。

 こんなコントを見せられては、思わず笑ってしまう。

 

「もう……あなたはいつもどこか抜けてるのよね……」

 

 呆れたようにため息を付いたかと思えば、母さんも少し微笑ましげになる。

 仕方のない奴だ、そんな文字を張り付けたような顔を見せてくれた。

 

「孝介。もう暗いから気を付けなさいよ」

「うん。分かってる」

「その点は問題ない。俺が車で送っていくからな」

 

 車の鍵を取り出して、その鍵を……同時に歯も見せてくれた。

 なるほど、だから着替えていたということか。

 

「珍しい。あなたがそんな事をしてくれるなんて」

「息子のピンチに駆けつけるのが親の役目だからな」

「……とか言うけど、小学校の時なんて全く助けようとしなかったじゃない」

「ここに来るまではな。ここは仕事場が近いから時間に余裕が生まれるんだよ」

 

 ここから仕事場に近いって、昔はどれくらい遠かったと言いたい……。

 2人のやり取りを聞きながら、僕は服を着替えていた。

 そのまま昼の時の恰好で行っても寒さで身体を震わすという事態は防げるだろう。

 お気に入りのチェック柄の水色のパーカーを羽織る。

 

「そういえば今日だったよな? お前の初仕事」

「そうね。少し不安だったけど、入江先生とか親切な人たちで安心していたわ」

「え、母さんまた仕事を始めたの?」

 

 母さんはここに移る以前は病院関係で働いていた。受付とか事務的なことだったりと雑用を受け持つ仕事。そんな内容は初め聞いたときに言っていたけど、実際に働いている姿を僕は見たことがない。

 そもそもどこの仕事についたのだろうか。そう尋ねると間を空けることなく答えてくれた。

 

「入江診療所よ。この村で唯一の医療関係だったらしいし、中々の優遇のされ方だったわ。懇切丁寧に鍵のかけ方まで教えてもらえたし」

「そこまでしてもらわないといけないの……?」

「まぁ、昔みたいに多忙な日々にならないなら俺はそれでいいぞ」

 

 そう言われて過去を思い返してみる。確かに母さんも父さんも忙しそうに動き回っていたのが、自分の印象に強く残っていた。

 

「ふふ、忙しくて困ったときはあなたにも手伝ってもらわないと」

「任せろ。医療関係はさっぱりだが何とかしてやるさ」

「家事の話だから……」

「あ、そっちか」

 

 そっちも何も、分岐していた内容だったのだろうか。いやそもそも、勝手に職場に入ろうとしている時点でおかしいと気付くべきである。

 悩みを聞いてくれた父さんはどこへ行ってしまったのか。こっちが通常運転であることが悲しいものだ。

 そんな事を想いながら、準備は整ったことを伝えるためにも呼びかけた。

 

「じゃあ、そろそろ行こうと思う」

「そうか。なら先にエンジンを吹かしておこうかな」

「あ、うん」

「よーし! 先行ってるからなー」

 

 やること決めたら即実行。父さんは玄関先に置いてある車に向かっていった。

 嵐のように色々と騒いだかと思えば、いなくなってしまえば静けさしかなくなる。

 おとなしい2人が残されたあと、ぽつりと母さんが呟いていた。

 

「そんなエンジン吹かしても早い車じゃないのに……」

「はは……まぁ、気持ちの問題なんでしょ」

「嬉しそうに行って。なんだかんだで一番喜んでいるのね」

「そうなの?」

「……あの人も人の関わりを大切にする人だから。色々と不安なのよ」

 

 母親は食卓に置かれた食器を片づけ始めながら、そう呟いていた。

 

「そうなんだ。変に気苦労しそうな性格だね……」

「あなたも大概よ。親は子に似る良い例ね」

「う……」

 

 父さんに似ていると言われてしまうと、あまり良い気がしない。

 あそこまでそこまで抜けているようには思えないんだけどなー……。

 心外に思う内容について考えていると、食器を洗っている母さんが再び何かを呟いているのを耳にした。

 

「だから間違えたんだけど……」

「ん?」

「ちょっとした昔話、ほら行きなさい。友達を待たせているんでしょう?」

「あ、もうこんな時間」

 

 と言っても、あれから10分もたっていないのだが。まぁ善は急げ、である。

 待たせる訳にはいかない。竜宮さんはきっとダム建設跡地で待っている。

 そこにはきっと園崎さんもいることだろう。北条さんも古手さんも。

 ……みんなで話し合うために、僕は玄関口の扉に手を掛ける。

 

「じゃあ、行ってきます」

「ええ……友達のために頑張りなさい」

「うん」

 

 そのエールだけを受け取って、僕は玄関の外に出た。ムッとする熱気を感じるが、それも気にならないほど、今の自分は急ぎたいという気持ちでいっぱいだった。

 目の前には既にエンジンを吹かしたままの車、そして扉に寄りかかってこちらを待ちわびていただろう人がこちらに手招きをしてくる。

 

「おぉ、来た来た。早く乗れ」

 

 言われなくても分かっている。助手席に乗り込んで、シートベルトを付けた。

 父さんも慣れた手つきでシートベルトを付けて、ハンドルを握った。

 準備万端、あとは出発するだけだ。

 

「……あれ」

「うーん」

「…………どうしたの?」

「ん、あーいやー」

 

 未だアクセルを踏み込まない父さんは今思っていることを口にしていた。

 

「お前ってどこに行きたいんだっけ?」

「おい」

 

 そんなツッコミをせずにはいられない。




な、何か閲覧数やら、お気に入り登録数が急に増えている……!?

原因はいまいち把握してないのですが、お気に入りが70を超えるなんて予想もしてなかったぜい。もちろん良い意味で喜んでいます。
本当にありがたい。評価もしてくださった方もありがとうございます^^

作品としてはまだまだ未熟な部分があるかもしれませんが、これからも自分が納得のいけるような作品を目指して頑張りたいと思います!
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