竜宮さんたちはどこにいるんだろう?
普段より少しペースを上げて、歩きつつそう思っていた。
多分竜宮さんだけではない。園崎さんたちもそこに居合わせている。
だけど、もし園崎さん達がここにいるとして、一体どこで話し合うのだろうか。
こんな辺ぴな場所なので、立って話でもするのだろうか。時間かかりそうな話だとは思うんだけど……。
そもそも前原君に何が起こったのか分かっていない。あの時の自分は聞くこともせずに想いをぶつけていたが、竜宮さんたちは何を感じてそう思ったのか。
これから出会って色々聞かなければならないことがありそうだ。
「いや、その前に謝らないといけないか……」
その時、足元に雑誌が捨てられていたのを見つける。前見たときと違う雑誌。けれども内容については同じ、バラバラ雑人事件の内容について書かれている。
これが無かったら、今の僕はいなかったのかもしれない。良い意味でも、悪い意味でも。大きな変化をもたらしていた。
今ならもうこの雑誌を蹴っ飛ばしてでも無視できる。そんなことを想いながら、雑誌の上を跨いだ。
「孝介くぅ~ん!!」
ケンタくん人形が置かれた場所、そこに彼女はちゃんといた、
こちらからでは周りに同化するかのように暗く、はっきりとは見えていないのだが、おそらく竜宮さんで間違いないだろう。
こちらに上がってくる人影をしっかりと確認したのち、先にあいさつを済ませておく。
「こんばんは。竜宮さん」
「良かった、来てくれて!」
彼女はいつものように、白を基調とした制服を身に纏っている。お気に入りの帽子を手で弄りながら、彼女の口調は軽やかだった。
「えっと……さっきはごめん。なんかこう変な言い方とかしちゃってさ」
「ううん! 確かに気にしてないといえば、嘘になるかもだけど。それでも信じてくれたことが嬉しいから」
ニッコリと笑ってきた。その笑顔に陰りは無い。
本当に彼女には救われっぱなしである。頭が上がらない。
「で、話って何? 前原君の話だったと思うんだけど」
「うん。でもここじゃなくて、レナの秘密基地で話したいな」
「え? 秘密基地?」
「そうだよ。私のお気に入りの場所なんだ!」
「そ、そんな場所までこんなところにあったんだ……」
ゴミ山と侮っていたのに、色々と起きるなぁ。
「じゃあ付いてきて!」
言ったら簡単な返事と共に竜宮さんは下り始めた。
黙ってついていくしかない。そう思って足を進めたはいいが、前見たケンタ君人形より奥の場所へ、もう右も左もゴミしか見えないような奥そこまで進み続けた。
だがそれに伴い、未知の場所に連れていかれる感覚に戸惑いを感じていた。
本当にこんな場所に秘密基地なんて存在するのだろうか。そう思えるほどに。
ゴミ山が壁となり奥の細道のような狭い場所を歩いていたが、比較的広い場所が見えてくるのが分かる。
竜宮さんは指で「あそこだよ」と指示しながら、ゴミで出来た広場のような場所までたどり着いた。
そしてそこにいたのは他でもない人物が待っていてくれたようで、
「お、孝ちゃ~ん!」
何かの目印のように明るい一本の光の筋が見えた。誰がいるなんて声を聞いただけで判断が出来る。
急ぐようにしてそこを目指すと、園崎さんが懐中電灯を手に持って待機していた。
「魅ぃちゃん、お待たせ!」
「レナぁ。孝ちゃんはこの道知らないんだから明かりを照らしてあげないと」
「あ、そうだったね」
「まぁ別に、少し慣れたし……」
「ほっほ~! レナと多少の気まずさがあるかと思ってたけど、そんな事はないようだね」
「はう~! 私たちはいつでも仲良しだよ~!」
彼女は彼女なりに僕らを心配してくれていたのだろう。しかし、この言い方をしているあたり、竜宮さんから具体的な内容は聞いていない様子。
わざわざ隠してくれるあたり、彼女の優しさを感じてしまう。
「とにかく話は中でしようか。ここで話してもしょうがないからね」
「そうだね。沙都子ちゃんたちは?」
「中で待っているよ」
前2人が会話をしている中、僕は2人の向かう先を見つめていた。
そこに見えるのは、白いワゴン車。そのワゴン車は比較的汚れが少ないように見える。
思うと周りにはあまりゴミが無い。閑散としているとまでは言わないが、場所としてはゴミに埋もれず、ちゃんとそこに存在しているようなイメージだった。
なるほど、ここが秘密基地って事か。確かに中で話すにはうってつけの場所である。
ワゴン車の窓には別に誰かがのぞくような場所でもないだろうはずなのに、カーテンが施されていた。そしてその隙間から漏れるように少しだけ明かりが見える。
「じゃあ孝介君、入って」
「入るって……どこに?」
「そりゃあトランクから」
「え、そんな当たり前な感じで言うの?」
「ほらほら、入った入った」
「う、うん……」
言われた通り、トランクを開ける。
開けている辺り、どうやら後頭部座席を倒すか退かしたのだろう。かなり広いスペースは確保されている。
そしてそこには2人の先客が待ちわびていた。2人は運転席と助手席の座席に寄りかかって座っていて、第一声から北条さんの激が飛ぶ。
「遅いですわ!」
「北条さんに古手さん。もう来てたんだ」
「来てたんだ、ではないですわ。全く……レディーを待たせるのはダメでしてよ」
「そんな勝手な……」
約束していたならともかく、突発的にされた以上、こっちも急いできたことを考慮して欲しい。
「ま、よく来てくださいましたわね」
「……ようやく来やがりましたです、みぃ~」
「やっぱり2人も来てたんだね」
「なんですか? それは私たちがまるでいなくてもいいように聞こえますけど?」
「え? いや、そうじゃなくて!」
「孝ちゃ~ん。まさか2人が仲間なんじゃないなんて言いたいのかい?」
「いや、そう言いたいんじゃないよ!」
変な誤解をされたくないからこそ、この言葉だけは強い意思を持って反論しておいた。
「……じゃあなんでですか?」
「まぁ、この話に2人を混ぜてもいいのかなって……」
一応断っておくけど、この2人はまだ小学生の5,6年だ。よろしくない友達関係の話はあまり聞かせるものではないと思う。しかも今回は深い事情を知らないといけないだろうし、それも前原君といった仲間の話になってしまえば動揺と不安感じてしまう。そんな話を混ぜてもいいのか、そこを僕は気にしていたのだ。
「とにかく、中で話をしようか」
「あ、ごめん」
催促されるがままに、僕らも中へ入った。みんなが円になるように座る中、第一声を切り出したのは他でもない、この部の部長だった。
「ごめん孝ちゃん。あたしが呼んだんだよ」
「なんで……」
「この2人にも相談にのって欲しかったからね」
「呼ばれたのか分からないまま来ましたので、出来れば詳細を教えてほしいですわ」
北条さんの愚痴を聞くところ、流石に北条さん達も詳細は知らないようだ。
竜宮さんと園崎さんはお互いに顔を合わせると、園崎さんが話を進め始めた。
「話したよね? 今日集まったのは他でもない、圭ちゃんの話だって」
「そうだね。で、何か問題があったからこの状況があるんだよね?」
「実際は孝介くんの問題もあったんだけどね」
「うぅ、面目ない……」
反論が出来ずじまいな僕に、園崎さんは先を話すことで自分の気を紛らわせてくれた。
「今日圭ちゃん休みだったからさ、おはぎ作ったんだ」
「……それは帰りに聞いたのです」
「辛子を混ぜた部活特製のおはぎを作ると言ってましたわね……」
「もはやおはぎと呼ぶのか怪しいけど」
「あっはっはっは……でね。あたし達はおはぎを作って、家に向かった」
「何か向かう途中にありまして?」
「ううん。それは別になかったよ。……ただ」
「ただ、何?」
「……」
そこで園崎さんはぐっと口を閉ざしてしまった。腕を組み、下唇を噛みしめている。そして目は、少し悲しそうに伏せていた。まるでこんな状況を信じたくない、とで言いたげである。
僕たちがそのあとを尋ねる事が出来ない状況になる中、園崎さんの心情を一番理解してくれているであろう竜宮さんがその先を続けてくれた。
「圭一君、私達を家に入れてくれなかったんだ」
遅くなってしまい、すみませんでした。
いや、何か閲覧数がごっつ増えてびびったりしてましたけど、無事に落ち着きを見せてくれて……。
このままゆるゆると書いていけたらいいなぁ。と思っています!