ひぐらしのなく頃に 決 【訳探し編】   作:二流侍

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■訳探し編【Ⅵ-Ⅸ】

「終わりよ。何もかも、全て」

「そ、そんな事は……!」

「あなたは圭一を突き放した。仲間であるはずなのに。いいえ。仲間で”あったはずなのに”。あなたが最後に圭一に言った言葉。それが今回の終わりを告げる一言だったのよ」

「そんな……僕はただ!」

 

 前原君を救いたかっただけ。だからあの計画を立てて、そして……失敗したんだ。だけど、その記憶が自分にはない。前原君に対し、僕は一体何をしたというのか。それが心の重圧となり、息苦しささえ感じてしまう。

 結局古手さんに言われるまま、言葉は出ることができない。

 

「滑稽よね。救うつもりが、逆に追い詰める形となり、それを自覚して、尚も助かる見込みがあると思っているんだって。ははは! 記憶を失うって……本当に楽よね」

「そんな……」

「ま、あなたに期待した私も十分滑稽だったという事かしら」

「な、何を言っているの?」

 

 僕にはよくわからない。古手さんの言葉は今まで聞いていたどんな言葉よりも、辛辣で冷酷さを秘めているものだった。何もかも見透かされたような、彼女にみられるとそんな気分にさえさせられてしまう。

 彼女に何を知っているんだ。そんな疑念が自分の中で巡っているのを感じていた。

 ……出会ったときの古手さんだった。

 子供とは思えない口調に、威圧感。僕がいかに子供かを思い知らされそうになる瞬間。彼女の気持ち、彼女の本当の部分が見えたような気がするこの時、僕は何を言えばよかったのだろう。

 頼りない思いは、口を閉ざす重石となっていた。

 

「ねぇ、前にも聞いたけど。あなたは何故ここにいるの?」

「……え……?」

 

 僕のいる…………訳?

 それは前に菜園の場所で聞かれた内容に酷似はしている。

 しかし、今聞かされると驚くほど意味が変わって聞こえた。

 

「あなたがいなければ、私たちは少なくても綿流しまでは楽しめたはずだった。今も圭一がいて、魅音もいた。楽しい毎日の一日のはずだった。だけどあなたがいたおかげで、このザマよ」

 

 何を言っているのか理解できない。どうして自分がいなければなんていうんだろう。僕は今ここにいる。ここにいるのが真実で、現実だ。それ以上もそれ以外もない。だから古手さんの言葉はまるで根拠となる要素が存在しない。

 それなのに……なんで彼女はここまで自信を持って言えるのだろう。

 彼女はその様子が当たり前だという感じで、フッと笑った。

 

「結局、あなたもただの人だったのね。何かの前兆か、もしくはこの出口なき迷宮を助ける人物と思ったけど。あなたも、たまたま来た、哀れな住人の一人」

 

 彼女は花瓶に生けた花びらを撫でながら、僕を軽蔑する目で見てくる。

 

「何故あなたがここに来たのかは理由がわからないけど、滅茶苦茶にしただけなんてはた迷惑な存在よね」

「な、何言って――――」

「結局のところ、運命なんて変わることはなかったのよ。ただのイレギュラー」

「イレギュラー……」

「……ま、こういう事もあったという事で、少しは楽しめたかしら」

 

 僕の反応なんて気にかけない。言うだけ言った後は廊下に出ていこうとした。

 何か言わないといけない。そんな焦燥が言葉になって、彼女を止めようとしていた。

 

「ま、待ってよ!」

「……」

 

 古手さんはドアに手をかけて動きを止める。こちらに背を向けたまま、固まる。

 

「本当に、本当に終わったっていうの?」

「……」

「まだ分からないじゃないか! だって、これじゃあ……前原君は一体どうなっちゃうんだよ……!」

 

 前原君の安否が心配だった。このままでは彼はきっと警察に捕まってしまう。そうなれば本当にみんなとはお別れだ。そうなっても、古手さんはいいのだろうか。

 怒るべきなのかもしれない。それは仲間を見捨てようとする古手さんにも、仲間を信じきれなかった前原君にも。彼らは結局、仲間をなんだと思っているのか、と。

 そう言いたかった、そういうべきだった。

 

「大丈夫よ、そんなこと」

「何が……何が分かるっていうんだよ」

「どうせ、またみんな会えるし」

「え……?」

「まぁ、あなたはどうなのか知らないけど」

 

 彼女は面白おかしそうに笑いながら、こちらに向き直ってきた。

 その姿はもう、いつも見せてくれる蜃気楼の中の彼女だった。

 

「……みぃ、安心するのですよ、にぱ~☆」

「そ、そんなの……どうして……」

「……これからはウキウキのわくわくな祭りなのですよ」

「祭りなんて言ってる場合じゃ」

「……みぃ? 篠原が好きな浴衣姿も見れますよ?」

「そうじゃなくて」

「…………篠原。なら何を言えば信じてもらえるのですか?」

「だ、だからそれは」

「……仲間。仲間ならなんでも信じてほしいのですよ」

 

 違う、仲間はそんなときに使う言葉じゃない。仲間っていうのは……もっと。

 仲間は何か。そんなこと……。

 

「……そうなのです。篠原にあげた花はムスカリって言うのですよ」

「ムスカリ…………」

 

 花に目をやると、花は光を受けてほのかに青色を誇張していた。

 1本しかない花だった。バラといったものなら、想いを込めた1本のように見えるのに、このムスカリという花は物悲しく見える。僕のはかなさを表すためなのだろうか。

 その間に彼女は勢いよくドアを開け放ち、廊下へと一歩踏み出す。

 

「……篠原は花言葉を知っていますか?」

「花……言葉……?」

「……そうなのです。想いを込めた花に言葉を乗せるというやつなのです」

「そ、それが何を……」

「…………その花にも花言葉があるのですよ?」

 

 言葉の意味を聞くのは扉が閉まる、彼女が完全に僕の視界から消える瞬間だった。

 

「失望」

 

 静かな中に、音を立てる扉はすべてを閉ざしたようにも見えた。

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