ひぐらしのなく頃に 決 【訳探し編】   作:二流侍

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Episode 『終演』
■訳探し編【Ⅶ-Ⅰ】


「孝介さぁん――――!」

「あ、いた。ごめんごめん!」

「もう頭の方は大丈夫かな、かな?」

「あはは……まだ完治じゃないけど、激しい運動しなければいいって」

「じゃあ部活は出来ますわね!」

「うん、どうしてそうなるのか分からないな」

「はぅ……沙都子ちゃん。無理させたら駄目だよう」

 

 部活として盛り上がらなければ。とりあえずそれだけは釘を刺しておかないといつでも行いそうだからだ。

 思わず、頭に触れる。ガーゼにグルグル巻きに固められた頭が嫌悪感さえしてしまう。それは今の部活メンバーに気を使わせてしまいそうで。

 今日は綿流しの日なのに。

 雛見沢において唯一といっていいほどのビックイベント。奥が見えないような長い道に並べられた無数の屋台。灯篭は夕方の暗闇を昼間のように照らしている。そして、多くの活気があちこちで言葉かけとなって明るいざわめきが生まれていた。

 確かにこの村の唯一のイベントとやらを見れた気がした。今日の祭りのために多くの人たちが総動員で準備していたというのだから、その気合いは並大抵のものではないだろう。周りを見渡せば雛見沢以外にも、多くの人達が参列しているし、今日は何も考えずに思いっきり楽しみたい。

 人も映えるような賑やか景色に心を驚かせながら、自分たちもその景色に飛び込む。

 

「本当に凄い人数だね」

「もちろんですわ。なんたって隣町や県外から、この日のために来てくださるんですから」

「へぇ、そりゃあ凄いなぁ」

「屋台も沢山ありますわよ」

「本当だ。射的もあるし、くじ引きも」

 

 あれって本当に当たるものなのかな。いつもやるけど、当たることなんて本当にないし。

 やっぱり祭りは食べてなんぼのものがある。もし、ベビーカステラなんてあれば買おうかな。

 

「かき氷がありますわね。いつもなら早食いを行いますのよ」

「そうなの?」

「そうですわ。もちろん罰ゲームありですから」

「はぅ……私は苦手なんだよなぁ」

「はは、前回の真剣衰弱で理解してるよ。そう言って相手を油断させるんでしょ?」

「そ、そんなことないよ~」

「今回は騙されないからね、ねぇみんな?」

 

 同意を求めようと後ろを振り返る。

 

「……あ」

 

 そこには誰もいない。今いるのは北条さん、竜宮さん、そして僕の3人だけだ。

 

「残念ですわ……。本当なら、みなさんで部活をしているはずですのに」

「ごめん。僕……そういう意味じゃ」

「うん。孝介君が故意じゃない事は分かってるよ」

 

 最後まで前原君の行方は分からなかった。隣町まで行ったという人もいれば、県外に出て行ったと言った人もいる。それらの言葉全て、みんな確証はない。

 もちろん前原君は祭に訪れていない。そして園崎さんは入院中。

 今なお心と頭の傷が癒せていない状態、祭に参加させるわけにはいかなかった。

 古手さんは今日の祭に来てはいる。しかし今は神事のために巫女服に着替えていて、共に行動出来ない。

 結局僕たち3人だけがこうして集まり、祭を楽しんでいる状態が続くのだった。

 

「来年はみんなで祭、行けるといいね」

「きっと出来ますわ。皆さんと一緒に、この綿流しを……」

「うん」

「さ、私達だけでもこの祭を盛り上げますわよ!」

 

 その後、みんなで色々やった。綿あめ早食い競争をしたり、射的ゲームで盛り上がったりと、小さな部活として僕達は楽しんだ。罰ゲームは流石に自重をしてくれて、その気持ち自体は凄く嬉しいんだけど何か物足りないものは拭えない。

 本当に前原君は損してる、次会ったら絶対に後悔させてやる。そんな気持ちが強くなって、それを今は抑えようと言い聞かせている自分がいた。

 少ない時間を楽しもうとする気持ちで埋め尽くしていく。夕日が山に隠れ、月が祭りの様子を見始めた。その時のこと。

 僕たちが金魚すくいを終え、次は何をするか話をしていた時だった。

 

「おや? レナちゃん達じゃないか」

 

 後ろを振り向く。目の前にいたのはカメラを持ち歩き、前回ダム建設であったそのままの姿を見せる富竹さんだった。隣には病院の時に見たナースさんの鷹野さんもいる。

 金色の長髪は病院の中でも目立っていて、かなり特徴的、妖艶な感じがする人だと、僕の頭の中では把握していた。

 

「富竹さんと、鷹野さん」

「あら、覚えていてくれたの? 嬉しいわぁ」

 

 こんな特徴的な人を忘れる程、自分の記憶は薄れていない。

 

「何でこんな所にいるんですか?」

「あら。私たちがただ雛見沢の祭りに来るのは駄目なのかしら?」

「別にそんな意味で言ったつもりではなかったんです……すいません」

 

 僕の謝罪にたいしても、ふふふと返すだけ。まぁきっと許してはくれたのだろう。

 

「僕たちは毎年ここで写真を撮ったりしているんだ」

「そうなんですか?」

「ところで前原君や園崎さん達の姿が見えないようだけど」

「えっと、それは……」

「あ、そうだった。僕とした事が……すまないね」

 

 お茶を濁そうとしている僕の空気を察してくれたようだ。

 

「ふふふ。早いオヤシロ様の祟りに合ったのかしらねぇ」

 

 面白ろ半分で言った鷹野さんを叱る富竹さん。

 だがそんな彼をよそに鷹野さんは僕の顔に迫ってきた。

 

「ねぇ? 今回のオヤシロ様の祟り。あると思う?」

「あるとは思えません」

 

 園崎さんがそう言ってたんだから。オヤシロ様の祟りなんて存在しない。勝手に出来た偶然のものでしかないのだ。

 だからきっぱりと言った。なのにもかかわらず、鷹野さんは余裕の姿勢を崩すことはない。

 

「ふふふ。そうだといいわねぇ」

「……どういう意味ですか?」

「前原君が消えた今、あと一人、いなくならないと祟りとしては成り立たない。可能性は高いって事よ」

「圭一君はいなくなってなんかいません」

 

 反論したのは竜宮さんだった。キッと見つめる目は如何なる意見にも譲る気のない眼光だ。普通の人なら、悪い事をしてしまったと反省してしまうことだろう。それなのに、なお不気味に笑う鷹野さんはやはり何か一般的なそれを逸脱しているように見えた。それが良いか悪いかはあえて言うまい。

 一気に重苦しくなる空気はぽっかりと空いた空間のように、周りに浮いた存在となっていた。

 

「……ははは。どうだい? 今日の記念に」

 

 場を誤魔化すために気を利かせてくれたのだろう。正直こんな時に笑える訳がないのだが、仕方ない。1枚撮ってもらうと、そろそろ時間ではないかと竜宮さんが言った。

 古手さんが神事のために舞台に立つ時間なのだ。これを逃しては祭りの5割の楽しみを失ってしまう。

 時間的に走る必要はないだろうが、急がなければ最前列が取れるか怪しい。

 

「じゃあ僕たちはそろそろ行きます」

「お邪魔したかな? 次は是非みんなの写真を撮りたいものだね」

「そうですね。ありがとうございました」

「ふふふ。大変だろうけど頑張ってね」

「…………はい。ありがとうございます」

 

 富竹さん達は僕たちに手を振りながら、僕たちとは逆の道を歩んでいった。

 残ってしまうのは鷹野さんたちが残したこの重苦しい空気のみ。

 

「鷹野さんっていつもあんな感じなの?」

 

 正直鷹野さんの発言に、僕としては不満しか残っていない。先ほどの鷹野さんは嫌味たっぷりに聞こえてしまって。あの人はそういう人と割り切ればいいのだけれど、どうしても聞かずにはいられない。

 ……というよりこの空気をなんとかしようと思ってのこの言葉だった。

 

「確かにちょっと掴みどころのない人ですわね」

「僕、あの人苦手だなぁ……」

 

 実際見た限りではそんなに人の辛いところとか、ずかずか言いそうな感じがしないんだけどなぁ。

 と、それを言っちゃうと鷹野さんに失礼だから黙っておこう。

 

「それよりも孝介君。古手さんの演武が始まっちゃうよ!」

「あ、そうだね! 急ごう」

 

 気持ちを切り替える事にして、僕たちは古手さんを見るために階段を上り始めた。

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