ポケットモンスター虹 オペレーション・ブレイブバード   作:真城光

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放たれた翼

気をつけ(アテンション)!」

 

 鋭い声が響いた。ざわつく集団の声が、一瞬で静まり返る。

 耳をつんざくような音は止まなかった。それは決まっていて、彼らがいまいるのはテルス山の中であり、いまもなお激しい風に晒されているからであった。

 ポケットガーディアンズ……ラフエル地方において、治安の維持を一手に引き受けている組織である。その場に集まっているのは、その隊員たちである。

 制服は一様ではない。PGを象徴する白と紺の制服に対して、白地に赤の制服であった。その制服をまとった者が、前に出る。総勢十二名。誰もが精鋭であった。彼らとともにいるのはムクホークである。空を飛ぶポケモンの中でも、強靭な翼と鋭い鶏冠が特徴であった。普段は群れから離れ一匹で行動することが多いものの、よく教育されており、集団行動ができるようになっている。

 その後ろに通常の隊員たちが並ぶ。その顔は、これから行われる作戦の過酷さを物語っていた。

 そして彼らの注目を集めるのは一人の女性だった。齢にして二十半ばを下回る程度である。だが、その美貌は年齢以上に、女丈夫といった印象を抱かせた。女の柔らかさは置いて行き、ただ強さでもってその場に立っているのだと思わせるほどに、強烈な存在感だった。

 短いながらも艶やかな黒色の髪を風になびかせる彼女は、声に違わぬ鋭い目つきで隊員たちを見渡した。

 

「これより、ポケットガーディアン第七特別機動隊、通称第一空挺隊の初任務を開始する」

 

 長ったらしい、しかし、重みを伴った部隊名が読み上げられるだけで、身体の芯に電気が走るようであった。

 女はそんな彼らを見て、微笑んだ。すぐに顔を引き締めて声を張り上げる。

 

「だが、私はこの任務が、我が部隊にとって最後の任務であると信じている。短いながら私が見込み、私が育てた諸君らを信じているからこそだ」

 

 その言葉を笑う者はいない。それだけの重責のある任務である。

 第一空挺隊の見る先には、いくつもの丸い点が浮いていた。

 飛行船である。この世界ではあまり使われない交通手段であった。だが、有用であることには違いない。それも数を揃えることができるのであれば。

 その中に、とりわけ大きな飛行船があった。二つのガス袋に四つのプロペラによって浮遊している飛行船である。まるで施設……基地そのものが飛んでいるかのような威容であった。

 誰もがその飛行船を睨みつけた。側面に描かれた”B”の文字が、飛行船の正体を物語っていた。

 バラル団である。

 

「我らの目的はバラル団所有の飛行船だ!」

 

 女は宣言した。

 治安維持組織の、先制攻撃。過去に例を見ない。はじめに聞いたとき、誰もが戸惑ったものだった。

 だが、ここにいる者たちに迷いはない。もとよりすべて、承知の上である。

 

「これが悪しき先例となるか、未来への光明になるかなど、いまは考える必要はない。ただ、目前の敵を打ち砕くことにのみ専念せよ」

 

 女は背を向けた。マントが翻る。その背には剣を握った鳥ポケモンの脚が描かれていた。

 猛烈な風にも、遠く響くプロペラの音にも負けない声で高らかに言った。

 

「《オペレーション・ブレイブバード》開始!」

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