聖王と軍師の子孫は世界最強 作:ギムレー様
あの後すぐに移動することになったが、さっきのやり取りが気に入らなかったのか、俺はハジメと一緒に召喚された奴らのほとんどに睨まれている。
敵意と一部からは殺気も感じられるがこれまで旅の途中で行ってきた戦闘の最中に感じたものと比べるとあまりにもぬるいものだった。
こんな戦闘のせの字も知らないような奴らを本当に戦わせるのかと考えていたが、そこら辺は既に対策をしていたようだ。
今向かっている場所で俺達の受け入れ先である国―――『ハイリヒ王国』ではこのような事態も考慮していてそういった訓練を受けれるようにしてあるらしい。
建物から出るとそこは太陽の光を反射してキラキラと煌めく雲海と透き通るような青空という雄大な景色が広がっており、回廊の先には柵に囲まれ魔法陣が刻まれた円形の大きな白い台座がある。
この台座を使って今いる場所―――『神山』から麓のハイリヒ王国に向かうようだ。
「彼の者へと至る道、信仰と共に開かれん、“天道”」
イシュタルがそう唱えると足元の魔法陣が燦然と輝いて台座が動き出し、麓へ向けて斜めに下っていく。
周りはこのことにはしゃいでいたが、それを無視してさっきの魔法について考え始める。
(詠唱での魔法の発動か。俺のいた世界と違って魔導書が必要ないのか。この世界の魔法は全部こんな感じなのか?それとも固定された魔法陣限定?もし全部だとしたら便利だな。だけど詠唱中に狙われたりしたら……)
今は少しでも情報がほしいためそのまま思考に没頭する。
ある程度考え終えたところで周りを見渡すと王宮らしき城にある高い塔の屋上に台座がついた所だった。
王宮につくとそのまま玉座の間に案内された。
その道中では騎士や文官、メイドなどの使用人達から期待や畏敬の念が向けられる。
この世界に神の使徒として俺達は召喚されたからその影響だろう。
だが……
(おかしい)
最初は偶然だと思った。
だけど移動中に会う人全員が微妙な違いはあれどほとんど同じ表情を浮かべており、ある疑問を抱く。
(なんで誰も不安を持ってないんだ?)
いくら神が召喚した者だとしても相手は全く知らない赤の他人なのだ。
そんな初対面の人をすぐに信用したり、信頼できる人など一部の例外を除いていない。
ちゃんと戦えるのか。
背中を任せても大丈夫なのか。
本当に自分たちを救うことが出来るのか。
普通はこのような疑問や不安を少しは抱くはず。
にもかかわらずここで会った人は全員が希望に満ちた表情を浮かべているのだ。
まるで俺達が来たことで自分たちの
しかしその疑問の答えは玉座の間についたときに知ることになった。
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玉座の間の入口らしき美しい意匠の凝らされた巨大な両開きの扉の前に到着すると、その扉の両サイドで直立不動の姿勢をとっていた兵士二人がイシュタルと勇者一行が来たことを大声で告げ、中の返事も待たず扉を開け放った。
イシュタルは、それが
そこで目にしたのは玉座の前で覇気と威厳を纏った初老の男が
そう…………
玉座にいる国王らしき人物がたった一宗教の教皇を相手に。
さらに近づいておもむろに手を差し出たイシュタルに軽く触れない程度のキスをする国王。
(まじかよ)
その事実に思わず何匹もの苦虫をかみつぶしたような顔になってしまった。
それ程目の前の事実を信じたくないのだ。
昔から宗教は政治と密接に関わっていることは知っている。
なぜなら宗教は民衆の求心力が得やすいからだ。
それ故に有名で強大な宗教を国教とすることで国を纏めたり、より強カな権力を得ようとした者が多くいた。
だがイシュタルと国王の行動はそれらとは訳が違う。
国王は教皇よりも
(神を頂点とする国…か)
少し違う所もあるが同じような国―――かつて宗教が支配していた国を1つだけ知っていた。
ペレジア
邪龍ギムレーを崇めるギムレー教団の教主ファウダーが王をやっていた国だ。
イーリスなどの国々に戦争をしかけ、最後はかつて滅びたギムレーを復活させ、世界を破滅させかけた。
祖父のクロムやルフレ、その仲間達によってギムレーは倒され、破滅は防がれたが、それでも多くの者が巻き込まれた。
このような歴史を知っているからこそ
(善神か、悪神か。それが問題……か)
王族に続いて騎士団長や宰相等の自己紹介が行われる中、俺はこの不安杞憂であるよう祈るような気持ちで聞いていた。
その後、開かれた晩餐会に参加して、与えられた部屋で寝た。
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翌日から早速訓練と座学が始まった。
まず、集まった俺達に十二センチ×七センチ位の銀色のプレートが配られた。
不思議そうに配られたプレートを見る俺達に、騎士団長メルド・ロギンスが直々に説明を始めた。
騎士団長が訓練を指導している理由は至極単純で、神が至上とされ、その使者である俺達に半端ものをつけることなどできないからだ。
まあ、このこともメルド団長にとっては副長に仕事を押し付けれる言い訳みたいになっていたけどけど。
「よし、全員に配り終わったな? このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」
非常に気楽な喋り方をしているが、これは豪放磊落な性格をしている団長が「他人行儀に出来るか」と言ったからだ。
他の団員にも普通にするよう忠告していたぐらいだ。
「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。 “ステータスオープン”と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ? そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」
「アーティファクト?」
聞き慣れない単語に昨日、戦争参加宣言を真っ先にしていた男―――天之河光輝が質問をする。
「アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法の道具のことだ。まだ神やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われている。そのステータスプレートもその一つでな、複製するアーティファクトと一緒に、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。普通は、アーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。身分証に便利だからな」
「へぇ」
メルド団長の言葉にステータスプレートを見ながら小さく感嘆の声を漏らす。
これまで見た世界では広く知られている者の名を賊が騙って悪事を働いていることがあったため、これがあれば他人に偽装されないなと思ったからだ。
言われた通り血をつけると魔法陣が一瞬淡く輝いてステータスプレートに自分のステータスが浮かび上がった。
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ルーク 17歳 男 レベル1
天職:聖王
筋力:550[+500]
体力:550[+500]
耐性:550[+500]
敏捷:550[+500]
魔力:550[+500]
魔耐:550[+500]
技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・状態異常耐性・複合魔法・魔力操作・想像構成・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解・神竜の加護・邪竜の血族・竜化・スキル【華炎・流星・滅殺・生命吸収・天空・王の器・回復・竜特攻・疾風迅雷・七色の叫び・限界突破・居合一閃・絆】
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しばらく自分のステータスを見ているとメルド団長からステータスの説明がなされた。
「全員見れたか? 説明するぞ? まず、最初に“レベル”があるだろう? それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在値を示していると思ってくれ。レベル100ということは、人間としての潜在能力を全て発揮した極地ということだからな。そんな奴はそうそういない」
つまりレベルとは一種の目安ということか。
「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔法具で上昇させることもできる。また、魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。詳しいことはわかっていないが、魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。それと、後で、お前等用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけ。何せ救国の勇者御一行だからな。国の宝物庫大解放だぞ!」
やはりどの世界でも地道に訓練をする必要があるの変わらないようだ。
いくら初期ステータスが高くても努力しなければ宝の持ち腐れもいいところだ。
「次に“天職”ってのがあるだろう? それは言うなれば“才能”だ。末尾にある“技能”と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。天職持ちは少ない。戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。非戦系も少ないと言えば少ないが……百人に一人はいるな。十人に一人という珍しくないものも結構ある。生産職は持っている奴が多いな」
天職の欄を見ると祖父のクロムや母のルキナと同じ、イーリスの王の呼称である聖王と書いてある。
そのことについ頬が緩んでしまう。
いつか受け継いでもいいように頑張ってきたことが少し認められたと思えたからだ。
「後は……各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな! 全く羨ましい限りだ! あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」
(ステータスは平均の約50倍、スキルの限界突破の分も含めると約100倍以上か。………これまでの戦いの経験もあるだろうけどこの感じだとあの狂信者が言っていたことは本当だったんだな。)
イシュタルの言葉を少し思い出していると、メルド団長の呼びかけで最初に天之河がステータスの報告にいった。
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天之河光輝 17歳 男 レベル:1
天職:勇者
筋力:100
体力:100
耐性:100
敏捷:100
魔力:100
魔耐:100
技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解
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「ほお~、流石勇者様だな。レベル1で既に三桁か……技能も普通は二つ三つなんだがな……規格外な奴め! 頼もしい限りだ!」
「いや~、あはは……」
天之河のステータスにメルド団長は驚きの声を上げる。
それもそうだろう。
メルド団長のレベルは62ごステータス平均は300前後。
元々は一般人である天之河がレベル1でその三分の一のステータスを持っているのだから。
その後に続いて他の人達も見せていく。
その人達も天之河ほどではなくとも高いステータスを持っていてメルド団長も嬉しそうにしている。
しかし、それもある少年のステータスを見た時に固まってしまった。
ハジメである。
「ああ、その、何だ。錬成師というのは、まぁ、言ってみれば鍛治職のことだ。鍛冶するときに便利だとか……」
歯切れ悪くそう言うメルド団長の様子を見て、数人の男子がニヤニヤと嗤いながらハジメに近づく。
「おいおい、南雲。もしかしてお前、非戦系か? 鍛治職でどうやって戦うんだよ? メルドさん、その錬成師って珍しいんっすか?」
「……いや、鍛治職の十人に一人は持っている。国お抱えの職人は全員持っているな」
「おいおい、南雲~。お前、そんなんで戦えるわけ?」
その様子を見て他の人達―――特に男子が同じように嗤っている。
「さぁ、やってみないと分からないかな」
「じゃあさ、ちょっとステータス見せてみろよ。天職がショボイ分ステータスは高いんだよなぁ~?」
執拗に聞く男子にハジメは投げやり気味にプレートを渡す。
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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:1
天職:錬成師
筋力:10
体力:10
耐性:10
敏捷:10
魔力:10
魔耐:10
技能:錬成・言語理解
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「ぶっはははっ~、何だこれ! 完全に一般人じゃねぇか!」
「ぎゃははは~、むしろ平均が10なんだから、場合によっちゃその辺の子供より弱いかもな~」
「ヒァハハハ~、無理無理! 直ぐ死ぬってコイツ! 肉壁にもならねぇよ!」
ハジメのステータスを見た男子達はそう言いながら爆笑し始める。
それにつられて他の者も爆笑している。
「ふっく…………アッハハハハハハ!!」
そんな奴らを見て我慢出来ずに俺も笑う。
今まで喋らずに静かだった俺が笑ったことに驚いたのか、他の奴らが静かになった。
ハジメは笑う俺を見てさっきよりも落ち込んでいる。
昨日この国の王子に話し掛けられていた女子―――白崎香織が憤然としている。
「おっやっぱりお前もこれだけ役立たずだと笑うの
「黙れ、愚か者が」
……なっ!?」
笑いがおさまった俺にハジメに絡んでいた男子の一人が話し掛けてくるが、それに対して表情を消し、冷めた視線を送りながら罵倒する。
「俺がハジメのことで笑ったと思っているのか?それだったら見当違いもいいところだな。俺が笑っていたのはお前らに対してだ」
俺の発言に周りが殺気立つ。
そんなことは気にせずに俺は自分の思ったことを周りの奴らに言う。
「非戦闘職だからなんだ、低ステータスだからなんだ。前提からして間違っているんだよ、お前らは。」
「非戦闘職は役に立たない?なら聞くが戦闘職の人だけで本当に戦争に勝てるのか?」
「答えは否だ」
「もし鍛冶士がいなかったら、もし農家がいなかったら、もし軍師がいなかったら」
「満足のいく武具が手に入らない、充分な食糧が手に入らない、敵を出し抜き有利になるための戦略がたてられない」
「それだといくら兵が強くとも勝てる戦いにも勝てなくなる」
「他にも要因はあるが、屈強な兵と優秀な後方支援、この二つがあって初めて戦いに勝てるようになる」
「それなのに力が無いからとあろうことか味方を虐げる。その愚かさに呆れたから俺は笑ったんだ」
「それに武力だけが力じゃない。知力に技術力、他にもいろいろとあるが、ハジメの場合はそういったステータスに反映されない力として出ているだけだろ。それがわかったのならもう黙ってろ」
言い終えると同時にハジメのステータスプレートを奪い取り、本人に渡す。
ハジメはさっきの言葉が嬉しかったのか、小さく「ありがとう」と言ってきたので「気にするな」と返しておく。
それが気に入らなかったのかハジメを嗤っていた男子の一人が怒鳴ってきた。
「そんなに言うんならお前のステータスはどうなんだよ!!」
それに続くように他の男子も同じように怒鳴ってくる。
どのみち見せなければいけないのでメルド団長にステータスプレートを渡す。
メルド団長がステータスプレートを確認すると、大きく目を見開き、驚愕の声を上げた。
「なっなんだこのステータスは!?基礎ステータスだけで全部500越えなのに追加ステータスでさらに500だと!?技能も多いし、天職も聖王と聞いたことが無いものだ。………本当に何者なんだ?」
メルド団長からの疑問に他の奴らからの視線が集中する。
メルド団長の言葉で俺のステータスを聞いた者は一部を除いて顔を青ざめて震えている。
「そうですね······では、改めて名乗りましょうか。俺の名前はルーク。嘗て邪竜を滅ぼした英雄の一人でイーリス国の王、聖王クロムの孫にして、神竜族と呼ばれし
そう言いながら俺は笑みを浮かべていた。