ハーイ!
皆元気してるぅ〜?
……。
どうも。
やっとのことで現地住民と接触できたうえ、メイドにまでなってくれた美少女、イルマちゃんを仲間に加えることができてちょっとテンション上がってるアリスです。
なんかでっかいトカゲに襲われていたところを助けてやったら、お礼にご飯を作ってくれたんですが、超不味かったので、これからのお食事は全部自分でやっていかねばと戦慄しています。
……まったく、メイドなのに料理ができないだなんて。
リアルメイドってほんと、便利なのか不便なのか……。
……あ、別に彼女はメイドになる訓練してないんだから、それは当然なのか。
だったら、これから色々教えてやらないとな!
例えば夜の運d(ry――もとい、ベッドメイキングとかな!
野営にベッドメイキングは大切だ。
昨日でこそ気絶という形でそのまま寝てしまったが、流石に朝起きたらちょっと背中とか頭が痛かった。
「う〜ん……。
人のいるところまで行こうかって考えてたけど、イルマちゃんが居るし、もうどこかで定住しちゃおうかな……」
たぶん、そっちのが楽で楽しいだろうな。
けど、とするとずっと二人暮しとなるわけだが……それもちょっと寂しいし……。
と、そんなことを考えながら森の中をずんずん進んでいると、前方にデカイトカゲ人間みたいな魔物を発見した。
こいつはゲームに出てきてたから知ってる。
ハイ・リザードマンだ。
「お、お嬢様……!」
イルマちゃんもあれを発見したのか、小さな悲鳴じみた声を上げた。
「わかってる」
ちなみに、イルマの俺に対する呼び方が仙人様からお嬢様に変わったのは、俺が『仙人様は恥ずかしいからやめてくれ』と頼んだ結果の妥協である。
俺は鑑定スキルを使って、ハイ・リザードマンのステータスを調べる。
⚪⚫○●⚪⚫○●
ハイ・リザードマン
レベル 66
⚪⚫○●⚪⚫○●
んー、何か進むたびにモンスターのレベルが上がってるなぁ……。
もしかして俺、抜けるどころか更に奥に進んでるんじゃないのかね、これ?
俺はそんな苦笑いを浮かべると、《アンスール・ロッド》を構えて、魔法を放った。
「《ソーン・バインド》」
すると、どこからともなく太いイバラが現れて、ハイ・リザードマンの一体を縛り上げた。
ついでに魔力操作を使って魔法の強化も行っておく。
これは今朝、『そういえば魔法を使ってるときって、魔力の流れはどうなってるんだろう?』という疑問を解消するため、魔力感知を発動しながら《ソーン・バインド》の魔法を使ったときに発見した方法だ。
そしてどうやらこの魔力操作。
使用中の魔法に使われている魔力量を増やしたり減らしたりといった調整もできるみたいなんだ。
魔法を発動するときに、ちょっと魔力操作で魔法に使う魔力を多めに流し込んでやると、魔法の持続時間や効果が上がったように見えたんだ。
「シャーッ!」
突然の事態に驚いたのか、ハイ・リザードマンが暴れ喚く。
俺はそれを脇に、イルマに《クラフト》で作った長剣を与えた。
「これは……?」
不思議そうに、渡された長剣を抱えながらイルマが尋ねた。
「イルマちゃんにも倒してもらおうと思ってね。
まあ、ちょっとした実験だよ」
「は、はぁ……?」
どこか納得していないような、怪訝な表情でとりあえずの了解を示すイルマ。
……え?
何の実験かって?
あー、いやね?
終末世界オンラインには、NPCとパーティを組んでモンスターを倒すっていうクエストがあったんだけど、実はこのゲーム。パーティメンバーのNPCのステータスが弄れない設定だったんだ。
だから、パーティメンバーが魔物を倒したとしても、経験値も何もかもが全部プレイヤーの手柄になってたんだけど……。
この世界が現実になった今、そこら辺どうなってるのかなって。
それを確かめるための実験なのさ。
俺はこっそりと、彼女に召喚魔法の一つ《STR強化》をかけた。
召喚魔法は実は、付与魔法も使える設定なのだ。
これは俺が
魔法ツクールにはそういう便利な機能もついているのだ。
それはともかくとして。
イルマちゃんは長剣を両手に持つと、その切っ先をハイ・リザードマンへと向け、恐る恐る近づいていった。
ハイ・リザードマンが使ってくる攻撃パターンは、立体起動を用いた近接格闘としっぽの攻撃が主だ。
俺の《ソーン・バインド》はヤツのしっぽも押さえつけているので、その心配はない。
心配するとすれば、他に仲間がいるかどうかだが……。
(周囲にはこの個体一匹だけみたいだし、大丈夫だろ)
少なくとも、索敵スキルの範囲内には目立った外敵はいない。
イルマはゴクリと生唾を飲み込むと、勢いをつけてハイ・リザードマンの心臓を貫いた。
「えいっ!」
「シャーッ!?」
青い血液が、傷口とリザードマンの口から溢れ出す。
(うわ、グロ……)
下手すれば《ウィンドカット》で首チョンパよりグロいんじゃないのか……?
イルマは滑る柄をグリグリとひねりながら、何とか長剣をリザードマンから引き抜いた。
長剣が傷口で捻られる度、どぴゅどぴゅっと青い血液が傷口から噴射するのが、なんだか見ていて痛い。
魔物に同情するわけじゃないが、弱兵のノコギリって諺もある。
技術があって上手い兵士の方が、殺される苦しみは一瞬だが、技術のない兵士による攻撃は、痛みが長く続くので辛いということから、無能は他人に迷惑をかけるという意味で使われる言葉だ。
この場合は、言葉通りの意味になっちゃうけど。
イルマは長剣を両腕に抱えながらこちらへと戻ってきた。
念のために鑑定スキルで確認してみれば、ちゃんと倒したみたいだな。
「うん、よくやった」
「ありがとうございます、お嬢様」
……やっぱり、なんか慣れないな……この呼び方。
俺は苦笑いを浮かべると、ハイ・リザードマンの死体に素材変換スキルを行使した。
⚪⚫○●⚪⚫○●
討伐報酬
アリス→EXP 66
イルマ→EXP 660
ドロップ
ハイ・リザードマンの革鎧 ×1
ハイ・リザードマンの鱗 ×5
トカゲ肉 ×2
⚪⚫○●⚪⚫○●
うん、どうやらパーティメンバーにも経験値は行き渡るようだ。
ということは、ここはゲームとは仕様がちょっと違うみたいだな……。
俺はウィンドウを閉じると、先程から俺のことをジッと見つめているイルマに視線を向けた。
「どうかしたの?」
「いえ、先程からお嬢様は何をしていらっしゃるのかな……と。
あ、いえ!別にお答えになりたくないなら別にいいんですけど……」
イルマは、目をキョロキョロさせたり、手をわたわたと慌ただしげに意味不明なジェスチャーをしたりしながらそう言った。
俺は、そんな彼女の様子を不思議に思いながら、何のことを言っているんだ?と一瞬だけ考える。
そして、俺は一つの結論にたどり着いた。
「もしかして、イルマちゃん。
このウィンドウが見えてないの……?」
「うぃん……どう……?」
顎先に人差し指を当て、小首を傾げるイルマちゃん。
うおおっ!?
リザードマンの返り血を浴びていいるからちょっとホラーだけど、それがなければ超かわいい……!!
これは、もしこの世界がゲームのままだったら、もしかしたら彼女の美少女性も合わせてフィギュア化しているかも……!!
――と、俺がそんな彼女の可愛すぎる仕草に内心で悶えていると、イルマが不思議そうな表情をして、下から目線で尋ねてきた。
「お嬢様……?」
「あー……いや、えっとだな……」
な、なんて言い訳をすれば……あ!そうだ!
宗教上の理由、みたいな感じで言えば、なんとか誤魔化せるかも!
俺は心の中で相槌を打つと、苦笑いを湛えながら誤魔化し文句を口にした。
「これはだな。
奪ってしまった命に対してのお詫びとお礼……みたいなものかな?」
実際は経験値とアイテムの回収をしてるだけなんだけどね!
俺がそう答えると、イルマちゃんはなるほど……と呟いて、それきり追及はしてこなかった。
(ほっ……。
物分りのいい子で助かった……)
次からは色々と用心しないといけないな。
メニューの操作とか確認は……魔法の一種ってことにして……あ。
(そうだ……!
アレも魔法の一つってことにしてしておけば問題なかったんだ……!)
なんて!
なんてめんどくさいことをしてしまったんだ俺はぁッ!
はぁ……。
もういいや、次からは全部魔法ですって言い訳しておこ。
多分そのほうが絶対都合がいいし。
俺はそう考えると、苦笑の抜けない表情のまま今晩泊まることのできそうなポイントを探すために足を動かすのだった。