どうもアリスです。
新しく仲間に加わることになったイルマちゃんを連れて、現在新しいキャンプ場の設営中です。
といっても、設営するのは俺じゃなくてリビング・メイルたちなんだけどね。
(そろそろ敵のレベルも高くなってきたし、先に進むのはもうちょっとレベル上げてからにしようかな……)
現在の進行率は約2%だ。
マップを見る限り結構な範囲を探索してきたと思ったのだが、どうやらこの《最果ての森》というマップはとてつもなく広大らしい。
(2日かけて2%って……。
どれだけ広いんだよ、ここ……)
俺は苦笑いを浮かべると、マップを閉じてイルマちゃんの様子を、索敵スキルModの気配探知で探ってみる。
彼女は現在、焚き火に使う薪を集めているところだ。
護衛のために召喚獣として《アチャラ・ナータ》をつけているので、フィールドボスクラスの魔物にさえ遭遇しなければ大丈夫だろう。
「うん、ちゃんと護衛できてる」
俺は気配探知で、アチャラ・ナータがちゃんとイルマちゃんを守っているのを確認すると、ニヤリと口元を歪めた。
中には索敵スキルを掻い潜ってやってくる魔物もいるのだが、どうやら問題ないようだな。
さすが、召喚魔法スキルレベル10で獲得できる召喚獣なだけあって心強い。
「んじゃ、今のうちにMP回復ポーションでも作っておくか」
俺はそう言うと、《クラフト》で作った鉄のイスに、裁縫スキルでパパッと作ったクッションを敷いて座り、ポーションの作成に取り掛かった。
「お嬢様、ただ今戻りました」
「うん、おかえり」
一通りポーションの作成が終わった頃、両腕に大量の枝を抱えたイルマちゃんが帰ってきた。
背後にはアチャラ・ナータが控えている。
俺はアチャラ・ナータに、召喚魔法の《帰還命令》を発動する。
「アチャラ・ナータ、さがれ」
スッ、と青い燐光が渦のように巻いて、またたく間に視界から消え去っていく。
イルマは、そんな俺の様子にポカンと口を開けて見ていた。
この魔法は元々このゲームに設定されてなかったものだからな。
(ふふっ。
驚いてる驚いてる)
俺はそんな笑みを浮かべると、彼女の腕から薪を預かった。
⚪⚫○●⚪⚫○●
「お嬢様は、一体何者なんですか?
あんな、まだ子供だったとはいえドラゴンを一人で倒してしまいましたし……。
そんな種族、聞いたこともありません」
夕食の準備をしている頃。
ふと、手持ち無沙汰になっていたイルマが、俺の用意したソファに腰を落ち着かせながら尋ねてきた。
種族……。
種族かぁ……。
そういえば、ステータス画面の称号のところに、人類の末裔って書いてあったなぁ。
あのときは何かの冗談かなって思ってたけど。
(……これは、詳しく聞く必要があるかな)
もしかしたら、この世界には人間がいないのかもしれない。
イルマちゃんだって、ダンタリオン族って言ってたし。
「ただの人間だよ。
君はダンタリオン族とかって言ってたけど、その種族ってのは何なの?」
最初は部族の名前かなんかって思ってたけど……。
彼女の口から種族という言葉が出てきたってことは、ダンタリオン族ってのはつまり、部族の名前ではなく、人間とかエルフとか、そういった類を意味する“種族”の名前なんだろう。
(……ということは、もしかしたらイルマちゃんは人間じゃないのかな?)
いや、確かにちょっと耳が尖ってるけど……。
長くはないから、エルフってことはないよね。ダンタリオンって言ってたし。
「に、人間……!?
人間って、大昔の戦争で絶滅したって聞いてましたけど……」
「……は?」
え、今なんて言ったのこの娘?
全滅?
人類が?人間が、全滅した?
それも大昔に……?
「それって、本当?」
俺は、震えそうな声で恐る恐る尋ねた。
いや、だって……。ねえ?
人間がこの世にいないなんて、そんな異世界モノ見たことないし……。
だって、たいてい人類って魔族との戦争で勝利するじゃん?
勇者現れて、魔王討伐するのがセオリー(?)じゃん?
なのに、人類が全滅?
もしかして勇者負けたの?
「はい。たしかそう聞きました」
その言葉を聞いて、俺はとあることを思い出した。
終末世界オンラインは、いわゆる王道ファンタジー物のRPGだ。
主人公は勇者となって、魔王を倒しに行くのが、このゲームのプロットだ。
……だが、この世界には人類はいない。
つまり、これは魔族との戦争に負けた場合の未来というわけだ。
魔族との戦争に負けたということはつまり、勇者が魔王に殺されたというわけで……。
(もしかして、俺がサブキャラの姿だったのは、メインキャラが魔王に負けて死んだからか!?)
「おおぅ……。
何ということだよ……ほんと……」
人類の末裔ってあの称号は、そういうことだったのか……。
俺はがっくりと肩を落とすと、グツグツと煮えたぎる鍋に現実逃避するのだった。