どうも。
最近、人類が大昔に全滅していたことに動揺を隠せていない銀髪美少女アリスちゃんです。
……いえ、別にカマになったつもりはないけど、一人称に“俺”って使う度にイルマちゃんが『何言ってんのこの人……?』みたいな不審な目で見てくるんでちょっと練習しようかな……なんて。
……え、変えなくてもいい?
ありのままの自分で居ろ?
……何ですか、その十数年前のディ●ニー映画みたいなフォロー。
言われなくてもそうしますよ、まったく。
「はぁ……」
俺はため息をつくと、目の前に転がる肉をストレージに放り込んでいった。
このお肉は、俺が放った召喚獣《ハンター》に狩らせてきたものだ。
ハンターは召喚魔法スキルレベル8で獲得できる召喚獣で、ゲーム時代ではいわゆる放置ゲー用に使用されていたものだ。
この召喚獣は、指定したアイテムが一定数量集まるまでは帰ってこない。
そのため、素材収集だけを目的にするなら、ハンターが適任なのだ。
そういうわけでハンターを放って食糧を確保してきてもらったわけだ。
現在、異世界生活は4日目に突入している。
森の中での生活もかなり慣れてきた頃合いだし、そろそろ定住できそうな場所はないものかと現在は探索中だ。
ちなみに進行率は3%ほど。
森の奥へ進むに連れて魔物が強力になってきたため、レベリングをしながら進む羽目になり、踏破速度が落ちているのだ。
「ふぅ……」
俺はすべての肉をストレージに片付けると、近くの木の根に腰を下ろした。
「お嬢様、お茶が入りました」
「うん、ありがとイルマちゃん」
俺は彼女からカップを受け取ると、なんの躊躇いもなく一口啜る。
「……どう、ですか?」
「うん、美味しい」
(寝ている間に給仕スキルを習得させておいてよかった……!)
俺はカップの中身を飲み干すと、彼女の持つ鉄トレイにカップを戻した。
……え?
給仕スキルってどういうことかって?
あ〜、それはだね。
俺一人で毎日ご飯作るのもめんどくさいし、実験も兼ねて彼女のステータスが弄れるか試してみたんだ――。
⚪⚫○●⚪⚫○●
それは、2日目の夜の話。
たまたまトイレに行きたくなって夜中に目が覚めてみると、隣には可愛らしい寝息を立てる美少女の姿があった。
こんなかわいい娘とこれからずっと一緒にいられるなんてな……。
(ゲーム時代じゃ考えられなかったよ)
俺は小さく微笑むと、細い髪のかかった頬を撫でて、今日の昼間のことを思い出していた。
「あのご飯。
彼女なりの誠意とは分かっているんだけど、不味かったんだよな……アレ」
おそらく今後も、私がご飯作ります!とか言ってスープなり何なり作ってくれようとするんだろうけど……。
はてさて、どうやって断ればいい……?
さしものあの激不味ポーション99本を飲み干した俺でさえ、あの飯は毎日食べたくは無いほどのクオリティなのだ。
「何かいい策はないものか……」
俺はそう呟くと、そろそろ膀胱が限界になってきたので、外の茂みへと小走りに駆けていった。
「ふぅ……」
用を足し終えた俺は、魔力操作で威力を下げた《ウォーターキャノン》でアソコを洗って手ぬぐいで拭く。
「まだ慣れないな……この体」
そう言いながら装備画面を開くためにメニューを操作していると、俺はメニューの中に見知らぬ項目が追加されていることに気がついた。
「フレンドステータス……?」
何、それ?
気になった俺は、試しにその項目をタップしてみた。
するとそこには、大量の空欄と、イルマの文字があった。
「これって……もしかして、仲間になった人のステータスを弄れるってことか?」
好奇心を抑えきれなかった俺は、迷わずそのボタンをタップした。
⚪⚫○●⚪⚫○●
イルマ
称号:人間の従者
ハーフ・ダンタリオン
レベル 43/100
HP430 MP430
JOB メイド
レベル 1/100
STR 43 AGI 43 VIT 43 INT 43
スキル
給仕 1/10 闇魔法 1/10 誘惑 1/10 危機察知 1/10
⚪⚫○●⚪⚫○●
ジョブは……メイド?
そんな職業、ゲームのときには無かったぞ?
それに、この給仕とかいうスキルも初めて見る。
俺はそのスキルをタップして、詳細を確認した。
どうやら給仕スキルとは、食料品を加工するスキルらしい。
「これだ……!」
なんというグッドタイミング!
これさえあれば、もう二度と飯づくりをせがまれても断らなくて済む!
俺はニヤリと笑うと、イルマのスキルポイントの残量を確認した。
スキルレベルがどれも1で留まっていること、ウィンドウの存在を知らなかったことから予想してはいたが、やはり彼女の持っているスキルポイントは手付かずのようだった。
「本人に相談もなしにスキルをいじるのは少し抵抗あるけど……」
それでも!
もう二度とあんなまずい飯を食って『うん、美味しい!』なんて心苦しい嘘をつく必要がなくなるんだ!
俺は、そう自分に言い聞かせると、問答無用とばかりに給仕スキルのスキルレベルを10まで向上させておいた。
翌朝、案の定イルマちゃんが朝食を作りたいと言ってきたので作らせてみたら、頬が落ちるほど美味しくなっていた。
「あの、お嬢様。
私、こんなに美味しいの初めて作れました!」
イルマは目を輝かせながら、全身でその喜びを表現していた。
「そ、そうか……?
昨日のも、ちゃんと美味しかった……よ?」
これは、ちょっとやりすぎたかな……?
彼女のキラキラした目がいちいち罪悪感を刺激してちょっと心が痛い……。
俺がそう返してやると、彼女は少し照れたように言いながら反論した。
「そ、そんなことないですよ!
だって昨日みたいにスープがネバネバしませんし、味もしっかり統一されてますから!」
……まあ、確かに昨日のあのスープはやばかった。
どうやばかったかって言うと、納豆のネバネバの中に甘ったるいいちごジャムをかき混ぜてスープにしたみたいな感じだったからな……。
(俺、よくあれで吐かなかったな……)
あれは何か?
苦行を乗り越えた勇者(笑)の称号の付加効果なのか……?
俺はそんな苦笑いを浮かべながら、頬がとろけるほど美味しくなったスープを口に運んだ。
「きっと、日々の努力の成果が一気に出たんだよ。
うん、よくあることさ」
(ないけどね!)
まぁ、結果オーライだし、この罪悪感も時間が経てば忘れられるだろう。
俺はそう自分に言い聞かせると、にへらと笑った美少女の頭をドサクサに紛れて撫でるのだった。
⚪⚫○●⚪⚫○●
――ということがあったわけだ。
俺はカップを下げに、建てた小屋の中へ戻っていくイルマちゃんの後ろ姿を見つめながら、現在の彼女のステータス情報を確認した。
⚪⚫○●⚪⚫○●
イルマ
称号:人間の従者
ハーフ・ダンタリオン
レベル 45/100
HP430 MP430
JOB メイド
レベル 2/100
STR 45 AGI 45 VIT 45 INT 45
スキル
給仕 10/10 使用人 1/10 闇魔法 1/10 誘惑 1/10 危機察知 1/10
⚪⚫○●⚪⚫○●
お、メイドレベルが上がって、新しいスキルが増えてる。
使用人スキルか……。
やっぱり、ゲームだと見たことがないスキルだ。
どれどれ詳細は……っと。
ふむふむ、なるほどなるほど。
使用人スキルっていうのは、家事が上手くなるスキルってことかな。
説明によれば家事だけじゃなくて接客とかもこなすみたいだけど……。
(これも、勝手にスキルレベルマックスにしたら、違和感半端ないんだろうな……)
俺は2日前のことを思い返しながら、ウィンドウを閉じた。
それにしても、ステータスレベルの上昇が思ったより早いな……。
自分より高レベルなモンスターを率先して狩らせてるからだろうけど、それにしても経験値が貯まるのが早すぎる。
取得経験値だって、俺の10倍くらいあった。
レベル差によるボーナスなのかどうかは知らんが……それはそのうちわかるだろう。
俺は木の根から立ち上がると、さてと今日の分の狩りに出向くことにした。