どうも。
最近イルマちゃんのご飯が美味しすぎて太らないか心配のアリスです。
二人ともちゃんと毎日運動しているので、とりあえず今のところそうなる様子はなさそうたけど、のちのち定住を考えている身としては、ちょっとした悩みになってたりなってなかったり。
さて、異世界生活も一週間が経ちました。
まだ俺のレベルは85から変動してないけど、毎日の魔力操作と魔力感知の訓練のおかげで、2つともスキルレベルが5まで上がり、イルマちゃんのステータスレベルも45から50まで上がりました。
ほんと、この娘は成長早いよね……。
いつか俺のレベルを越されないか、ちょっと心配になってきました。
そういえば、俺の召喚獣のリビング・メイルの建築技術がレベルアップしてきたんだよね。
試しにリビング・メイルのパラメータを確認して何かスキルでも増えてるのかなと確認してみると、なんと建築スキルを獲得していました。
(またゲームとは違う仕様が導入されてる……)
この世界でのスキルの仕組みが少し気になってきた……。
まあ、そんなこんなで、俺たち二人は今日も元気にやっています。
「……だから、俺は誰に話しかけてるんだよコレ?」
俺はリビングのソファに寝転びながら、ポツリと呟いた。
「どうかなさいましたか、お嬢様?」
「んーん、何でもないよ」
俺はイルマにそう返すと、彼女の持ってきたお菓子に目を向けた。
彼女の持ってきたトレイの上に乗っているそれは、なにかのクッキーのように見えた。
「……それ、どうしたの?」
「クッキーです。
昨日、ロー・コカトリスを討伐したときに落としたタマゴを使ってみました」
「へぇ……」
俺は感嘆の息を漏らすと、トレイからクッキーを一枚取って、口に入れてみた。
「はむ……。
……これは……!!」
美味い!
超、美味!
口に入れた瞬間、ほろりと崩れ、ふわりと果実の香りが口全体に広がっていく……!
「どうですか、お嬢様?」
「美味しい!」
「それは良かったです」
感想を催促するイルマちゃんに、俺は即答して、もう一枚クッキーを口に入れた。
(ああ……!
幸せ〜……!)
俺は思わず頬をほころばせると、ふと、とある疑問が浮かび上がってきた。
「……ごくん。
ところでイルマちゃん。食材はどこから持ってきたの?」
俺はクッキーを飲み込むと、幸せな表情のまま彼女に尋ねた。
食材はすべて、保存性の問題があるため、すべて俺のストレージ内で管理しているのだ。
彼女が使ったおやつの材料もその例外ではない。
とすると、彼女はどこから食材を持ってきたのだろうか?
俺がそのことについて尋ねると、イルマちゃんは笑顔でこう答えた。
「実は、私。新しい魔法を習得しまして。
その中に材料を保管していたのです」
「……新しい魔法?」
俺は怪訝な表情をして、首を傾げた。
たしかイルマちゃんの使える魔法は闇魔法のみだった気がするんだが。
闇魔法に、そんなアイテムを保存できるような魔法なんてあったっけ……?
すると彼女は、ふふっと笑みを浮かべて、なにやら手を虚空へと突き出し始めた。
「《インベントリ》」
すると、次の瞬間。
彼女の腕が、虚空へと呑まれて消えてしまった。
「!?」
それはまるで、俺がアイテムストレージから物品を取り出すときの様子に酷似しているのだ。
「えへへ……。
驚きましたか、お嬢様?」
イルマは嬉しそうに笑いながら、俺の様子を窺った。
(何ということだ……。
こんな魔法、ゲーム時代には無かったぞ……?)
もしかして、時代が進んで新しい魔法が開発されたとか?
それとも、そもそもこの世界は終末世界オンラインではないとか……?
(……いや、後者はありえないな。
俺の姿やイルマの話から、この世界がWEOの中で、勇者が死んだ場合の未来だという仮説の精度はかなり高い)
それに、ロー・コカトリスやハイ・リザードマンといった魔物は、WEOにいた魔物とビジュアルデザインが一致している。
他にもいろいろ、ゲーム時代からいる魔物も見かけたし、間違いない。
他に考えられるとするなら、他のゲームの世界が混ざった――くらいだろうか?
(でも、こればっかりは確かめようがないしな……)
「……お嬢様?
どうなさいました?」
急に黙り込んでしまった俺を心配してくれたのか。
イルマが俺の目の前にクッキーを吊り下げて話しかけてきた。
「……ぱく」
仕方ないので俺はそのクッキーを彼女の指ごと咥えると、してやったりという顔をして彼女の顔を下から見上げてやった。
「……うぇ」
するとイルマは、どこか不快気な表情をして、一歩後退ってしまった。
「……あの、お嬢様。
すみませんが、それだけは勘弁してください……」
……どうやら、少し引かれてしまったらしい。
「……」
イルマは俺の口から引き抜いた指を、近くに置いてあったティッシュで拭い去ると、さらに俺から離れていった。
「……なんか、ごめん」
その日一日は、当然のように彼女から距離を置かれる俺であった。