俺は拝殿からハンプティダンプティの様子をうかがうと、魔力感知で奴がまだ魔力障壁を展開したままであることを確認した。
(じゃ、早速試してみますか!)
俺は気力を振り絞ると、縮地を使って拝殿を飛び出し、球体オバケへと一瞬で接近した。
『そこにいたか小娘ぇ!』
俺が縮地で接近するのとほぼ同時。
ハンプティダンプティは俺の方へとぐるりと振り向きながら、魔法名すら唱えずに、威力と速度を強化された《シャドーバレット》を放ってきた。
「く……っ!」
俺はそれを縫うようにくぐり抜けながら、ヤツの展開する魔力障壁へと豪脚を放った。
「チェストォォオオ!!」
豪脚によって強化された蹴りが、発勁Modによって、その気勢と共に魔力障壁を打ち砕いた。
――ゴォォオン!!
『何っ!?』
鐘を打つような、太く大きな青銅色の音が障壁に波紋を立てて打ち砕く。
「フッ!」
そして、その蹴り足を今度は地面へと突き立てると、それを軸足に豪脚を伴った回し蹴りを、驚きに閉じられて剥き出しとなった臼歯の側面に打ち付けた。
――バキッ。
瞬間、歯が砕ける。
『っぐふ!?』
吹き飛ぶ巨体。
荒れ狂う砂埃。
吹き飛んだ先で手水舎が犠牲になって、音を立ててふき飛んだ。
――完全に、形勢逆転だった。
「よしっ!なんとかなった!」
俺は鑑定スキルで可視化されたハンプティダンプティのHPが、ごっそりと削られたことを確認すると、ガッツポーズを決めた。
ごっそりとHPが削られたのは、おそらく臼歯を破壊したのが、部位破壊の判定を受けたのだろう。
『くっ……!
一体……何が起きた……!?』
ハンプティダンプティは狼狽えたように、その前足(手?)で口元を拭うと、その般若の面をこちらへ向けて警戒態勢をとった。
「教える義理はないよ」
俺はそう吐き捨てると、《アンスール・ロッド》をくるくると旋回させると、槍のように持ち構えた。
……え?
なんでスキル取得したばかりなのに、こんなに動けるかだって?
前にも話したとは思うけど、
大剣も使えば片手剣だって使えるし、槍や棒、徒手空拳だって使っていた。
結構、俺ってオールマイティだったんだよね。
それで、その時使っていた拳法を、俺の体が覚えてたってわけさ。
納得した?
俺は不敵な笑みを向けると、軽く体の調子を確認した。
(まだ体が重いな……。
筋力だって、メインと比べればゴミみたいな数値だけど……)
俺はトントンと軽くジャンプして、体を慣らし始める。
(……悪くない。
まだ調整が必要そうだけど、これなら倒せそうだ……!)
俺はそう確信を得ると、警戒態勢の球体オバケに魔力感知を使った。
どうやら、また魔力障壁を張り直したみたいだ。
(無駄、なんだけどね!)
「フッ!」
俺は無音の烈気と共に縮地し、《アンスール・ロッド》を槍のように振り回して障壁を砕く。
しかし、どうやらそれはヤツの誘いだったようだ。
「ッ!?」
俺がその障壁を、太い鐘を鳴らすような音と共に弾き飛ばしたその瞬間。
ヤツはガパリと大口を開けて、その中で臨戦態勢になっていた破壊光線の火種を顕にした。
「このっ!」
俺は咄嗟に、豪脚を使って地面を蹴ると、上空へと身を翻した。
刹那、それを追うようにして、ハンプティが空を仰ぐ。
その口の中の火種は、完全に俺の姿をロックオンしていた。
『調子に乗ったな小娘!』
「《ルーク・オブ・ソリサズ》!!」
してやったり、というような笑みを浮かべて、球体オバケはその驚異の光線を放った。
その光線は、いとも容易くその障壁を打ち破り、上空の空気を焼き焦がした。
『ふん。
図に乗りすぎたな、人間』
所詮、神にも等しい自分に、ちっぽけな、それも子供の女などに負けるはずがないのだ。
あそこまで追い詰められたのは、実に自分の油断。
(情けない……)
だがしかし。
ハンプティダンプティはカタカタという笑い声を上げると、何もない虚空に向かってポツリと呟いた。
『楽しかったぞ、人間。
久しぶりに力を振るえた。感謝してやろう』
ハンプティダンプティはそう笑うと、顔の向きを空から前方へと戻して、倒壊した本殿へと足を向けた。
……が、しかし。
どうやらそれで安心するのは、まだ早かったようだ。
「《ドナーシュペア》ッ!」
『なっ!?』
――スガァァン!!
不意の一撃。
次の瞬間、どこからともなく現れた雷撃に、その額の面は打ち砕かれてしまった。
「よしっ、作戦成功!」
俺は、魔力操作で威力速度、共に10倍にまで引き上げた究極雷魔法《ドナーシュペア》を放った直後の態勢から、大きくガッツポーズを決めた。
……え?
何がどうなったかって?
いやね、実は相手の障壁をぶち破った時に、(あれ?こいつなんで逃げないの?)って疑問に思ったんだよね。
そこで瞬時に魔力感知を行使してみればあら不思議!
ハンプティちゃんのお口の中に、破壊光線の卵があるじゃないですか!
ということで、俺は一つ、策を練ったのですよ。
いや、練ったと言っても、ほとんど直感みたいなものなんだけどね?
豪脚で上空に跳んだあと、俺は《ルーク・オブ・ソリサズ》を発動したよね?
実はあれは防御の為に開いたわけじゃないんだ。
あれで防御したとしても、どうせ破られると思ってたしね。案の定破られてたし。
だから俺は、それを囮、もとい一瞬の足場として活用したってわけだ。
俺は結界魔法を一瞬の足場として利用し、縮地を使って助走をとって、豪脚を使って今度は横へハイジャンプ。
同時に《風圧操作》を行使するのも忘れない。
そうやって俺は拝殿の屋上に転がり込んで、俺は作戦が成功したかどうかの確認をした。
そしてどうやら成功したみたいだったので、俺は早速、10倍の火力と速度に魔改造した究極魔法を放ちましたとさ。
閑話休題。
俺は拝殿の屋上から飛び降りると、仮面を粉々に粉砕されて全身から黒い煙を上げているハンプティダンプティに鑑定スキルを行使した。
可視化されたHPバーは、既に全壊しており、どうやら完璧に仕留めたらしい事が伺えた。
こうして、俺はレベル13差の魔物を退治することができたのだった。