異世界に来たけど人類滅亡してました。   作:記角麒麟

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二十三話 あの、俺ってそんなに怖い顔してますか?

 どうも。

 昨日なんか神社見つけたらいきなりレベル100のフィールドボスと戦うことになり、なんやかんやあって鬼っ娘を助けることになりましたアリスです。

 

 いゃあ、鬼っ娘。

 いいですよね〜。特にツノが。

 鬼っ娘の魅力と言ったらなんと言ってもあの特徴的なツノですよ。

 

 男なら雄々しく、太く硬く大きく強く。

 女なら女々しく、艶かしく妖艶に艶やかに。

 

 角の大きさやデザインは様々だけど、俺はやっぱり鬼の角は山羊や羊の角についで大好きです。

 

 さてはて。

 鬼っ娘の魅力について語るのはここまでとして。

 

 鬼っ娘――鑑定スキルで名前を確認してみると、どうやらリンカという名前のようだ――のことをこれからどうするかを考えていこうと思う。

 

 とりあえず昨日は、血反吐で汚れた体をイルマちゃんに頼んでキレイにしてもらい、新しい服に着替えさせてはおいたけど……。

 

 他にも、あのハンプティさんが何かむしゃむしゃ食べてたところから予想するに、彼女と同族か、もしくは彼女たちが暮らしていた場所の跡地か里か、なんかそんなものが近くにある気がするんだよな。

 

 ――閑話休題。

 

「あ、起きたんだ」

 

 リンカを保護したその翌日。

 俺が小屋に戻ってくると、リンカが目を覚ましていた。

 

「はい。

 先程、事情を説明しておきましたが、まだ少し状況が呑み込めていないようです」

 

「ありがと、イルマちゃん」

 

 俺は礼を言うと、イルマが淹れたのだろうハーブティーを飲みながら、こちらの様子をうかがっている幼女の近くへ行き、しゃがんで目線を合わせた。

 

「えーっと……。

 まずはおはようだね。そしてはじめまして。

 俺――(いや、ここは“私”というべきだろうか……?……う〜ん、まあいいや)――俺はアリスだ。

 そこのメイドの友達で、主人だ」

 

 あまり情報が多くても混乱するだろうし、自己紹介はこのくらいにするか。

 

 俺はできるだけ柔らかい笑みを意識しながらそう告げると、君の名前は?と尋ねた。

 

 ……いや、知ってるんだけどね?

 この前、と言ってもイルマと遭った日に言われたんだけど、教えてもないのに突然名前を呼ばれたりすると、尋常じゃなく怖いんだってさ。

 ……そりゃそうだよね。

 俺だって見知らずの赤の他人にいきなり名前を呼ばれたら驚く。

 

 だからこうして、ワンクッション置いて名前を呼ぶことにしたんだ。

 

「……リンカ」

 

 鈴のような響きだ。

 甘い色をしている。

 桜色に少し水色を混ぜた感じか。その中に仄かな、暖かな春の黄緑色と、鮮やかなオレンジ色を感じさせる、凛とした、優しい声音だ。

 

「リンカちゃんか。

 よろしくね?」

 

「……ん」

 

 彼女は警戒心たっぷりの赤い瞳で下から見上げながら、カップに顔を隠しつつ頷いた。

 

「かわいい……」

 

 思わず、そんなセリフが口をついて出る。

 

 なんというか、保護欲をそそられる感じがする。

 もしかして、なにかそういうスキルでも持っているのかな?

 それとも称号?

 

 否、素材の力だ。

 

 俺はそんな彼女の様子に、ゴクリと喉を鳴らした。

 

「お嬢様、リンカちゃん怯えてますよ」

 

 不意に、イルマの諫言が入る。

 言われて、彼女がジリジリと後ろへと交代していたことに気付く。

 

 ……そんな怖がられるようなこと、したっけ?

 

「なんか……ごめんね?」

 

 俺はとりあえずそう言うと、ちらりとイルマちゃんの方を向いた。

 すると彼女は、ごく僅かに肩をすくめると、リンカちゃんの側へと移動した。

 

「お嬢様はお気づきになられていないのかもしれませんが……。

 お嬢様、目から光が消えてましたよ?

 当然怯えもしますよ」

 

 ……え、目から光が消えてた?

 

 いや、たしかに夢中にはなってたよ?

 かわいいし、どんなデザインの着物が似合うかな〜とか、いろいろ思いを馳せながら見てはいたけど……。

 

「……俺の目、そんなに狂気的だった?」

 

「そのようなお言葉が自ら出てくるのでしたら、もう少しお加減を覚えてください」

 

「加減って言われてもね……。

 自分じゃわかんないし」

 

 彼女の皮肉に、俺は視線を逸らす。

 

 そういえば貴族とか商人ってポーカーフェイス巧かったりするけど、あれはどうやって習得するんだろうね?

 

「……そうですね、にらめっこでもして、ポーカーフェイスを覚えてはどうですか?」

 

 そんな考えが顔にでも出ていたのか、今度はあからさまな溜息を吐いて、そんな提案をした。

 

「にらめっこって……」

 

 小学生以来した覚えないな……。

 

「……」

 

 ちらり、とリンカの方を見やる。

 

「お嬢様、またハイライトが消えてます」

 

「ハッ!?」

 

 気づけば、リンカちゃんはイルマの後ろへと退避していた。

 

(うぐぅ……。

 ちょっと傷つくよ、リンカちゃん……?)

 

 俺はそんな彼女の態度にがっくりと肩を落とすと、これからのリンカちゃんに対する応対をどうするべきかと思案した。

 

「はぁ……。

 ま、いっか。どうせイルマちゃんに懐いてるんだし、リンカちゃんの事はイルマちゃんに任せるよ」

 

 俺はその場から立ち上がると、メニューを開いてフレンドステータスの項目を開く。

 だがしかし、そこにはまだリンカちゃんの名前は表示されてはいなかった。

 

「畏まりました、お嬢様。

 リンカちゃんの事は、私が責任持って面倒を見ましょう」

 

「悪いね、助かるよ」

 

 俺はウィンドウをオフにすると、その部屋を後にした。


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