「新凪灯麻さん、ようこそ死後の世界へ。 あなたはつい先ほど、不幸にも亡くなりました。 短い人生でしたが、その生命の灯火は尽きてしまいました」
何にも無い白い部屋の中で告げられた。
一体何が起こっているのか分からずにいる。
……それと、俺の目の前に居るこの美少女は?
そこには、ポツリと一人の女の子が目の前に立っていた。見た感じは、「可愛い」「美しい」「二次元越え」。それになんと言っても、大き過ぎない慎ましい胸。
……はっきり言って、たまらない。
俺は、いつの間にかその完璧すぎる美少女を「ふむふむ」と思い想いに観察をしていた。
「おぉ、中々…」
そんな言葉がふと、口から漏れる。
「あ、あのぉ、そろそろ私の躰を舐め回すように見つめないで下さいますか?」
さっきから黙っていた美少女が、見られている事に羞恥心で頬を真っ赤に染めながら尋ねてきた。
「お構いなく」
「えっ!? い、いやぁ、そういう問題ではないのですか……」
今にも泣きそうな顔で訴えてきたので、自分の本能に釘を刺し目を少し別の所に向ける。 チラ見位は許してくれるだろう……。
「ふっ、ふぅぅ、あんまり私を驚かせないでください。 脆いんですよ私の心は。 ……よし、言いたい事も言ったので少し別のお話をしましょうか」
俺はコクリと頷いた。いったいどんな話だろうか。
「あなたは先程亡くなってしまいました。 その時の記憶はありますよね?」
「えっと、確か………何でしたっけ?」
死んでしまっている事は分かっているが、どうやって死んだかは思い出せないでいた。
「はぁぁぁ…まぁ、覚えてない方も偶に居ますのであんまり気を落とさないで下さい」
そう言って、申し訳なさそうに頭を下げる。 憶えていない俺の方が悪いと云うのにこの子は……。
「あっ、全然気にしていないので大丈夫です。 それで、少し気になる事があるのですが……貴方は一体誰ですか?」
美少女は思い出したかの様に、「そうだった」と言い。
「申し遅れてすみません。 そして、初めまして新凪灯麻さん。 私の名はメル。色んな女神のお手伝い役、万事屋の女神です」
……何を言っているんだ? コスプレかと思っていたのに。
胡散臭すぎる話をこんなに堂々と言えるとは、関心さえ思える。
「何ですか? 疑っているんですか?」
「はい、その通りです「女神様」」
「あぁ、今の言い方! 完全に信じていないでしょう。 ああもぉ、分かった見せてあげる女神ってところをね!」
半泣きになりながら、手に持っていたペロペロキャンディ的なやつを宙に浮かせ「ドヤッ」と勝ち誇っているのだが……。
「ぷっ……すごい…です」
俺はというと笑いこらえるので大変だった。
「なっ! ほ、本気を出したら大変な事になるから敢えてだから!」
驚いてくれなかった事に対して、悔しいのか恥ずかしいのか分からない感じの表情でそっぽを向いた。
「まぁ、見てくれだけは人間離れの可愛さだから認めるよ。 それで、これから俺はどうなるんだ?」
「今、見てくれだけと言わなかった?」
「言ってない」
相手が人であるかないかは今としてはどうでも良くなっている。 立場とかも今更とやかく言わないだろう。
「はぁぁぁ、もういいわ。 それで、あなたの今後はと言うとねぇ……。 二つほど選択肢があります。」
「二つねぇ……」
「はい、一つは人間として再び生き、新たな人生を歩むか。 もう二つは、天国的な環境でのほほ〜んと暮らしをするか」
のほほ〜んって……。 本当にそんな感じなのか?
「生まれ変わりか天国で暮らすか、まだ日本でやり残した事があったのになぁ」
「それって、えっちぃ事ですよね?」
うっ、的確に当ててきやがる。
そんな恥ずかしそうに頬を赤らめている俺を見て、妖艶な笑みを浮かべ。
「そうでしょうね、男の子だもんね。 君が考えている事なんか手に取るように分かるわ。 ……そうねぇ、もしもの話だけど。」
そこまで、言って顔をぐっと近づけ嬉しそうに言った。
「異世界へ行けるとしたら、あなたは行きたい?」
異世界。 それは、日本に居た時とは違う生活が強いられる。
メルの説明では、多種の世界のその一つ。 勇者も魔王も居て、剣技や魔法でモンスターを倒して生活などをしていくらしい。
分かり易くしたら、異世界チート系の小説と思えば合っていると思う。
「もし、行くとしたらちゃんとした特典もあるわよ。 それに死ぬ前にえっちぃ事がしたかっただっけ? それも叶うわよ!」
「なっ、そ、そんな事は断じて……ないかと思います」
思春期真盛りの俺としては、完璧に否定は出来ないってのに……。
「それがねぇ、なんと肉体と記憶はそのままで送ってあげる事になっているの。 尚且つ、あなたみたいな人はすぐ死ぬと思うから、何か一つだけは、特殊能力や才能やとんでも武器をプレゼントして頑張ってきてねぇって感じなの。 どう? どう! 楽しそうでしょ」
異世界系が好きな俺には良い話に思える。
でも、一つ持って行けるとしたら何にしよう…。
ファンタジーゲームをやっていた頃は、魔法剣士をカンストまで育成していたし才能がいいだろうか。
あっ、決める前に。
「あっちの世界って日本語で通じるのか?」
「そんな訳ないでしょ。 今まで居た世界は日本語で大丈夫だったけど、あなたが行くのは別の世界。 そこにも、歴史や文化があったのよ。 簡単に言うと外国へ旅行だ的な感じかな」
異世界ってそんな気楽に行けるところなの?
まぁ、女神様だからこその価値観かも知れないが。
「でも、安心していいわよ。 君の脳を少しだけ弄って無理矢理にでも覚えさせるから」
「何が、安心してだ。 こっちは、逆に恐怖さえ感じているぞ」
「怖くない大丈夫よ。 だって、女神ですから。 だから、安心してどれにするか決めちゃいなさい。」
そう、言って俺の目の前にメルがカタログの様な物を差し出した。
メルからカタログを受け取ると、一つ一つに目を通していく。 多種な公式チートの中から何にしようか……。
《ゲイ・ボルグ》《直死の魔眼》《最古の魔力》《スマホ》……スマホとは?
終盤の辺りから、ネタに走っていると思わせる様な物が書いてある。
ネタを選んだ暁にはどんなドン底異世界ライフが待っているのだろうか……。
そんな事を思いながらいつの間にか読み終えてしまっていた。 どれか一つだもんなぁ……本当にどうしよ。
「考えているわねぇ、いつもならはやくして欲しいのだけど。 今日は死人も少ないから好きなだけ選んでいいわよ」
仕事が少なくて嬉しいのかニコニコとしているメルは、「一応これも」と二冊目のカタログを差し出してきた。
「これは?」
「あぁ、それね。 こう言ったら悪いけど全く選んでもらえないから、こうやって別冊に移し替えているのよ。 変わり者のあなたなら選ぶかなぁっと思って」
何その言い方、酷い。
メルの言葉に若干傷つきながらも受け取ったカタログをパラパラと捲ってみる。
……う〜ん、選ばれない理由が何となく分かってしまう。
そこには、一目見れば強いと思うものの。 やり過ぎている物や欠陥がある物ばかりで実用性に欠けている。
「何でこんな物を作ったかわからない物まで入っているぞ。 ほら、このアクシズ教ストラクチャセットとか……」
「あ〜それは、現在出張中のアクア様が考えた物で、見たら分かるけど使い道も意味不明だからすぐ取り下げたんだけどねぇ……。 そこからが大変だったのよ……」
昔の事を思い出したのか、凄く疲れた顔で同情を求めてきた。
女神を困らせる女神か……一度会ってみたいな。
それからたまに、メルの説明を入れ十分が経とうとして終わりのページに差し掛かった時、一つの生き物に辿り着いた。
《金焔龍ファフニール》
そんなインパクト塗れの生き物に……。
「えっ、ファフニールってあのファフニールですよね!?」
「うん、あのファフニールよ。 でも、それがどうしたの?」
あれ? それがと言っているがファフニールって人気じゃないのか? それに、ここに書いてあるのは実用性に欠けている物ではなかったのか? ファフニールさえ居れば打倒魔王も簡単そうにみえるが……。
「このファフニールって何で最初のカタログに入ってないの? チート級の破壊力や物凄い大きさとかで…………ん? 大きさ?」
その言葉を待っていましたと言わんばかりにメルは胸を張って言ってきた。
「それがファフニールの最大のネックなのよ! あなたが思っている以上に凄く大きくて歩いているだけでも街が崩壊出来るぐらいにね」
えぇ、怖。 ファフニール怖!
「で、でも、普段は街の外に居させて、冒険に行く時だけ呼ぶとかは……どうですか?」
「はぁ、それも無理ね。 あの子とてつもない寂しがり屋でご主人様と少しだけでも離れると寂しくて街に乗り込んで来ちゃうの」
もう、ずちなしな事を言っている気がする。
……気ではなくて結果論か。
「それじゃぁ、仕方がないですね」
「まぁ、そうね。 でも、この子可哀想なの……。 何十年間も誰も選んでくれなくて可哀想に思った転生の女神様がファフニールを人間にしてあげようと相談をしたのだけど、「私は待ち続けます」と言ってそれから何年もの月日が経ったの」
メルの話を聞きながら何度も胸を引き裂かれそうになる。 カタログに書いてある物でも選ばれるまでの過程もありの重要な選択肢だったのかと思い知らされる。
そして、ふとこんな事を思い出した。
……一つ持って行けるとしたら何にしよう。
もう、決まってしまった。
二冊目のカタログを受け取った時から決まっていたのかも知れない。 それこそ運命!!
「興味半分で渡してごめんなさいね。 じゃぁ、二枚目のカタログは片付けて一枚目の方で決めちゃいなさい」
メルは俺が手に持っていた二枚目のカタログを取ろうとするが、中々取れず「ねぇ、何やっているの?」と焦りながら言ってきた。
「メル! ……いいや、女神様。 俺、このファフニールにするよ!」
「えっ? ……えぇぇ!? ほんと? 本当に?」
「うん、もう決めたんだ。 この子にする……この子を幸せにするんだって!」
無理矢理で強引な俺の言語にメルは朗らかな笑みを浮かべ。
「分かったわ、その気持ちしかと受け取ったわ。 ファフニールを大切にしてね」
「はい! 幸せな旅にします」
俺はグッと拳を握りしめた。 どんなに大変な旅だろうがいつか笑い飛ばせる……そんな、旅にしよう。
「それじゃ、この魔法陣の中央から出ない様にしてね。 魔王を討伐してくれる事を楽しみにしているわ」
魔王討伐かぁ……うん、何だか行けそうな気がしてきた。
「あぁ、分かった。 俺とファフニールで魔王を討ち取ってくるから、待っていてくれ女神様」
「はい、楽しみに待っていますよ。 それと、あと一言」
メルは俺にとびきりの笑みで最後の言葉を告げる。
「さぁ、勇者よ! 願わくば、数多の勇者候補達の中から、あなたが魔王を打ち倒す事を心から祈っています。 ……さぁ、旅立ちなさい!」
メルの別れを惜しみながら眩しい光に包まれた……。
どうも、まつ壱です!
久しぶりの投稿で新規の小説です。
異世界系の小説を書きたいと思っていたので、このすばの二次創作にしました。 読んでくれる皆さんを楽しませれる様に頑張りたいと思います。
それでは、また次回!