「……はぁぁぁ。 ここで合っているかい?」
「はい、やっと来れましたね……アクセルに」
疲れた表情で俺とファフニールは顔を合わせる。 一日程度だけで着くはずだったが色んな妨害を受け、結局的には二日も掛かってしまった。
時には黒い狼みたいな奴に追っかけられたり、時には腹減りで死にそうになるわで本当に大変な目に遭った。
「あの人達は大丈夫だったんでしょうか?」
ふと、ファフニールは先程まで冒険者とモンスターが戦っていた方へ目線を向ける。
大丈夫かと問われたら「勿論だよ」と言いたいところだけど、さっきの人達はねぇ……。
正直に言うと、あれは酷かった。
アクセルへ向かっている時の話になるが、巨大なカエル的なモンスターに完膚なきまでに負けているパーティーを目の当たりにした。
三人程だと思うけど、一人は呑み込まれ、もう一人は地面に寝そべり、最後の一人は剣を片手に呑み込まれた仲間を救い出していた。
俺達には武器もなく仮にもファフニール(幼女化)が居るが、危ない事はして欲しくなかったので、最終的には見捨てる形になってしまったのだが。
……多分助かっただろう。
「冒険者だから今頃は倒していると思うよ……」
「そうなってくれている事を祈りたいですね……」
門の壁に寄り添いながら話し合っていたが、門番がこっちを見ながら「はよ入れ」と唆してきたので考えるのをやめ街の中へ入る事にした。
手続きは難なく進み簡単に入れた。
門を潜り抜けるとそこにはファンタジー感溢れる街並みが目に飛び込んできた。 感動もしつつ街の中へ歩いて行く。
「こうやって見ると、本当に異世界に来たんだと実感するな……」
「嬉しそうですね、ご主人様!」
気持ちが高ぶっている俺を見て、ファフニールも嬉しそうに尻尾をバタバタと地面に叩きつけていた。
「おぉ、ファフニールも分かるか。 よし、まずはこの世界の情報集めと冒険者になる為の手続きをしようと思うけど、どう?」
ファフニールも賛成してくれたのか頷いてくれた。
情報集めと手続きだよな……異世界なのだからギルドもあるよな。
そう思い、ギルドへ向おうとしたのだが。
……ミチガワカリマセン。
「なぁ、ファフニール。 ギルドへの道のりって知っているか?」
「私も初めて来たので把握していません」
「う〜ん、そうだよな。 ここは無難に冒険者の格好をしている人に聞いてみるか」
この豆腐メンタルで何処まで話せるかが未確定だが、聞いてみない限り動けないので話し掛けてみる事にした。
誰か居ないかと辺りを見渡す。
人間以外にもエルフや獣耳っ娘など異種族の冒険者らしき人達も居る。 誰に話し掛けようか悩みながら眺めていたら冒険者達はある一点場所に向かっていた。
あれ? この人達に付いていけば話さなくてもギルドに着くない?
さっきまでの意気込みを少し恥ずかしく思い、もじもじと手をこねる。 でも、場所が分かったから良かったのかな?
「よし、ファフニールよ。 我について来るがよい」
「ご主人様……急なキャラ変するならもっと堂々として下さい」
異世界と言う名の高揚感でつい何処かの魔王風に演じてみたが、流石に無理があり恥ずかしさの圧でファフニールから目を逸らす。
ファフニールも曖昧な顔でこちらを見てくる。
……逸早くこの場から去りたいです。
そして、冒険者ギルドへ。
開かれた扉は緊張と期待で重みを増していた。
中には仕事を求める者や食を楽しむ者と別途の要件で来ている人もいて、皆様々な感情で溢れていた。
「おぉ、すっげぇよ! これがギルドか、何だがテンションが上がってくるな」
興奮気味で色々と見ていた俺は、ファフニールの肩を摩って気持ちを爆発させていた。
「あっちが食事処でそっちはクエストを受ける所かな?」
「そうですよ」
「ん?」
隣から見知らぬお姉さんが、愛想よく話し掛けてきた。
「あっ、すみません。 私はこのギルドの案内役をさせてもらっています。 初めて見るお顔だったので困っているのではないかと伺ってみました」
「そうでしたか、これはご親切に。 あの僕達冒険者になりたいと思い来たんですが、どうすればいいですか?」
「その為の私ですよ。 あちらのカウンターへ向かって下さい」
促された通り奥には四人の受付が座っており、暇なのかこちらに手を振ってくる。
それも、四人とも。
……素直に怖いよ。
「あの人達って何でこっちに手を振ってくるのですか……」
「いつも忙しいのと苦情とかで、精神がやられたのではないですか?」
本当であれば相当きつそうだな冒険者ギルドの仕事って……。
「ありがとうございます」と言い残して、カウンターへと歩いて行く。 行っている途中何人もが「おい、あいつ幼女を引き連れているぜ」とそんな声が聞こえてくるが、俺はロリコンでは無い……この子の親代わりだ。
「私はご主人様がロリコンでも大丈夫ですよ?」
「すまないがファフニール。 問題はそこじゃないんだよ……」
俺は情けなさそうにファフニールに顔を向ける。 流石にこのギルドの人達にそんな噂が広まったら居場所無くなってしまう。
「……あの、宜しいでしょうか?」
話し合っていて気付かなかったが、振り返るとほんの数センチの距離に女性職員の顔があった。
クッキリとした顔付に長髪の赤毛の髪の毛。 美人かと皆に聞けば誰もが美人と答えるだろう。
異世界の人って日本にいた時より美人が多く感じるけど、そう思っているのは俺だけかな?
「えっとですね。 冒険者になりたいんですが、そういう事に自分疎いので教えてくれませんか?」
申し訳なさそうにする。 知らない物は知らないのだ。
「はい、いいですよ。 まずは、登録手数料が掛かりますがよろしいですが?」
ンン? アレ? 手数料?
この世界で初めて聞く金銭関係に戸惑いを隠せずにいた。
「もしかしてですけど……お持ちになられてないのでは?」
「ちょっと待ってください!?」
手をかざして相手の言葉を遮る。
ヤバイ!ヤバイ! どうしたらいい!?
焦る俺にどう話し掛ければいいのか、女性職員もアワアワと慌て始めた。 これが、負の連鎖と言う物だろうか。
感情は焦っているのに脳内はクリアなのはアレだが、本当に焦っています。
「大丈夫ですか?」
「ファフニール……心配を掛けさせてすまない。 ここは俺がどうにかしてみせるよ」
グッと拳を握り意を決する。 頭を下げて誰かにお金を貸してもらおうと……。
静かに食事処へ足を進める。 そして近くにいた男の人に頼もうとした時、俺から離れるようにクエストの掲示板にそそくさと去っていった。
……お金を貰う前に心が崩壊しそうだ。
そんな俺を見ていたファフニールがいつの間にか他の冒険者の所へ行っていた。
流石にファフニールが俺と同じ感情になったら何が起こるか想定出来ない、そうなる前に早く止めなければ。
が、想いは届かず散っていった。
「おじ様達、お願いがあります……この私達にお金を恵んで貰えないですか?」
そこには中年冒険者達が困った顔で椅子に座っていて、その言葉を受け隣の仲間と顔を見合わせ申し訳なさそうに。
「ごめんね、おじちゃん達はあまり強いパーティーじゃないからお金が少ないんだよ……」
何となく分かっていたが、そんなに簡単にお金が貰えるわけが……。
「でも、あげちゃう。 はい、二万エリスだよ」
「こんなに大量に……貰ってもいいんですか!?」
「いいんだよ。 おじちゃん達は若い人を応援したいからね」
『この、ロリコン共がァァァァァァァァァァァァ!!!!!』
そして、その日を境に俺のあだ名が『ロリコンキラー』と呼ばれる様になった。
遅れましたァァァァ!
そして、もう一つの謝罪。
ファフニールの名前を出せませんでした。 状況的に無理かなと思いやむなくです。 いつか良いタイミングで出したいと思っていますのでそれまで待って下さい。
それでは、また次回。